コーランには
精神障がい者に対して
「衣食を与え、懇切にことばやさしく話しかけなさい」
と在る。
8世紀頃から15世紀頃にかけて、アラブ人たちは、
学問としての精神医学と、
独立した専門職としての精神科医を生み出し、
ヨーロッパでは、19世紀まで見られなかった水準にまで、診断と治療の理論を洗練させた。
なぜそのようなことが可能だったのか?
それは、コーランが、精神病に対して進んだ見方を持っており、
ユダヤ-キリスト教や、ギリシャ-ローマの伝統に在った悪魔学とはかけ離れていたし、
怒れる霊も、嫉妬深い神々も存在しなかったからだ。
確かにコーランには、重度の精神障がい者に、財産関連の決断をさせてはならないという、ごく実用的な忠告も在るが、
敬意と思いやりを持って精神障がい者を扱うように求めている。
これが宗教とはまったく関係のない、深い洞察を伴う臨床的アプローチをもたらした。
705年、精神障がい者を専門とする最初の病院がバグダッドに開かれ、
800年にはカイロがそれに続いた。
やがて他の大都市も多くそれらに続き、
イスラム教の病院は、しばしば、
ユダヤ教徒とキリスト教徒の医師を雇い、
大きな外来患者診療所と薬局を備えていた。
はじめは宗教的なものであれ、その後に構築されたものたちには、宗教を越えた構造が在った。
特に、精神医学の進歩には目を見張るものがあり、
約1000年後のヨーロッパの歩みをそっくりと先取りしていた。
アラブ世界の精神科医病院は、科学的発見の優れたゆりかごとなっていたのだ。
国際的に混沌としている今こそ、多様な地域における社会の歴史を、精神科医療の歴史の視点から、数回に分けて、描いてみたいと思う。
ここまで、読んでくださり、ありがとうございます。
数日ぶりに日記に復帰しました。
徐々に、本調子になってゆくと思いますので、どうぞ、また、よろしくお願いします。
では、また、次回。