テレビとうさん

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「貨幣」 と 「通貨」 ⑤

2022年08月06日 | 経済
 「貨幣(日本の法律では硬貨のみ)」は「通貨」の一形態で、何れにしても発行体が償却することで消滅します。「貨幣(硬貨)」の償却権限は政府(財務省)にしかないのですが、例え償却しても発行時に得たシニョリッジ(通貨発行益)が消失する訳ではありません。

 例えば、原価百円で千円の硬貨を発行した場合は9百円の発行益を政府(国)が得て、政府資産を民間企業から購入した場合は「百円で千円のモノを買った」事になり帳簿にはその事実が記載されます。

 その時に民間企業が、例えば売上利益の一部として百円(消費税は別)を納税した場合は、政府は原価百円の硬貨を償却でき、まんまとタダで政府資産を手に入れる事に成功します。同時に民間企業もショバ代(事業税)とミカジメ料(利益の一部)を払ってもなお利益を得て、政府は欲しいモノを手に入れるので、消費税(十分の一税)を負担する消費者以外は誰も損をしません。「消費者」にしても、うまく立ち回ると「受益者」になり得るので、実際に損をするのは仕組みを知らない人民だけです。

 「紙幣」も「通貨」の一形態で、日銀が発行します。その実態は「日銀の負債(借用書)」なので、発行原価もかなり安いのですが、そこからは「発行益」を得ることは出来ません。「借用書(紙幣)」を発行する事で利益を得る事が出来ないのは当然ですが、実は政府と日銀は親子関係にあり直接ではないにしても、同額の国債を手に入れる事が出来るため、凡そですが「国債の利率」がシニョリッジ(発行益)になります。

 政府の資金運用が下手で国債の利払いが出来なくなった場合は、利息分の国債を新規発行する事で「ポンジスキーム」が成立し、難を逃れます。「ポンジスキーム」を「自転車操業」みたいに言われますが、「自転車操業」でも「操業」している事には変わらないので、仕事が出来ない政府より少しマシかもしれません。

 政府の定常的な仕事は、国家の経済成長を促す事です。例えば、民間が必要とする道路や電力供給などのインフラ整備に財政出動する事です。決して、電力不足に対応する「節電ポイント」などで電力消費量を抑えたり、コロナ禍で経済活動を抑え込む為に補助金を配る事ではありません。

 民間銀行は顧客から預貯金を集めますが、その何倍も貸し出す事が可能で、実際に貸し出すカネは「政府通貨(貨幣と紙幣)」ではなく、取り敢えず自行の顧客の預金通帳に印字する「預金通貨」で、その仕組みを「信用創造」と言います。その数字が他人名義(多くは他行)の通帳に印刷される事で、顧客の負債を書き換えて支払いが完了します。その全額が「通貨量の増加」になりGDPに加算され、この時の貸出銀行の「通貨発行益」は貸出金の利息です。

 当然、この段階では誰も損失を被る事は有りませんが、「何もしない政府」のように、借り入れた人が何も仕事をしなければ「ポンジスキーム」になります。ところが、民間銀行はそうは甘くありません。担保を取られているので、破産(清算)させられ、銀行が発行した「預金通貨」は、担保と引き換えに減額されて消滅します。

 また、貸し出しにより発生した「預金通貨(負債と資産の記録)」は、正当に返済されると消滅します。国債から発生した「紙幣」も同様に、政府が税金を集めた段階で民間から消滅し、それを国債の償還に充てると通貨自体が消滅します。これは「負債と資産とは一対」である事を示しています。

 国家の資産が増える事を「経済成長」と言い、同時に、誰かが同額の負債を負う事になります。

 民間企業は「自分の利益」の為に仕事をするので、不景気の時は借り入れを増やし難く、通貨量は減りデフレ(通貨収縮)を起こします。

 政府も「自分(国民では無い)の利益」の為に仕事をするのなら、同様に、不景気の時は借り入れを増やし難いので、通貨量は減りデフレを加速します。

 当然、国会議員も自己保身の為に「緊縮財政」を主張し、国民が「国の借金(正しくは政府の国債発行額)」で騙され続けている間は、通貨量は減りデフレになります。

 有権者がデフレを忌避するのなら、「増税は通貨量(発行体の負債額)が減る事を意味する」と理解すれば、「緊縮財政派」が次の選挙で落選する事は間違いないのですが、「節電ポイント」を稼ごうとする人が多いうちは、期待は出来ないかも知れません。

注) ここで言う「デフレ」は、原義の「通貨収縮」であり、現象として良く表れる「物価の下落」は必須ではありません。同様に「インフレ=通貨膨張」であり、物価高騰はよくある現象の一つに過ぎません。また、「スタグフレーション」は「デフレ(通貨収縮)時の物価高(インフレではない)」を言います。




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