海には時として我々の想像を絶する出会いがある。
まずはこの写真を。
釣り人なら誰もが憧れるカジキ
和名「バショウカジキ」
釣り方は、ボートでルアー(小魚に似せた疑似餌)を引きながらのトローリングや、最近だと沖合いで群れるバショウをボートからルアーを投げて狙うトップウォーターが一般的で、どちらもオフショア(沖合い)で行われる。
カジキは突き出した口先が硬く尖っていて、その角のような口先で獲物を攻撃し、弱らせてから丸呑みにする海のハンターだ。
ヒットすると猛スピードでラインを引き出し、時に海面からジャンプして掛かった釣り針を外そうと必死に暴れ出す。
とても硬い口へ釣り針を貫通させてなければ、最初のジャンプで針が外れてしまうことも多い。
釣り上げることが難しいことからゲーム性が高く、カジキを釣る大きな大会もあるほどだ。
さて最初の写真、実は前回このブログを更新した磯から、その時に釣り上がったバショウカジキである。
11月20日朝
「磯からカジキが釣り上がった」
まるで夢のような噂はすぐに地元の釣りメンバーの間で快挙として知れ渡った。
自然豊かなこの島でも、磯からカジキが釣れるなんて滅多にあることじゃない。
たまにヒットはするも、そう簡単に釣り上げられない相手をどのようにして仕留めたのか。
振り返れば、それは幾つもの偶然が重なり達成できた大きな快挙だと感じている。
釣り人は、島の友人であり先輩でもあるO氏
休みがあれば島周辺の荒磯へ通い大物を狙う根っからの釣り好きだ。
天気は良好。
さぁどこのポイントへ入ろうか。。
ポイントに迷った時、釣り人は自分と相性の良い磯を選ぶことが多い。
“過去に◯◯で大漁した”
“この前、◯◯で大物を逃した”
理由は様々だが、付き合いの深いO氏のポイントは、主に下地島の通り池周辺だと勝手に思っている。
通り池は、過去に60kgを超すミーバイ(ヤイトハタ)が釣り上がったことでも有名な超1級の大物釣りポイントで、複雑でダイナミックな地形は、まさに巨大魚が潜むには絶好の隠れ家。
海底には大小様々な洞窟が点在し、ダイビングスポットとしても人気の高い通り池。
だがその時、O氏にとって相性の良い通り池を選ばなかったこと。
それがひとつめの偶然、ポイント選びだ。
O氏が通り池を外した理由は単純だった。
ポイント選びに迷いながら車を走らせている途中、知人である磯釣り師K氏に出会い互いの情報を交換したが、どこもあまり良くない様子。
ならばココで良いか。
と、出会った場所から1番近い磯へ向かった。
K氏は、大物から小物まで何でも狙う地元でも有名な釣り人。
彼に出会ったことが結果としてふたつめの偶然となった。
ポイントに到着すると早速エサとのるムロアジを狙う。
今日はこのムロアジを生きたまま流す泳がせ釣り。
オモリを付けて海底付近の獲物を狙ったり、そのままフリーにムロアジを泳がせることもあるが、今回はフリーで中層あたりも狙うイメージ。
水深は40m近くある。
まさかこんなので!???
と、驚かれるかもしれませんが、ここで使用したタックルを紹介しよう。
メインラインはPE8号
リーダーはナイロン14号
ハリス30号
(全部メーカー不明)
FGノット
トータルで150m程巻いてあるらしい。
ハリはgamakatsuタマンスペシャル24号
竿はDaiwa
タマンモンスター10号
リールはSHIMANO
ブルズアイXT9100
活きの良いムロアジの口元から上顎を貫通するように上へ釣り針を通し、10mほど先のドロップオフへ軽く投げ入れた。
大物がヒットした際、釣竿ごと海に引き込まれないよう、専用の竿受けを磯へ固定してからその瞬間を待つ。
投げ入れてすぐ、何物かに追われたムロアジは必死で逃げ惑い、ラインを伝って竿先まで海中の様子が伝わってきた。
活性は良いようだ。
たまに呼吸のために海面から顔を出すウミガメを見ながら海の様子を眺めていた。
最初のヒットはAM10時頃だった。
暴れていたムロアジの動きが止まった数秒後、いっきに竿先が左前方へ向かって大きく曲がった。
ファーストヒットで釣り場が盛り上がる!!
ジリジリと10mほどだったか、勢い良くリールからラインを引き出した獲物は外道であるダツだった。
針は背びれの中心付近を貫通していた。
恐らく逃げる途中に口から外れた針が今度は背中にかかったのだろう。
ダツはカジキ同様に尖った硬い口先を使って獲物に突っ込み、弱らせてから食べる狩りのプロだ。
たぶん尖った口先があることで、マグロなどのように獲物を1発で上手く丸呑みにできないのかもしれない。
実はこのダツが最初にヒットしたことが、磯釣りでカジキを釣り上げることに繋がった最大の偶然だと、あとになって感じている。
相手は硬い口を持つ魚だ。
外道をリリースして、次の餌を確保する。
撒き餌を投げ入れると、相変わらず海面を覆うような大漁のムロアジが我先にと餌に群がり、サビキを投入してすぐに数匹の生き餌が確保できた。
最初と同様に沖合い10mほど先へ軽く投げ入れると、またすぐにムロアジが暴れ出す。
10分ほど経過したか。。
ある一定の間隔をあけて軽く上下していた竿先の動きが少し大きくなった。
何か近くにいる。
すぐに固定した竿受けから釣竿を外し、喰わせに入る。
ファーストヒットと同じ当たりに、O氏の脳裏には“またダツかな!?”くらいの軽い気持ちでいたので、上手く食べきれない相手に、ラインを10mほど送り込んで食べる隙を与えたのだ。
ゆっくりと沖合いへ出されていくラインの動きが少しずつ早くなった。
合わせるように竿先を獲物へ向け、釣竿とラインが一直線になるほんの手前、ラインフリーにしてたリールをロックし、おもいっきりフッキングを入れた。
連続して3発!!
そう、ダツの口は硬くて針が貫通しにくい。
「はぁ。。またダツだ。。」
残念そうに回収しようとするとすぐ、大きく曲がっていた竿先がふわっと浮き上がった。
ラインブレイクか!!?
鋭いダツの歯でスパっと切られたのだろう。
まぁどうせ外道だし良いか。
そんな様子でリールを2~3回巻き取ると突然、沖合い20mほどの海面から想像を遥かに超える大物が天に向かって飛び上がった!!
「デーカ!! カジキカジキ カジキど~!!」
「おっ!!バショウだ!!バショウ!カジキカジキ!!」
磯の上は大騒ぎだ。
いっきに50mほど沖合いへ走ったカジキは、間髪入れずに2回ほどジャンプし、口にかかった釣り針を外そうと必死に抵抗する。
きつめにロックしたリールからはジリジリと容赦なくラインが出ていくのがわかる。
「これがカジキの引きかぁ。堪能しておこう。」
余裕の表情は“獲れない”前提だったのだろう。
過去に磯からカジキをヒットさせた話は何度か聞いたことあるが、釣り上げた話はあまり耳にしない。
やっぱりダメか。。
「あと何メートル残ってる?」
「もうヤバイ!!そろそろ止まってくれないとダメかも」
「無理やりテンションかけれない?」
「今やってみる!」
O氏は左手で竿を握り、逆回転するリールのスプールを右手で抑えて無理やり止めた。
切れるのか。。
カジキは走る方向を左に変えて、隣の磯へと走り出した。
ファーストランが止まった瞬間だった。
いけるかも!?
ゆっくりとラインの回収に入り、巻き取っては出されるの繰り返し。
隣にいたK氏が言った。
「巻ける時にいっぱい巻いておけ。絶対もう1回走るから」
あとで知った話だが、実はK氏、過去に磯からカジキを釣り上げた経験を持っていた。
でもその時はとても小さなカジキだったので、そこまで引かなかったとのこと。
隣の磯にいる釣り人も、海面へ何度も飛び上がるカジキをみて立ち上がるようにこっちの方を見ていた。
カジキは右へ左へと大きく弧を描くように走りまわり、巻き取っては出されるの繰り返し。
あと20mほどのところまで寄せたころ、K氏の言う通りまた沖合いへと走り出した。
30mほど走ったところで大きく1回ジャンプ
ヒットしてから15分ほど経っていただろうか、それがカジキの最後のジャンプだった。
隣ではO氏も完全にダウン寸前。
ふと足元を見ると、漁師に人気の滑りにくいサバ(ぞうり)に、暑かったせいか半袖のTシャツを着ていたが、こんな荒磯に来てライフベストを着用していない完全に島人スタイル。
「腰が痛い」だの「GTよりキツイ」だのと弱音を吐くO氏へ
「キツイのはわかるけど、早く巻いて~」と、他人事のように言ったのは、ヒットの瞬間から動画撮影しているスマホのバッテリーが切れる寸前まできてたから。
今、この瞬間、ヒットから今までを動画撮影し続けていることは、磯からカジキが釣れることを信じてくれない人へ実際に観てもらいたいと思っていたから。
釣り人の夢に繋がると思うから。
おまけにK氏の言う通り“巻ける時にいっぱい巻いとけ!”が重なり、随分と厳しいことを言っていたと少し反省している。
時間にして約20分。。
ようやくバショウカジキを足元まで寄せて来た。
しかしこの完全に海をなめている先輩O氏は、大物を取り上げる為のギャフ(海面から引き上げる道具)を持たずにココへ来てる、ホント冗談じゃないやつ。
「ギャフは2本でひとつは頭に!」
K氏の声だった。
O氏がカジキとの壮絶なバトルを繰り広げている最中、冷静に取り込むためのギャフを用意してくれていたのだ。
出来る男は凄い!!
一緒にいた磯仲間3人で手分けしてカジキを磯へ引き上げる。
ゆっくり頭の方から、ゆっくり、ゆっくり。
時間にして約22分
下地島の荒磯へバショウカジキの巨体が横たわった。
「いぇーーーいッ!!」
荒磯へ呑気にサバを履いてきたやつが、沖縄県記録級の大物を仕留めた歓喜の雄叫びだった。
カジキの口元を見ると、左側の上顎と下顎の付け根部分にガッツリとタマン針が貫通している。
これは最初のダツを想定したフッキングがあったから出来たことで、通常、そこまでのフッキングは普段あまりしないO氏を思うと、それも偶然だったように感じている。
例え偶然だとしても、磯からカジキを釣り上げることは、釣り人にとって夢のまた夢のような話であり、僕もまた偶然、数年ぶりに足を運んだポイントで感動の時間を共有できたことをとても嬉しく思っている。
改めてこの島の海の豊かさ、ポテンシャルの高さを感じ、海の恵みに感謝の1日となった。
余談だが、釣り上がったバショウカジキは、その場でメジャーを使って簡単に長さを測ったら、2m50cm(角の先から尾の先)近くあった。
(※あとで正確に図ると思い簡単に計測)
誰もが磯からの沖縄県記録(32kg)が更新されたんじゃないかと思っている中、O氏は重さも計らず早々に捌いて知り合いに配ったという。
そのお腹には1m近いダツが丸々1匹入っていたと、撮った動画を見に来た本人から聞いた。
似てるけど圧倒的に強いカジキ
記録申請をしなかったことについて、本人曰く、
「記録より記憶に残ったってことで」
なんて調子の良いことを言っていたが、完全に某プロ選手のパクリだと思いスルーしてやった。
暇なので、チョット海岸線のパトロール。。
そこには誰もが想像もしないような感動のドラマが待っていた。
伊良部島観光ガイドゆうむつ
下地島・通り池・大物ミーバイ
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和名「バショウカジキ」
釣り方は、ボートでルアー(小魚に似せた疑似餌)を引きながらのトローリングや、最近だと沖合いで群れるバショウをボートからルアーを投げて狙うトップウォーターが一般的で、どちらもオフショア(沖合い)で行われる。
カジキは突き出した口先が硬く尖っていて、その角のような口先で獲物を攻撃し、弱らせてから丸呑みにする海のハンターだ。
ヒットすると猛スピードでラインを引き出し、時に海面からジャンプして掛かった釣り針を外そうと必死に暴れ出す。
とても硬い口へ釣り針を貫通させてなければ、最初のジャンプで針が外れてしまうことも多い。
釣り上げることが難しいことからゲーム性が高く、カジキを釣る大きな大会もあるほどだ。
さて最初の写真、実は前回このブログを更新した磯から、その時に釣り上がったバショウカジキである。
11月20日朝
「磯からカジキが釣り上がった」
まるで夢のような噂はすぐに地元の釣りメンバーの間で快挙として知れ渡った。
自然豊かなこの島でも、磯からカジキが釣れるなんて滅多にあることじゃない。
たまにヒットはするも、そう簡単に釣り上げられない相手をどのようにして仕留めたのか。
振り返れば、それは幾つもの偶然が重なり達成できた大きな快挙だと感じている。
釣り人は、島の友人であり先輩でもあるO氏
休みがあれば島周辺の荒磯へ通い大物を狙う根っからの釣り好きだ。
天気は良好。
さぁどこのポイントへ入ろうか。。
ポイントに迷った時、釣り人は自分と相性の良い磯を選ぶことが多い。
“過去に◯◯で大漁した”
“この前、◯◯で大物を逃した”
理由は様々だが、付き合いの深いO氏のポイントは、主に下地島の通り池周辺だと勝手に思っている。
通り池は、過去に60kgを超すミーバイ(ヤイトハタ)が釣り上がったことでも有名な超1級の大物釣りポイントで、複雑でダイナミックな地形は、まさに巨大魚が潜むには絶好の隠れ家。
海底には大小様々な洞窟が点在し、ダイビングスポットとしても人気の高い通り池。
だがその時、O氏にとって相性の良い通り池を選ばなかったこと。
それがひとつめの偶然、ポイント選びだ。
O氏が通り池を外した理由は単純だった。
ポイント選びに迷いながら車を走らせている途中、知人である磯釣り師K氏に出会い互いの情報を交換したが、どこもあまり良くない様子。
ならばココで良いか。
と、出会った場所から1番近い磯へ向かった。
K氏は、大物から小物まで何でも狙う地元でも有名な釣り人。
彼に出会ったことが結果としてふたつめの偶然となった。
ポイントに到着すると早速エサとのるムロアジを狙う。
今日はこのムロアジを生きたまま流す泳がせ釣り。
オモリを付けて海底付近の獲物を狙ったり、そのままフリーにムロアジを泳がせることもあるが、今回はフリーで中層あたりも狙うイメージ。
水深は40m近くある。
まさかこんなので!???
と、驚かれるかもしれませんが、ここで使用したタックルを紹介しよう。
メインラインはPE8号
リーダーはナイロン14号
ハリス30号
(全部メーカー不明)
FGノット
トータルで150m程巻いてあるらしい。
ハリはgamakatsuタマンスペシャル24号
竿はDaiwa
タマンモンスター10号
リールはSHIMANO
ブルズアイXT9100
活きの良いムロアジの口元から上顎を貫通するように上へ釣り針を通し、10mほど先のドロップオフへ軽く投げ入れた。
大物がヒットした際、釣竿ごと海に引き込まれないよう、専用の竿受けを磯へ固定してからその瞬間を待つ。
投げ入れてすぐ、何物かに追われたムロアジは必死で逃げ惑い、ラインを伝って竿先まで海中の様子が伝わってきた。
活性は良いようだ。
たまに呼吸のために海面から顔を出すウミガメを見ながら海の様子を眺めていた。
最初のヒットはAM10時頃だった。
暴れていたムロアジの動きが止まった数秒後、いっきに竿先が左前方へ向かって大きく曲がった。
ファーストヒットで釣り場が盛り上がる!!
ジリジリと10mほどだったか、勢い良くリールからラインを引き出した獲物は外道であるダツだった。
針は背びれの中心付近を貫通していた。
恐らく逃げる途中に口から外れた針が今度は背中にかかったのだろう。
ダツはカジキ同様に尖った硬い口先を使って獲物に突っ込み、弱らせてから食べる狩りのプロだ。
たぶん尖った口先があることで、マグロなどのように獲物を1発で上手く丸呑みにできないのかもしれない。
実はこのダツが最初にヒットしたことが、磯釣りでカジキを釣り上げることに繋がった最大の偶然だと、あとになって感じている。
相手は硬い口を持つ魚だ。
外道をリリースして、次の餌を確保する。
撒き餌を投げ入れると、相変わらず海面を覆うような大漁のムロアジが我先にと餌に群がり、サビキを投入してすぐに数匹の生き餌が確保できた。
最初と同様に沖合い10mほど先へ軽く投げ入れると、またすぐにムロアジが暴れ出す。
10分ほど経過したか。。
ある一定の間隔をあけて軽く上下していた竿先の動きが少し大きくなった。
何か近くにいる。
すぐに固定した竿受けから釣竿を外し、喰わせに入る。
ファーストヒットと同じ当たりに、O氏の脳裏には“またダツかな!?”くらいの軽い気持ちでいたので、上手く食べきれない相手に、ラインを10mほど送り込んで食べる隙を与えたのだ。
ゆっくりと沖合いへ出されていくラインの動きが少しずつ早くなった。
合わせるように竿先を獲物へ向け、釣竿とラインが一直線になるほんの手前、ラインフリーにしてたリールをロックし、おもいっきりフッキングを入れた。
連続して3発!!
そう、ダツの口は硬くて針が貫通しにくい。
「はぁ。。またダツだ。。」
残念そうに回収しようとするとすぐ、大きく曲がっていた竿先がふわっと浮き上がった。
ラインブレイクか!!?
鋭いダツの歯でスパっと切られたのだろう。
まぁどうせ外道だし良いか。
そんな様子でリールを2~3回巻き取ると突然、沖合い20mほどの海面から想像を遥かに超える大物が天に向かって飛び上がった!!
「デーカ!! カジキカジキ カジキど~!!」
「おっ!!バショウだ!!バショウ!カジキカジキ!!」
磯の上は大騒ぎだ。
いっきに50mほど沖合いへ走ったカジキは、間髪入れずに2回ほどジャンプし、口にかかった釣り針を外そうと必死に抵抗する。
きつめにロックしたリールからはジリジリと容赦なくラインが出ていくのがわかる。
「これがカジキの引きかぁ。堪能しておこう。」
余裕の表情は“獲れない”前提だったのだろう。
過去に磯からカジキをヒットさせた話は何度か聞いたことあるが、釣り上げた話はあまり耳にしない。
やっぱりダメか。。
「あと何メートル残ってる?」
「もうヤバイ!!そろそろ止まってくれないとダメかも」
「無理やりテンションかけれない?」
「今やってみる!」
O氏は左手で竿を握り、逆回転するリールのスプールを右手で抑えて無理やり止めた。
切れるのか。。
カジキは走る方向を左に変えて、隣の磯へと走り出した。
ファーストランが止まった瞬間だった。
いけるかも!?
ゆっくりとラインの回収に入り、巻き取っては出されるの繰り返し。
隣にいたK氏が言った。
「巻ける時にいっぱい巻いておけ。絶対もう1回走るから」
あとで知った話だが、実はK氏、過去に磯からカジキを釣り上げた経験を持っていた。
でもその時はとても小さなカジキだったので、そこまで引かなかったとのこと。
隣の磯にいる釣り人も、海面へ何度も飛び上がるカジキをみて立ち上がるようにこっちの方を見ていた。
カジキは右へ左へと大きく弧を描くように走りまわり、巻き取っては出されるの繰り返し。
あと20mほどのところまで寄せたころ、K氏の言う通りまた沖合いへと走り出した。
30mほど走ったところで大きく1回ジャンプ
ヒットしてから15分ほど経っていただろうか、それがカジキの最後のジャンプだった。
隣ではO氏も完全にダウン寸前。
ふと足元を見ると、漁師に人気の滑りにくいサバ(ぞうり)に、暑かったせいか半袖のTシャツを着ていたが、こんな荒磯に来てライフベストを着用していない完全に島人スタイル。
「腰が痛い」だの「GTよりキツイ」だのと弱音を吐くO氏へ
「キツイのはわかるけど、早く巻いて~」と、他人事のように言ったのは、ヒットの瞬間から動画撮影しているスマホのバッテリーが切れる寸前まできてたから。
今、この瞬間、ヒットから今までを動画撮影し続けていることは、磯からカジキが釣れることを信じてくれない人へ実際に観てもらいたいと思っていたから。
釣り人の夢に繋がると思うから。
おまけにK氏の言う通り“巻ける時にいっぱい巻いとけ!”が重なり、随分と厳しいことを言っていたと少し反省している。
時間にして約20分。。
ようやくバショウカジキを足元まで寄せて来た。
しかしこの完全に海をなめている先輩O氏は、大物を取り上げる為のギャフ(海面から引き上げる道具)を持たずにココへ来てる、ホント冗談じゃないやつ。
「ギャフは2本でひとつは頭に!」
K氏の声だった。
O氏がカジキとの壮絶なバトルを繰り広げている最中、冷静に取り込むためのギャフを用意してくれていたのだ。
出来る男は凄い!!
一緒にいた磯仲間3人で手分けしてカジキを磯へ引き上げる。
ゆっくり頭の方から、ゆっくり、ゆっくり。
時間にして約22分
下地島の荒磯へバショウカジキの巨体が横たわった。
「いぇーーーいッ!!」
荒磯へ呑気にサバを履いてきたやつが、沖縄県記録級の大物を仕留めた歓喜の雄叫びだった。
カジキの口元を見ると、左側の上顎と下顎の付け根部分にガッツリとタマン針が貫通している。
これは最初のダツを想定したフッキングがあったから出来たことで、通常、そこまでのフッキングは普段あまりしないO氏を思うと、それも偶然だったように感じている。
例え偶然だとしても、磯からカジキを釣り上げることは、釣り人にとって夢のまた夢のような話であり、僕もまた偶然、数年ぶりに足を運んだポイントで感動の時間を共有できたことをとても嬉しく思っている。
改めてこの島の海の豊かさ、ポテンシャルの高さを感じ、海の恵みに感謝の1日となった。
余談だが、釣り上がったバショウカジキは、その場でメジャーを使って簡単に長さを測ったら、2m50cm(角の先から尾の先)近くあった。
(※あとで正確に図ると思い簡単に計測)
誰もが磯からの沖縄県記録(32kg)が更新されたんじゃないかと思っている中、O氏は重さも計らず早々に捌いて知り合いに配ったという。
そのお腹には1m近いダツが丸々1匹入っていたと、撮った動画を見に来た本人から聞いた。
似てるけど圧倒的に強いカジキ
記録申請をしなかったことについて、本人曰く、
「記録より記憶に残ったってことで」
なんて調子の良いことを言っていたが、完全に某プロ選手のパクリだと思いスルーしてやった。
暇なので、チョット海岸線のパトロール。。
そこには誰もが想像もしないような感動のドラマが待っていた。
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