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コトバのニワ

出会った音やコトバのことなど

アーメン・ ブレイク

2010-09-06 | ソ・テジ

 ソテジシンフォニーで、<ナンアラヨ ADAGIO>から<ナンアラヨ>に移行する部分、遠くから始まりの予感が近づいてくるようなドラムビートが鳴っている。
(0'10"~0'45" この間、院長先生もオケもこの音を叩いていないことに注意。)
 
2008 Seo Taiji  Symphony  난 알아요


 この誰でも耳に覚えのあるリズムパターン、それでいてオーケストラと一緒に鳴ると妙に胸騒ぎ(?)がするドラムループ。これって何?と思ってたら、最近いくつかの曲でたて続けに出会った。調べてみたら、「アーメン・ブレイク」と呼ばれる、ブレイクビーツの超定番のフレーズだった。

 
(下段:バスドラム、中段:スネアドラム、上段:ハイハット
 出典は英Wikipedia のAmen Breakの。4小節の前半部分)
 
 「アーメン・ブレイク」という名前の由来は、ウィンストンズ The Winstons というアメリカのファンク/ソウルバンドが1969年に録音した<Amen Brother>という曲に出てくるからで、次の1'26"~1'33"がその有名なブレイク(間奏部のドラムソロ)の部分。

The Winstons - Amen Brother

 しばらく忘れられていたこの曲を、80年代後半、サンプリングのネタを求めて古いレコードを漁っていたヒップホップのDJたちが再発見する。
 そして安価なサンプラーの出現とともに、この6秒足らずのブレイクは、ヒップホップをはじめジャングル、ドラムンべースなど、ブレイクビーツミュージック(=ブレイクの部分をサンプリングして再構成する音楽)の元ネタとして盛んに使われ、世界で最もサンプリングされた素材のひとつになった。

 アーメン・ブレイクのリズムがストレートに使われている例としては、たとえばこれ。
アメリカのヒップホップグループN.W.A.のギャングスタ・ラップの曲(1988):

N.W.A. - Straight Outta Compton (Uncut) [HD]


 一方、サンプラーでスライスし、並べ替え、新しいリズムパターンにして使った曲のほうは、丸ごと聴いても原型の痕跡がよくわからないので、次の音源を聴くのがおススメです。
 2004年にアメリカのNate Harrison というアーティスト/ライター(HP)が作ったアーメン・ブレイクの歴史の解説(原題は"Can I Get An Amen?")で、サンプリングされた例が8曲(+後半部にテレビCM)、聴くべき部分だけ引用されているので、その変容がよくわかります。
 英語だし18分と長いので、手っ取り早く理解するには 3'35"~9'35"の8曲の引用部分を。
 後半部分は、サンプリングと著作権問題と音楽創造の関係についての考察。

Video explains the world's most important 6-sec drum loop


 メモ:上の映像で引用されている曲は以下の通り。♪でYouTubeへ。
 (仏語字幕版ここより。年号は原文ママ。実際の発表年はもっと早いケースも。)
 1.3rd Bass - Wordz Of Wizdom (1989)
 2.N.W.A. - Straight Outta Compton (1989)既出
 3.MANTRONIX- King of the beats (1990)
 4.Shy FX - Original Nuttah (1994)
 5.L.Double & Younghead - New Style (1996)
 6.Squarepusher -VicAcid (1997)
 7.Hrvatski(Keith Whitman): Routine Exercise (1998)
 8.Perry Ferrel - Whole Lotta Love (レッドツェッペリンの曲のカバー)

 アーメン・ブレイクをサンプリングした曲のリストはここにもあるけど、とにかく何百曲とあるらしい。
 で、ソ・テジの<ナンアラヨ>に戻ると(あー、ここにたどり着くまで長かった)、アーメンのリズムは原曲には出てこなくて、YouTubeで見る限り、1992年の年末にゴールデンディスク賞を受賞した時の、<Rock'n Roll Dance>とミックスしたアレンジで、曲全体に導入されている。(ただしちょっと変形された形で)

서태지 와 아니들 (seotaiji&boys) 난 알아요 I Know 1992

 その後、2002年のリミックスバージョンで、イントロの頭の4小節にアーメン・ブレイクが刻み込まれる(0'20"~0'29")。韓国で初めてラップを大ヒットさせた曲としての、ヒップホップの歴史への目配りかな。

Seo Taiji - Nan Arayo(난 알아요) 2002 ETPfest


 そしてソテジシンフォニーでは、最初に見たように、このドラムビートが16小節にわたり、わざわざ録音で流される(院長先生は位置について準備中)。ということは何か特別な音源なんだろうか。
 2004年の Zeroツアーの時のをサンプリングしてたり・・・と、また妄想。


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2 コメント

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またまた (sai)
2010-09-06 19:24:13
Aijoisteさん、こんばんは~。

またまた、ソテジ研究が!!このドラムビートをアーメン・ブレイクというなんて、勉強になりました。「世界でもっとも重要な6秒間のドラムフープ」とyoutubeのタイトルになってますね!
それにしても、院長先生がドラムをたたいてないとか、Human DreamのMVでもビックリしたけど、Aijoisteさん、映像を本当によく見てますねえ。
このシンフォニーのイントロ、何かが近づいてくる感じ(期待と不安を同時に抱かせる)で、好きです。
Aijoisteさんの妄想&検証、これからも楽しみにしてますからね!
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>Sai 様 (Aijoiste)
2010-09-06 21:43:11
こんばんは~
いつも読んでくださって、ありがとうございます。読んでくださる方がいらっしゃるからこそ、書く気にもなるわけで、そうでなかったらこんな七面倒くさいこと、やりません(笑)。

わたしもこのアーメンブレイクのイントロの部分は大好きで、この胸がざわざわ躍る感じは何なんだろうってずっと思ってたんですよ。なので、いろいろたどって行った末に、WikipediaのAmen Breakの項であのドラム譜を見つけた時には、ヤッター!と思いました。
テジはやっぱりおもしろい。
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