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原発事故調中間報告(抜粋)

2011-12-29 | MUSIC
「『想定外』という弁明では済まない」政府原発事故調中間報告
2011年12月27日(火)08:00

(産経新聞)
【水平垂直】初動と事前対策、不十分

 「『想定外』の津波という弁明では済まない」。東京電力福島第1原発事故の政府事故調査・検証委員会が26日まとめた中間報告は、東電の津波対策の不備や、事故対応のまずさを厳しく指摘した。「想定を超える津波」を理由に「対応に問題はなかった」などとした東電の社内事故調査(2日に中間報告とりまとめ)とは対照的な内容となった。(原子力取材班)

 ◆状況誤認とミス

 事故直後の初動対応について、政府事故調は大きく2つの点を指摘した。

 一つは1号機で原子炉を冷やす「非常用復水器(IC)」が機能不全に陥ったが、吉田昌郎(まさお)所長(当時)らが稼働していると誤認していた点だ。報告書によると、運転員はIC作動状況に疑問を持ったにもかかわらず、状況を吉田所長などに報告せず、代替注水もされなかった。政府事故調は「炉心冷却の遅れを生んだ大きな要因」と指摘した。

 もう一つは、3号機の冷却装置である「高圧注水系(HPCI)」を手動停止させた点だ。運転員は停止後、別の注水装置への切り替えを試みたが機能しなかった。政府事故調は代替手段が講じられる前にHPCIを停止したことを「誤った措置」と問題視する。東電事故調は、この2事象の事実関係を列挙するのみで問題視しなかった。

 ◆津波と電源喪失

 政府事故調は東電の津波対策について「不適切」と踏み込んだ。第1原発は最大約15メートルの津波に襲われて事故に至ったが、東電は平成20年に15・7メートルの津波を試算していたからだ。社内では防潮堤設置に数百億円と約4年がかかるとの検討までしていたが、津波対策は取られなかった。東電事故調は「試算は根拠のない仮定に基づくものに過ぎない」と正当性を主張するが、政府事故調は「津波対策を見直す契機はあった」と認定した。また、政府事故調は東電のシビアアクシデント(過酷事故)対策も全電源喪失への備えがなかったことなどを理由に「極めて不十分だった」と切り捨てた。

 九州大の工藤和彦特任教授(原子力工学)は「東電の調査は身内に甘く言い訳がましい。政府事故調の指摘を真摯(しんし)に受けとめ調査をやり直すべきだ」と指摘する。

 26日に記者会見した東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「見解や判断の相違があれば公表したい」と“反論”の構えを見せた。

 ≪保安院≫

 ■情報収集問題意識欠く

 事故調の報告書は、経済産業省原子力安全・保安院に対しても、事故の対応や未然防止について「問題点が認められる。国民の強い不信を招いた」と言及し、監督官庁としての“職責放棄”ぶりをつまびらかにした。

 事故調がまず問題視したのは情報収集の姿勢だ。保安院は震災直後から経産省の緊急時対応センター(ERC)で対応を始めた。だが、ERCに常駐する東電社員に本店に電話させて状況確認していたため、事態の把握が後手に回った。職員を東電本店に派遣することもしなかった。

 東電本店は第1原発とテレビ会議でやりとりしていたが、ERCはこうした手段の存在を知らず、同様の手段を導入したのは事故から2週間以上たった3月31日だった。

 現場の情報収集を担う保安検査官は事故直後に第1原発から退避。事故調はそのような保安院の行動を「積極的に情報収集の役割を果たす自覚と問題意識に欠けていた」と断じた。

 また、平成21年に東電から想定を超す津波試算の報告を受けたにもかかわらず、対策を指示しなかったことなどから、「安全確認に消極的な態度がみられる」と批判した。

 さらに、緊急時に拠点となるオフサイトセンターに放射線量を下げる空気清浄装置がなく、3月15日に国の現地対策本部を福島県庁に移転した例を挙げ「原子力災害を予想し、事前準備に取り組む姿勢に欠けている」と切り捨てた。

                   ◇

 ≪首相介入≫

 ■海水注入時混乱を助長

 事故調査・検証委員会の中間報告では、東京電力福島第1原発事故での原子炉への海水注入をめぐる生々しいやりとりが明らかになった。菅直人首相(当時)が事故対応への介入を続け、混乱を助長したことがまたも裏付けられた。

 中間報告によると、1号機の危機的状況が続く3月12日夕、菅氏は首相執務室で班目春樹原子力安全委員会委員長、武黒一郎東電フェローらと協議。午後7時すぎ、武黒氏が第1原発の吉田昌郎所長に電話で海水注入の準備状況を聞いた。

 吉田氏が「もう始めている」と答えると武黒氏は「今官邸で検討中だから待ってほしい」と要請。吉田氏は「自分の責任で続けるしかない」と考え、作業責任者にテレビ会議のマイクに入らないような小声で「これから海水注入中断を指示するが、絶対に止めるな」と話し、大声で注入中断を指示したという。

 12日朝の菅氏の原発視察の際も吉田氏は「応対に多くの幹部を割く余裕はない」と困惑。14日夜には自らの死も覚悟し、必要な要員以外は退避させようと判断、総務班にバスの手配を指示した。菅氏が15日朝、「撤退したら百パーセント潰れる」と東電本店に怒鳴りこんだのは、この指示を勘違いした公算が大きい。

 菅氏は官邸5階に閣僚を集める一方、地下の危機管理センターに各省庁局長級の緊急参集チームを設置。指揮系統が二重になった上情報集約もできず、放射性物質拡散予測システム「SPEEDI」の活用にも支障が出ていた。

 ■中間報告骨子

・官邸内の連携不足。政府の意思決定を行う5階と、各省庁幹部が集まる地下の危機管理センターとの意思疎通が不十分だった

・放射性物質の拡散予測システム「SPEEDI」が活用されなかった。早期に公表すれば、自治体や住民はより適切な避難経路を選ぶことができた

・1号機と3号機の原子炉冷却装置について、作動状況の誤認や代替注水手順の不手際があり、対応が遅れた

・東電の津波や過酷事故の対策は極めて不十分で「自主保安の限界」を示した

【用語解説】事故調査・検証委員会

 東京電力福島第1原発事故で、政府が5月に設置した第三者機関。研究者、法曹関係者、地元代表らで構成。事故の調査や検証を行う事故調は複数あり、それぞれ独自に作業を進めている。東電の社内事故調は今月2日に中間報告を発表したほか、国会の事故調も来年6月をメドに報告書をまとめる。

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