冬桃ブログ

勾玉を夢見て翡翠海岸へー大波かぶり旅

 足首の剥離骨折から約3週間目、病院へ。
「先生、レントゲンを撮ってください。もう治ってるかと…」
「怪我してからじゃなく、治療を初めてから3週間目に
経過を見ると言ったんですよ。まだあと4日後でしょうが」
「それが、明日から旅行へ行くことになりまして……」
「旅行!? あのね、普通、6週間経たないと治らないんだからね。
ここで歩き回るのは無謀でしょう!」

 と、怒られながらも、強引に二泊三日の旅へ。
 友人のまちづくりプロデューサー福井さんが、新潟と富山にある
海岸へ翡翠の原石を拾いに行くと聞き、同行させてくださいと
切にお願いしたのだ。
 骨折するなんて思いもよらなかったし、もうチケットだって
購入済みだし、なにより昔から憧れていたのだ。
 古代の美しい勾玉になった糸魚川の翡翠。
 その翡翠が拾えるかもしれないという〝翡翠海岸〟に。
 このチャンスを逃したら、もう二度と可能性はないだろう。

 出発日はあいにくの雨。しかも朝のラッシュ時。
 病院で買ったプラスチック入りのサポーターを
左足にがっちり巻き、スニーカーをしっかり履き込み、
杖代わりのウォーキング用ポールを一本持って、
ラッシュの電車と駅の人混みをなんとかクリア。

 東京駅で福井さんとおちあい、上越新幹線で新潟へ。
 新潟駅で、福井さんの友人で漫画家の保苅さんが迎えてくださった。


 保苅さんの車で、まずは弥彦神社へ。
 古くから神の山としてあがめられてきた弥彦山の麓に
神社は鎮座している。
 祀られているのは天香山命(あめのかごやまのみこと)。
 創建年代はわからないほど古いようだが、現在の社も、
背後の山とあいまって、気分の良い静謐感が漂っている。
 福井さんは、「この神社はなんだか〝寺〟の要素を
感じる」と、おっしゃっていたが、神社仏閣にさほど
詳しくない私にはわからない。

 降り続けていた雨は、私達がお参りをする間だけ、
ぴたりと止んでくれていた。
 保苅さんが、「歓迎されてるんですよ、神社に」
と、嬉しいことを行ってくださる。


 保苅さんと。


 お揃いの「巨大醤油入れペットボトル」を下げて、福井さんと。


 夜は保苅さん推薦のお寿司屋さんへ。
 やっぱり魚がおいしいのよね!


 翌日は在来線や新幹線を乗り継いで糸魚川へ移る予定だったが
ありがたいことに保苅さんが再び車を出してくださった。
 まずはフォッサマグナ・ミュージアム向かう。
 途中、お昼を親知らず子知らず、と名づけられている海浜の食堂で。

 大きな亀の像が。


 なぜか、子供(天使?)が亀の目から身を乗り出している。


 初めて食べた紅ずわい(水蟹)。豪華な定食が2000円!
 

 蟹天丼だって、このボリュームで1500円!


 この浜でも石を少し拾い、食堂のおばさんに鑑定してもらう。
 すべてアウト(翡翠にあらず)。
 フォッサマグナミュージアムへ行き、翡翠の原石をいろいろ観るが
よけいわからなくなった。

 さて、早くも最終日。
 前夜、宿泊した糸魚川のホテルに荷物を預け、
午前9時の在来線で約30分。
 越中宮崎で降車。ここはもう富山県だ。
 
 浜は駅からすぐ。トイレの場所もチェックして、いざ!
 この浜もしかし、波が高い。
 丸い石ばかりごろごろしている。貝殻なんかひとつもない。
 ただでさえ、こんなところを歩いたら足をひねりそう。
 ポールを持ってきて良かった。


 ほとんど人はいない。親子連れがいたが、いつのまにか帰った様子。
 福井さんと私は思い思いの場所で、石を探す。
 福井さんは長靴姿で熊手を持って。
 私は小さいスコップと石を入れる袋、それにポール。

 ほどなく福井さんは、自慢の長靴も役にたたないほどの波を
膝から下にかぶってしまい、携帯も濡れてしばらく使い物に
ならなくなってしまったようだ。
 まあ、そんなことが……と、しばし同情。
 もうすぐ、それどころではない羽目に自分が陥るとも知らず……。


 私達の他に、もうひとり人がいた。
 30代くらいの男性で、長髪を後ろでたばね、胴長を着込んでいる。
 かなり本格的だ。
 

 おまけに高い波の目前でカメラを構えたりしている。
 危ない! と何度も叫びそうになったが、波音が凄くて
声なんか聞こえそうにない。


 近くに来たから挨拶して少し話した。
 愛知県から翡翠探しに来たそうだ。もう何度か来てるとのこと。
 「今日は午前三時から探して、まだ、たしかなのはこれだけ」
 と、見せてくれたのは、白い石にところどころ色が浮き出た
まぎれもない翡翠。
 私が目を見張っていると、彼はいきなりどこかへ駆けて行った。
 戻ってきたと思ったら、小指大の白い石を私の手に載せ、
「これ、翡翠の混じった石だと思うから、あげます」

 ありがたくいただいて、波もここまでは来ないと思われる位置に
腰を下ろし、スコップとポールでそのあたりの石を掻き分ける。

 と、「危ない」という福井さんの声がすぐ近くで!
 顔を上げると、凄い波が迫ってきた。


 逃げるどころか立ち上がる間もない。
 坐ったまま、胸から下は大波の中。

 いやもう、茫然自失。
 海にさらわれなかっただけでもましだ。
 「津波映像が脳裏をよぎった」と、福井さんは言ったが、まさにその通り。
 気をつけていたのに、いきなりこれまでより高い波が来て
そのスピードたるや凄まじいのだ。

 この日は曇り空で肌寒かったというのに着替えもない。
 着替えを買う店もありそうにない。
 下着までびっしょり。靴の中もサポーターごとびしょびしょ。

 波にさらわれて消えたスコップ。


 だけど茫然自失だったのは一瞬。
 この浜へ来て、まだ1時間足らず。ここにいられるのも
あと1時間くらい。退散してなるものか……という欲望が
我が身の現実に打ち勝った。
 びしょ濡れのまま、1時間ばかり翡翠探しを続けたのである。
 虚弱が売り物の私だが、ほんとうにどうしようもない状況になると
捨て身の根性が出るらしい。

 お昼になったので浜から上がり、駅近くの店で昼食。
 そのまま在来線に乗って糸魚川へ戻り、タクシーで
フォッサマグナ・ミュージアムへ。
 ここで10個まで鑑定して貰える。
 いつの間にか体も乾いた(と、自分に思い込ませた)。
 浜であった長髪の青年と、またもやばったり。
 もうひとつ、翡翠が混じってるという石をくれた。
 私が拾った石は、どれも翡翠ではなかった。
 簡単に見つかるものではないようだ。
 福井さんの結果は……本人のみぞ知る。

 ふたたび糸魚川へ戻り、ホテルに預けた荷物を取り、
新幹線で東京へ。
 着替えもせず、潮まみれのまま、東京から東海道線、
地下鉄と乗り継いで帰宅。
 それでも、ほんとうに素晴らしい体験だった。
 
 青年から貰ったふたつの翡翠混じり石。


 翡翠じゃないけど、気に入って持ち帰った石も一緒に。


 ミュージアムで小さな勾玉も買ったし。


 新潟駅で売っていた「もも太郎」という飴。
 桃グッズコレクターとしては買わずにいられなかったが
なぜ新潟で「もも太郎」? (ひらがなにしたところがミソ?)


 長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

 
 


 

 

 




 
 

 



 

コメント一覧

冬桃
kotomokoさん
いらっしゃいませ。
富山の方でしょうか?
海も魚も色とりどりの石も
忘れられません。
またぜひ、今度は数日間、海岸のそばで
泊まり込んで、毎日、浜へ出かけたいです。
お勧めの場所がありましたら教えてくださいね。
翡翠が拾えなくても充分楽しいです。
猫がお好きですか?
うちにも野良出身で、一緒に住んで11年も
経つのに、まったくなついてくれない黒猫がいます。
kotomoko
初めまして
初めて、訪問いたします。
冬桃宮経由で、ここにたどりつきました。
大波かぶって、そのご、おみ足は大丈夫ですか?
ヒスイ海岸だけでなく、また、富山に足を運んでください、お待ちしています。
このブログの右肩にある、かわいい猫ちゃん。去年の夏迷い込んだ子猫に柄行がそっくりなんです。今は、すっかり、家の子になってます。それもうれしくて、一言書かせていただきました。
冬桃
チャンスを逃したら
酔華さん
 この歳になるとねえ、このチャンスを逃したら
もう二度と巡ってこない、という危機感があるのですよ。
 ただでさえ私、地図が読めない、時刻表も読めな
い、体力無しという、旅難民ですから、誰かにおす
がりできる時しかないのです、旅に行けるのは。
 今年、そんなチャンスがもう一回くらいあればいいのですが……。
(せっかくジパング倶楽部に入ってるのに)
酔華
いや~~
http://blog.goo.ne.jp/chuka-champ
大変な目に遭われましたね。
それにしてもはく離骨折の身体でよく行ったもんだと感心します。
もう足は大丈夫なんですか。
冬桃
ぜひぜひ!
Mei F.さん
 弥彦神社は良かったですよぉ。
 福井さんに言わせると、すごく謎めいてるとか。
 翡翠海岸はもう、何度でも行きたいです。
 海水浴客もいるので夏は混むかもしれませんが
ぜひぜひご一緒に!
Mei F.
いいなあ
私も行きたかったです~!
特に弥彦神社は、大いに興味あり。

いよいよ、この8月から<老後>生活に入ることになりそう。そしたら、時間だけはたっぷりある人になりまする。
冬桃
海も石も食べものも……。
おでさん
 ありがとうございます。なんとも美しい海、
バリエーション豊かな石、そしてお魚とお米が
おいしいのなんのって!
 叶うことなら、またすぐにでも行きたいです。
おで
http://odesamaryu.exblog.jp/
素敵な旅だったんですねー!御御足の具合もだんだん良くなっていらっしゃって、ほんとうに良かった!
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