鞄に演劇をつめこんで

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当日パンフレットの考察その1

2021年05月03日 | 小劇場演劇の考察

当日パンフレットの考察 連載その1

<目次>
1 当パンとは(連載その1)
2 当パンのサイズ・頁数(連載その1)
3 掲載内容のランキング(連載その2
 ・配役表があるといいこと
4 どんな構成になっているか(連載その3)
5 当パンの役割とは(連載その3)
6 理想の当パンを求めて(連載その4)
7 まとめ (連載その4)

1 当パンとは 
 当パンとは「当日パンフレット」の略で、公演期間中に劇場に来た観客向けに配布するパンフレットのことです。映画館や大きな劇場ではカラー印刷の数ページのパンフレットを受付で有償販売する場合がほとんどですが、ここでいう当パンとは、小劇場などでの公演で座席などに置いてあって、無償で配布するパンフレットを指します。
 当パンは、配役やスタッフ、出演者の今後の活動などの情報を観客に提供するツールで、多くの団体が作成しています。
 しかし最近は、当パンを作成しない団体をみかけるようになりました。
 そこで、2020~2021年2月までに観劇した100団体(100公演)の当パンについて分析し、観る側から当パンの魅力に迫りつつ、理想的な当パンについて探ってみました。

2 当パンのサイズ・頁数

■ サイズ別・頁数別 団体数
A4版:
1頁 7団体 2頁 8団体 4頁11団体 3つ折り 1団体
A5版: 1頁 1団体 2頁 2団体 4頁63団体 16頁 1団体
B5版: 1頁 1団体 4頁 4団体
B6版: 4頁 1団体 

 A5版4頁で作成している団体が63団体と圧倒的な多さです。A4用紙に両面印刷して、二つ折にする作りやすさに加え、伝えたい情報量と小さすぎない文字の大きさがマッチしているのではないかと思います。
次に多かったがA4版4頁で11団体。A3用紙に印刷して二つ折にしたもので、A5に比べ文字が大きく読みやすさが加わります。
第3位・第4位もA4サイズで、両面刷りの2頁が8団体、片面のみ1頁が7団体で、A4版の当パンが4分の1を占めていました。

A5版とA4版の優劣はつけにくいところです。
4頁ですとA5版がいいかなと思います。
席の間隔が狭い小劇場では、広げるとA3版になるパンフレットは扱いづらいからです。
またパンフレットを保存する際にかさばらないことも利点です。フライヤー(宣伝チラシ)はA4版が多いので、A5版の当パンをA4版に広げて、フライヤーと一緒にクリアファイルに保存しておくと見返す際に楽です。

一方、掲載したい情報が少ない場合はA4版1枚がいいかなと思います。読みやすい文字の大きさで作成できますし、かさばりません。
B版サイズは6団体ありました。B5版になるとかなり文字が小さく読みづらさを感じます。
このほかA4を3つ折りにした団体が1団体ありました。

■ 白黒か、カラーか
殆どの団体は白黒印刷で、多色刷り・カラーを使っている団体は、名前が知れた団体を中心に、1割にあたる10団体でした。
中には、コート紙でA5版16頁の写真入り当パンを無償で配布した団体がありました。団体の気合いを感じました。

3 掲載内容のランキング

当パンに掲載されていた内容を、多い順に並べると、以下のとおりです。
大きくは①公演作品名など公演に関する基礎的な情報、②配役や出演者、③スタッフや協力、④主宰などの挨拶、⑤団体や出演者の今後の予定、⑥その他の情報 に分類できます

<ランキング>
1位 作品のタイトル 98団体

2位 配役  93
3位 スタッフ 88
4位 団体名 87
5位 次回出演情報 83
6位 公演期間 80
7位 公演劇場名 76
8位 主宰等の挨拶 75
9位 作演名 65
10位 協力 52
11位 公演回数 43
12位 次回公演情報 41
13位 スペシャルサンクス 24
14位 グッズ販売 24
15位 あらすじ 21
16位 団体のSNS紹介 19
17位 ウェブアンケート 18
18位 出演者  15
19位 団体紹介 10
20位 助成事業 8
21位 諸注意 8
22位 配信案内 2
23位 登場人物相関図 2
24位 感想呟いて 2
その他 43

①公演に関する基礎的な情報
 作品名(1位)、団体名(4位)、公演期間(6位)、公演劇場名(7位)の5Wにあたる基本的な情報に、作演の名前(9位)を加えた5つの情報は、多くは1頁目の表紙に記載されています。

 観劇当日では、これらの情報が書かれた紙をみつけると「ああ、当パンだ」とわかるぐらいのことですが、重要なのは観劇後に当パンを見返した時です。配役や出演情報だけを掲載する団体がありましたが、後々のことを考えると必ず掲載してほしい情報です。
作演の名前は、表紙には書かず、主宰(作演)の挨拶として掲載する団体もあります。
11位の公演次数は団体名に付随する情報で、「劇団××第○回本公演」と通常書かれます。
掲載した団体数が43団体と少ないのは、コロナ禍のため本公演ではなく特別公演が多かったことが要因として考えられます。

②配役や出演者 
 配役(表)は「何役を誰が演じるのか」を列記したもので、93団体(第2位)とほとんどの団体が掲載しています。その位、当パンの中で重要な情報といえる配役表の効果を3つ挙げてみました。

■ 配役表があるといいこと

その1 目当ての役者の役名がわかる
 知り合いなど目当ての役者の役名やポジションがわかることで、安心感が生まれます。知り合いだからといっても、舞台の上にあがると、メイクや演技で、この人かな?と不安になることもあります。観劇前に役名がわかることで、観劇中にその役者を追う負担が軽減され、集中して観劇することができます。
 また、口こみやDMなどのお誘いから名前しか知らない役者を観劇するときは、配役表がないと困ることもしばしば。上演前に役名を知ることで、目当ての役者を簡単に見つけられ、好演をシッカリと追うことができます。
 もし、当パンがない公演をDMで誘うのであれば、観劇前に自分の役名を伝えてほしいです。

その2 気になった役者の名前が簡単にわかる 
 観劇して気になった役者の名前を、役名から確認することができます。
 このことは、次の予約に繋がる可能性があることから、「観る側」だけでなく「出る側」にとってもいいことといえます。

その3 作品を理解しやすくなる 
 大よその役名や登場者数を事前に把握することで、舞台の描く世界に入りやすくなります。
 せっかく観劇にきたのに、舞台の世界にうまく入れない人も少なからずいます。ネタバレのようですが、上演前にある程度の情報を頭に入れておくことで、作品を理解しやすくなります。

<配役表の記載例> 
 役名と出演者を箇条書きにした書き方が多く、一目でわかります。
 記載の順番は、主役、準主役から、主演の家族や恋人などの主演との関係の深さや役の出演頻度などに応じて記載していくものが多いですが、中には登場順に記載している当パンもあり、これはこれでわかりやすいです。
 また出演者の氏名の横に所属劇団を( )書で記載する団体が多いです。

記載例①
<配役>
ロミオ・・・演劇太郎
ジュリエット・・・下北花子(劇団○×)
記載例②
<登場人物(登場順)>
由美子 … 下北花子
正   … 演劇三郎(劇団△△)
碧(正の妻)… 中野洋子

■補足説明がある配役表
役に補足説明を添える団体があります。ネタバレが懸念されそうですが、上演中に役の名前を聞き逃すことや、終演後に思い出せないことがあるので、補足説明があると助かります。時間が経ってから当パンを読み返したときにも役立ちます。

記載例③
キタザワ [演劇太郎] … 主役。大学生
ウエハラ [下北花子] … コンビニ店員
サングウ [中野二郎] … 弁護士

 役者を重視する当パンも
 配役表にはせず、役名ごとに、出演者名や主な出演作品、今後の活動予定、一言コメントなどをまとめて掲載する団体がありました。
有償販売されるパンフレットでは顔写真付きでこうした情報を掲載していることが多く、これに近い方法といえるでしょう。

記載例④
(CAST)
キタザワ・・・・演劇太郎
[出演作品]2020.8○○○○(団体名)など
[今後の活動] 
@アカウント

ウエハラ・・・・下北花子
[出演作品]2020.8○○○○(団体名)など
[今後の活動] 
@アカウント

*** コラム ***
上演中に配役表をみる観劇者
 配役表は、役者を追いたい場合には上演前にチェックを済ませ、あとは終演後に読むのがいいと思います。
 観劇しているとたまに、上演中に配役表を必死にみる人がいます。板の上で熱演を振るう役者さんの名前が気になったのかなと思います。そのたびに、隣で、当パンを開いたり閉じたりされると、気になったりすることもあります。
 個人の自由ですし確認したくなる気持ちもわかりますが、そもそも上演中は役名の世界にいて、役者の氏名で舞台を観ているわけではないので、上演後に調べれば十分ではないかと考えます。
 こうした理由から、配役表を作らない団体があると聞いたことがあります。しかし配役表のメリットは多岐にわたります。ならば、表紙に配役表を掲載するなど、観劇の妨げを少しでも減らす工夫で対応してもいいのかなと思います。

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