妄想と戯言2

完全自己満足なテキストblogです。更新不定期。
はじめに!を読んでください。

夜明けに泣く(魯粛×呂蒙)

2017-01-12 19:48:27 | 無双シリーズ


泣くとかタイトルにつけたけどまったく悲しいお話とかじゃない魯粛×呂蒙。短いよ!










「...正気ですか」

普段のしかめっ面をより一層、険しくした目前の男からの問いに頷いてだけ返すと、まるで信じ難いものでも見ているような顔でもう一度、次は口調を強くして同じ問いを繰り返した。
少し涼しくなったからと、酒を理由に呼び出したのはいつ頃だったか。結局は用意した肴にも手をつけることなく、このようなやり取りを繰り返すだけだ。

「何度も言わせるな」
「し、しかし魯粛殿...これはあまりにも...」
「ならばおまえは、オレを抱くことが出来るか?」
「......」
「観念することだ。なに、悪いようにはせんさ」
「いえ、その...ですが、」
「何だ、歯切れの悪い...よもや臆したとでも言うまいな、呂蒙」
「そのような言い方は止めてくだされ!」

向かい合うように座るオレたちの直ぐ横には寝台と、所謂そういう事に使うための生々しい道具が並べてある。
用意したのはオレだが、昨日今日の話しではない。目の前で目を泳がせるこの男と想いを確かめ合ったその時より、準備はいつでも万全だった。だと言うのにオレたちは、それをどちらに使うのか、等という初歩でつまづき合う始末。
男同士だ、抵抗はあるだろう。しかし、先ほどから言葉を濁し続ける呂蒙の意図がいまいち理解できないでいる。
怖い、というわけでも無さそうだ。ではやはり、想いと欲情は別だと、そういう事なのだろうか。

「...オレはな、この際、情を交わすか否かは、どちらでもよいと思っている。だが今のおまえのように煮え切らない態度をとられてしまっては、未練も残るというものだ...おまえの気持ちに嘘偽りはないのだろう?」

とりあえずは本心を探るためにと発した言葉だったが、誠実なこの男には幾分かの動揺を与えたようで、腰かけていた椅子を倒すほどの勢いで立ち上がりオレを睨み付けてくる。
まるで、探ろうとしていたオレの内心を見透かしたようなその様子に、この男も成長したものだ、とどこか他人事のように思えてならなかった。当事者だというのに、おかしな話しだ。
微かに震える拳を握り締めたのを横目に、まさか殴るつもりか...と、この男の堪忍袋をそこまで刺激してしまった己を浅はかだと悔やむ。普段は軍師だ策士だと頼られる存在だというのに、この男の前だと、どうにも答えを焦る癖があるらしい。
事が起こる前に謝罪してしまおうと、とりあえずは落ち着かせるために立ち上がる。同時に見上げてきた瞳には、羞恥の色が浮かびあがっていた。

「魯粛殿、アナタは今、勘違いをしている!オレにも欲はあります。だが、相手がアナタとなれば話しは別です!」
「ああ、呂蒙、すまなかった、オレはそういうつもりで言ったのでは......うん?」
「オレはアナタをお慕いしているのです!それを、此のような行為などしてしまっては...余計にアナタのことを......」

そう言ったあと、ハッとした顔でオレを見つめ返してくる。わざとらしく片眉を上げて返してみせれば、これでもかと顔を赤らめてしまった。
自分でも何と言葉にしたのか理解していないようで、互いに無言で椅子に座り直す。また目を泳がせ始めた呂蒙と、この男の真意を整理しようと考えこむオレとの間には、妙な空気が流れていた。
なるほど、そういう事か、と内心で安堵の息を吐く。やはりどうにも、この男の前では何もかもを急ぎすぎるようだ。

「呂蒙、やはり今夜おまえを抱くことにした」
「はっ...え、は?」
「なに、心配はいらん。何も今日すぐに交わるというわけではない。こういうものは慣れることが重要なのだ。戦と同じでな」
「そ、そういう問題ではっ...」
「もう聞く耳は持たんぞ、呂蒙」

次に反論を述べようとする前に腕を掴み寝台へと誘導する。魯粛殿!と目に見えて焦る声が聞こえたが、時とて黙認することも必要なのだ。
寝台へと押し倒してみるが、もっともらしい抵抗がないところを見ると、やはりそういう事なのだろう。

「...フッ、想いが強すぎるというのも考えものだな、呂蒙よ」
「アナタはまた、そのような言い方を...!」

寝間着代わりに着ていた、薄い着物に手をかける。反射的にその腕を掴まれるが問答は無用だ。いやしかし、流石は武勇で名を馳せる将だけはある。

「...ああ、そうだ」
「っ、え...?」
「慣れろ、とは言ったが、初心は忘れるなよ、呂蒙」
「しょ、初心?なにを...」
「おまえは存外に人を惹き付けるらしい」
「......」
「油断するなということだ。他の者に身体を許すなよ」
「なっ!」




直に、夜が明ける。



















たぶんこの後、呂蒙さん泣くだろうなと思ってこのタイトルにしただけだよ意味なんてないからね。

お粗末さまでした!


コメントを投稿