現代の製薬企業は、偽薬反応の力と普遍性を大いに利用している。
薬で、大きな成功を収める最善の方法は、本当は薬が必要ではない人たちを治療することである。
なぜなら、偽薬に最も顕著な反応を示すのは、自力で自然に回復する人たちだからである。
製薬企業のマーケティングが実に巧妙であった点は、本当は病気ではない患者を治療するよう医師に促す、と同時に、正常な人々に自分は病気だと思い込ませたことである。
つまり、製薬企業は、健康だが不安を感じている人々にまで、市場を拡げることによって、購買層を拡大するのみならず、最も満足度の高い購買者を確保出来るのである。
偽薬に反応した人たちは、例え、その薬にまったく効果が無くても、長期にわたって忠実に服用し続ける場合が多い。
そのような人たちは、薬が、回復に何の役割も果たしていなくても、知りようがなく、副作用に悩まされることも少ないからである。
このような狡猾な組み合わせが、製薬企業とその株主にとって理想的な顧客基盤を作り出しているのである。
実際に、複数の調査で、ほとんどの医師が、
「何か形あるものを与えて、患者に(早く、納得して)帰ってもらうために」
当たり障りのない薬を偽薬として用いるときがあると認めている。
ヴォルテールが、かつて、
「医業は、患者を慰めることにあり、その間に自然が病気をなおしてくれる」
と述べたが、今でも、妙にしっくりとくる言葉である。
既に偽薬は、隠れた形で、製薬企業のマーケティングの知られざる大きな成功例になってしまっているようである。
内科もそうであるが、特に精神科における投薬の多くは、確認済みの偽薬効果に基づいている。
シャーマンの時代や中世の錬金術と現代が違う点は、ふたつだけである。
ひとつは、ほぼ決まって高価な偽薬のマーケティングが、莫大な資金に支えられて世界規模でことば巧みに行われ、すさまじい効果を上げていることである。
もうひとつは、偽薬と大して効果の変わらない高価な薬を処方してもらうためには、DSMに基づく診断を受ける必要があることである。
これは、診断のインフレを大きく助長している。
そして、皮肉なことに、製薬会社にとってはありがたいことに、無用の薬でも高価なほど効果が出やすいのである。
偽薬の治癒力だけでなく、収益力も物語る、マーケティングの成功談がある。
今や、アメリカ人の11%が抗うつ薬を服用しているが、その4分の3近くには、もう、うつ病の症状が出ていない。
このなかには、服用を止めたら、すぐに症状がぶり返す人もいる。
そういう人にとっては、うつ病の慢性化や再発を予防するための薬が必要である。
しかし、忠実な顧客の多くは、自覚のないまま偽薬に反応して自力で回復したのに、それを知ることなく、薬を止めるという選択肢を避けている人たちである。
アメリカで抗うつ薬の売り上げは、年間120億ドルに達するが、そのかなりの部分が、薬の過剰な使用を促進する製薬企業への報酬になってしまっているのである。
多くの患者にとって、それは大がかりな誇大宣伝をされた非常に高価な偽薬に過ぎず、まやかしの診断に基づいて、処方されているだけなのである。
また、効果は無いのに等しいにもかかわらず、思いがけずして、空前のベストセラーになった薬、バスパーの奇妙な成功談もある。
バスパーが、はじめて売りに出されたとき、不安障害に効果が、あったとしても、わずかしかないということが、大きな不利に思われていた。
しかし、バスパーには、副作用もほとんど無かったので、製薬企業にとって、不利を埋め合わせてあまりあったのである。
高価で服用しやすい完璧な偽薬は、まさしく巨大な利益を生む処方箋になった。
もし、偽薬反応の力を消せるか、または、少なくとも教育によって、患者の行動に対する偽薬の影響力を弱めることが出来ると仮定したら、どうなるだろうか。
偽薬が直接もたらす結果には、良い面も悪い面もある。
多くの薬で、実際の効果が激減するが、不必要な診断や治療も激減するかもしれない。
無論、この、仮定が、現実のものになることはあり得ない。
なぜなら、偽薬に見られる呪術的思考は、人間の本質の不可欠かつ有用な部分をなしている。
とはいえ、現代において、日常生活の不安や苦悩は、「化学的不均衡」がもたらしているのにすぎないのだから、薬で治療できるという、製薬企業の主張に対して、私たちがもっと疑いの目を向けるようになることがあれば、それは好ましいことであるはずである。
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毎日、暑いですね^_^;
体調管理に気をつけたいですね( ^_^)
8月も、また、よろしくお願いいたします(*^^*)
今日も、頑張りすぎず、頑張りたいですね。
では、また、次回。