浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

人民解放軍が習近平の軍に変わるとき

2015-05-26 08:18:34 | 資料

支那七大軍区
支那の国家戦略により組織された軍事組織で、以下の七部隊に分かれている。

・瀋陽軍区 ・済南軍区 ・成都軍区
・北京軍区 ・南京軍区
・蘭州軍区 ・広州軍区

それぞれの軍区は陸・海・空の軍事力を持っており、各軍区の司令の指揮下にある。

1.支那人民解放軍

支那共産党の政党軍隊。対外的には中華人民共和国の事実上の国軍とみなされており、支那軍とも呼ばれる。党の最高軍事指導機関である支那共産党中央軍事委員会の指揮を受ける。

2.国の軍隊ではない

人民解放軍は支那に存在する最大の武装組織だが、これがなんと国の軍隊ではない。支那には国防軍も自衛隊も存在しない。
人民解放軍は支那国民の意志で動くわけではなく、「支那共産党のため」と言う建前だけに従って戦争をすることになっている。

3.中央政府に指揮権は無い

国務院(狭義の意味での支那政府)の国防部は人民解放軍に対する指揮権を持っていない。
だから党主席の立場では軍を完全に掌握するのは難しい、そのために、歴代の最高指導者は軍事委員会主席を兼任している。

日本の自衛隊の統帥権は総理大臣が持っているが、支那の人民解放軍の統帥権は国家主席ではなく、軍事委員会主席が持っている。そのため、国家主席と軍事委員会主席の座を両方得て、初めて支那のトップと言える。

人民解放軍の最高指揮権について憲法や国防法を見てみると、国家元首である国家主席の権限に「宣戦布告」、「動員令発布」を除く明確な人民解放軍への権限について触れられていない。
一方で、(国家)中央軍事委員会は「全国の武装力量を領導する」として、人民解放軍を含む全ての軍事力を指導すると明示されており、人民解放軍の最高指揮権は中央軍事委員会にあると見ることができる。

4.人民解放軍は独立した組織

軍隊は各軍管区ごとに独立採算制で運営されており、軍を維持するために物資等の調達に要する費用などを独自に調達している。
だから国有企業の多くが軍と直結している。
人民解放軍の傘下には,軍需産業のほかに情報通信、繊維、ホテル、その他のさまざまな業種があり利益を吸い上げている。
まさに経済力を持った大商社のような軍隊なのである。

5.コントロールできない

一連の尖閣諸島トラブルにしても北京政府は日本の領海侵犯をせよ、という命令は一切出していない。出先の人民解放軍が勝手にやったことを、知らないといえないから、不本意ながら事後承認してるというのが実情。

6.汚職問題も・・・

◆兵器を密売する中国軍の危機的な腐敗 軍紀低下が高める日中偶発的交戦の可能性

2013.05.30 zakzak

 素材や形状によりレーダーに捕捉されないステルス性能を備えた米軍F22戦闘機が日本に配備されると公表された2007年1月、小欄を仰天させるニュースが流れた。中国人民解放軍戦闘機が「忽然(こつぜん)と消えた」という。ステルス兵器開発は中国軍の悲願だが、技術上の課題は残っているはず。訝(いぶか)しく思いつつも記事の先を追う。結果、「忽然と消えた」のは「密売」に因(よ)った。香港の月刊紙・動向などが報じた「2004~05特殊案件調査チーム」の捜査資料には、自衛隊では有り得ぬ“異大(いだい)”な数字が並んだ。

■中国軍人の巨額「役得」

 陜西(せんせい)省の軍需倉庫に保管したミグ15戦闘機の場合、385機が25機に減った。装備更新に伴う後送処分が行われたためで、引き算は合う。ところが、処分すべき360機はアルミ合金として企業に密売、記録は全て焼却されていた。

 四川(しせん)省の軍需倉庫からは戦車や装甲車1800両が解体後、やはり密売された。1996年以降、地上戦力を毎年更新、廃棄待ちの戦車・装甲車やトラックの内50%はここに保管する。戦車・装甲車のモーターは1基1万元(約16万6000円)で転売され、鉄鋼部分は製鉄会社に持ち込まれた。

 湖南(こなん)省の軍需倉庫では、ソ連製の突撃自動小銃や半自動小銃、米国製カービン銃や拳銃、計27万3000丁が全て「消失」した。高級軍人と地方政府の役人が結託して転売。一部は銃器密売組織により“輸出”された。

 20万平方メートルもある雲南省の軍需倉庫では軍需品の他、大災害時の救援用品や燃料、5億元以上の物資が毎年追加保管されていく。しかし、11年分の備蓄物資が許可無く売りに出た。2006年の燃料高騰時には、軽油1万7000バレルが3回に分けて“小売り”。書類上は「予備役の演習」「災害救援活動」名義だった。

 野戦ベッドや軍靴・テント各20万セット、薬品を保管した広西チワン族自治区の軍需倉庫は「もぬけの殻(から)」と化した。

 斯(か)くして、毎年250億~500億元の兵器・軍需物資が後送処分後“廃棄”された。換言すれば、高級軍人と地方政府の役人が結託し「役得の戦利品」を横領、代価を懐に入れていた。

 調査チームは、軍事の最高指導機関・中央軍事委員会の隷下に置かれ、国防大臣を責任者に、兵站を一元管理する軍中央の「総後勤部」副部長らで構成。2年半と難航した調査が、堅牢(けんろう)な癒着構造を物語る。

 だが軍需産業を実質的傘下に収める、この「総後勤部」が食わせモノ。省軍区など地方の上級部隊にも存在する各「後勤部」の高級軍人は、地方政府の役人と結び、横流しに手を染めるケースが多い。

 調査チームの総後勤部副部長とは別人だが、同じ要職にいた谷俊山・中将(56)が、軍用地転売などで20億元もの途方もない“副収入”を得た容疑が12年に発覚、裁判にかけられた。谷被告の前任で06年に失脚した王守業・中将も、出入り業者から収賄し1億6000万元を不正蓄財。豪邸の大型冷蔵庫には米/香港ドルの札束がうなっていた。

■胡錦濤氏も憂慮した腐敗

 既に06年、中央軍事委の将軍ら11人が、当時の胡錦濤(こ・きんとう)総書記(70)と、政策決定機関・中央政治局に、次のような書簡を提出済みだった。

 《社会の腐敗や堕落の悪影響を受け軍紀が乱れ、士気が低下している。早急に解決すべき》

 《地方の党政治部部門や幹部の腐敗・越権や、それに対する人民の不満や怒りは、党の報告よりはるかに深刻。社会の管理基盤は崩壊している》

 胡総書記も12年、全国人民代表大会の軍代表団全体会議で「軍の反腐敗を強化し、軍内の党組織と幹部の清潔を維持せねばならない」と訴えた。

 そうした中、軍を指揮する総参謀部は、習近平(しゅう・きんぺい)総書記(59)が作成を命じた「13年軍事訓練指示」を通し、全軍に「戦争準備せよ」と下達(かたつ)した。

 さらに、中央軍事委主席に就任したばかりの習総書記による「広州軍区」視察(12年12月)にあたり、中国メディアは実戦時や実戦想定時の呼称「広州戦区」を用いた。「戦区」なる呼称は、民主的総統選挙を恫喝(どうかつ)すべく台湾近海にミサイルを撃ち込んだ1996年の台湾危機で、中国メディアが使って以来の登場。

 しかも視察の際、全軍に「三つの銘記」を号令した。内容は(1)共産党による指揮厳守が強軍の魂(2)戦争遂行と、その勝利が強軍の要-と勇ましい。

 ただ、小欄は「軍法に従った厳正監理が軍の基(もとい)」と謳(うた)う(3)に注目する。習総書記は同じ時期「軍内部での職権売買や汚職・腐敗」を批判し「このままで本当に戦争ができるのか」と糾弾。軍紀・軍法に責任を持ち、軍内検察機関を管轄する総政治部と中央軍事委も軍紀引き締めの教育活動を指示した。

 尖閣諸島奪取に向け、戦力投入を厭わぬ中国が、環境創りを始めた可能性は濃厚だ。同時に、日本との緊張状態を演出して、軍内基盤が脆弱(ぜいじゃく)な習総書記がタカ派の軍高官を優遇し、軍内での権威を確立せんとする狙い。また、緊張状態による軍紀立て直しを図る、複数の側面を併せ持つ。

■軍紀弛緩が呼ぶ偶発戦

 確かに軍精強性の尺度は、いかに厳正なモラル=軍紀を保ち、旺盛なモラール=士気を維持できるか。軍紀が乱れれば士気も落ちる。従って、わが国として、中国軍が放つ腐臭は歓迎する。一方で、軍紀の弛緩(しかん)は「偶発的交戦」確率を高める。軍紀粛正が失敗続きでも、将兵の不満をそらすべく「限定的戦争」を起こす危険も現実味を帯びていく。歓迎ばかりしていられぬ「戦況」なのだ。

 ところで、予算不足に悩む自衛隊を表した川柳がある。

 ♪たまに撃つ 弾が無いのが玉に瑕(きず)

 中国軍は別の意味、即(すなわ)ち軍需品横流しの横行で、戦争に臨み「弾」が不足するかもしれない。そこまで腐れば「偶発的交戦」も「限定的戦争」も困難だが、もはや軍の体をなさない。盗賊やヤクザでさえイザというときに備え、弾は残すが…。

 (政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130530/frn1305301037000-n1.htm

◆人民解放軍幹部 収賄200億元に映画スターや歌手など愛人5人

2013.06.30  Social News Network

 政権発足以来、習近平・国家主席がとりわけ力を注いでいるのが軍権掌握と軍の腐敗撲滅だ。これが政策の両輪といえる。軍内には依然として江沢民や胡錦濤時代の影響が色濃く残っているが、習近平の「戦えば勝つ」という直接的で分かりやすいスローガンは軍内でも評判が良い。その一方、軍内の腐敗撲滅は大問題で、「軍は腐敗の巣窟」といわれるだけに遅々として進んでいない。

 北京の軍関係筋が明らかにしたところでは、習近平は軍事委主席就任後、軍内の腐敗撲滅のシンボルとして谷俊山・人民解放軍総後勤部副部長のケースを考えていた。昨年1月、汚職容疑で身柄を拘束し、翌月には全職務を解任した。谷は兵站部門を担当する総後勤部内でも将兵らの宿舎などを建設する不動産部門の担当が長く、土地取得や建設資材の調達などで業者から多額の賄賂を受け取っていた疑いが持たれている。

 すでに報道されているだけで、収賄額は200億元(約3300億円)に達し、職権を利用して私物化した邸宅は北京や上海など都心部の一等地300か所に及び、7000平方メートルの豪邸まである。

 それらの豪邸には中国産の最高級酒、貴州茅台(マオタイ)酒が1300ダース、計1万5600本も秘蔵され、高級ワイン1万本以上が発見された。

 腐敗幹部の通例として女性関係も派手で、有り余る金にものを言わせて多数の女性と関係を持ち、少なくとも映画スターや歌手など5人を愛人として囲っていたとされる。

 このような悪行が露見しなかったのは、「江沢民ら最高幹部への付け届けを怠らなかったためで、谷はやりたい放題だった」と同筋は明かす。

 しかし世の中には硬骨漢もいるもので、谷にとって悪いことには、それが直属の元上司、劉源・総後勤部政治委員だった。劉源は劉少奇・元国家主席(故人)の息子で、財産も権力も名誉も兼ね備えている。習近平の無二の親友でもあり怖いもの知らず。告発の仕方も大胆だった。2011年末に北京で開かれた軍事委拡大会議で谷の豪邸の写真をかざし、腐敗を明らかにしたのだ。

 これで谷は失脚し、さらに習近平が軍トップに就いたことで徹底調査が開始された。その余波で、谷の金が流れていたと噂される徐才厚・前中央軍事委副主席も渦中の人となった。徐は国家中央軍事委副主席だった今年3月、全国人民代表大会にも姿を見せず、身柄を拘束されたとの観測が高まっていた。と、ここまでは習近平も順調だった。

 ところがその後、徐は4月下旬に出版された王喜斌・中国国防大学長の著書に序文を寄せたと発表され、間接的に身柄拘束が否定された。これは徐と緊密な関係にある江沢民が動いたとの情報もある。

 徐のケースからも、習近平の軍内腐敗撲滅の第1弾は不発に終わった可能性が高い。

■文:ウィリー・ラム 翻訳・構成/相馬勝

※SAPIO2013年7月号

http://snn.getnews.jp/archives/111304

◆中国軍、汚職防止へ軍施設の建設・売却管理を強化

2014年 02月 20日 Reuters

[北京 20日 ロイター] - 中国人民解放軍は20日、汚職防止策の一環として、軍施設の建設・売却に関する管理を強化する方針を示した。適切な会計処理を進め、取引の透明化を図ることが狙い。

人民解放軍では1990年代後半に汚職の取り締まりを強化したが、近年は管理体制の不備などで再び汚職が増えている。

人民解放軍機関紙の解放軍報に掲載された新規則によると、軍施設の売却で調達した資金は適切な時期に全額、軍に引き渡すことが義務付けられる。事前に承認された計画とは異なる新規の施設建設も禁じられる。新規則は3月1日に発効する。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1J04820140220

◆中国軍の変化と[A2/AD」の読み方

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月11日(月曜日)
   通算第4536号  
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 内規が次々と破られ、変身する中国共産党と人民解放軍
  軍高官の外国訪問は外国での軍事展開の頻度に比例して増えた
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 米国は中国の最近の軍事戦略の変化を「ゲーム・チャンジ」と位置づけ、その中枢にある考え方は「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)にあると見ている。
 軍事評論家は、南シナ海の九等線を「サラミ作戦」とも命名している。
 オバマ政権の対応が「アジア・リバランス」と「ピボット」だったことは従来も述べてきた。

 中国軍にはいくつかの内部規定があり、これまでは次のポイントが厳格に守られてきた。
 第一に軍事委員会メンバーの外国訪問は年に一回
 第二に国際会議への出席を除き、軍高官は同じ国を二度訪問しない
 第三に外国からの同じ高官との面会も二度はない
 第四に国防大臣は相手国の同格の賓客をもてなす必要はない。
 第五に軍高官の外国訪問、あるいは外国からの軍高官の受け入れは時期が限定される。

 ところが近年、ソマリア沖の海賊退治への中国海軍の派遣から、国連軍への派兵協力に応じるようになり、同時に中国艦船の外国訪問は50回を越えた。
また外国海軍の中国の港湾へ親善訪問も100回を超え、外国軍との共同軍事演習(とくに露西亜と)も頻度が激しくなった。

 あまつさえ中国軍が主催する国際会議や学術シンポジウムが頻度激しく行われるようになり、外国の中国大使館への駐在武官派遣もいまでは108ヶ国に及んでいる(日本の駐在武官は九ケ国のみ)。
 こうなると中国の軍人も或る程度の国際常識を理解し始めたことを意味する。かくして中国軍の「国際化」とでもいえる微妙な変化に注目しておく必要がある。

▼「太子党」の軍高官らが再浮上した背景

 ならば軍事委員会主任の習近平に近く、もっとも影響力がある軍人とは誰だろう。
 表面的ランクから言えばナンバーツーは許基亮と氾長龍である。ともに団派に近く、胡錦涛が任命した人事である。
したがって習近平にとっては煙たい存在である。

 最近の中国の特色は外交方針に軍人の意見が強く反映されるようになったことだ。
習のいう「中国の夢」のイデオローグは、外交安全保障面では王炉寧、栗戦書らと推定されるが、軍人アドバイザーは軍事委員会のメンバーではなく、「太子党」の先輩らである。

 げんに中央委員会には軍人が二人の指定席があるのに、外交部からの中央委委員は不在である。外交部は、江沢民系の人々が多いため、軍とはしっくりいっておらず、同時に相互不信、相互軽蔑。
外交部の外交官等は知識力において軍を馬鹿にしており、軍は軍で頭でっかちの理論家を軽蔑している。
しかし基本的に「政権は銃口から生まれる」(毛沢東)ように、暴力装置というパワーを掌握する者が権力を握るのは古今東西、世の倣(なら)いである。

日本のメディアが発言に注目する王毅外相は中央委員にも入っておらず党内序列はきわめて低い。そのうえの外交上の先輩格は国務委員(副首相クラス)に昇格した楊潔チ(前外相)と唐家旋だが、ふたりとも習近平からは距離を置かれている模様だ。

となると、誰が軍事方面での助言を習にしているのか。
 一時は影響力を削がれていたと観測された(とくに胡錦涛時代に)劉源と、劉亜洲が習近平のブレーンとして復活しているようである(ジェイムズタウン財団「チャイナブリーフ」15年4月3日号)。

 同誌に寄稿したウィリー・ラムに拠れば、この劉源と劉亜洲が「習のプライベート・シンクタンク」だという。ウィリー・ラムは香港を拠点とする著名なチャイナウォッチャーである。

 劉源は、劉少奇の息子。劉亜洲は李先念の女婿。太子党出身の軍人ゆえ、つねに軍のなかで枢要なポストを占め、重視されてきた。

 劉源は「進軍ラッパ」的な軍国主義的発言を抑制させ、いま戦争をおこすような誤解を与える強硬発言をたしなめてきたが、「軍事力のないリッチな国とは、すぐに処分される太った羊だ」と比喩し、中国軍の軍拡を支持する一方で、暗に日本を批判した。
 劉亜洲は「反日」軍人のトップであり、恒に強硬発言で知られるが、軍のなかで、浮き上がった存在とされた。

▼現実の世界をようやく認識できた

 軍の人脈構造が変化した最大の理由は江沢民派の軍人らの総退場である。
 胡錦涛時代の十年間、江沢民は軍を抑えることによって「院政」を行えたのだ。
 しかし江沢民が入退院を繰り返し、パワーが弱体化するようになると、江沢民に連なる軍高官の「悪運」もつきた。

 前副主任の徐才厚と郭伯雄が失脚したが、とくに徐才厚は三月に死去し、郭伯雄は息子の郭正鋼が(浙江省軍区副政治委員)の取り調べを受けて以来、周囲を埋められてから、失脚が発表された。軍のなかで反抗する勢力を、気がつけば失っていた。
軍高官の失脚は34人(15年四月末現在)におよび、江沢民派の軍人高官がほぼ居なくなった。

 こうした状況を踏まえた習近平は次に軍高層部の側近を支える副官クラス、オフィスの書記クラスを自派に配置換えし、団派である許基亮、氾長龍そして総参謀不調の房峰輝の動きを睨むことにした。
 そのうえで、モスクワの軍事パレード参加には氾長龍を随行させる次第となった。
 
 そして軍の中に顕著な変化が現れた。
依然として「国軍化」議論はタブーだが、軍事メディアや『環球時報』に寄稿した王ゼンハン(前南京軍区副司令。音訳不明)などは、(党中央がいうような)「日本に軍国主義が復活することは不可能である。中国の軍理論は現実を対応していない。理論上の虚偽である」と言ってのけ、もっと現実的な外交的努力をするべきと訴えた(環境時報、14年10月9日、ならびに解放軍報、15年1月29日)

 こうしてハト派のような現実的な理論が軍にも登場した背景には国際貢献がある。
 PLAは、近年も海賊退治、エボラ熱発生時の外国人退去支援、マレーシア航空機行方不明捜査協力、そしてシャングリア対話への積極的参加を、その国際的な機関や、作戦への協力体制ができあがった。
 四月のネパール大地震でも、真っ先に救援隊を派遣し、印度と援助を競った。

 とはいえ、南シナ海の中国軍の行動は、上記国際貢献とは矛盾しており、スプラトリー諸島(南沙諸島)の埋立はすでに二万平方キロ、昨年末から四倍に膨張しており、ペンタゴンは「郡民の作戦拠点に使える規模」である、ミサイルや駆逐艦の増強ぶりからも中国の戦略である「A2/AD」は達成可能なレベルにまで建築、軍拡が進捗している。

http://melma.com/backnumber_45206_6205340/

◆人民解放軍の変化に注目が必要

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月25日(月曜日)
   通算第4550号 
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 中国軍の実質上のトップに范長龍(副主席)が急浮上
  習近平の「軍事外交」の姿勢強調で、世界の顔になってきた
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 先週、ケリー米国務長官が訪中の折、中国人民解放軍を代表して会見したのは范長龍だった。
 范長龍は党中央軍事委員会副主任で、形式上の主席は習近平だから、実質的には軍のトップである。

直前、モスクワの戦捷70周年軍事パレードへも、習近平に随行してロシア入りした。秋の習訪米でも、この范長龍が随行(事実上は先乗り)することが発表されているほか、年内のインド訪問も予定されている。
 かれはミャンマーも訪問しており、インド訪問は二回目となる。

 范長龍は軍事委員会副主任だから、許基亮と並んで実質的な軍のトップ、范と許は、中央政治局委員でもある。

 従来、軍の十名の軍事委員会メンバーのなかで明らかな団派は、許基亮、房峰輝ほかと考えられ、范長龍は「中立だが、団派に近い」と拙著『中国を動かす百人』(双葉社)でも、指摘したが、過去二年の動きから、范はもっとも習近平に近いことが歴然としてきた。

 習近平から信頼を置かれたのは、たとえ胡錦涛による人事だったとはいえ、団派に一定の距離をおき、上海人脈の軍人とは遠い関係だったことが幸いしたといえる。

 范は1969年に入隊し、軍人として一歩一歩たたき上げ、習が福州党軍事委員会第一書記の頃からのつきあいがある。

 ▼中国人民解放軍は窯変したのだろうか?

 米国国防大学の「中国軍事研究センター」フォローの黄叡雅(アレキシス・デール・ホアン)女史に拠れば「最近の中国軍は国際的な場面に頻繁に登場するようになり、そうした国際化に理解を示す軍人トップとして范長龍が重宝され始めた」と分析している。

 この黄色女史の分析は注目されている。
 「軍事外交の新段階にはいった中国は外国の軍との交流(相互訪問、共同演習)を外交の根幹に位置づけており、中国の安全保障の維持に軍事外交こそが重大な役割を果たすと習近平が演説しているところからも、外交とセットになっている」

事実、中国軍の外国軍との共同軍事演習は2006年までゼロ、07年に五回行われ、2013年と14年は各々七回となった。

 とくに「2014年以後は「人道支援」と「災害救助」が本格化し、MH370便の諸外国との共同捜索作戦から、アセアン、ロシア、ニュージーランドなどとの国際連携、いまでは中国軍の共同演習が、全演習の65%を占めるまでになった」(チャイナハンド、4月12日号)。

 しかし、このように俄な中国人民解放軍の窯変は何時まで続くのだろうか?
  
http://melma.com/backnumber_45206_6212192/

◆令計画失脚後、共産党中枢はだれが司どっているのか

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月15日(金曜日)弐
   通算第4542号 
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 令計画の失脚後、共産党中枢部はどうなったか?
  誰が中央権力の中枢部を掌握しているのか、栗戦書か? 孫春蘭か?
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 胡錦涛政権の中枢を担ったのは団派の令計画だった。息子のフェラーリ事故のもみ消しを、こともあろうに胡錦涛の政敵、周永康(当時、政治局常務委員)に依頼し、旗色が悪くなるや習近平に胡麻をすったが、失脚は避けられなかった。

実弟の令完成が機密文書を持ち出した郭文貴と同時に米国へ逃亡し、慌てた王岐山が密かに渡米したとか、しないとか。中南海の権力中枢で起きているのは内ゲバの後遺症である(その機密文書には北京市長時代の王岐山自身の汚職が書かれているということは先述した)。

 令計画は2012年9月に中央弁公室主任の座を突如引きづり降ろされ、統一戦線部長となった。事実上の降格である。
この統戦部長は、本来なら出世コースだが、令計画はすぐに外され、14年12月に失脚した。

 後継リリーフは女傑、孫春蘭(前天津市書記、政治局員)である。
 そして2015年四月、ふたりの新人副部長が任命された。政商副主席の王正偉と甘粛省の統戦部長だった苒萬祥である。

 もう一つ、令計画がつとめた中央弁公室主任は栗戦書になった。栗戦書は団派だが、下放されて下積みの時代に、習近平と肝胆合い照らず仲となった。
12年9月に就任し、翌年四月、二人の令計画の秘書役だった張建平と趙勝軒(ともに弁公室副主任)が取り調べを受けていることが判明した。

14年12月に中弁室秘書局長だった藿克、室局長だった陳瑞坪(女)が取り調べを受けていたことがわかり、藿は失脚した。

 2015年になって二月に王仲田(副主任)が取り調べをうけ、翌月に丁考文(調査研究局長)が中弁室の部長代理に、そして曹清(前警備局長)は習近平に引き抜かれ北京軍区司令員に二弾跳び出世と相成った。

 相関図を総覧すると、現在の習政権の制度上、中枢を司る中央弁公室は栗戦書が中心となって回り出したようである。栗戦書の次期政治局常任委員会入りは間違いないと言われる。

 ▼江沢民派は断崖絶壁? 四分五裂の乱調が明らかに

 版腐敗キャンペ-ンの究極の目標、つまり「大虎」は江沢民だが、もし習・王コンビの「版腐敗」が江沢民まで狙うとなると、かりにも国家主席、総書記、軍主任の三権を掌握した国家元首のスキャンダルを内外に露呈することになり、これは国家としての中国の恥辱、歴史上の汚点になる。

習近平がそこまで考えているとは思われず、もうひとりの大虎、曽慶紅の拘束・逮捕・起訴も考えにくい。

 しかし、これだけ追求の手がのびて上海閥の評判が悪いとなると、くるりと親分の批判をはじめる元高官もいれば、自己批判をする高官もでてくる。
醜い人間模様である。

 呉邦邦(元常務委員)は、江西省視察に現れて各地で「反腐敗による党の綱紀粛正を評価し、特権にアグラをかいた政治は改めるべきだ」などときれい事をならべながら嘗ての同僚を猛烈に批判したという。呉は江沢民の番犬として特段の出世をとげた、いってみれば江沢民の忠臣ではなかったのか。

 他方、「自首」が伝えられるのは戴相龍である。
 金融界の大物、戴相龍は元中央銀行総裁、天津市長、かれは長らく金融界に君臨し、全国社会保障基金理事長と栄達をきわめた人物である。その戴相龍が、当局に「腐敗バンカー」リストと罪状を告白し懺悔したなどと、まことしやかな噂が飛び交っている。

 戴相龍リストには、中国の銀行頭取、副頭取、理事長、副理事長クラスおよそ50名が列挙されており、具体的に香港での資金洗浄からタックスヘブンへの不正送金補助、高官の海外への財産隠しを手伝った具体例を列挙しているそうな。

 切っ掛けは戴相龍の女婿、車峰が米国に逃亡した郭文貴の豪邸購入に連座しており、この郭文書の発覚によって元国家公安部長の馬建が失脚し、周永康の逮捕、拘束へと繋がったからで、戴相龍は連座で拘束されるおそれがあり、その前に自首したと『争鳴』五月号が報じた。
 
 中南海の深い闇の一端が暴露された。

http://melma.com/backnumber_45206_6207475/

◆中国軍の主流は南京軍区出身者に

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月12日(火曜日)
   通算第4537号  
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 そして軍内に山東省人脈に負けず劣らず、江蘇省人脈が急拡大
  人民解放軍の高官は南京軍区出身者が最多に
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 山東省は孫子を生んだ故郷でもあり、軍人がやけに多い地域である。
 中国共産党のいう「抗日戦争」でも「英雄」が輩出したのは山東省だった(抗日戦争の主体は国民党だったが、これについては、この稿では触れない)。

 胡錦涛時代、軍閥の台頭や地域的人脈の特性よりも、宇宙・航空関連、とりわけミサイルの開発に功労のあった軍人が多数出世した。習近平政権は、この点も重視するが、軍の統一と団結を維持するために、地方軍閥化を懼れずに、江蘇省関係者ならびに南京軍区出身者を幹部に多数抜擢し始めた。

 最近の44名の軍高官の人事異動がなされたが、山東省、江蘇省出身がそれぞれ8名。ついで遼寧省、河北省、河南省、浙江省出身が各四名。異様である。

 山東省出身は軍委員会副主任の許基亮、第二砲兵司令員の魏鳳和、副参謀長の威建国、総装備部副政治委員の王洪晃、北京軍区司令の宋普洗らである。
 また上記44名中、40歳代が5名、ほかの大半が50歳代で若返りが目立つ。

 また出身地比較ばかりか、勤務の長い出身軍区をみると44名中、14名が南京軍区勤務経験者がしめており、南京閥を形成している。
南京軍区は前身が新四軍、華東野戦軍、第三野戦軍。国共内戦で活躍した第四野戦軍出身者が革命以後、軍の主要ポストをしめたが、最近は南京軍区出身者が主流ということになったようだ。

 他方、エリート軍といわれる瀋陽軍区出身は副主任の范長龍と許基亮、総参謀部長の房峰輝、国防部長の常万全、武装警察主因の王寧らである。
       
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胡錦涛も叶わなかった人民解放軍の腐敗に習近平が初めて大鉈を振るった。だが軍全体に行き渡った腐敗の根は余りにも深すぎる。急な入れ替えで身体を危うくする軍閥がいつ発起するかという危険が常につきまとう。それ程腐った根が深く広く地中に蔓延っている。

軍への就職は一人っ子政策による就職の花形だった。コネと賄賂で入隊を果たし、次々と金で階級を買う。軍の兵器のみならず戦車や戦闘機まで売り払って金をため、それで更に上の階級を買う。既得権益に汚染された人民解放軍にようやく習近平が手を着けた。

それは時に習近平自身に危機をもたらす危険に満ちている。江沢民が抱えて来た軍閥も四分五裂を始めた。しかし習国家主席に対する逆恨みは根深く存在する。

習近平は軍の刷新と共に露骨に南シナ海への覇権を求め始めた。流石に優柔不断のオバマもこれには慌てただろう。周囲をして一斉に非難を始めたが、いままで支那への優柔策が故、自分の声ではなんら強硬な抗議を発しない。いまだに自分だけは友好的なオバマで居続けようとしているように見える。だが岩礁埋め立てによる滑走路や港湾施設は明らかに周辺各国を脅かし、日本のシーレーンを危険に曝すことになる。とても見逃せる所行ではない。人民解放軍はいつ暴走するかも分らないほど末端は混乱している。

   

大東亜戦争は米国により石油や物資の輸送路を止められ、日本の息の根が止められようとした。資源を何も持たない日本にとっては「石油の一滴は血の一滴」と言われたほど致命的な行為である。「座して死を待つ」ことを潔しとしない日本は、負けるのを承知で白人世界へ挑戦し討って出た。

それを支那は再び行おうとしている。だが今回はまったく条件が違う。米国は日本の同盟国であり半島を除き東南アジアを始め周辺国の殆どすべてが日本の友好国である。しかもハッキリ言って、日本の海軍力は支那海軍ではとても歯が立たないほど強い。

日本の憲法改憲を急がねば、日本だけでなくアジア全体が危険に晒されている。今の日本憲法に抑止力は無い。

                 目覚めよ日本!