My ordinary days

ようこそいらっしゃいました!
ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

吉田修一「悪人」

2010-03-02 11:25:15 | 読書
その先はない、二人の逃亡の日々。
幼い頃母親に置き去りにされた男・祐一と無為な日常を過ごす女・光代が出会い、愛し合う。
男は殺人を犯していた・・・


な、話なのですが。


一気に読みました。(って読み出すといつもそうだけど)おもしろかった。
これも映画化されるのかな?「パレード」がベルリンで国際批評家賞を獲りましたがまだ観ていない・・・


さてさて、この「悪人」とはなんなのか。どんな人物を指しているのか?

被害者の女性と容疑者にされた大学生、共に悲劇に見舞われた側の人間ですが、「大切な人」を持たない人間でもあります。自分に失うものがないから、何でもできると思い込む。自分が強くなった気になる。・・、とは、被害者の父親の言葉。(かわいそうに、娘はそっち側の人間になってしまった)

「大切な人」を見つけた逃亡する側の二人がまともに見えてくる。


全体的に暗いお話ですが、最終章にでてくる
オレンジ色のスカーフそして理容室の回転灯は、なにがあったとしても生きていくという人間の生命へ向かう力の象徴でしょう。そこに救いがあります。



自分を置いて去った母親について、「どっちも被害者にはなれんたい」という祐一の言葉に果てしない優しさを、

そしてラストの光代の「ねぇ?そうなんですよね?」というコトバにとてつもない切なさを感じました。