よくないことはわかっている。大きな副作用としては認知症。
ただでさえそういう年齢なのに、薬のせいで加速する。
それを実感しているのに止めないのは、すでに依存状態だから。
もとは睡眠障害による片頭痛だった。
クリニックでいろいろ頭痛薬を出していただいたが
どれも効かないばかりか副作用がひどかった。
苦しんだ末の解決方法が睡眠薬だったのだ。
眠れるというのはほんとうにありがたいことだ。
明日の頭痛を心配せずに生きられる。
こうして、気が付いたら毎晩服むようになっていた。
つい先日、クリニックへ行ったら朗報があった。
「いま出してるのより副作用の少ないのが認可されたから
そっちに変えてみる?」
大喜びでそれを出してもらった。
そして就寝前に服んだ。

凄まじい悪夢に放り込まれた。
私はベッドに寝ている。だけど体が動かない。
いわゆる金縛り状態。
呼吸ができない。
ベッドで横になっているのに、海で溺れ、
その下の泥の中へと沈んでいくような苦しさ、恐怖。

誰かが寝室に入ってきた。
影のようなその人物に、私はすがろうとした。
けれども相手は私を一目見るやいなや、
気味が悪くなったのか、部屋から出ていこうとする。
動けない、息ができない私は、必死で呼び止める。
待って! 行かないでよ!
だけど無情にも、人影は行ってしまった。
すると今度はベッドが激しく揺れ始めた。
ガタガタガタッという大きな音とともに。
その時、ようやく目覚めた。
けれども悪夢から覚めてほっとした、という状態ではない。
起き上がったものの呼吸は依然として苦しい。
汗でパジャマはびっしょり。
夢だとは思えないほど、体の状態は悪夢の中と同じ。
ベッドの揺れと音も生々しすぎた。
荒い息のままテレビをつける。
地震があったに違いないと思ったのだ。
夜中の2時過ぎ。画面にはテロップも出ず、
なにやら平和なショッピング番組が流れている。
汗の多さを見て、熱中症を恐れた。
枕元に置いてある水を急いで飲み、
さらによたよたとキッチンへ行き、水道の水を
がぶ飲みした。
ベッドに戻ったが、また悪夢に戻るのが怖い。
テレビを付けっぱなしにして目を開けていた。
それでもうとうとしたらしく、今度は
怖いというより、いやな夢を連続して見た。
明け方、その夢からも覚めると、もう眠る勇気はなかった。
頭も体も重い。その日は出かける用事があったのだが
キャンセルのメールを送った。
悪夢の原因はわかっている。
前にも経験している。
睡眠薬を変えたからだ。
どういう理屈になっているのか、私にはわからない。
けれども長年、服用している間に、私の脳はすでに
その薬によって「仕様」を変えられてしまったのだ。
そこへ、別の睡眠薬が入ってきた。
この時、私の意志とは関わりなく、脳内で
激しい葛藤が起きたのだ。
麻薬中毒患者の禁断症状というのも、これと
似ているのではないだろうか。
薬をどうしても変えたければ、この身の毛もよだつ
悪夢だか幻想だかと何日も闘う必要があるのだろう。
体力も意志力も自信のない私は、次の夜、
元の薬に戻した。そしてようやく安眠を得た。
私の脳も体も、ひょっとして意志も
薬に支配されている。
信じたくないことだが、事実なのである。
最近加わった桃グッズ。小さな桃太郎。
あんたも大きくなったら、いろんな鬼と
闘わなきゃいけないんだねえ。気の毒に……。

桑の実が熟れてます。
