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青春の嵐 第16話「初秋での豹変」

2015年11月29日 15時39分09秒 | 青春の嵐
あの廃墟と化した、施設での件から寛一は人が変わったかのようになった。
相変わらず、バイトとスマホを使った株と外為のデイトレードで大金を増産しては居るようだ。

ただ夏休み前と違うのは、今までのように子供である故の幼さと我侭さ気侭さから来る
小児的な気紛れや生意気さから来る粗暴で尊大さばかりを突出させていたような姿勢は
影を潜め、下手な大人よりも成熟した思考や判断に基づいて深い考えを出す、
まるですべてを見透かした上で戦略と戦術を練り、それを実行したりする偉い方並みのような
器量が身につき出した。要するに、寛一はもはや勉強と喧嘩に強いだけの人間では
無くなってしまったという事である。
そのような在り方から、そのまま遂に小学校生活最後の学年の二学期を迎えた。
学級内の何人かは会話をしては居る。だが、いつものような他愛も無い会話は少なく
その多くは尾場寛一が夏休み前と比べて著しく人が変わったようになってる事だ。
クラスの女子のひとりに言わせれば寛一は今学期を迎えた日からまるで、
偉い立場のオジサンのような難しい表情する事が多くなり、何か神経質になったモノを感じる。

そこへ担任の教諭である石原敬二が現れ朝のホームルームを始める。
いくつか話しをした後、生徒が一度起立し、先生に一礼して着席する作法をした後
ホームルームは終わる。すると敬二は
「尾場。お前に、話がある。職員室に来い。いいな?」
それに対し寛一は、これまでのような何だよ文句あるんかと言いたげな感情を表に出さず
「ああ、判ったよ。」
と素直に答えた。
それを見て、周りのクラスの面々は大いに驚愕した。少なくとも自分らが最後に見た
夏休み前のような姿勢とはまったく違うだけでもというだけでも驚くのに
これまでのような屁理屈や悪態を敬二にしなかったというのが
彼らにとっては、とんでもないほどだ。
そして職員室にやって来る。
そこで寛一は、敬二に対して開口一番に言う。
「んで、何を訊きたいんだ?夏休みに入る前までの事を今頃になって
言うために呼んだんじゃ無かろう?」
そういう寛一の言葉に対し、敬二も
「そうだな。俺も過去の事を今頃になって言い出すほど器の小さい男とは言われたくないんでね。」
敬二もこの、もはやただの生意気な児童では無く絶大な実力と器量に裏打ちされた上での
生意気さ、つまり大人たちと対等に会話し交渉の駆け引きをしてそれなりの譲歩を得るための
術をつけたという、いわば貧しく他人から馬鹿にされ憐れに思われ、
心無い者たちからなけなしの金品を力ずくで奪われたり
舌先三寸や口八丁手八丁で騙し取られる危険性が非常に高く
常に自分らのことを不幸にしかしない人たちが周囲に居る身の上から
成り上がれるなら目的のために手段を選ばず、そのためなら
他者との対立や他者からの憎悪・反感も恐れないという生き方をしてる
強い力と金とそれを生産し続けられる能力を持った者こそが正義という
正に、生き馬の目を抜く現実社会の現実に育てられたような男だ。
いくらサスペンスモノのテレビドラマにおける真犯人に対する言葉みたいな事など
この寛一に言っても、コイツに言わせればそんなの
残酷な人間関係の現実を知らぬ戯言にすら値しないと片付けてしまうだろう。
更に言ってしまえば、寛一にとってテレビドラマ内はおろか
この世に起きてしまうような事件など
現実における人間関係の残酷さと今の社会の致命的な欠点と
国の政策の失敗故に起きてしまった、如何なる存在をしてもどうする事も出来ぬ深い業なのだ。
「何を言いたい?」
その大人びたような姿勢で訊く。
「そうだな。実は、この街の外れにある廃墟と化したモノに
夏休みの間に誰かが入ったという噂があってだな?それがひとりはウチの学校の生徒らしくてな?」
するとそこへ、若手の女性の学年主任が割って入るように言う。
「石原先生。あれは街のならず者が入ってたって新聞では!?」
「おめえは、黙ってろッ!!」
敬二は相手が自分より上の立場である事を意に介さず
その若い学年主任の女性教諭を一喝する。
それとは対照的に寛一は、お前そんな態度をして良いのかよと言いたげに笑みを浮かべ構える。
「さっき、学年主任の先生が言ってたようにウチ(ここの学校)とは関係ない者が
あそこに居たのを確認したんだろ?なら、何を心配する事があろう。」
そう言って寛一は、悠然とした姿勢を崩さない。
来年の卒業式の後、人事によっては東京の日本で高名な一流の学校、
時と場合に遺憾では、生徒は女の子ばかりの学校の教諭か教頭、
運がよければ、雇われの立場とはいえ校長か理事長っていう幸運も無きにしも非ずだろう。
なのに、この寛一の目の前の男性教諭は何をうろたえているのか
余裕のない態度で何の関係ない、しかもいくら若い女とはいえ
自分より上の立場であろう学年主任を怒鳴るという小物っぷりをやらかしたのだ。

無論、寛一とて今日のこのような事まではないにしろ
後になって警察なり、あの廃墟のかつての所有者だった関係者なり何なりを
想定して、自分なりに打てるべき手を実は打っていたのである。
実は夏休みのあの日においてあの廃墟の地下三階で真琴とお楽しみした後、
誰かが上から降りて来る気配を察知した寛一は、既に服を着た後
真琴に、ガンバレルと呼ばれた、その名のとおり形状が砲身状をなした
巨大なガラス製のシリンダーの影に隠れさせると、階段から
降りて来た、男二人組を階段から降りた直後の陰から襲い
当身を喰らわせて気絶させ、意識を失ったのを確認すると
真琴を呼び寄せ、入れ替わるように真琴を先に階段を昇らせ
自分も後に続いた。そして首尾よく出てから、真琴と別れた。
真琴は林の中を去って行った後、寛一自身はしばらくの間は近くの林の潅木に潜んだ。
すると何やら、セダンタイプの白い自動車が現れ、あの廃墟の前で停まり
その車から、四人の男性が降りてあの廃墟の中へ入って行く。
あの男たちが入って行って、六十ほど数えてから寛一は
隠れていた潅木から立ち上がり、ゆっくりと林の中を歩くようにして
立ち去ったのである。
それに寛一は、真琴にあの廃墟の件は安易に口外しない方が身のためだとも言った。
その理由もあの廃墟にあったモノも実は国が、国民にも外国にも口が裂けても言えないような
研究と実験をしていてもし、それが真琴の口から出るなり真琴がネットを使って
拡散するなりやると国は不都合な真実を知られる事を恐れ、
真琴や真琴の家族を口封じで狙う恐れがあると言って置いたのだ。
だから。そのために寛一は別れ際に真琴が舗装されておらずワダチのある道を通らず
林の中を走って行かせたのも実は、途中であの男たちのように
この廃墟に何か用がある者と出逢ったりしないかを懸念した上での
寛一なりの配慮だったのである。

(ふん。コイツ如きにあの施設の何を知っておろうか。あの施設の事を知っているのは
真琴さん以外じゃこのオレとあの車で乗り付けてきたあの四人組みだけさ。)
寛一は、内心を隠していつに無く自信満々で居る。
結局、敬二は寛一が夏休みにあの施設に行った件に関して物証も状況証拠も示せず
画竜点睛を欠いた追求しか出来ず、この日の寛一に対する追求は水入りとなった。


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