妄想と戯言2

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はじめに!を読んでください。

りんごアメ(ガロウ+ゼンコ)

2024-06-13 21:27:00 | ガロ金夏シリーズ
「夏祭り(後編)」の小話になります。
書きたい場面が多過ぎて!!!






「ガロウさんはバッドお兄ちゃんとお友達になりたいの?」
「は?と、友達…?」

 りんごアメと大きく書かれた屋台の下。
先に買ったわたあめを嬉しそうに抱えながら、ゼンコがガロウを見上げている。
 混んでいる店先で先に注文を済ませて、商品を受け取るまでの間に雑談に興じていた最中の、突然のその言葉にガロウはただただ、目を丸くしてゼンコを見つめ返すしか出来ないでいた。
 ゼンコにとってはそんなガロウの反応は予想外だったのか、驚いたように「ちがったの?!」と叫んだ。なんだその憶測は、と大きな瞳を凝視すれば「なーんだ」と心底面白くなさそうな声が返ってくる。
「わたしてっきり、ガロウさんはお兄ちゃんとお友達になりたいんだと思ってたから」
「…なんでそう思ったんだ?」
「んー…最近のガロウさん、お兄ちゃんに優しくなったから」
 何かを思い出すように、空を見上げたゼンコが呟く。優しいという言葉に、ガロウは何のことか検討も付かない様子だ。恋心を自覚したとは言え、少なくとも子供たちの前では普段通りを装えていたはずだ、と考える。
「お兄ちゃんとガロウさん、ぜったいに仲良くなれるよ」
「…おまえはそう思うのか?」
「うん!だって似てるもん、二人とも!ガロウさんはお兄ちゃんのことキライ?」
「いや、別に…」
「え!ほんと?」
「まあ、でも…友達になりたいかって言われると違和感があるっつーのか…」
「なにそれー?」
 ゼンコが首を傾げてわたあめを抱え直す。ガロウの言葉の真意までは、十歳の彼女に分かるハズも無く。しかし多少の違和感は覚えたようで、納得のいかない顔で唇を尖らせている。
 その様子を見て、ガロウは苦笑を零した。仲良しこよしのお友達になりたいわけじゃない…どちらかと言えば、もっと深い仲になりたいってのが本心だ、と。
 しかし、まさか妹にこんな話が出来るハズもなく、見上げてくる大きな瞳には笑って誤魔化した所で「お次のお客さまー!」と屋台の店主がガロウたちを顧みながら叫んだ。ハッとして、次の瞬間には笑顔を浮かべたゼンコが屋台まで一目散に駆け寄っていく。
「はい、りんご飴とぶどう飴おまちどう!お嬢ちゃん素敵な浴衣だね!これ、おまけにどうぞ!」
「わぁ、いちごアメだぁ!ありがとうございます!」
 気前の良い店主が笑って妹に手を振っている。それに大きく手を振り返してから、ゼンコは嬉しそうに帯を翻して、ガロウの元へと小走りで戻って行く。
「えへへ、ユカタかわいいって!」
「良かったな」
「お兄ちゃんも着ればよかったのにー!お店でね、似合いそうなの見つけたんだよ?」
「…ほう?」
 ゼンコを見下ろすガロウの瞳が細められる。その金色には邪な感情が見て取れたが、もちろんゼンコにそんな事は分からない。
「…ちなみにどんな浴衣だった?」
「えーと、黒いユカタでね、オビが赤っぽくて、なんだかお兄ちゃんみたいだった!わたしのオビとおそろいみたいで、可愛かったのになー」
「ほう」
 ぷくりと頬を膨らませたゼンコがガロウを見上げる。
「来年はぜったいに着せてやるんだから!」
「よし、手伝うぜ」
「ほんと?!」
 ゼンコの言葉に「任せろ」と微笑んだガロウが、再び歩みを進める。それに続こうとしたゼンコが「あ!」と声を上げた。
「ねぇガロウさん、チョコバナナ!」
「まーだ食うのかよ」
「タレオくんが食べたいって!ね、買っていこうよ!」
「仕方ねーなぁ」
 悪戯っ子のように微笑んだゼンコが手を差し出してくる。ガロウはそれを優しく握り返して、ゼンコと共にごった返す人混みを駆け抜けた。









何だかんだ子供に優しいガロさんが好きです!


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