冬桃ブログ

冬枯れ

 それなりあわただしく楽しかった横浜を後に、
11月初めのS村へ。
 
 この時期にしては暖かい(横浜は暑かった!)のだが
青空を背景に欅の葉が小さな鳥の群れのように
舞うのを眺めていると、なんとはなし淋しい心持になる。
 私のささやかな花畑も冬枯れが始まっている。
 いつも元気よく花を咲かせ、蝶や蜜蜂を集めていた
ブットレアも、花殻ばかりになってしまった。
 

 大家さんファミリーの章子さんが、
チューリップの球根をたくさん持ってきて
くださったので、元気を取り戻し、
「色違いの球根を鉢やプランターに寄せ植えすると
土に植えたのとはまた趣が違って良いものよ」
 という提案もいただいたので、さっそく
土や底石などを買いに行き、ついでに見つけた
球根植え用の便利な道具も手に入れ、
 せっせと植え付け。

 が、来年の春が楽しみ……と考えたとたん
逆にマイナーな方向へ気持ちが向いてしまった。
 自分の年齢を考えると、このように遠いところへ
いつまで通えることか。
 いや、年齢のことを置いといたとしても
いつ何が起きるかわからない。
 気候だって社会だって人の体や心だって
変わらないものはなにひとつないのだ。
 もうこれきりになる可能性だって充分ある。

 たまらなく厭世的な気分になり、散歩に出かけた。
 柿は実り、紅葉は華やかに村を彩っている。
 だけどこの孤独感を、いったいどう扱ったらよいのか…。

 と、その時、そこにいたのだ。
 私が会いたくてたまらなかった相手が!


 前にもこのブログで書いたが、半野良状態で生まれた
赤ちゃん猫。
 七匹もいたが、中でも一番小さく、きょうだい猫にも
弾かれて母猫のおっぱいにもありつけず、数歩下がって
哀しそうに鳴いていたあの子。
 あれからちっとも大きくなっていない。
 しかもひとりぼっち……。

 思わず駆け寄って……は、いけないから、
相手が怖がらないよう、ススキの穂を猫じゃらしにして
身をかがめたまま少しずつ近寄った。
 2メートルくらいの距離をおいて、
私と猫は見つめあう。
 できることはそれだけ。
 私はこの子を救うための何の手段も持っていない。
 
 5分くらいそうしていたのだが、ごめんね、と呟き、
その場を離れることしかできなかった。
 無力感を噛みしめながら。

 こういう日もあるのだ。

コメント一覧

yokohamaneko
Unknownさん

 コメントをありがとうございます。
 お地蔵さんは秋の風景に合いますよね。
 今日は雨。猫はどうしているかと思いを馳せております。
Unknown
 かわいい赤ちゃん猫。それと仏が並んでいるのもいいね。自然の中でうらやましい。そうか、普段は横浜か。お元気でいらっしゃってください。
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