店員

2006-01-16 01:37:08 | その他
買い物というのは何かと気を遣うものである。


僕は深夜に小腹が減ると近所のコンビニまで自転車を飛ばすことにしている。この時間帯のコンビニは客の数も寡少なので貸し切りに近い状態で買い物を堪能できる絶好のチャンスである。なのでお目当ての商品をカゴに放り込んだあとも、新商品のお菓子をチェックしたり雑誌を立ち読みしたりしてゆっくり店内をぐるりと一周する。そして最後の最後になってからようやくレジへと向かう。

しかしこのレジが実に難関なのだ。

御存知の方も多いと思うが、元来僕は気が小さい。気の小さい人間にとって深夜のコンビニ店員ほど脅威となるものはないのである。あのお疲れ気味の表情とやる気のない声が威圧感を増長させるのであろう。なんでも昨年度の総務省の統計では深夜のコンビニ店員の75%が無愛想かつ不機嫌であるという結果が出たそうだ。

まず店員をレジまで導くのが最初の課題である。僕の放つ買い物終了テレパシーをそれとなく感じ取り、僕が向かうのとほぼ同時にレジに飛んできてくれる店員も稀にいるのだが、大抵の店員はテレパシーを受信するアンテナが故障しているので何分待ってもレジに来てはくれない。そんな場合は意を決してレジに向かうしかない。

わざと店員に聞こえるようにカゴを台の上に「カタッ」と乗せる。しかしこの音は決して大きすぎてはならない。店員の怒りに触れぬよう細心の注意を払う必要があるのだ。なんでも昨年度の総務省の統計では深夜のコンビニ店員の80%がカゴの音を聞くと不快感を覚えたそうである。

買い物の中身も非常に重要である。間違っても買い物内容がガム1コだけなんていう失態を犯すわけにはいかない。それなりにカゴの中身がないとわざわざ来てもらった店員に申し訳ないではないか。かといってカゴの中身は多すぎてもならない。決して店員にムダな手間を掛けさせてはならないのだ。したがって、量はそこそこあるが手間のかからない商品がベストである。なんでも昨年度の総務省の統計では深夜のコンビニ店員の85%が必要以上の買い物をされると憤慨して客にアツアツの肉まんを投げつけたそうである。

支払いの時も緊張は続く。お釣りはできるだけ減らし、店員の手の運動量を最小限に抑えなければならない。間違っても1万円札なんて差し出してはならない。なんでも昨年度の総務省の統計では深夜のコンビニ店員の90%以上が5千円以上の高額紙幣を差し出されるとレジにあるおでんの鍋をひっくり返したそうである。

お釣りを受け取ったあとは店員に深々と頭を下げてから店を出る。これで買い物は無事終了の運びとなる。

ただし、こんな危険な買い物が終わった時、空腹の事はまるで忘れている。