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何せ自由な帖なので

【雑】とても美しくて,とても孤独で(フカエのマルから)

2014-05-16 20:57:45 | ウェブログ
(※某カフェ発行の読書関係フリーペーパーに寄稿しました)

 「空色」は,空の色だから空色であるが,たとえば,もしかしたら,空が,本当はレモン色だとしたら,「空色」は,「レモン色」の意味をもつはずで,でも「レモン色」は,同じようにレモンの色だからレモン色で,つまりは,鮮やかな黄色のはずだが,これもレモンが,本当はショッキングピンクだとしたら,「レモン色」はショッキングピンクの意味をもつことになるのではないか。

 と,いうのはただの空論であり,実際のところ,「空色」は,おおよそ,淡い青色という意味をもっている。でも,ときどき,みんなのいう「空色」というのは,自分の思うような「空色」なんだろうかと考えてしまう。同じ色だと思っていても,同じ言葉をつかったとしても,それが本当に,全くの同じ色を指しているかはどうすればわかるのだろう。
 誰かと同じ空をみていても,同じ空をみているはずだなんて,どうやって証明できるのだろう。この空を美しいと感じても,隣にいるあなたと,この美しいという感覚を,どうやって一片の違いもなく共有できるのだろうか。
 もちろん,ある程度,わたしたちは言葉をつかって感覚をわかちあうことはできると思う。共感することもできるだろう。でも本当に,本当にわかちあえたと,本当にそのままを共有していると,どうやって確かめることができるだろう。わたしたちが言葉で伝えることができるのは,言葉でしかない。言葉で確認しあうことは簡単だけれど,確認できるのは,やはり言葉だけである。言葉をもつわたしたちは,決して,真から一片の違いもなく,心からわかちあうことはできない。
 自分にとっての美しさは,きっと永遠に,自分にとってだけの美しさなのだろう。それは,とても「孤独」なのである。何かを美しいと感じるとき,それは涙がでるほど,とても「孤独」なのである。
 美しさの前には,わたしたちはこの世界にたったひとりになる。美しさの前に,言葉はいつも力を失う。(いや,言葉は最初から大した力なんて持っていないが)
 しかし,どんなに叶わないとわかっていても,海の深さほどの絶望でも,それでも誰かに伝えずにはいられない。言葉では伝わらないとわかりながら,言葉でしか伝えられなくても。言葉にすればするほど,その言葉は,その真実から遠ざかってしまうとしても。
 美しさと対峙するとき,それは孤独な戦いである。もどかしくて,悔しくて,かなしくて,打ちのめされて,泣きながら,あえぎながら,もがきながら,苦しくてもいい。あなたとわかちあいたいと,心から願う。


テーマ:美
おすすめの本:尾崎 翠『第七官界彷徨』

【雑】気がつくと書店のポイントが2000近くたまっている。 (フカエのマルから)

2014-05-16 20:53:25 | ウェブログ
(※某カフェ発行の読書関係フリーペーパーに寄稿しました)

「気がつくと書店のポイントが2000近くたまっている。 つまりこれだけ散財しているということで。」

 新しい本にはパワーがある。
 きれいで,つるつる,ぴかぴか。キャッチーなタイトル。あの人の書いた書評。美しい表紙や写真。目を引く斬新なデザイン。手を招く背表紙。はじめてきく言葉,知りたくなる中身。ふれたくなる世界。
 本屋へいくと,体中のアンテナがのびのびと,つい心がおどる。そして本屋からの帰り道は,買ったばかりの新しい本をにぎりしめ,子どものようにはしゃいでしまう。

 先日,ついに電子書籍デビューをはたした。電子書籍には抵抗感があったものの,手にしてみると,これは便利と,旅先の電車の中で,寝る前の暗い部屋で,書籍を読みあさっている。
 電子書籍は便利だ。電子書籍は膨大な数の書籍も,全てがうすい本体に収納されている。何を読みたくなるかわからないからと,わざわざ本を3冊も5冊もカバンにいれなくていい。旅行にいくときに,下着を減らすか本を減らすかで,真剣に悩まなくていい。それに検索も大変簡単で,お目当ての本を探すのに,本棚をいちいちひっくり返したり,あるいは本の山をくずたりしなくてもいい。何より電子書籍だと暗い部屋でも読めるから,寝る前にベッドから出て,電気を消しに行かなくてもよいことが大変素晴らしい。

 ただ,電子書籍はとても便利なツールだけれど,やはりそれは本とは別物なのだと感じる。
 やはりわたしは,本は,本屋で買う一冊の本がいい。

 発売を待ちきれなくて待ちに待って,とうとう手にして,手に汗もにぎって買うような。予算には上限があるから,慎重にえらんでえらんで,でもえらびきれなくてえいやと2冊を買ってしまうような。(そしてひもじくなるお昼ご飯。)何軒もさがしつづけて,声もでないほど,ふるえる手でようやく買うような。偶然目にとまって,いままで全くすれ違わなかったジャンルなのに,買わずにはいられないような。ずっと昔,小学校の図書館で読んだ本と再会して,お互いの近況を話しながらレジへ向かうような。今日は何か新しいものをみつけようと,あれやこれやひらいてみるも,結局おなじみの作家の本だけ買っているような。

 本はただ本としてだけではなくて,ページのそこかしこにはさまっている,その思い出も含めてそこに在る。そしてその最初の1ページはたいていいつも,本屋のなにげない棚の前。

 「出版不況」なんて,本好きの人間には,嫌なニュースもきこえてくるけれど,この内沼さんの本では,様々な本屋さんの新しいアプローチを紹介していて,本の未来はまだまだ明るいことを予感させてくれる。

 そして今日も本屋をおどるように歩く。
 きれいで,つるつるで,ぴかぴかの,そんな思い出の1ページ目に出会う。


テーマ:本屋
おすすめの本:内沼晋太郎「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」朝日新聞出版社

【ブックリスト】140515

2014-05-16 20:41:45 | ウェブログ
アメリカ黒人の歴史 : 奴隷貿易からオバマ大統領まで / 上杉忍著
体感する数学 / 竹内薫著
すごい実験 : 高校生にもわかる素粒子物理の最前線 / 多田将著
大人の女が美しい / 長沢節著英訳・うる星やつら / 高橋留美子原作
遺伝子組換え食品 : その不安と誤解 / グレゴリー・E・ペンス著 ; 山口彦之訳
ライ麦畑のキャデラック : モーターカルチャー100年の真実 / 瀬戸山玄著
セツの100本立映画館 / 長沢節著
遺伝子組換え食品 : どこが心配なのですか? / Alan McHughen著 ; 渡辺正
数学で犯罪を解決する / キース・デブリン, ゲーリー・ローデン著 ; 山形浩生, 守岡桜訳
変愛小説集 / 岸本佐知子編訳 ; [1]
変愛小説集 / 岸本佐知子編訳 ; 2
なぜ!こんなに数学はおもしろいのか : 数学カフェへようこそ :
数、和算、素数、整数、無限、確率……現代数学が身近になる6つの特別ゼミ / 織田孝幸編著
人生を変える「数学」そして「音楽」 : 教科書には載っていない絶妙な関係 / 中島さち子著
Gulliver's travels / Jonathan Swift ; retold by Pauline Francis
Anne of Green Gables / Lucy Maud Montgomery
The adventures of Huckleberry Finn / Mark Twain
The Norwood mystery / Sir Arthur Conan Doyle
魂をゆさぶる歌に出会う : アメリカ黒人文化のルーツへ / ウェルズ恵子著


英語多読,いまいち教材に面白そうと感じるものが少なく,結局いつも児童文学ばかりチョイス。
ところで一番たのしみなのは,「変愛小説集」。ひさしぶりに読みたい小説。

相変わらずわたしにとっていま何がホットなのかわかりやすいリストです。