On楽工房奮戦記byよっさん@アコギ

わたしの音楽活動、楽器、PA、読書についての勉強を綴ります。

残響を考える

2005年04月20日 | 音響の基礎知識
残響(リバーブ)について考えてみましょう。
ホールやリスニングルームでは、音楽鑑賞などの目的に併せて残響を考慮した室内音響設計が行われることがあります。PAでは電気的な残響をリバーブやディレイといった機械で増強・演出することが出来ます。これらの機械のパラメーターは、実際の室内音響の測定や事例から導かれ、研究されたものからシュミレーションの形でパラメータの変化を行えるものです。
それでは残響の仕組みを追っていきましょう。

残響というのは読んで字のごとく、発生した音のエネルギーが徐々に消えていくときに人間の耳にのこる、響きの事です。心地よい響きをもとめるのが残響設計、リバーブの役割です。 
まずホールやライブハウスで音が発生したときに、どのように音のエネルギーが消えていくのかを考えてみましょう。 わかりやすくするため、一発だけごく短時間の音が楽器からパンと出たときの残響を考えてみますと、観客席にいるお客さんには大きく分けて次のような音が届いていきます。
1.楽器から直接耳に届く音・・・・直接音
2.壁に反射してすこし減衰し、跳ね返ってから耳に届く音・・・初期反射音
3.床壁天井に乱反射してワーンとなって消えていく音・・・残響音
音の速さは秒速340m近辺にあるとして、楽器から30m離れていたら直接音は100ms位送れて聞こえます。 初期反射音はどこか壁に当たってから来るので少し遅れてきますが、たとえば壁からの反射ならば1.5倍程度の距離があるとして150ms遅れてきます。 ここで直接音と初期反射音の時間的な遅れ(ディレイ効果)は50msあるわけです。
次の音はあらゆる壁・床・天井からの反射音なので室内に音のエネルギーが満ちあふれた状態になり、徐々に壁に吸音されて消えていきますが、これも始まりは同じように初期反射からすこし遅れるはずです。このような3つの要素から室内音響が成り立っていることをまず理解してください。


さて、ここで大切なことは「人間の感覚」です。まず初期反射までの時間ですが、この「初期反射」というのは人間の感覚でいうと「直接音を補強し」「ホールの広がり感、立体感を演出する」効果が有ると言われています。一方でこのディレイ効果は、2つの音が完全に分離して聞こえるときは「エコー」として認識されてしまい、心地よい残響どころか非常に聞き取りにくい状態になってしまいます。一般に直接音から50ms以内の遅れ感で利用します。
この初期反射が、なぜ広がり感をもたらすかと言うことですが、これは人間の耳が左右ステレオになっているからです。これは直接音と、明確に分離しにくい初期反射音が右の耳と左の耳にほんのすこしずれて入ってくることによってもたらされます。 (両耳効果)

次に3つめの要素である残響ですが、これはまず定義から書きます。 残響時間の定義をかきましょう。

残響時間:室内に一定の強さの音を供給して定常状態になってから音源をとめ、室内の平均エネルギー密度がはじめの値から60dB減衰するのに要する時間。

となっています。難しい部分はさておいて、要するに室内にある音の大きさが60dB減衰する(つまり100万分の一:10のマイナス6乗になる)までの時間ということになります。前に書いたとおりdBは基本量に対する比の常用対数の10倍(デシですから)なので、「基本量」とは音が部屋に満ちあふれたときの音の大きさ、そして音を止めてから残響時間を経た後の室内の音の大きさは10のマイナス6乗まで減衰しているということになります。最初が音の大きさ120dBならば60dBにまで減衰する時間と言うことになります。

残響時間は人間の感覚にとってもっとも室内の響きの状態を如実にあらわす指標となります。長ければ響きが多い、少なければ響きが無い、といって良いでしょう。リスニングルームでは残響時間の長い部屋をライブ、少ない部屋をデッドという言い方をします。壁や天井が音を吸い取る(吸音する)度合いが大きければデッドに傾き、逆であれば(反射しやすい壁であれば)ライブに傾くため、壁がデッドである(よく吸音する)、ライブである(よく反射する)という言い方もされます。
それでは、残響時間はどのくらいが適当だといえるのか、その指標があるのか、なんですが、これは当然ながらその部屋の使用目的によって変わってきます。講演会などに使用される場合は明瞭度が優先されるため、デッドな部屋が好まれますし、クラシック音楽のコンサートホールでは長めにするのが普通です。また、ライブな部屋をデッドにするのは非常に困難なのですが、逆の場合には近年のデジタルプロセッサにより電気的に残響付加ができるため、映画館(5.1chサラウンドとかTHXとかいうやつです、僕もだいすきな世界なんですが)ではややデッドにする傾向にあります。

参考資料として最適残響時間の図表を示しました。 まず下の横軸を見てください。これを見ると分かるように、大きなホールでは長めになってます。またコンサートホールは長め、スタジオは短めになっています。サントリーホールなどは残響2秒などとよく宣伝されていますが、これはそれだけの室内空間があった場合の最適残響時間であって、小さなホールなどでは1秒前後が多いようです。
また残響時間といっても実際は低い音、高い音での残響時間の特性がかわっているのが普通で、低い音は比較的吸音されにくいので長く、高い音は吸音されやすいので短くなるのが一般的です。ただ極端に長かったり短かったりする周波数があるのは問題があるということは、誰でも想像がつくでしょう。

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