“大腸がん”になったら人生はどう変わる? 危険因子や生活方法を名医が徹底解説!
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---------- 大腸がんの最新治療、トイレの変化、人工肛門など、あらゆる疑問に名医が答える決定版! 『名医が答える! 大腸がん 治療大全』より、Q&A形式で気になる疑問をご紹介。今回は、大腸がんの危険因子や、大腸がんになると人生はどう変わるか、などを徹底解説。 ---------- 【画像】「大腸がんかもしれない」と思ったら…
大腸がんは悲観的な病気ではない
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「大腸がん」と診断されると、大腸の一部を切りとることになり、治療後は食事やト イレに大きな影響が出ると感じる人が多いのではないでしょうか。なかには、人工肛 門になることをイメージして、不安を抱く人もいるかもしれません。 確かに、大腸がんの治療では、手術後の生活がどのように変化するのかを、事前に知っておくことが大切です。手術直後から数ヵ月間は排便に変化が起こります。下痢しやすくなったり、頻便といって、日に何度も便が出ることがあります。そのため、食事で消化のよくない食品の摂取をひかえるなど、多少の注意が必要です。 ただし、そういった生活上の注意が必要なのは一定期間です。手術から半年もすれば、たいていのことは落ち着き、生活に制限がかかることはほとんどなくなります。 がんといっしょに直腸を大部分切りとり、人工肛門をつくった人も、基本的には同じです。手術のあと、人工肛門のケアに慣れるまでは食事や入浴、運動などに注意が必要ですが、やはり半年もすれば、生活は落ち着いてきます。 以前とまったく同じ生活ではないとしても、きびしい制限がかかるわけではありません。ストレスの少ない、快適な生活を送ることは十分にできます。 大腸がんは、けっして悲観的な病気ではないと私は思っています。実際、私が診察している患者さんたちには、明るく前向きにすごしている人が大勢います。
大腸がんの危険因子は何ですか?
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大腸がんは、大腸の粘膜にがん細胞が発生し、それが増えてかたまりになったものです。遺伝的要因や危険因子が加わると、がん細胞が発生しやすくなります。危険因子には、次のようなものが考えられています。 ● 加齢 大腸がんの患者さんは40代から増え始め、加齢に伴って増加します。 ● 食生活 赤身の肉やソーセージなどの加工肉といった、動物性たんぱく質や動物性脂肪のとりすぎが、発がんに影響するといわれます。また、野菜や海藻など食物繊維の摂取が少ない人は、大腸がんの危険が高くなる可能性があると考えられています。 ● 運動不足 運動は、大腸がんのリスクをほぼ確実に下げることがわかっています。一方、デスクワークなどで座っている時間が長いと腸の動きが緩慢になるため、便が大腸にとどまる時間が長くなり、がん細胞が発生しやすくなると考えられています。 ● 喫煙、過度の飲酒 どちらも、大腸がんのリスクを確実に上げることがわかっています。とくに喫煙は、大腸がんだけでなく、すべてのがんの明らかな危険因子です。 ● 肥満 具体的には、BMI25以上の人が肥満とされます。とくに、おなかがポッコ リしている人は、大腸がんが発生する危険性が高いといわれています。 ほかにも、職場や家庭のストレスも、発がんに影響するのではないかといわれてい ます。 ● 遺伝的な病気や大腸の病気 多くの大腸がんは、とくに持病などのない人にも発生しますが(散発性大腸がん)、血縁者に大腸がんの患者さんがいるなど何らかの遺伝的要因が考えられる場合もあります(家族集積性大腸がん)。 また、生まれながらの原因で大腸がんが発生しやすい人がいます。そのなかに「家族性大腸腺腫症」や「リンチ症候群」もあります。リンチ症候群は、大腸だけでなく子宮内膜、卵巣、胃、小腸などにがんが発生しやすい体質で、大腸がんの平均発症年齢は約45歳と、若い年齢でがんが発生します。大腸がんでは約4%を占めます。 ごくまれですが、潰瘍性大腸炎のような炎症性の病気からがんが発生することがあります。また、数年もの長期にわたる難治性の痔瘻もがん化しやすいといえます。
大腸がんになると人生はどう変わる?
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まずは大腸がんの治療後の生活について、自分の知識をチェックしてみましょう。(1)~(8)の〇×ガイドを見て、思い込みや誤った知識を正して、不安を取り除きましょう。 ---------- (1)手術後は便を少量しかためられなくなるが、食事の量は制限されない→〇 ---------- 切りとる位置や大きさにもよりますが、大腸の一部をとったからといって、食事に厳しい制限がかかることはありません。便をためられる量が減るのは事実ですが、そのぶん、便がこまめに出たりします。食事の量に影響することは少ないので、安心してください。 ---------- (2)手術から数ヵ月間は、下痢や頻便になりやすい→〇 ---------- 程度の差はありますが、大腸がんの治療では基本的に排便への影響が必ずあります。結腸がんは手術後数ヵ月間、下痢や頻便になりがちですが、後は落ち着きます。直腸がんでは肛門機能を温存した場合にやはり下痢や頻便があり、人工肛門をつくった場合には、排便のしかたが変わります。 ---------- (3)手術後は運動の制限があるが、室内でできることや軽い運動ならよい→× ---------- 運動面の制限も、食事と同じでほとんどありません。術後数ヵ月間は激しい運動をさけたほうが安全ですが、その後はとくに制限は不要です。人工肛門をつくった人でも、おなかを圧迫する動き(柔道など)や、おなかに強く力を入れる動き(腹筋運動)でなければ、運動できます。 ---------- (4)大腸がんは、おなかを切らずに治せる。ただし、切ったほうが確実に治ることもある→〇 ---------- 内視鏡治療であれば、おなかを切らずに大腸がんをとれます。ただし、内視鏡治療の適応となるのは早期がんの一部です。進行がんは、手術でがんをしっかりとりのぞいたほうがその後の経過がよいので、手術を選びます。治療法の選択については、ガイドラインが設けられています。 ---------- (5)肛門にがんができたら、肛門を切除して人工肛門になる。生活の制限はほとんどない→〇 ---------- 肛門にできたがんを切除し、人工肛門をつくるのは正しい処置ですが、人工肛門をつくった場合に生活の大きな制限はありません。排便のしかたが変わり、運動や服装などに注意点はありますが、制限というより変化と考えてよいものです。 ---------- (6)人工肛門になりたくなくても、肛門近くのがんは、基本的に別の治療法は選べない→× ---------- がんの進行度や位置によりますが、肛門近くのがんでも、肛門機能を温存しながらがんを切りとる手術方法があります。その方法を選べる場合には、医師から選択肢が提示されるはずです。自己判断しないで、医師に治療法について聞いてみましょう。 ---------- (7)大腸がんの治療後は食事や排便などが変化するが、仕事を続けることもできる→〇 ---------- 大腸がんになったからといって、仕事をやめる必要はありません。がんは命にかかわる病気であるため、退職を考える人が多いのですが、しっかりと治療すれば、その後も十分に働けます。ただし、定期検診が必要で、手術後に追加治療がある人もいるため、働きかたを見直したほうがより安心です。 ---------- (8)大腸がんの5年生存率は、比較的よい。とくに早期発見の場合、かなり期待できる→〇 ---------- 統計によると、大腸がんの治療成績はほかのがんと比べて良好です。とくに早期がんの場合、5年生存率が高くなっています。手術後の再発がそもそも少なく、再発しても早期発見すれば、しっかりと切りとれます。治療後は医師の指示どおりに定期検診を受け、再発を警戒しましょう。
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