誰かがYouTube にアップした、ソ・テジの8集の<レプリカ>の背景に使われている絵。去年初めて見た時、妙にピッタリだな、と思った。
でも<レプリカ>は、生硬な歌詞とか、ドラマチックなメロディーライン(<死の沼>系とでも言おうか…)がちょっと苦手なので、何となく心にひっかかったけど、放っておいた。
先日、ふとしたきっかけで、この絵の主を知った。
ドイツロマン主義の画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774~1840)。
絵のタイトルは、「雲上の旅人」(ただし本人は、数点の例外を除き、作品に題名もサインも残さなかった)。
フリードリヒは、当時「高級な壁紙」とまで見下されていた風景画に新境地を開き、一時期はもてはやされたものの、晩年は過去の画家という刻印を押され、死後50年あまりもの間、忘れ去られていたという。再評価されたのは20世紀になってから。
彼が描いたのは、廃墟や墓地や、内省的な精神性の漂う北の風景ばかり。
しばしば点景のように描かれる小さな人物は、いつも後ろ向き。(参考HP)
13歳の時、スケート遊びをしていて氷の裂け目に落ち、自分を助けようとした1つ下の弟が溺死するという悲劇的な幼児体験が、彼の絵の原点にあるらしい。
気になったので、『フリードリヒへの旅』(小笠原洋子、角川学芸出版 2009)を読んだ。ドレスデン時代のシューベルト(1797~1828:たった31歳で死んだのだ)と親交を結んだり、 自然科学者でもあったゲーテ(1749~1832)から雲の挿絵の注文を受けて、断ったりしている。
「彼の作品の最大にして唯一ともいえる特徴は、風景画でありながら、目に快適で心の癒される美景ではなく、個人的な思いを社会的なテーマに交差させながら、世界観や宇宙観へと拡大する風景画だという点だろう。」(同書)
「肉体の目を閉じて、心の目で見よ」と言ったこの画家を、10年前に出会った1枚の絵をきっかけに、著者は突き動かされるような衝動に駆られて、どこまでも追いかけていく。画家のゆかりの街はもとより、彼の描いた風景の中に身を置こうと、北ドイツの最果ての島や岸辺を、時には息ができないほどの嵐に打たれながら、訪ねて回るのである。
何のため?と聞かれたら、たぶん、ソ・テジゆかりの地の「聖地巡礼」とそう変わるところはないんだろうけれど、この人の画家フリードリヒとの交信の仕方は、尋常ではない。
死者、あるいは他者からのメッセージを受け取る、ということは、時には大変なところまで連れていかれるんだな。
YouTubeで<レプリカ>の曲にフリードリヒの絵を貼り付けた人は、テジのことはもちろん、フリードリヒのこともよく知っているのだろう。
下の動画の中の4枚の絵は、どれもフリードリヒのもので、彼の風景画に漂う荘厳な悲壮感や冬の情景は、<レプリカ>の歌詞になぜかよく合うから不思議だ。
画家のことを考えながらこれを見ると、前奏の不協和音からして何やら胸騒ぎなしには聴けなくなった。
SeoTaiji- Replica
これを機会に<レプリカ>の理解を放棄していた態度を改め、ワケのわからない歌詞を日本語にしてみた。
だけどこんな歌詞、サビの部分とはいえ、よくメビウスツアーで観客に歌わせたよな。
Replica レプリカ
머나먼 저 우주 위로 종을 울리면
이 높은 산 위에서 서 있는 나를 누가 발견해줄까
나를 태워주렴 네 음성으로 저 찬란하던 햇살로
遥かなるあの宇宙へと 鐘を鳴らすなら
この高い山上に立つ僕を 誰か見つけてくれるだろうか
僕を燃やしてくれ お前の音声で あの輝いていた陽の光で
나의 서툴던 이 소망은 모래로 쌓여 흩어지고
내 이름조차도 무리들 속에서 모두 지워져 가고
그 기억 속의 불편한 부분들의 섹터를 다그쳐 마비를 시키고
僕の不器用なこの願いは 砂となって積もり散らばり
僕の名前さえも 人の群れの中で すべて消えてゆき
あの、記憶の中の不都合な部分たちのセクターを 責め立て麻痺させて
*구차한 관념들로 비롯된 그 알 수 없던 물음에
날 가득 채운 피의 흐름이 멈추는걸
그 온도의 차이 내 안의 추운 겨울
貧弱な観念を集めて始まった あの答えのなかった問いに
僕をいっぱいに満たした血の流れが止まる
その温度差 僕の中の寒い冬
내 머릴 비추던 저 햇살에 나의 그림자는 움츠리고
우린 서로를 그저 닮으려고 무리한 애를 쓰는 것일 뿐
그 기억 속의 불편한 부분들의 섹터를 다그쳐 마비를 시키고
僕の頭を照らしていた あの陽の光に 僕の影は縮み
僕らは互いに似た姿になろうと 無理な努力をしているだけ
あの、記憶の中の不都合な部分たちのセクターを 責め立て麻痺させて
*繰り返し
지탄 받는 자아에 붉게 물든 핏빛 햇살과
이런 내 아픔 위로 쏟아 내리던 현란한 너의 능숙한 더러움
非難される自我に赤く染まった 血の色の陽の光と
こんな僕の痛みの上に降り注いでいた 絢爛たるお前の巧妙な汚なさ
나를 태워주렴 네 음성으로 저 찬란하던 햇살로
僕を燃やしてくれ お前の音声で あの輝いていた陽の光で
*繰り返し