入居者さんは色んな方がいて、どの方のお顔もいまだに鮮明に思い出せる。
それくらい濃い2日間だった。(厳密には3日間行ったわけだけど)
その中でも特に印象深かったのが、Yさん。
かなり認知症の進んだ方で、言葉のやり取りは一切出来ない。
立ったり座ったりを介助してあげれば何とか手を添えて歩くことは出来るけど、
他はほとんど全介助に近い状態だった。
でもトイレはオムツではなく、ポータブルを使っていた。
この方の食事介助をやらせてもらったのね。
いきなり食事介助~~!?ってビビったけど、
口にお箸やスプーンが当たると、反射的にお口を開けてくれるので、
そんなにたいへんではなかった。
最初に、「この人は、咀嚼も嚥下も問題無いんだけど、
食べ方を忘れてしまったの。だから食べさせてあげてね」ってヘルパーさんに言われ・・・
「食べ方を忘れてしまった」っていう表現が何だかすごくショックだったんだよね。
とてもキレイな方でね、まだ78歳くらいだったと思ったな。
若い頃はさぞ美人だっただろうと思わせるような風貌で、
聞けば歯も全部自前だって。とっても珍しいことだそうだ。
品があって、優しい顔立ちで、目がとても綺麗で、
たまに私の顔を見て笑うのよ。
その笑い方も、「おほほほほほ」とか、「うふふふふふ」とか、とっても上品で。
きっと良家のお嬢様だったんじゃないかな・・なんて勝手に想像してみたり。
最初は「なんか私わらわれてる!?なんで!?」って、すごく焦ったんだけど、
別に私を見て笑ってるわけではなくて、いつもそうみたい。
だから途中から私も一緒になって「うふふふふふ」って笑いながら介助してた(笑)
だって、ただ黙ってしかめっ面でスプーン差し出しててもねぇ。
笑顔はきっと認知症の壁も飛び越えられるだろう、と勝手に思って、ずっと笑ってた。
そのYさんが唯一反応を示すのが、このタイトルにも書いた「浜辺の歌」だった。
Yさんはもっと認知症が軽かった頃から、この歌が大好きだったそうだ。
Yさんの部屋にもずっと小さな音でこの曲のCDが掛かっていた。
私が「浜辺の歌」を口ずさむと、一緒に歌う。
ほとんど「うーー」とか「あーー」とかだけど、
この歌を歌ってるんだ・・・と分かった。
他の入居者さんもそうだけど、みんな小さい頃に歌ってた童謡を、
認知症になった今でもしっかり歌えるんだよね。
私なんかよりずっとよく歌詞もご存知で、教えてもらいながら一緒に歌った。
そこで私はすごく感動したのよ。
歌ってすごいって。
歌が人に及ぼすものって、計り知れないくらい大きいんだなって。
もう実習中に何度となく涙が出そうになって、必死にこらえていた。
入居者さんの部屋の壁には家族との写真なんかがたくさん張ってあるんだけど、
Yさんの部屋にも何枚か張ってあって、それと一緒にYさんがもう少し若かった頃の写真もあったのね。
もうその時点ですっかりおばあちゃんだったから、
そんなに昔ってわけでも無いんだけど、
なんかね、全然違うの。顔つきが。
目の光に、意思の力をしっかり感じるのよ。
同じ顔だけど、全然違う。
「浜辺の歌」をBGMに、その写真を見てたら、もうたまらなくなって
トイレに行って泣いてしまった。
続く・・・・