5/2、テアトル新宿にて鑑賞。6.5点。
予告編が実にシックな作りの映画を思わせた本作だが、良くも悪くもヴァーホーヴェンはヴァーホーヴェンだった。
まずは何が良いって、どこまでもエンターテイメントであろうとしていることが素晴らしい。戦争、ナチス、ユダヤ人、レジスタンス……というキーワードから連想されるような(誤解を恐れず言えば「辛気くさい」)作品とは全く異なり、本作から主だった要素を抽出していくと娯楽映画のそればかりが出てくる。「女スパイが敵の部屋に盗聴器を仕掛ける」シーンでのサスペンスの盛り上げ方なんて、スパイ映画のそれとしか思えない。ラストではミステリーのような二転三転する展開を見せるし、『氷の微笑』のヴァーホーヴェンだけあって随所にサービスシーンがあるし、優等生的な戦争ドラマの枠組みからぐいぐいとはみ出してゆく。そしてテンポのよさ。次々と新しいイベントが起こり、ピンチが連続する。144分という長尺をまるで飽きさせない。
しかし以上のような長所は、全てそのまま裏返って短所に転じる。戦争映画であり、恋愛映画であり、スパイ映画であり、アクション映画であり、ミステリー映画であり、社会派映画である……という多面性は、その各々がことごとく中途半端であることをも意味する。テンポの良さも手伝って、ヴァーホーヴェン映画にはどうしても「軽さ」がつきまとう。それは人物描写の甘さに最も端的にあらわれており、主人公の造形が非常にいい加減なものになってしまっている。[家族を皆殺しにされたことがどの程度心の中で重みを持っているのか]よくわからないし、[ドイツ人将校になぜ惹かれたのか]という肝心な部分もわからない。[人が人に惹かれる理由なんてどうせ合理的なもんじゃないのは確かだが、だからって「いい人よ」の一言で済ませてしまうのはあまりに適当ではないか]と思う。
しかしそれでも、終盤で主人公が次々と窮地に追い込まれていく展開や、そこで[排出物をかけられる]シーンなどには、有無を言わせぬ力がある。ヴァーホーヴェンのエンターテイナーとしての力と題材の重厚さとが強烈な市松模様を描き出した力作だ。難点も多いが個人的には好き。
予告編が実にシックな作りの映画を思わせた本作だが、良くも悪くもヴァーホーヴェンはヴァーホーヴェンだった。
まずは何が良いって、どこまでもエンターテイメントであろうとしていることが素晴らしい。戦争、ナチス、ユダヤ人、レジスタンス……というキーワードから連想されるような(誤解を恐れず言えば「辛気くさい」)作品とは全く異なり、本作から主だった要素を抽出していくと娯楽映画のそればかりが出てくる。「女スパイが敵の部屋に盗聴器を仕掛ける」シーンでのサスペンスの盛り上げ方なんて、スパイ映画のそれとしか思えない。ラストではミステリーのような二転三転する展開を見せるし、『氷の微笑』のヴァーホーヴェンだけあって随所にサービスシーンがあるし、優等生的な戦争ドラマの枠組みからぐいぐいとはみ出してゆく。そしてテンポのよさ。次々と新しいイベントが起こり、ピンチが連続する。144分という長尺をまるで飽きさせない。
しかし以上のような長所は、全てそのまま裏返って短所に転じる。戦争映画であり、恋愛映画であり、スパイ映画であり、アクション映画であり、ミステリー映画であり、社会派映画である……という多面性は、その各々がことごとく中途半端であることをも意味する。テンポの良さも手伝って、ヴァーホーヴェン映画にはどうしても「軽さ」がつきまとう。それは人物描写の甘さに最も端的にあらわれており、主人公の造形が非常にいい加減なものになってしまっている。[家族を皆殺しにされたことがどの程度心の中で重みを持っているのか]よくわからないし、[ドイツ人将校になぜ惹かれたのか]という肝心な部分もわからない。[人が人に惹かれる理由なんてどうせ合理的なもんじゃないのは確かだが、だからって「いい人よ」の一言で済ませてしまうのはあまりに適当ではないか]と思う。
しかしそれでも、終盤で主人公が次々と窮地に追い込まれていく展開や、そこで[排出物をかけられる]シーンなどには、有無を言わせぬ力がある。ヴァーホーヴェンのエンターテイナーとしての力と題材の重厚さとが強烈な市松模様を描き出した力作だ。難点も多いが個人的には好き。