goo流・キャラネタブログ

ニュースなどを扱います。
あと場合によっては小説というかお話を書く事もあるでしょう。

青春の嵐 第21話「ラストサンタクロース2」

2015年12月04日 20時32分38秒 | 青春の嵐
サンタが隠れ潜んでいる廃屋に、トナカイと寛一が現れた。
「アンタが、このトナカイのパートナーのサンタかい?」
寛一は開口一番に言う。
「老師!こんなところで何をやってるんですよ!?」
トナカイも非難するように言う。
これに対しサンタは
「儂はもう、何もしたくないんじゃ」
と半ば不貞腐れるように言う。
「アンタの組織からもっと働けと言われたからかい?」
寛一はそこで踏み込むように言う。
「何でお前がそれを知っているッ!?」
「おっと、ここで声を荒げるんじゃないぜ。オレもアンタもこの廃屋とはいえ
ここの持ち主は元は赤の他人の名義の家だ。そこに居るって誰かが知ったら
お互い犯罪者として処断だぞ?ここじゃ何だから人気の無い所に行こうや。
幸い、あそこの森林はオヤジが在日と中国人のヤツに殺されたとはいえ、
土地はまだ国か県のモノになった訳じゃねえからな。」
寛一が知る限りによると、尾場家の土地の所有権は新年度にならない限り
国か県の所有にはならないという。つまり小学校を卒業する今年度いっぱいまでは
寛一はその土地に何度でも出入りが許されているし、他者は寛一に一言の相談も無しに
その土地に指ひとつ加える事など許されないというのである。
法とは時として用いようによっては兵法の如き有効なのである。
そこで、廃屋から離れ尾場家の所有であった広大な土地の森林内へと移った。

「話は聞いたよ。そろそろ歳も歳だし引退を申し出たんだけどお偉いさん方から
それを怠け者の態度として見做され、今年は前年の三倍の仕事量を押し付けられ
しかも給与は無しっていう処分を下されたんだってな?」
「ふん。悪いかい?今まで散々、頑張って来たのに、あんなやり方ってあるんかい。
馬鹿にするのも大概にして欲しいというものじゃ。」
寛一とサンタは言い合う。
「でも、このまま何もしないで過ごしたらタダでは済まないよ?
懲戒免職で済めば良い方で最悪な場合、職務放棄で粛清だよ!?」
トナカイはそこで口を挟む。
「何?子供たちにプレゼントを配るノルマを達成しないばかりか、
仕事をサボって、何処かで逃げ隠れした場合は理由によっては処刑する?
そんな規定が、その業界にゃあるんか?」
寛一は半ばドン引き気味に訊く。
「うん。あるよ。ボクの前の相方もその前の相方も、無能でノルマを達成出来なかったり
怠け者で仕事嫌いの性格で、毎年クリスマスになると何処かに雲隠れしてばかりいたために
前者は懲戒免職になり、後者は粛清されて死んだよ。この人ボクの代で三人目の相方なんだ。」
トナカイはそう答える。
「ふん。もう儂はもう老い先短いジジイじゃい。もう粛清なんぞ恐れてないわい。」
サンタはもう完全に意地になっている。
「・・・なあ、サンタさんよ。」
寛一は呼びかける。
「何じゃ。儂は何もせんと言ったじゃろうが。」
「オレはまだ何も言ってないぜ?」
「どうせ、この儂にサンタとしての責務を死ぬまで果たせっていうんじゃろ!?
もう儂は散々、尽くして来たのにアイツらはこの儂に対し、
働きに見合った報いも無ければ何の労いも無い!それどころか年寄りのこの儂に向かって
言うに事欠いて『これだから爺は鈍間でドン臭くて使えない』だの
『お前、給料の割には能力に見合ってない』とか酷い言い様じゃ!
何をやっても報われないんだったら、もうこれっきりにさせてくれッ!!」
もう完全に投げやりだ。
「オレは別にアンタにこの仕事を死ぬまでやれとは一言も言わねえよ。
それにオレも出来る限りの手伝いをするから、今回の仕事を最後に
アンタはアンタの道を行くっていうのはどうだ?」
「何?この仕事を最後に、この儂に自分の道を行けと?」
「ああ。そうだ。悪くは無かろう?」
「だ、だがしかし。」
それはそう思うだろう。サンタの方とて、組織のお偉方に反感を持って今年の
クリスマスの業務をボイコットしようとしたとはいえ、本来は働き者の性格だったのだ。
「このまま仕事を終えて戻っても又、お偉い方のために犠牲になるだけだぜ?
そんな事になるくらいなら、やるべき事をやって達成感を得てから
造反し自由の身になった方が良くないか?」
寛一は、サンタにそう説得して見る。
「うん。ボクもそう思う。実はボクもあのお偉方には、いい加減にウンザリして来た所なんだ。
それに最近、外で出来た彼女と添い遂げたいし。」
「お、お前・・・」
サンタも驚いたであろう。何時の間にか、自分のソリを引くだけだった相方に
そんな事情が出来ていたとは。
「なあ。アンタの責務のためじゃないし、アンタの組織のためにやるんじゃない。
アンタら二人の幸せを望むためにやるんだ。」
「・・・そうじゃな。」
「・・・そうだね。」
この両者にもう迷いは無くなった。心なしか両者の思いに応え
未来の幸せを祝福するかのように真っ暗な夜空から粉雪が降り注ぐ。
サンタは片手を寛一に向けてかざすと寛一はサンタの姿になった。
「こ、これは!?」
「その姿になっている間は、空を飛べれるし、壁を抜けれるし、その姿を誰にも見られぬ。」
「それじゃオレはこれで手伝えるんだね!?」
「ああ。これまでの遅れを今からにでも取り戻そう。」
そういうとサンタとサンタ姿の寛一はトナカイの引くソリに乗って次々と
多くの家々の眠っている子供たちの枕元にどんどん配っていった。
その手捌きは、寛一の過去のバイトで鍛えたノウハウも手伝ってか
サンタに押し付けられた前年の三倍に及ぶノルマ分のプレゼントは瞬く間に跡形も無く消えた。

「キミってホントに凄い子だねえ。感心するくらいだよ。」
サンタはすっかり、これまでの不貞腐れていた表情がまるで嘘のように嬉しそうである。
「いえいえ。これでアンタの仕事の有終の美を飾れたというのなら、
これくらいの事など骨折りの内には入りませんって」
寛一も、サンタの事を手伝えて殊の外、満足である。
「謝礼とは何だが、キミの欲しいモノって何か無いかね?」
「そうだねぇ・・・」
寛一は考えた。今の自分はお金の事に関してとりあえず懸念は無い。
ただ寛一にとって何とかすべきなのは来年度以降の自分の居場所の確保が
最重要課題となってしまったからである。それというのも
父母は既に亡く、それに追い討ちをかけるように市長から寛一に対し
来春の小学校卒業を以って、この新潟市からの退去の通告を三日ほど前に受けたのである。
それというのも前年に市長選で当選した若い女性市長は、コレが非常にキツイ性格の上に
サイコパスと問題児と暗愚な人間が大嫌いという厳格原理主義者なのである。
その市長が、長年に亘って街の人々や街の子供らを煩わせてきた尾場寛一の事を知り
何とか出来ないものかと常に苦々しく思っていたのである。
それが今年に入り、市と議会にとって宿敵であった尾場勘吉が、そしてそのすぐあとに
寛一の母親の皆村加奈子が相次いで在日と中国人による犯罪で殺害され
市長にとって、もはや子供の寛一は恐れるに足らないと判断し、叩き潰しにかかったのである。
具体的に、市長は故加奈子の家を固定資産税滞納という理由で没収し
故勘吉の土地を接収しようとしたのである。
だが寛一の方もそれを百も承知で容易に手出しを出来ぬように
あれこれと打てるだけの手を打っており、少なくとも寛一は小学校卒業までは加奈子の自宅に
居られるし、故勘吉の土地も現在は寛一が所有権を息子として名義を引き継ぎ所有しているのである。

深く考えた結果、寛一はこう返答した。
「心の友と、多数のメイドらと一緒に広い土地の大富豪の屋敷に住むっていう夢が叶うのなら
それで、贅沢は言わないよ。今のオレはもう、同世代の他の子よりも底辺に位置する惨めさだからね。」
半ば自嘲気味に言う。
「はっはっは。大きく出たねえ。まあいいだろう。
折角、この儂の最後の仕事を手伝ってくれたんだ。拒否するのは失礼だし
身勝手な大人たちの為に子供が不遇を囲う謂れも無かろう。」
そういうとサンタは自身の最後の力を振り絞るかのように寛一の前で全身を眩く光らせた。
すると、寛一の目の前に居たはずのサンタとトナカイは何処にも居なかった。
だが寛一には何の心残りは無かった。むしろ充実感に満ち溢れたクリスマスイブの夜になった。



コメントを投稿