浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

オバマが導く米国の弱体化

2015-05-22 15:54:57 | 資料

◆静かに確実にロシアがドル基軸体制を揺らし始めた
  「ペトロダラー」というサウジをビルトインしてきたドル基軸体制の弱体化

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マリン・カツサ著、渡辺惣樹訳『コールダー・ウォー』(草思社)宮崎正弘氏の書評
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 国際政治学上、この書物は画期的意味を持つばかりか、近年最大の問題作と言える。
 従来の地政学、宇宙時代の地政学を越えて、中国の野望である「超限戦」がとかれ、ハッカー戦争が語られた。
 いまも軍事地政学の考え方の主流は、これらの思想が基本にある。
しかし、本書は、石油経済学の視点から通貨戦争を読み解く、従来的発想の延長線上にあると雖も、これをプーチンの世界戦略にひっかけての革新的な問題提議である。
 つまりプーチンは「十五年にわたって次なる冷戦の戦い方を研究してきた(中略)。闘いの武器は軍事力ではない。世界のエネルギー供給をコントロールする力、それがプーチンの新型兵器」だという。
 なるほど意表を突く視点であり、全米でベストセラー入りしている事態も頷ける。
 表向き、中国の軍事的脅威は可視的であり、南シナ海で現実に中国は他国の領海にある岩礁を侵略している。その軍拡テンポは凄まじく、しかも傲然とアジアの覇権を言いつのり、人民元がドルに代替するなどとえらそうである。
ロシアの資源戦略上のゲーム・チェンジという現実は、たとえ数字、貿易統計上は可視的であっても、プーチンが公言することがないため、ロシアの意図する新しい戦略は判然としなかった。
ところがプーチンの『実績』をみると、既に世界石油の15%がロシアから船積みされ、ルーブル決済の貿易相手国が増えているという事実。つまり著者が説くように、「新冷戦」の最中であり、いずれペトロダラーというドル基軸体制を終焉させるばかりか、米国支配の世界システムが崩壊すると予測するのである。

「ペトロダラー」というサウジアラビアを体制内にしっかりとビルトインしてきたドル基軸体制が弱体化しつつある。
この「ペトロダラーというドル基軸体制」を発明したのはニクソンだった。
1971年にドルの金兌換体制を終わらせ、以後、ニクソンはサウジアラビアに肩入れして、こう囁いた。
「サウジを防衛し、サウジをまもるためにはどんな兵器でも売却する」うえ、サウジ王室を未来永劫、保護する。その見返りは「石油販売はすべてドル建てにすること、そしてもう一つは、貿易黒字部分で米国財務省証券を購入する」。
これが米国の「最高のメカニズムの完成であった」。
世界は「石油購入のためにはドルを貯めなくてはならなかった。世界的な需要が高まるドルを連邦準備銀行は殆どゼロコストで発行することが出来た」(79p)。
しかし時代は変わった。というより米国は自らの愚策を重ねることによって、自らを弱体化させてしまったのだ。
いまやロシアの石油埋蔵は世界一であり、ガス、レアメタル、ウランなどにも恵まれ、ガス輸出の顧客をパイプラインを敷設して次々と拡大してきた。日本のガス輸入の10%はロシアからである。
ロシア原油生産はいまでは日産1200万バーレル。「世界の石油消費量は日に8500万バーレルであり、うち5500万バーレルは国際間取引によって調達されている」。ロシアから輸出される石油は世界の取引の、じつに15%である。
他方、イラン、イラク、サウジアラビアの石油生産は世界の20%を占める。

▼中東の混乱はロシアにとって有利な状況になるカード

中東が混乱を極めることはロシアにとって有益である。制裁を受けるイランは闇で石油を処分しているが、買い手はロシアと中国である。GPsの観測を逃れてイランから積み出されるタンカーは、表向き「行く先不明」と発表されている。
サウジは増産を続行し、原油代金を劇的に下げるエンジン役をいまも実行しているが、困窮しているのは表面的にロシアに見えて、じつは米国のシェールガス開発をつぶすことにある。
だからプーチンはロシアの苦境を二年間と踏んでいるのだ。
なぜならサウジは米国の中東政策に立腹し、とくにシリア攻撃とイスラエル政策に大きな不満を抱く他方、バーレンの危機にサウジは一国で対応したが、米国はなにもしなかった。そればかりか、チュニジア、リビア、エジプトで「アラブの春」に味方した。サウジの米国不信は確定的となった。
そしてプーチンはある時点からイスラエルへ急接近を開始した。
オバマがイスラエルを敵視し始める前のことである。
それは2000年にイスラエル沖合に巨大なガス田が発見され、またイスラエル国内に膨大なシェールガス埋蔵が確認された時点と合致する。ロシアはガス田開発に協力し、イスラエルでのガス商業生産は2004年に開始された。そして送油施設に巨費を投じているが、この施設防衛にイスラエルは米国を当てにせず、かわりにロシア海軍に依拠する。

中東のパワーバランスは劇的に替わり、グレートゲームの基本律が音もなく変調し、とどのつまり、石油決済のドル機軸体制は根底が脅かされる状況になったのである。
あまつさえ米国のイラン制裁は、かえってドル基軸体制を弱体化させたと著者は分析する。
つまりインドはイランに送金できないから現物の金で原油代金を支払い、中国は武器と消費財で支払い、ロシアとはバーター取引を実行し、じつは韓国も密かにウォンで支払っている形跡がある。トルコは第三国経由で金塊をテヘランに届けた。まさにドル機軸が脅かされ、サウジアラビアが、そのうちドル機軸から脱出する試みをはじめるだろう、と著者は不気味な予測をするのである。
ロシアに接近するイスラエル、サウジアラビア、そしてイラン。人民元決済を拡大する中国はこの動きに便乗し、通貨スワップ、人民元決済の拡大と世界有数の市場での人民元取引を増加させている。
 こうした現実の大変化に日本はじつにのほほんとしているようだ。

http://melma.com/backnumber_45206_6210257/

◆窮地に追いやられても 金を購入するロシアと手放さないギリシャ

2015/04/13 GOLDの風

2014年の金需給統計のデータが出そろった。公的購入と呼ばれる各国の中央銀行による金購入は477トンに上っていた。今回は、国家の危機にあっても金を購入し、保有し続けるロシアとギリシャに焦点を当ててみよう。

リーマン・ショック後の2009年から、新興国を中心に中央銀行の金購入が増えているが、2012年には544トンと過去50年間で最大の買い越しを記録していた。昨年の477トンは、これに次ぐ規模となる。

昨年、金を一番買ったのはロシア連邦中央銀行だった。その量は173トン。実は過去10年にわたって、ロシアは金を増やしてきたことで知られる国。原油の輸出で稼いだドルの一部で金の購入を続け、外貨準備の10%を目標にしてきた。その表明通り、ほぼ毎月、金の保有量を増やしてきた経緯がある。私はこれを「中央銀行版の純金積立」と表現してきたほどだ。

手元のデータでは、2006年12月の時点でロシア中銀の金保有量は394トンになっている。外貨準備に占める金の比率は2・8%。それが2014年12月には1208トン、同じく比率は12%だ。現時点で中国の1054トン(IMF〈国際通貨基金〉への届け出ベース)を抜いて世界で6位の保有量となっている。

ロシアはウクライナ問題の当事国で、米欧からの経済制裁に原油安が追い打ちをかけ、苦しい立場にあるのはご存じの通り。暴落した通貨ルーブルの買い支えを余儀なくされ、外貨準備が昨年下半期だけで897億ドル(18%)も減っている。経済的に窮地に立たされる中で、さすがに金の購入はできず、むしろ保有している金の売却に向かうとの噂が流れたほどだった。しかし結果は逆で、最も金を増やした国となった。一般的に、国家が窮地に追いやられた際は、保有する金には手をつけない場合が多く、それを示す事例が多数存在している。

たとえば、足元では国債のデフォルト(債務不履行)まで懸念されているのがギリシャだ。2013年末時点で112トンの保有となっている。これは、韓国の104トンを上回る。興味深いことに、ギリシャ危機が表面化したのが2009年11月だが、過去デフォルト寸前が2度あったものの、いずれのときにも金の売却という話は一切出なかった。

もともと金を重視するユーロ圏の一員ということも関係しているだろう。国を越えて絶対価値が認められている金は、中銀にとっても「最後のよりどころ」なのだ。2月にギリシャ国債を担保として認めるECB(欧州中央銀行)の特例が取りやめになり、なおさら金の存在がギリシャには必要となっている。

http://netmoney-web.com/2015/04/13/gold%E3%81%AE%E9%A2%A8-9/

◆中東の激変に注目が必要だ

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月18日(月曜日)
   通算第4543号 
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 中東地図の激変にもっと注目する必要がある
  サウジの反米、イスラエルのロシア、中国接近。そして。。。。。。。。。。
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 ボタンの掛け違えとして済まされる問題ではない。
サウジアラビアは米国への依存度を急激に減らし、ロシアと中国へ異様な接近をみせている。サウジへ中国は最新鋭ミサイルを供与した。イランを射程にできるスグレモノで、これにより旧式のミサイルを軍事パレードで公開した。

とはいえサウジアラビアは、イランを脅威としてパキスタンに核開発をさせ、いつでもイラン向けに核シェアを可能とする密約が存在するというのは専門筋の一致した見方である。
なぜならあのパキスタンの核開発費用の胴元はサウジであるからだ。

サウジアラビアはそのうえ、シリアのアサド大統領を支援しており、欧米のシリア攻撃には不満を募らせてきた。
ケリー国務長官、オバマ大統領がサウジを訪問しても嘗てのような熱狂的歓迎の風景はなくなった。
そしてついにサウジは米ドル基軸一辺倒から離脱し、一部に人民元、ルーブル決済をみとめる動きを見せている。

 イスラエルが変わった。

 オバマ大統領はイスラエル擁護という米国の伝統的外交政策を変更し、イスラエルに敵対的でさえある。
この点ではアラブ諸国の支持があるが、これによって、いまではオバマとネタにニヤフ首相とは犬猿の仲となり、同時にイスラエルはロシアとの関係の濃度を深めた。

もとより冷戦終結後、夥しいロシア移民がイスラエルになだれ込み、道路標識はヘブライ語、英語、ロシア語併記となっているくらい、じつは両国関係は深い。
 そのうえ、最近、イスラエルは海底油田が発見され、資源戦略に余裕が生まれる。

 中国とイスラエルも武器輸出で中国との間に秘密協定が存在するように、最新鋭ミサイル、戦車技術などを中国へ供与している。
 またイスラエルへの直接投資は欧米に並んで中国企業の進出が急増している。

 ▼オセロゲームのように、いやドミノ逆理論のように

 もうひとつの重要な変化はアラブの春の過熱ムードと、頓挫。ベンアリ亡命後のチュニジアではテロが不気味にうなり、リビアはカダフィ亡き後の無政府状態、エジプトはイスラム原理主義政権が誕生し大混乱のはてに軍事政権が誕生した。
 米国はシシ軍事政権を支持せざるをえず、またロシアがエジプトへ再接近を果たした。

 イラクはどうか。

 結局、イラクは米国が望んだ安定、親米政権どころか、反米シーア派が政権をおさえ、スンニ派を弾圧し、その結果が旧バース党をしてイスラム国との共闘関係をうみ、無政府状態となった。
 イラクはいずれ三分割されるだろう。
 そのイラク北方イスラム国で密輸される石油は中国へ流れている。ちなみにイランの石油は中国が最大の買い手となっている。

 こうした動きをみていて、やおら腰を上げたのはトルコだった。
 トルコはNATOの一員として欧米につくし、しかしユーロに加盟してもらえず、シリアとイスラム国の跳梁によって百万の難民が押しかけたため、基幹産業の観光が総崩れとなった。

 エルドアン大統領はトルコ全土の大学構内にモスクを建設し、世俗主義から原理主義への傾斜を濃厚とした上で、対欧米路線を転換した。
 つまりトルコは東へ姿勢を変えて、欧米に背を向け始めたのである。

 この千載一遇のチャンスをロシアが見逃すはずがあろうか。
 ロシアはすかさず対欧向けのパイプラインをトルコ経由とした。現在アゼルバイジャン、グルジアを経由するパイプラインがあるが、これに加えてトルコ経由を新設する。

 オバマは、こうした動きに無知なのか、鈍いのか、あるいはFDR時代のように彼の周りには或る戦略の下にアメリカ外交を変えようとする勢力があるかのように、西側の利益とは異なる外交を展開している。

 中東が激変しているのである。

http://melma.com/backnumber_45206_6208844/

◆米・イスラエルの関係改善は絶望的

2015.5.9 SankeiBiz 【佐藤優の地球を斬る】

 3月17日、イスラエルで国会選挙が行われ、ネタニヤフ首相が党首をつとめるリクードが30議席を獲得し、第一党になった。しかし、連立協議が難航し、ようやく今月6日夜にまとまった。

 <イスラエルからの報道によると、3月のイスラエル国会(定数120)選挙で勝利して連立協議を行っていた右派リクードのネタニヤフ首相は6日夜、極右「ユダヤの家」と連立で合意し、すでに連立参加を決めた中道新党クラヌや宗教政党2党と合わせて61議席を確保した。近く国会承認を経て、ネタニヤフ氏にとっては4期目の連立政権が発足する。現地メディアは、連立がかろうじて過半数を確保したに過ぎないことから、ネタニヤフ氏の政権運営は不安定なものとなる可能性が高いと伝えている。

 新政権は、核開発を続けるイランへの強硬姿勢を維持する見込みで、イラン核問題での最終合意を目指すオバマ米政権とは冷え込んだ関係が続きそうだ。

 また、ネタニヤフ氏自身が選挙戦でパレスチナとの「2国家共存」を否定したとも受け取れる発言をしていることや、将来のパレスチナ国家の領土に想定されるヨルダン川西岸などの一部併合を主張するユダヤの家が連立政権に参加したことで、頓挫しているパレスチナとの和平交渉は再開がいっそう困難となった>(5月7日「産経ニュース」)

 ネタニヤフ首相が、パレスチナ国家の存在を認めない「ユダヤの家」との連立を余儀なくされた背景には、イスラエル・米国関係の悪化がある。米国のオバマ政権は、過激派「イスラム国」(ISIL)との戦いを最重要課題にしている。スンニ派のISILには宗派的傾向が強く、シーア派(特にイランの国教である12イマーム派)の殲滅(せんめつ)を当面の課題としている。従って、イランにとって、ISILを解体することが至上課題になっている。オバマ政権は、「敵の敵は味方」という論理で、イランを味方につけようとしている。そこで、米国は従来のイランに対する強硬策を緩めることにした。

 奇妙な核開発文書

 4月2日、スイスのローザンヌで、米英仏露中独とイランの間で、イランの核開発の枠組みに関する合意が達成された。もっとも合意文書が作成されたといっても、誰も署名していない、奇妙な文書だ。7月に本合意がなされる予定であるが、先行きは不透明だ。4月2日の枠組み合意について、イスラエルは、米国が2年間の猶予でイランの核開発を容認したものと受け止めた。イスラエルは、イランが現在も「イスラエルを地図上から抹消する」(アフマデネジャード元イラン大統領)という方針を堅持しているとみている。

 核問題に関する米国の譲歩を、イランはオバマ政権の弱さの印とみている。そして、枠組合意後、イランはシリアを通じてシーア派(12イマーム派)民兵組織「ヒズボラ」への支援を強化した。このことがイスラエルの安全保障環境の悪化につながっている。さらにイエメンでもイランはシーア派(フーシー派)を支援し、イエメンは内戦状態になっている。この状況に対しても米国がイランに配慮して不介入の姿勢を貫いているので、サウジアラビアが有志連合を結成し、イエメン領内のフーシ派拠点を空爆するという事態に発展した。さらにロシアが「人道」を口実にイエメン情勢にフーシー派とイランに好意的な形で介入しようとしている。

 サウジ情勢の不安定化によって、スンニ派原理主義勢力の動きが活発になることをイスラエルは懸念している。このような状況で、イスラエルのネタニヤフ首相は、愛国主義で国内を徹底的に固める方針を取っている。オバマ大統領の任期中は米国とイスラエルの関係は改善しないであろう。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)

http://www.sankeibiz.jp/express/news/150509/exd1505090800002-n1.htm

◆サウジアラビア対イラン 中東の冷戦を激化させるイエメン情勢

2015年04月29日  岡崎研究所 WEDGE Infinity

フォーリン・ポリシー誌のドレーゼン編集員が、3月27日付ワシントン・ポスト紙掲載の論説にて、中東の冷戦(サウジアラビアとイランの対立)は熱い戦争になるかもしれないと述べ、その観点からイエメンなどの情勢を分析しています。

 すなわち、サウジはイエメンの親イラン勢力の空爆に乗り出した。イラクではイランとサウジがそれぞれ支援する勢力が戦っている。この歴史的な敵対関係はオバマ政権にとって新たな危機になりつつある。

 スンニーの大国サウジアラビアとシーアの大国イランは、過去何十年に亘り、武器や財政支援を通じ、静かに勢力拡大を図ってきた。しかしイエメン空爆によって対立は白日のものとなり、直接の戦闘に発展するかもしれない。

 ハディ・イエメン大統領はサウジに支持され、反大統領派のホーシー派はイランの直接支援を受けている。空爆は武器保管施設などイエメンでのイランの拠点を標的にしており、イラン人に犠牲が出るかもしれない。

 代理戦争は既に進行している。シリアのアサド大統領は、金と武器を通じてイランと近い同盟関係にあるほか、レバノンのヒズボラからは諜報や戦闘支援を受けている。他方、サウジは反アサド勢力を支援している。外部からの支援が内戦を一層悪化させている。

 イランの支援により、ヒズボラはレバノン最大の戦闘集団になり、イスラエルに対抗できる力を持つようになっているばかりでなく、強力な政党にもなっている。他方、サウジは、レバノン国軍を支援すべく、昨年、30億ドルの無償援助をする旨発表した。バーレーンでは、イランが少数シーア派を通じて王政打倒を狙っている。

 サウジ指導部は、イラクやイエメンを見て、イランに対して劣勢になっていることを懸念している。サウジは、オバマの対イラン核交渉は歴史的な間違いだとして、懸念を持っており、イランの核に対抗するため、自らの核保有を仄めかしている。サウジは、幅広いスンニー派アラブ有志連合(エジプトやヨルダンなど)を結成し、対イエメン作戦を行っている。作戦は長期化するかもしれない。

 サウジとイランが一致するのは、イエメンにいるアラビア半島アルカイダ(AQAP)撲滅の点だけだ。AQAPはサウジの他ホーシー派も攻撃している。AQAPは、2009年にナイエフ現内相を狙った爆破未遂事件を起こしており、サウジアラビアの指導部にとっては個人的な敵でもある、と述べています。

出典:Yochi Dreazen,‘In Yemen, the Middle East’s cold war could get hot’(Washington Post, March 27, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/in-yemen-the-middle-easts-cold-war-could-get-hot/2015/03/27/e4acccf4-d488-11e4-8fce-3941fc548f1c_story.html

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 ドレーゼンの分析は、的をついた妥当なものです。サウジとイランの対立は、地域覇権をめぐる対立に、スンニー派対シーア派の宗派間対立の側面が加わり、さらに、この対立は中東全体に広がっています。今後の中東は、この対立を抜きにしては理解できません。

 中東のこれまでの対立軸は、アラブ対イスラエルでしたが、今やサウジ対イラン(アラブ対ペルシャ)、スンニー対シーア、場合によっては王制国家対イスラム教国家の対立軸になっていると言えます。その中で、反イランという点ではサウジとイスラエルの利益が合致するという奇妙なことになっており、両国は密かに協力もしていると言われます。

 サウジにとって、国境の北にあるイラクではシーア派が地歩を固めイランとの関係が強固になり、国境の南にあるイエメンではイランの支援を受けるホーシー派が勢力を伸張しています。イエメンが破綻国家になれば、容易に「もうひとつのシリア」になります。サウジが強い危機感を持っていることは容易に理解できます。サウジとしては、米国の支持を確保しつつ、エジプトとの連携を柱に、当面、アラブ有志連合で対応していくものと思われますが、前途は予断を許しません。

 オバマ政権にとって、イエメン情勢は面倒な課題になりつつあります。米国の対中東外交の柱であるサウジは、2013年秋に米国が対シリア武力行使をやめたことに強く反発し、目下、米国がイランと、核交渉の他、シリア情勢、イラク情勢について水面下で意思疎通、協力を図っているのではないかとの猜疑心を持っています。これまでのオバマの優柔不断、どっちつかずの姿勢が影響しています。

 2011年のアラブの春以後、中東は益々渾沌としてきています。その教訓は、人道危機の場合を除いて、外部勢力の介入を許さないようにすることでしょう。国内の民主化はその国の市民が本気にならなければ達成できません。国際社会は、今一度、主権国家の価値を再認識すべきではないでしょうか。外部からのレジーム・チェンジは成功せず、それは国家を破綻させ内乱を招くだけになり易く、結果的に人道コストもより高くなり得ます。中東では、主権国家を維持しながら民主化や経済発展(特に雇用の確保)を図っていくことが一層重要であるように思われます。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4924

イエメンで起こった、テロ事件の犯人達は、 オバマ大統領が意図的に見逃し、「泳がせていた」テロリスト達である。

◆米国の圧力に反しロシアの信頼を取り戻そうと試みる欧州

2015年04月27日 Sputnik 日本

「ドイツ政府は、ロシアとEUの今後の協力を築いてゆく役割を果たす用意がある。欧州のエリート達は、米政府により押し付けられたロシア孤政策の展望のなさを自覚しつつある。」これは、ギリシャの欧州外交政策基金のエキスパートで、ニースにある欧州研究所の講師を務めるゲオルグ・ツォゴプロス氏が述べたものだ。
以下、彼の意見を皆さんにご紹介したい。

「EUの対ロシア政策は、ワシントンが相変わらずウクライナ紛争にロシアが介入していると非難を続けるのをよしとしているに対して、以前に比べソフトになっており、経済協力の方向に動いている。
EUの立場とその経済発展の牽引車であるドイツの立場は、極めて明確である。つまりEUは、ウクライナ経済の再生を優先的対外政策の一つとみなしている。その実現化を来年1月に予定している自由経済ゾーンに関する合意は、EUの立場をよく物語っている。

その際、EUは、制裁という条件の中でも、ロシアとの経済的協同行動の形態を模索し続けている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が示した「リスボンからウラジオストークまでの自由貿易ゾーン」という考え方は、よく知られており、ドイツの現指導部、特にメルケル首相やガブリエル経済相は、その中に未来を見ている。メルケル首相は、シュトラルズントでの経済フォーラムで発言し、ロシアを欧州との貿易の軌道に戻すというテーマを示した。又メルケル首相は、ウクライナやモルドワと自由貿易ゾーンを創設するというEUのプランをコメントし、そうしたプロジェクトはロシア政府に敵対するものではなく「ロシアのための場所もある、より大規模なモデルだ」と外交的配慮を含め指摘した。

EUは、ロシア政府の信頼を取り戻し、ロシアを義務と利益のある有望な政治ゲームへ引き入れようと、一歩一歩試みている。

ドイツ政府は、そうした協力の構築者として行動する可能性がある。ドイツ財界のリーダー達は、米国の側からの圧力に反し、ドイツの政治エリート達をプッシュしている。なぜならロシア隔離策は、妥当なものではなく自分達の利益に反するからだ。又ドイツは、欧州で強く批判されている緊縮財政政策の提案者であり、ぐらついた国の評判を回復させるためには、大きな外交的成功が必要となるだろう。

もしウクライナ危機が、ミンスク合意の助けを借りて成功裏に解決されれば、EUは、ロシア政府に対し、積極的な協力を提案する用意ができるに違いない。欧州の戦略の向こう側には、ドイツの確固たる利益があり、その戦略は、将来性があり生命力を持つものだと思われる。」

http://jp.sputniknews.com/opinion/20150427/253517.html#ixzz3YZAsEDsX

◆米国保守派の本音?「やはり中国をやっつけるしかない」

日経ビジネス 堀田 佳男 2015年5月13日

 米国の有名シンクタンクが4月、「米保守派の本音」と呼べるほど強硬な対中政策に関する報告書を発表した。

 まず核心と言える部分を抜粋するので、お読みいただきたい。「中国はアジア地域で米国の力を試そうとしている。米国は、そうした抵抗勢力と戦わなくてはいけない。そして彼らを打ち負かすための戦略を練り上げなくてはいけない」。

 打ち負かす(defeat)を口語訳すれば「やっつける」となる。このような表現が全70ページの中で7回も使われている。米国と同盟関係にある日本に対して使うことはない。つまり、中国と既存の協調路線を模索する一方で、最終的には「やっつけるしかない」という考え方を表している。

 この報告書のタイトルは『中国に対する国家戦略の変更』。発表したのは外交問題評議会(CFR)というシンクタンクだ。CFRは1921年にニューヨークに設立された非営利団体で、主に米国の外交政策について提言している。

 CFRは世界的に広く読まれている隔月雑誌『フォーリン・アフェアーズ』の発行元としても知られる。旧ソ連の封じ込めを説いたジョージ・F・ケナン氏の「X論文」や、サミュエル・P・ハンチントン氏の「文明の衝突」など、米国の外交政策に大きな影響を与えた論文を掲載してきた実績を持つ。

対中強硬+反オバマの考えと

 今回の報告書は中国を刺激する内容で、「あおっている」と呼んでも差し支えない。同評議会の代表であるリチャード・ハース氏は「中国との協調というこれまでの路線は、これから、『戦略的で過激な競争相手』と対峙する路線に置き換えられていくだろう」と述べている。

 同氏は同時に、「すべての人が報告書の内容に賛同するわけではないことは分っている」とも発言している。つまり、米国の中でも対中強硬派の考えとしてこの報告書を理解すべきということだ。

 CFRは特定の政党に肩入れしているわけではないが、思想的には共和党保守に近いと見なして差しつかえない。このため報告書では、バラク・オバマ政権への批判も述べている。例えばこんな下りがある。「オバマ政権は中国の安全保障戦略を十分に理解していないようだ。確実に米国の利害と力を削ごうとしている。大統領は現実をそしゃくできていないのではないか」。

 さまざまな政治的立場がある米国で、中国をやっつけるべきという政治信条を持ち、オバマ政権を批判する一派がいるということである。

 冒頭の段落に次の内容がある。「米国は歴史上、ライバル国との競争に勝つために国家戦略を追求してきた。最初は北米大陸を掌握するため。次に西半球、最終的には世界を牛耳るためだった。(中略)米国にとって中国の経済的、軍事的拡大は間違いなく国家的な危機であり、それを阻止するためには現在の対中政策を変更しなくてはいけない」。

 近年、経済力と軍事力をつけてきた中国に対し、真っ向勝負を挑まなくてはいけないと提唱する。オバマ政権の対中協調路線は「手ぬるい」というのだ。

米国の東部エスタブリッシュメントが賛同

 ジャーナリストで歴史家のエリック・ジュッセ氏は同報告書をこう評している。「この報告書は、米国の特権階級が中国に対して宣戦布告したようなものです。しかも報告書の基本的な内容は、中国がアジアで覇権を獲得しつつあることを表したものです」。中国への宣戦布告という表現は過激である。もちろん軍事的に交戦することを米政府に勧めているわけではない。

 米国はこれまで中国に対して、国際ルールを順守する「責任あるステークホールダー(利害関係者)」になることを期待してきたと言われてきた。だが、この報告書は米国の思い通りに動かない中国にいら立ち、協調は限界点に近づいたと捉えている。

 さらにジュッセ氏によると、ウォールストリートの金融関係者を中心とする財界人の多くがこの報告書の主旨に賛同しているという。いわゆる米東部エスタブリッシュメントと呼ばれる知識層が、中国を脅威として認識し、米国は対中強硬策に出るべきと考えているわけだ。報告書の冒頭の文章から、米国は「最終的には世界を牛耳る」ということが、特定の人たちの間で暗黙のうちに了解されていることが分かる。

「日本ほど重要な国はない」

 報告書はまた、アジアの安全保障問題も論じている。「日本ほど重要な国はない」「米国は日本という重要な同盟パートナーを引き続き支援すべきだ」と述べている。日米両国が防衛協力を強化して、地域の安定に努めることが重要という現実的な指摘をする。以下が論旨だ。

 「アジア地域全体を対象として、日本との安全保障関係を実質的に強化すべき」
 「日本の自衛隊のさらなる増強を支援していく」
 「防衛省との密接な対話を通して、エア・シーバトル(空海戦闘)における自衛隊の役割、目的、能力を確認、向上させていくべきだ」

 日本にとって重要な案件である尖閣諸島での有事にも触れている。「日米安全保障条約の下、日本は米国のアンブレラ(傘)の下で十分に守られている事実を日本側にこれまで以上に発信していく」。

 また報告書は、日米の2国間関係の絆がどれほど強いのか、日米同盟が有事の際に本当に力を発揮するかどうかを中国が探っていると書く。報告書は、日本が米国の軍事力に依存するのと同様に、実は米国も日本の経済的、軍事的なサポートを極めて重視していると説く。

 「米国は同盟国や友好国の持続的な支援なしに、アジアで国益を守ることはできない。そのため中国は、米国が維持する2国間関係を崩そうしてきている」。報告書は、これに対抗するため日米両国の関係を強化しなくてはならないと結んでいる。

 前出のジュッセ氏は米保守派の心中を見透かしたように述べる。「米国は旧ソ連との冷戦に勝ったことで、帝国主義的な優位性を誇っています。それは米社会の特権階級が勝った勢いに乗って今でも社会を仕切っているということなのです」。

 この報告書が提示する視点に則って世界を眺めると、中国は邪魔者であり異物でしかないのかもしれない。だが共和党保守派が報告書にある通りに世界を動かせるわけではないし、オバマ政権の後に共和党政権が誕生するかどうも分からない。

 この報告書は、あくまでCFRというシンクタンクのものである点を最後に記しておく。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150511/280943/?P=2&rt=nocnt

オバマ政権の対中姿勢は

第1には、中国が台湾や日本に軍事攻撃を行っても、米国が中国と正面から戦争をするほどの価値はない、という認識である。

 第2には、中国の指導部自身が経済成長の維持のために、米国との戦争になりうるような軍事力行使は台湾や日本に対してもしないだろう、という認識なのだ。

 確かにオバマ政権は尖閣諸島をめぐる日本と中国の対立でも、中国の非平和的な領海侵入、領空侵入を決して非難していない。ただただ日本と中国を同列に並べて、両国に同じ語調や姿勢で自制を求めるだけである。

オバマというより米民主党を信用すべきでない。昔からずっと反日の党だった。だからといって共和党が親日かというと必ずしもそうではないが。

オバマ大統領の弟が、中国人女性と結婚し、現在は広東省深圳で焼き肉店を十数店経営している。また、妹はカナダ在住の中国人と結婚している。

そして、国務長官ケリー氏の家族は、中国人女児を養女にしている。そしてなによりも、ケリーの一族で世界の富豪を毎年紹介する「Forbes」は、支那共産党が民間企業に偽装する中堅企業群のコンサルタントを請け負う、言わば大顧客と言うから始末に負えない。

中狂が崩壊すると米国も連鎖するのかな。それより地域紛争に持ち込んで敵国になって、米国債凍結してチャラにしたほうが良いと思うのだが。一兆数千億ドルが浮くんだから米国も一気に経済が息を吹き返すだろう。米国債が紙くずになれば中狂は間違いなく破綻して内乱になる。武器が売れるし国も分裂する。

更に、チベットやウイグル、内モンゴルの国を復帰させれば強力な友好国になるんじゃないか。


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