On楽工房奮戦記byよっさん@アコギ

わたしの音楽活動、楽器、PA、読書についての勉強を綴ります。

ハウリングはなぜ起こるのか?

2005年04月14日 | 音響の基礎知識
ハウリング防止はPAの腕の見せ所。さてその仕組みと対策は?
ハウリングってのはライブの途中で「キーン」とか突然でかい音が入ってしまうことです。誰でも聞いたことはあるでしょうし、それにちかい「ヒーン」と遠くで鳴ることもあってマイクを動かすと止まったりします。 
ハウリングってのはフィードバックともいわれるのですが、単純に言えばスピーカーの音をマイクが拾ってそれが増幅されてまたスピーカーに届き、それをマイクが拾い、・・というループ現象のことです。このループ現象には、いろんなファクターが絡み合い、結構複雑な種種の原因があるので、それを考えてみます。

スピーカーの音をマイクが拾うって現象はごく当たり前のように思えるのですが、実はマイクに対して十分な音が入力されないと増幅まで至りません。 スピーカーから届く音が、通常のボーカル等の使用音量に比べて小さいからです。「ハウリングまでの余裕がある」と言えるわけです。がしかしスピーカーの音量を上げていくとその「余裕」が小さくなっていくわけで、超えてしまうとハウリングを起こします。これを超えないように調整することが大切になります。

ここには様々な要因が絡んできます。 
まずマイクの指向性。ボーカル用や楽器用マイクには指向性と呼ばれる特性があり、マイクの後ろからの音に対しては感度が小さくなっています。 ステージで歌うときには歌い手さんのマイクは後ろ向きでやや上向きですから、モニタースピーカーやメインスピーカーから回り込んでくる音とは反対を向いています。だからハウリングに対して余裕がある特性をもっているわけです。
ところが指向性というのはマイクロホンの内部構造を生かして作られており、 マイクのヘッド部分(丸い所)を握ると指向性が阻害されるようになってしまいます、指向性が薄れるようになるのです。 実は指向性は後ろからの音と前からの音の打ち消し合いを利用して作られているため、後ろを覆ってしまうと回り込んできた前からの音が増幅されてしまうってのが、その原理です。ですから指向性を持ったボーカルマイクの頭を握りしめないよう注意してください。

次に周囲の音響特性の問題があります。音は周波数(音の高さ)の低いところから高いところまでをまとめて感知してマイクで信号化されますが、ライブの場所や機器の配置により、全ての周波数で同じ音量をスピーカーで出力しても、ある特定の周波数の音だけが大きく聞こえたり逆に小さく聞こえたりすることが一般的です。これをその場所の「音響特性」といいます。この均一でない環境を作り出す原因は周囲の壁や物体の反射特性、吸音特性、残響特性なんですが、このなかで「大きくなってしまう」周波数というのは、ハウリングまでの余裕の少ない周波数であり、小さくなってしまう周波数は、ハウリングまで余裕のある周波数となります。従ってスピーカーの音量を上げていくと、まっ先にこのなかで最も余裕の無い周波数からハウリングが始まります。 さらに上げていくと次に余裕の無い周波数がハウリングを開始します。 もっともっと上げてしまうと全ての周波数でハウリングしちゃうのですが、この、「先にハウリングする周波数」がPAの現場で問題になるわけです。

この「同じ音量出しても大きくなってしまう周波数」というのはハウリングポイントといい、PA機器の中でグラフィックイコライザを使ってあらかじめ抑えてやることが出来ます。 つまり全周波数で同じ音量(均一な出力)を出したら、聞こえる音も同じ音量(周波数的に均一分布)になれば最もハウリングに対して安全ということになるのです。
以上の基本原則をふまえたハウリング対策は、周波数帯域的に均一なノイズをスピーカーから出力し、それをマイクで拾ってアナライザーにかけ、どの帯域でも均一になるようグラフィックイコライザーで補正すればよいと言うことになります。 現実的な方法としてはオクターブ帯域で均一なノイズ(=ピンクノイズ)を発生させ、オクターブ帯域イコライザで補正し全てのバンドの値を均一にするという手法になります。ここでバンド幅を狭くすればするだけ細かい調整=正確なハイリング対策であることは言うまでも無いことです。
PAのプロの人はこれらの機械をもたなくても耳の感覚で周波数を感知してイコライジングしています。すごいとしか言いようが無いですが、低い声や高い声をいろいろ出したりしているのは、スピーカーからでた声が変に大きくなったりハウリングしそうな音になったりしていないかを全周波数で見定める(聴き定める)ためです。ただ、やっぱりすごいなぁと思いますね。

On楽工房の持っているグラフィックイコライザーはハウリング検知機能というのを備えていますが、実は効果を確かめるまでに至っていません(使ってないねん!)。 信号が無い状態でAUXを少しずつ上げていって特定の周波数でハウり始めると、その周波数帯のLEDが光りはじめるので、フェーダーを下げるって感じで使うようです。まあ、期待してます。ただ、突発的なマイクの使い方によるハウリングに対しては無力です。

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2 コメント

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GWも終わりましたねぇ~。。 (おびわんくん)
2005-05-10 17:36:08
ちょっとドタバタしてたからカキコができなかったや。。



我々がよく言われる事柄がいくつかありますが、1番多いのは「そんな職業だったら、家でもさぞ高級なオーディオで聞いているんでしょうねぇ!」

答えは「否!」・・・家に帰ってまで音を聞きたくねぇ~・・てな感じです。

映画を見るときはそれなりのシステムで楽しみますが、あえて音楽だけを聞く気はしませぬ。。

車の中では時間がもったいないのでCDやMDの内容確認はしますがね・・



もうひとつは、このトビにもあるように「ハウリング対策はPAマンのウデの見せ所ですね!」

・・実はこのお答えも「否」であります。。

中にはそれを生き甲斐にしているようなオペレーターも居りますが、かなり特殊な存在で、そんな人に限ってハウリングしないだけの薄っぺらいサウンドになっているように感じます。



音の「発生」「収音」「音源との距離と角度」「信号処理」「出力」「反響」「反射」「指向性」「到達距離」・・・幾つか重複する項目はありますが、それぞれをらだ敷く認識し、空気を響かす為のアナログ→電気信号→再び空気振動を理解していけば、周波数の知識以外でも音をコントロールする要因はたくさんあります。

要するにEQだけの周波数コントロールだけでは

音は作れません。



ハウリング対策は、音の発生から消えるまでのプロセスを、複数ある音源の処理をする過程でのひとつである・・ だと思います。
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ハウリング対策 (よっさん@アコギ)
2005-05-11 07:45:50
おびわんさん、貴重なコメントありがとうございます。

何度か実践をやってきてハウリング対策はとても難しく、大変苦労しているのが現状です。ご指摘の通り「音を作る」過程のひとつで有らねばならないのは確かなんですが、わたしなんぞの浅い経験ではとてもそこまではたどり着けず、「ハウリング対策」が操作のメインになることもしばしば。「腕の見せ所」ではなく「泣き所」であるのが現状なんですね。

コメントを受けて前向きに取り組む課題が具体化できました。ありがとうございました。
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