冬桃ブログ

ジャイアンツ

 ……と言っても、野球の話ではない。
 1956年公開のハリウッド映画。



 公開当時、私は子供だったから当然観ていない。
 故郷の映画館は洋画なんかめったに来なかったように思うし。
 大人になってからは、あまりに有名な映画ゆえに
観たような気になってしまっていた。
 けど、先日、テレビ放映があったので念のため撮っておいた。
 ようやくそれを観たのだが、やはり未見だった。
 DVDを観ながら、トイレだ、メールだ、なにか飲もう、食べようと
まったく腰の落ち着かない私が、3時間以上という長尺のこの映画を
ほとんど立たずに観入った。

 テキサスの大牧場主ベネディクト(ロック・ハドソン)、
東部の名門から彼のもとへ嫁いできたリズリー(エリザベス・テーラー)、
ベネディクトの使用人で、後に石油成金になるジェット(ジェームス・ディーン)
を中心に展開する一代記。
 三人とも若い頃から老人になるまでを演じる。
 
 少々、頭は堅いが男らしく、内心に温かいものを持ったベネディクト。
 お嬢様育ちにもかかわらず、閉鎖的で荒くれたテキサスという土地に
敢然として立ち向かい、優雅に溶け込んでいくリズリー。
 コンプレックスに満ち、美しい人妻リズリーへの思いを抱えたまま、
やがて石油成金にのし上がっていくジェット。
 長尺でも飽きさせないストーリー展開はもちろんのこと、
主役3人の演技が素晴らしい!
(後に「イージー・ライダー」で有名になるデニス・ホッパーも
真面目な役ででてる!)
 エリザベス・テーラーなんか、この時、まだ23歳だったとのこと。
 23歳って、いまの日本じゃ、女優というより可愛いアイドルの
段階でしょ。こんな大人の女を演じられる人がいるかしらん。

 そしてジェームス・ディーン。
 哀感を漂わせた青年時代もセクシーだが、石油成金になってからの
中年、老年時代の演技は、もう眼が離せない。
 体まで、その心を表して卑小に縮んだように見えるから凄い。
 彼はこの作品で、ロック・ハドソンとともに、アカデミー主演男優賞に
ノミネートされたが「王様と私」のユル・ブリンナーにさらわれた。
 そしてこのあと、自動車事故で他界した。
 享年24歳。

 この作品には、階級や人種の差別、貧富の差などが出てくる。
 差別は時代によって、それがあたりまえだったりするから、
差別している側に、自覚も反省もない場合がある。
 ちょうどいま、戦後の混血児のことを取材しているが、
昭和20年代、30年代には、混血の子を日本人と同じ
小学校へ入れるなと、地域ぐるみ、教育委員会ぐるみで
言い立て、それが通ってしまった例さえあるのだ。
 自分達がどんなひどいことをし、罪もない子供達の心に
どれほどの傷を負わせたか、それに関わった大人達の何人が
自覚していただろう。

 人の憎しみや怒りは、人種や宗教、貧富の差などから
少しずつ芽生え、肥大していく。
 そしてテロや戦争に繋がっていく。
 名画を観たあと、パリで起きたテロのニュースに接し、
そんなことを思わずにはいられなかった。

 「ジャイアンツ」、お勧めです。
 ジェームス・ディーン、あらためて名優だと思う。


 
 

コメント一覧

冬桃
 いその爺さん
 長い映画ですもんねえ、ポップコーンくらいじ
ゃ、おなかが持ちません。お握りは正解でしたね。
 同じ原作者(女性作家)の「シマロン」という作
品があり、これも映画になっています。ご覧になっ
たかも知れませんが西部劇です。
 「シマロン♪ シマロン♪」という軽快な主題歌
と共に、主人公のシマロンという男が颯爽と登場し
かっこよく振る舞うのですが、なんのことはない、
「ええかっこしい」の子供っぽい男。
 奥さんはその尻ぬぐいして、どんどん自立してい
く……という物語なのですが、「男より女の方が
強いんだ!」という原作者の考えが、「シマロン」
にも「ジャイアンツ」にも貫かれていますね。
 こっちもおもしろかったですよ。未見ならお勧めです。
いその爺
風と共に去りぬと共に大好きな映画でした。
リバイバル上映の時にオニギリを持ち込み何回も観ました。(笑

ラストでロック・ハドソンを殴った店主が差別的プレートを投げてよこすシーンが印象的でしたね。
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