On楽工房奮戦記byよっさん@アコギ

わたしの音楽活動、楽器、PA、読書についての勉強を綴ります。

大会場でのPAの増設を考える

2006年11月29日 | 音響の基礎知識
1月にかきまつりがあると書きましたが、今回はこの野球場にいかに前回以上にアナウンスを行き渡らせるか、が問題になってます。前回はステージ部分だけのSRで音楽やダンスを行いましたが、なにぶん会場は広く、迷惑駐車などの本部からの広報の声が会場全体に行き渡りませんでした。そのためSRのボリュームを上げるような指示もありましたが高齢者の休憩者の多いステージ前にそのような大音量もまずいので無理矢理音量を上げることはやめました。

で、今回は前回の反省からPAの増設を考えています。
まだ機材等のことはなにも手配していないのですが、トランペットスピーカーというPA装置を使えないかなと思っています。このスピーカーは誰もが知ってるラッパ型のスピーカーなんですが、人間の声の拡声に非常に有効と言われています。私自身トランペットスピーカーに関する知識は全くありませんでしたので少し勉強することにします。
まず機材なんですが、1つの例としてTOAの30W級トランペットスピーカーを見てみます。



この機会はトランペット型をしているホーン部分とトランスで構成されています。定格入力が30Wですが、下記のような仕様になっています。

定格インピーダンス
330Ω(30W),670Ω(15W),1kΩ(10W),2kΩ(5W)
出力音圧レベル
112dB(1W,1m)
周波数特性
200~6,000Hz
音響パワーレベル
110dB(1W)
指向特性区分
N(0°以上15°未満 Q=20,15°以上30°未満 Q=4,30°以上60°未満 Q=0.5,60°以上90°以下 Q=0.3)

インピーダンスは我々が一般に使用するSR用スピーカーと違い、かなり高いことにまず注目です。当然ながらSR用アンプを使用するわけにはいきません。ハイインピと呼ばれる放送用アンプを使用します。
出力音圧レベルは非常に高いです。エレクトロボイスのSRスピーカーであれば98~100程度のものですが、それより10dB以上も大きく、同じ入力電力で10倍の音がエネルギーとして放散されることを意味しています。
周波数特性は200Hzからですから低音は殆どでません。その代わり人間の声に近い周波数帯域で大きな音が出せるという事になるのでしょう。高音部は6kHzまでですからこれも通常のアナウンスでは全く問題にならない帯域のようです。
次に指向性です。スピーカーの中心から15度以内の範囲ではQ=20となっていますね。このQはおそらく指向係数だと思います。指向係数というのは音源から発散される音響エネルギーがいかに狭い範囲でまとめて出されるかを表す指標です。
宇宙空間のように廻りになにもない空間では音源からの音は四方八方に拡散されます。この時の指向係数は1。音圧レベルに換算すると10logQで表せ、補正値0となります。無限に広がる平面上に置かれた音源では平面より下には音が行かないために上空のみに音が放散され、この時のQ=2です。補正値は3dBとなります。
つまり半球状空間では3dB大きくなるのです。さらに後ろに壁の有る場合(1/4球体を考える)は4で6dB,2方向に壁のある場合1/8球体でQ=8で9dB増加です。このトランペットスピーカーでは前面の狭い範囲ならばQ=20ですからプラス13dBとなり、高効率に加えて前面の狭い範囲に非常に集約された音の放射があることが分かります。

運動場に於いてどの程度の音圧が稼げるかを予測してみます。(もちろん最大に音を出しての話し)この会場の大きさは90mを半径とした扇形なのでSRでまかなえる部分を除き、本部近くにまで側面からの必要距離は50m程度でしょうか。
このトランペットスピーカー30Wから50m離れた位置での音圧を計算してみましょう。(この場合中心の先方としてですからQ=20の場合)
点音源の距離減衰式は下記のとおりです。
L=PWL-11-20log(d)+10logQ
 =112-11-34+13=80dB
両側面から2台で音を送れば83dB当たりになることがわかります。15度の範囲からはずれると7dB落ちますから(Q=4なので補正値=6dB)76dBにまで落ちることになります。

さてこの値がどうなのか?
PA設計における必要音圧レベルは、私の手元にある資料では東北大学の城戸健一先生の図式でピーク85~90dBとなっています(ただしホール音響での話しですが)。ということは若干不足かな~という気がしないでもない。実際2台の音声用トランペットSPとSR側の音があれば問題ないのではという気がしているのであるが、こればっかりは経験がないのでなんとも・・・・

ところでこのトランペットSPを使用するのは案内等のアナウンス用である。できればステージの音楽をすこし低いレベルでミックスしたいと思っている。SRにあるメインコンソールからAUX(余ってるAUX6)から放送用アンプに信号を送るか、サブミキサーを利用しメインミキサーのグループ1と2にMCアナウンス、3と4を音楽系にして一旦サブミキサーに送りバランスを作ってからとするか、使いやすい方法を検討してみたい。サブミキサーには本部からのアナウンス信号(ワイヤレス)が入れられればベストなんだけどね。なにせ機材が足りません。

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2 コメント

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トランペットSPに付いて (KURASHIKIのK)
2006-12-01 14:22:35
トランペットSPはアナウンス等には非常に有効です。
例えばターボの4番辺りと同じ場所に設置してMCの声を流した場合、遠くまで明瞭なのはTP(25Wクラス)の方です。
SX300辺りだと勝負に成りません! ご存知とは思いますがHiインピーSPはアンプの出力が120W(一般的です)なら20WのTPが6台まで接続出来ますね15Wなら8台30Wなら4台です30Wを2台のみ接続してもAMPの出力が60Wに成るだけで問題ありませんこの前、うちでは20W~30Wクラスを11台使用しましたが120Wと150W、2台AMPを使いました120WはMICやAUX入力付きのページングAMP(TOA)で予備出力から150Wに送りましたページングAMPならステージMIXの出力をAUXに入れMICは直接繋げばステージに関係なくアナウンス出来ますよ。(うちのHPのいきいきフェス参照)
では頑張ってください!
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ありがとうございます (よっさん)
2006-12-01 16:33:00
金辺さんアドバイス・コメントありがとうございます。
アナウンスで言うなら許容入力500Wクラスのスピーカー以上ってことですね(>Turbosound TMS-4)。う~ん1/10以下の出力で勝てるって高能率&高指向ってのはすごいことなんですね。
ハイインピのアンプは複数のスピーカーを繋いでいけるってのは知ってました。行政側のもってる機材(アンプも含め)の仕様がまだ確認できていませんが、できれば出力の許す限り複数つないでみるって方法を考えてみたいと思います。それにしても11台ってのはすごいですね。(^^;

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