秋風

アキバ系評論・創作

月下の舞姫vol.11

2010-07-01 20:54:39 | Weblog
「それで結局、私以外全滅! 最後に残っていた私以外のふたりともスティンガーの飽和攻撃に遭ってどうしようもなかったわ」
 現在午前11時20分。あゆは高校の受付で待っていた父に会うなりゲームセンターでの先程の一戦について捲し立てるように話した。

 今の時間、あゆの通う単位制三部制高校は午前部の4時間目である。
 あゆ達昼間部生は午後1時から5時までが授業時間で標準4年で卒業要件単位を取得する。3年間で卒業したかったら午前部や夜間部の授業に出て単位を取得する必要がある。

「未知の相手に無闇に突っ込むのは得策じゃないな、まぁゲームならそれもありか」
「あの空飛ぶ円盤に羽が付いたようなものは米シコルスキー社のサイファーとかドラゴンウォリアーとか呼ばれる非武装無人偵察機なんだけどさっきは携帯対空ミサイルのスティンガーを積んでいたわ」
「ほぅ?」
「それも何十機もの集中運用で(ゲーム)の運用側も何考えているんだか? 時間無くて聞けなかったけど」
 あゆの父は娘の話を聴きながら首から下げた来客用IDカードを吊るしているネックストラップの捻れを神経質そうに直している。
 普段とは違う父親の所作に今日の来校目的をあゆは改めて認識した。
 昨日の校内トラブルで小さいとはいえあゆに対し刃物を振り回した男子同級生を合気道的な技で制圧した件で改めて学校側、本人、保護者での三者面談である。
 昨日、相手の男子同級生側は高校からの呼び出しに母親が駆け付けて来たので女同士は避ける為と家業もあるのであゆの母親は来ていない。また無闇に大袈裟にするつもりもないので弁護士も今日は呼ばなかった。

「時間だ、行こう。さっさと終わらせて飯にしよう、何が喰いたい? この近くにメイドレストランが出来たらしいが」
「ううっお父さん、父娘で行くところじゃないよ」
「そこはマイクロミニスカメイド服で夫婦では更に行けないぞ」キリッ!
 あゆの父は笑顔を真顔に戻しボイスレコーダーのスイッチを押して今日の日付と今の時間を呟く。 
 あゆにとっての本日の第2ラウンドが始まる。


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