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青春の嵐 第22話「新たなる存在 屋敷の戦乙女(メイド)たち」

2015年12月05日 14時51分18秒 | 青春の嵐
日本国内の年末年始の喧騒を忘れたいかのように寛一は、クリスマスイブの翌日になるや
まるで思い立ったかのように日本を飛び出し欧州に来た。
イタリア南部は何処も観光客が多い。何処に行っても同胞にでも出会うかのように邦人と出くわす。
そこまでなら、ただの観光旅行と何ら違いは何も無い。

だが、寛一にとって思わぬ事があった。
ある日の夜。ナポリのホテルに泊まっていたときの事である。
寛一の泊まってる部屋にメイド服の若い女たち何人かがやって来た。
「此処に、怪しい人が来ませんでしたか?」
そう彼女らが質問するのに対し
「否、申し訳ないが見てない。」
そう返答する。
「そうか。もし、見かけていたら教えて欲しい。」
そう言って彼女らは足早に去って行った。
そして寛一は、部屋の玄関から戻るとクローゼットの方へ行きそのドアを開ける。
「ほれ。行ったぞ?」
「ああ。済まない。」
寛一は、男に言う。
「一体、何をやらかしたんだ?あの女の人らの制服からして
ここのホテルの従業員でも無ければ、
近くのバーやパーラー、カフェの者の類じゃ無さそうだな?
さては金持ちの家にでも泥棒に入って追われたんだろ?」
「ち、違うよ。」
確かにこの男に言わせれば、窃盗やらかしたのであれば自分の事を追いかけてくるのは
必ずしも警察署の捜査員であって、メイドである必要は無い。
「俺は世界フェミニズム連盟のメンバーの一人なだけだ。」
「フェミニズム?何だそりゃ?オレとしては初めて聞く言葉だが。」
寛一は思わず呆れるように言う。
すると男は熱弁をふるう様に語る。
「そもそも、近代に入ってからも人類の文明社会の歴史とは悲しいかな
弱肉強食の名の下に金と力と権力を笠に来て、強い者が
弱い者を傷つける事が当然とされ美化されがちな歴史。
二十世紀に起こった二度の世界大戦とその後の冷戦の中で生まれた副産物である
途上国の紛争や共産圏の独裁政権による人権弾圧政策。
西側は西側で、男性社会の名残りと資本主義経済故の女性に対する男性の意識の低さ。
我らはこれを是正するために、不断の努力を続け遂に人間社会に対して
自分たちの過去にしてきた数々の暴力と大量虐殺の歴史を反省させるに至ったのだ。
だが、彼女らはその我らの思いに違いる事を為したのだ。」
「それが今のメイドさんたち?つうか彼女らの雇い主の金持ちどもか?」
「ああ。アイツらにとっちゃ、我らの掲げるこの世からの性差撤廃思想をはじめとする
考えが受け入れられないようだった。」
つまり、このフェミニストの男性がいう革命思想とは地球上の富裕層らに対し
生活水準をみだりに上げ、広大な土地を持たず巨大な屋敷に住まず
執事やメイドなどの使用人を抱えず一般庶民と同じ暮らしをする事によって
浮世離れした考えに陥ったりせず、消費者でもある庶民と経済界との間の距離感が
開き過ぎるのを防ぐという考えであったし、その他の地球上のありとあらゆる社会に対しても
民族上、宗教上、古くからの伝統や慣習・しきたりを理由とした、これまでのような
女性を道具や動物のように扱いをするのを止め、地球をひとつの女系家族のようにして
一部の男性のみがそれを引き立てる少数派人口として行こうという考え方であった。

聞けば聞くほど寛一にとって内心、だんだん不快に思えてきた。
何故なら、確かに人類の歴史は争いの歴史であり、
そのついでとして生まれた残酷な行為の横行している歴史であるのは自身も
学校の授業で知っているしそれ以外でもテレビや雑誌、専門誌でも知っている。
一部の強い立場の者の自己満足と土豪劣紳ぶりのために、多くの者が割を食う歴史を
未来永劫、続けさせたくは無いという熱意は父母を失い、自身も現在において
不遇に置かれている寛一としても賛同に値すべき考え方ではある。
だが、寛一が問題としているのはその後のくだりである。
それというのも、地球をひとつの女ばかりの住む家にして、それに個人的に気に入られた
一部の男性がそれを引き立てる少数派人口として行くという考えだからだ。
何故なら、昔から美女は美男にしか心を惹かれぬモノである。
そうであれば、この男の所属しているフェミニズム組織にとっちゃ
寛一も含めて地球上の男性の圧倒的多数は、第二次世界大戦当時の欧州において
ナチスドイツに弾圧されたユダヤ人のような末路を辿らねばならぬ存在であり
残存する事を許された一部の男性は、新たな地球上の為政者の女系政権の奉仕者として未来永劫
召し使い同然の民族として存続となるという。
成り代わった地球上の女系人口となった彼女らも決して、争いも何も無い平和であるかといえば
そうでは無い。下手をすれば、良くてもインドばりのカースト制度社会。
悪くすると中国や北朝鮮ばりの人権弾圧のように、どんなにスポーツや芸能や文化で
才能を発揮したとしても国家に対して都合の悪い思想をしているというだけの理由で片付けられ
同じ能力でも政府の役人や官僚に気に入られた者だけが保障された幸せを送れるという
恐怖社会である。要するにお局さまとその取り巻きにとって気に食わない女は
例えどんなに器量よしでも必ず不遇に置かれる恐怖社会だ。
確かに、普段から粗野で血と暴力とセックスを礼賛しがちな男系社会も困ったものだが
かといって女系社会も平和な社会であるかといえば、そうとは言えないのである。

そこで寛一は、思いついた。
少なくともこのフェミニストが天下を取るような事などあってはならない。
味方してやるふりして、敵方をコイツのアジトに引き入れ、コイツとコイツの上司も雇い主も
敵方のメイドとその雇い主の人質にさせて置こう。後の事は上手く行ってからでいい。
「ああ判った。オレの出来る範囲であれば手伝ってあげるよ。」
「そうなのかい?」
「お兄さんは、日本人なんだろ?」
「ああ、そうだよ。」
「なら、ここは観光旅行している兄弟のように振舞っていた方がいいよ。」
「そうだな。」
このお兄さんの名前は、新川幸雄という人で東京にある日本で上位五指に数えられる大学の二年生という。

翌朝、ホテルを出た二人はその足で、ローマの近郊にある海を臨むフェミニスト団体の屋敷に入り
近況報告も兼ねて寛一の事を紹介する。
「ほほう。キミが尾場寛一くんなんだね?数え年十三歳というのにそのウチの者を
メイド軍から見事なまでに匿ってのけるその機転といい非常に頼もしい。」
六十を少し回ったイタリア人の男性は寛一の事を大いに褒める。
そして昼の食事会もそこそこに、今後警備が厳しくなったローマの一等地の屋敷にある
メイド軍とそこの屋敷に対する作戦をどうするかを考えていた。
そのとき寛一は、こう切り出す。
「既に相手方に面が割れている新川さんひとりでは厳しいです。ここはオレが
屋敷の警報を無効化し、メイドたちを引き付けましょう。新川さんは
その隙に屋敷に入り、そこの書斎から秘密文書を入手して下さい。」
すると新川も返答する。
「キミは大丈夫なのかい?」
「心配は要らないさ。故郷の新潟じゃ、ならず者すら追い縋る事は困難とされた脚力の
持ち主のこのオレを信じてくれよ。」
それを聞いて、その場の面々は大いに驚く。
「ははは。それは大いに頼もしいな。」
食事の後の昼下がりになり、二人はローマへ向かい
現地の屋敷を下見する。
「なるほど。あれらがああなってんのか?」
「キミにはあの屋敷の構造は判るのかい?」
「大体、判るよ。ここの建物自体は相当な年代モノだけど、それ以外は
ここの家主の性格を示すからね。」
寛一は、眼で対象物を見ただけで大体の事が脳内で、もう描けている。
彼に言わせれば、警報装置の数とその配置場所と、その性能。
取扱説明書に現れない、誤作動を起こしにくいとか
長年の雨水や強風によって飛んできた物が当ったのが原因で、故障し肝心なときに
作動しなくなったりしないかとか耐用年数によっては取り付け工事から
製品の市場の平均より短命であったりするかどうかも勘案しているし。
何よりも、家主の性格次第では外側ばかり防犯が強くて内側は案外脆いという事もあるとか
そういう事もあるようだ。そして深夜になり、寛一は幸雄とともに屋敷の塀に近づく。
ここで寛一は、スマホを取り出し警報装置を作動させる。
すると屋敷のメイドらが出てくる。そこで寛一らは身を隠す。
そうするとメイドらはやがて屋敷に戻って行った。
「何で、それをやる必要があるんだ?」
「まあ、見てなって。コレを何度もやる事に意味があるんだよ。」
そういうと寛一は、スマホを使って警報機を作動させ、
その度に屋敷のメイドたちを出動させるという事を頻繁にやった。
やがて、警報システムの誤作動があまりにも酷すぎると見做したのか
すべての防犯システムの電源は遮断された。
塀を見張っていた防犯カメラの赤い発光ダイオードも電源を切られたのか
防犯カメラのレンズの傍にあったセンサーの光も消えた。
周りを警戒する。どうやらこの時間帯は午前零時まで、既に一時間を切っているだけあって
誰も人気が無い。慣れた手つきで寛一は屋敷の鉄門のカギを開けた。
ここで泡を食って慌てる事は無い。この屋敷の庭で忍び足を意識してやろうとする必要はない。
そんな事をすれば音を立てまいとする意識がかえって音を立ててしまう事になる。
どちらかといえば、チンタラした歩き方やズンタラした歩き方の方が無駄な足音を立てやすいのである。
出来るだけ足元を確認して、小石にや地面に突起した物に注意すればいいだけの事である。
けれど、寛一にとってそれは心配無用の様だ。
普段、足元のゴミひとつ残さぬ庭の手入れの仕事を滞りも無くしているメイドの仕事ぶりが
寛一を利したようだ。そして屋敷の正門に立つ。
ここで二人は、相談する。
「ここは二手に別れよう。どちらかが裏口に入って書斎にある書類を入手するんだ。」
「そうだな。ここはオレが・・・」
「ん?待てよ。新川さんが過去にココへ来た事があるんだよね?」
「そりゃ、いくつかあるけど。」
「表口から入るのと裏口から入るのと、どちらがこの屋敷の見取り図からして書斎への近道になる?」
すると幸雄は思い出したように言う。
「裏口!確か、以前に宅配業者を装ったときにトイレを借りるふりして場所を確認した事がある」
「なら、裏口から頼む。オレは出来るだけ正門から入って
書斎を捜す振りして、この屋敷の家人を引き付けておくから。」
「判った。」
そういうと幸雄は裏口のある屋敷の正門の反対側へと早歩きで去って行く。
寛一は腕時計を見る。時間は午前零時まであと四十分を控えた。
あと十分ほど待ってから作戦を決行してやるとしよう。寛一は、屋敷の周りを歩き回り
館の上下階を大まかに眺める。
特に灯りは無いようだ。それを確認すると、手許の腕時計を見る。
このとき、窓から寛一の事を眺めていた若い少女の姿を寛一は何も知らなかった。
そろそろ彼は裏口から入ったと思われるようだ。こちらからも入ろう。
そう考えると、寛一も正門のドアのカギを慣れた手つきで開けて見せ、
ドアノブをゆっくりと捻り、中に入る。

そして屋敷内に侵入した寛一は、屋敷内を見渡す。暗いけれど
慌てたりはしない。元々、暗所や夜間、人気の無いところで過ごす事で
目を慣れさせたのだから、それに外の街の灯りも寛一にとっては満月の光と同じ事だ。
屋敷の外見を想像したとおり、この内部も大方の予想どおりの造りとなっている。
懐中電灯や蝋燭を持って館内を巡回しているメイドを巧みに物陰を利して回避しやり過ごす。
メイドらが通り過ぎて行き、角に曲がるのを見届けると寛一は足早に書斎の方を捜すように行く。
散々捜しまくったが、どうやらこの一階には無いと見た。そこで二階へ行く。
二階も遺憾ながら家主の書斎というべき部屋は無い。どうやらこの屋敷の部屋割りとは
一階は、食事をするための食堂と入浴する風呂場と厨房、くつろぐ居間と暖炉と客間、
二階はメイドら使用人の部屋となっており、三階はこの家主とその家族の部屋割りとなっているだろう。
そう考えると、書斎はその三階の家主の寝室に隣接している部屋か
家主の寝室を兼ねている部屋にあると考えるのが妥当と見てもあり得なくはない。
むしろそっちの方が常識的だ。こういう巨大な建物で考えた場合、
会社のケースで考えると社長室に相当する位置で考えれば、
大体、大きな建物を構える会社の多くは社長室は一番上の階に置く事が多いはずだ。
その常識がこの現代のイタリアでも連綿と通用するのであれば、
ここの家主は上の階に書斎を構え、そこにフェミニストにとって重要な秘密文書を所有しているはずだ。
そう考えた寛一は、こんな危険の多い二階を後にして三階へと行く。
三階に行き少し歩くと案の定、イタリア語で書斎と記されたドアに辿り着く。
そこで幸雄と落ち合う。
(どうだ、首尾の方は?)
(オレの方は問題は無い。カギを開けてやる。ここはオレが見張ってやるから
今の時計で午前零時二十分を少し回っている。午前二時までに目的の書類を回収しろ。)
(判った。)
そういって、寛一はドアのカギを開けドアノブをゆっくり回す。
このドアの部屋の方へ開くようだ。
幸雄は、慌てたりせず入って行き早速、書斎を探し出す。
そこから寛一は、ゆっくりと周囲を確認する。あれから少しずつ時間は経過するが
巡回のメイドは来ないようだ。どうやら、この三階はここの家主たちの聖域なのか
メイドたちも流石に、今宵の時間は何も無いと見て寝床に着き就寝したのだろうか。
後は、午前二時を迎えるまでに幸雄が、このドアの所へ戻ってくれればいい。
時間を経過するのを待つ。時間は午前一時を過ぎ、そして一時半となった。
ここの書斎はあまり広くないし本もあまり充実してない所からして
そろそろ戻っててもおかしくは無いのだが。一体何を手間取っているのだろうか?
そう考えていた所、寛一の許へ書斎から来る人影がある。
(ようやく、戻ってきたか?)
だが、それは幸雄では無かった。
「残念だったようね?方や?」
現れたのは蝋燭を手に持ったメイド長と思われる二十代前半らしき女性だ。
「!?」
すると、後ろから羽交い絞めにされ何かを染み込ませたのを嗅がされる。
必死にもがいた寛一ではあったが、やがて深夜の時間帯の眠気もあったのも手伝ってか
意識が混濁になる。

次に目覚めた所は、一人の老人とそれの娘と思われる熟女と
それを囲うメイドたちの場であった。


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