RADIX-根源を求めて

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FOXP2の脆弱性と生存意義としての障害再考察1

2011-11-29 05:06:23 | 障害論
この記事はFOXP2遺伝子の欠損と言語障害の関連性を契機に存在意義としての障害を考える記事

として加筆再編集致したものです。



【11月12日 AFP】ヒトが高い言語能力を持ち、よく似た遺伝子を持つチンパンジーが言葉を話さない理由は、たった1つの遺伝子にある2つの小さな違いで説明できるかもしれないとの研究論文が、11日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。言語障害を伴う病気の治療に役立つ可能性があるという。

■言語障害を引き起こす遺伝子「FOXP2」

 研究者らは約10年前、ある家系の珍しい先天性言語障害のある全ての人において、FOXP2という遺伝子に同じ欠陥があることを発見した。その後、発達性不全失語症という別の言語障害の患者のグループでも、FOXP2が変異しているケースがあることが分かった。

 一方、チンパンジーのFOXP2遺伝子を研究していた生物学者は、この遺伝子によってコーディングされたタンパク質を構成する数百のアミノ酸のうち、2つがヒトとチンパンジーで異なっていることを突き止めた。

 ここから、人間とチンパンジーの言語能力の違いはFOXP2の違いによるのではないかとの説が生まれ、論争が続いていた。

■発話の仕組みに影響、言語障害治療に期待

 この説を検証するため、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California in Los Angeles)のダニエル・ゲシュウィンド(Daniel Geshwind)教授はヒトとチンパンジーのFOXP2について、たんぱく質合成を比較。また、FOXP2が「マスター遺伝子」としてどのように他の遺伝子を活性化させたり、働きを抑えているかを調べた。

 実験の結果、FOXP2はヒトとチンパンジーで異なる影響を遺伝子に与えていることが明らかになった。ヒトのFOXP2は、高度な認知機能と言語をつかさどる大脳皮質の領域に変化を誘発するとともに、認知機能と運動協調性に関与する大脳基底核の線条体にも影響を与えていた。

 ゲシュウィンド教授は、ヒトのFOXP2は発話の神経運動だけでなく、身体的な構造にも関係している可能性があると見ている。言い換えれば、チンパンジーには「発話のための適切な器官」がないため、仮にヒトの脳をチンパンジーに移植しても話せるようにはならないはずだという。

 研究チームは、FOXP2が影響を与える遺伝子を調べ、自閉症や統合失調症など言語障害を伴う病気に特徴的な遺伝子の変異を発見できれば、治療法の開発につながる可能性があるとして期待を寄せている。(c)AFP/Marlowe Hood 


この記事に関連した、2008/9/6(土) のこのブログの過去記事を再掲載してみます。

言語障害を持つことが能力の欠如・病気・障害なのか、それともその様な遺伝子配列を持って

この世に生を受けた存在様式なのかを巡って真摯に考察していただきたいのです。

WikipediaのFOXP2の説明の中の記述を紹介します。http://ja.wikipedia.org/wiki/FOXP2

ヒトの発達性言語協調障害のいくつかのケースは、FOXP2 遺伝子の変異と関係している。このような障害の例として、認知的な障害はほとんど、または全くないものの、言語に必要とされる協調的な運動を適切に行うことができない患者が存在する。このような患者の動詞産出課題と音声反復課題における脳活動を fMRI を用いて計測した結果、(言語課題に関与する脳中枢であるとされる)ブローカ野と被殻の活動の低下が見られた。この結果から、FOXP2 は『言語遺伝子』と呼ばれるようになる。FOXP2 遺伝子に変異を持った人は、言語と関係ない症状も示す(このことは FOXP2 が身体の他の部位の発達にも関わっていることを考えれば驚くに値しない)。また、FOXP2 と自閉症の関連についても、肯定的な結果と否定的な結果の両方が報告されている。

言語障害と FOXP2 遺伝子の変異の関連性が、単なる運動制御の障害による結果ではないことの証拠として、以下のようなものが挙げられる。
言語理解にも障害が現れること。
障害を持った患者の脳機能イメージングの結果から、異常は言語に関する皮質領域と基底核に起きており、問題は単なる運動系を超えたところにあることが示されていること。
機能 [編集]

2 匹のノックアウトマウス

FOXP2 は脳と肺の適切な発達に必要とされている。FOXP2 遺伝子のコピーを 1 つしかもたないノックアウトマウスは、幼児期の発声が有意に低下する。 一方、FOXP2 遺伝子のコピーを持たないノックアウトマウスは小型で、プルキンエ層などの脳領域に異常を示し、生後 21 日で肺の適切な発達が起きないことにより死んでしまう[7]。

キンカチョウ (Taeniopygia guttata) 。キンカチョウの歌の学習とFOXP2 との関連がよく研究されている。

フィリピンオオコウモリ (Acerodon jubatus)。このコウモリは反響定位を行うことが出来る

ソングバードにおける FOXP2 の別の研究から、FOXP2 が神経可塑性に関与する遺伝子を調節していることが示唆されている。歌の学習の際にFOXP2 が脳領域で上方調節されることが、若いキンカチョウの歌の学習に決定的な役割を持つ。この鳥の大脳基底核のエリア Xにおける FOXP2 の遺伝子ノックダウンは歌の模倣の不完全さや不正確さを引き起こす[8]。 同様に、大人のカナリアにおける高い FOXP2 の発現レベルは、歌の変化と相関がみられる。 加えて、大人のキンカチョウにおける FOXP2 の発現レベルはオスがメスに向けて歌う際に比べて、他の用途で歌う際に低下していた。歌を学習できる鳥と出来ない鳥の違いは FOXP2 蛋白のアミノ酸配列の差というよりは、FOXP2 の遺伝子発現量の差とみられている[3]。

FOXP2 はコウモリの反響定位との関連も示唆されている。

進化

FOXP2 蛋白のアミノ酸配列は、進化的に非常に強く保存されている。FOXP2 蛋白に似たものはソングバード、魚、アメリカワニのような爬虫類でも見つかっている [12][13]。ポリグルタミン鎖の他には、ヒトの FOXP2 はチンパンジーの FOXP2 とは 2 アミノ酸、マウスの FOXP2 とは 3 アミノ酸、キンカチョウの FOXP2 とは 7 アミノ酸しか違わない [14][15][16]ネアンデルタール人の骨から抽出された DNA を調べた結果、ネアンデルタール人は現生人類と同じバージョン(対立遺伝子)の FOXP2 を持つことが分かっている。

ヒトとチンパンジーの FOXP2 の 2 アミノ酸の違いが、ヒトの言語の進化を生んだと考える研究者もいる。しかし、ほかの音声学習をする動物と FOXP2 の同様な突然変異との間に明確な関連は見つけられないとする研究者もいる。また、ヒトにおける 2 箇所のエクソンの突然変異の機能はまだ分かっていない。発達に関する研究やソングバードの研究から、ヒトと非ヒト科霊長類との違いは、この 2 箇所の突然変異ではなく、(FOXP2 が発現した時に作用する)調節塩基配列の違いによるという可能性も存在する。

歴史

KE 家の系図

この遺伝子に関する研究は、元々KE 家(K 家とも)に関する研究から始まった。この家族の特定の人物は、3 世代に渡る遺伝性の言語障害にかかっていた。この家族の詳細の調査を行った結果、この障害は優性遺伝することが分かった。

この家族の言語障害にかかっている人物とそうでない人物のゲノム解析が行われた。最初の解析では、変異が起きた領域は第7染色体にあることしか分からず、解析チームはこの遺伝子を便宜的に "SPCH1" と呼んだ。この領域の遺伝子配列解析は細菌人工染色体クローンによって行われた。この時点では、同様な障害を持つ別の家族の人物も確認されている。その人物のゲノムを解析した結果、この人物には、第 7 染色体に変異があることが分かっていた。

更なる調査によって、この染色体上のある遺伝子に点突然変異があることが分かった。ゲノム配列解析の結果、現在ではこの遺伝子は FOXP2 遺伝子と呼ばれている。


2008/9/6(土)の当ブログの記事。生存意義としての障害1より


神経生化学者の石浦章一さんの著作を読んでいて、このブログで私が一貫して述べている事を補強し

てくれる説明記述が有り意を強くした。

最近は遺伝子の解明が進んで(それでもまだまだ端緒の段階らしいのです)あるタイプの家族性の

自閉症の人の染色体にバグが起こっていて、自閉症を発症している場合には2つの染色体が途中で

切れてそれぞれに置き換っていて、それがディスレクシア(難読症、識字障害)の原因遺伝子

FOXP2に脆弱性があり、そこで染色体に切れが生じていたそうです。

自閉症の言語的な障害、コミュニケーション障害と関連がある事が裏付けられます。

石浦章一さんの記述で更に意を強くしたのは、このようなバグの発生(つまり自閉症と言う表現の

デザイン)が進化過程で淘汰されないで、サバイバル・オブ・ザ・ラッキエストで 残っている意味

を考えたら…

自閉症を始め障害は現在迄の人類がサバイバルしてこれた鍵を与える可能性もあるかも知れない

と思います。

また、自閉症の解明が人間の社会行動、の謎解きに繋がると記述していて全く同感で意を強く

しました。

さらに、言語のメカニズム、知のメカニズムの解明の鍵は自閉症などの障害の解明が為され

て初めて深まるとの私の予てからの持論を補強してくれると思います。



私はこの様に知的障害とか精神的病は人間の存在に取ってマイナス要因ではなくて人間の危機回避、生き

残りの知恵の現れだと考える人間です。

知的障害、精神障害とはサバイバル・オブ・ザ・ラッキエストに他ならない標だと考えています。


2010年11月13日


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