冬桃ブログ

また太陽の周りを一回転。

 眠りが浅いので、夢は毎日見る。
 しかもオムニバス形式。
 一晩で複数の、違う夢を見る。

 だけど、よほど繰り返し見る夢のほかは
あっさりと脳裏から消えてしまう。
 ああ、いまのはいい夢だったのに
お願い、記憶しときたいの! とすがりついても
すとんと幕を下ろされてしまう。
 
 でもこの朝は違った。
 最後のワンシーンだけ、鮮明に残っている。

 夢に現れたのは永登元次郎さんだ。
 「ヨコハマメリー」というドキュメンタリー映画で
メリーさんとともに主役を張ったシャンソン歌手。
 映画が大ヒットするのを見ずに亡くなってしまった。

 その夢では、どこかの店で
私を含めた三人が食事をしていた。
 たぶん、友人たちだろう。
 そこへ元次郎さんがやってきた。

「元次郎さん、長いこと、どこへ行ってたのよ、
みんな、心配してたんだから!」

 思わずそう言うと、元次郎さんは満面の笑みで答えた。、
「ちょっとね、広島へ行ってたのよぉ」
 
 そこで目が覚めたから、ほんとうにワンシーンだけ。
 なんとも楽しそうな元次郎さんの声と表情が
いまも脳裏に残っている。

 今年の8月6日は、そんなふうにして始まった。
 広島の原爆忌。
 毎年、黙祷から一日が始まる。
 
 夢に出てきた元次郎さんも「広島」という言葉を言っていた。
 でもあれは、原爆記念日とは関係ないと思う。
 戦争経験者だから反戦の思いは非常に強かったが
それよりなにより、広島は元次郎さんの故郷だ。
 十代の頃、彼はお母さんに反抗し、歌手になるため
単身、東京に出てきた。
 その後、元次郎さんが身をたてるのを待たずに、
お母さんはなくなった。
 
 「それがいつまでも悔やまれてねえ。
 ようやく親孝行できるようになり、
あの頃の母のことも理解できるようになったのに
もう母はいないなんて……」

 何度もその話を聞いた。
 だから、よるべない身のメリーさんを
放っておくことができなかったのだと。

 あの世にも広島があり、元次郎さんはそこで
お母さんに会ったのだろう。
 いい時間を過ごしたらしく、ほんとうにいい笑顔だった。

 で、この日は私の誕生日でもある。
 なのに、起き抜けから片頭痛。
 時間がたつにつれだんだんひどくなる。
 誕生日らしい予定など何もないとはいえ、
これはないでしょと、ひとりでぶうたれる。
 夜、マッサージ師さんに来てもらい、
頭、首、肩を中心に思いっきり揉んでもらった。
 薬も効かない片頭痛は、マッサージ、
寝る、という療法しかない。

 太陽の周りを、一年かけて一周したから
疲れがどっと出たのだろうか。

 さてまた、あらたな一周旅行のスタート。
 今度はどんな旅になるのやら……。

 芸者に扮した元次郎さんが
長屋のおかみさん役の私に
鬘をかぶせてくれているところ。
(野毛大道芝居の楽屋にて)

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