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fleurs et lapins(フルーレラパン)yukitake日記

お花とうさぎと、お出かけの記録など

「ろ」からはじまる絵本

2021-02-16 | 読書

興味のない方はリアクションスルー歓迎です

 

五十音絵本レビューも今回の「ろ」と、次回の「わ」を残すのみです。

でも、「わ」が終わった後、「ベスト30冊」を選んでみようかなと考え中。

 

「ろ」の絵本は5冊全部、外国人作家さんのものになりました。

 

ローラとつくるあなたのせかい ローラ・カーリン作 ひろまつゆきこ 訳 BL出版

この作品の主人公、というよりナビゲーターはローラという女の子。作者のローラさんの、子供の頃の姿なのかな?

それにしても何とクリエイティブなのでしょう~

ローラちゃんは自分の家、その家の周りの町、など自分の世界を作っていくのと並行して、こちら(読者)にもあなただったらどう?という問いをたくさん投げかけてくれる。

それに従って読者も自分の世界をつくってみると相当楽しいことになるだろうなと思う。たとえ絵心がなくても。

ふつうの目覚ましで目を覚ますのでなく、「あなたなら、なににおこしてもらいたい?みるめざまし?きくめざまし?それとも、におうめざまし?」という問いに対して、私がすぐに思いついたのは「モフモフの毛で頬を触られて起こしてもらいたい」(笑)(笑)

ローラちゃんほどクリエイティブでなくても、実際に紙の上に絵を描いたりしなくても、「いまあるくらし」の中に「ひらめき」を生み出すには、「忙しい」で終わってしまうあくせくした毎日ではなく、自分の好きなことや自分の周りの世界のディテールに心を向けることが大事ですね。

そうすれば自分の世界がより美しく、楽しく、新鮮なものになると思います。そういう丁寧な生活がしたいな。

 

60秒のきせき 子ネコがつくったピアノ曲 レズリア・ニューマン ぶん エイミー・ジューン・ベイツ え 小川仁央 やく

このお話は実話がもとになっているそう。

1992年に生まれた、ケツェル(ユダヤのことばで「子ネコ」)と名付けられた子ネコがピアノの鍵盤の上を歩いて偶然生まれた短い曲

もちろん、その偶然の音を書き留めたのは飼い主のモシェさんなのだけれど、モシェがケツェルの名前で応募したコンテストでケツェルの曲は見事特別賞を受賞

日本でも「猫の駅長さん」などが人気だけれど、「猫の作曲家」ケツェルも当時、新聞などに載って有名になったみたいです。

一体、どんな曲なのか聞いて見たくてYouTubeで探したら一応ヒットしました。ほんの20秒ほどですが。。。

Ketzel Cotel: piece for paws

ふーむなかなか味わい深い。「日常のささやかな出来事に奇跡を見出す」というのは先のローラちゃんのクリエイティブさと共通するものがありますね。

 

6この点 点字を発明したルイ・ブライユのおはなし ジェン・ブライアント 文 ボリス・クリコフ 絵 日当陽子 訳 岩崎書店

これも実在した人物のお話です。ルイ・ブライユさんは1809年生まれ、1852年没。

点字は英語でもBraille(braille、発音はブレイル)ですが、発明者の名前から来ていることは知りませんでした。

ブライユさんの子供のころから悲しい事故で視力をなくし、盲学校での勉強を経て点字を発明するまでの伝記が、絵本という短いストーリーの制約もある中、一人称の語りでうまくまとまっています。

ところどころに出てくる、カタカナ表記での短いフランス語が素敵。

表紙見返しの遊びに点字のアルファベット表、裏表紙に日本語の点字五十音表が載っています。

 

ロージーのひよこはどこ? パット・ハッチンス さく こみやゆう やく 好学社

とある農場の鶏小屋。場面はほぼその鶏小屋の近くから変わらない。

自分が生んだ卵からひよこがかえったけれど、ひよこはどこにいるのか?とあちこち探し回るめんどりのロージー

場面がほぼ変わらないのに加えてストーリーもとても単純だけれど、どこか味のある絵が魅力的です。

びっしり実ったリンゴの木や、そのほかの木々は、壁紙のパターンから切り取ってきたかのような雰囲気ですがこれがとても可愛い。

そして単純なストーリーに猫やキツネがぴりっとした緊張感を持たせている気がします。農場でおなじみなのは馬や牛や羊、ヤギ、などの動物だけどそれらの草食動物ではなくて、猫とキツネ、ね。

 

ロバくんのみみ ロジャー・デュボアザン さく こみやゆう やく 好学社

デュボアザンさんは「ほ」で紹介した『ぼくはなにいろのネコ?』の作者。そして訳者は、一つ上の『ロージーのヒヨコはどこ?』と同じこみやゆうさんです。

デュボアザンさんが描く動物たちや、人物の表情がとっても素敵。

ストーリーは、同じ農場で暮らす馬の友達パットの耳に比べて、自分のぴんと立った長い耳がだらしないと気づいたロバくん。

農場の仲間である犬や羊や豚に、この長い耳をどうしたら良いかいろいろとアドバイスを受け。。。

最後にどうやって解決したかは読んでのお楽しみ。

ところでこのロバくん以外はみんな名前がついている(犬のヘクター、馬のパットなど)のが面白いですね。

農場に住んでいる動物だけでなくスズメでさえもダニエルという名前らしい。どうしてロバくんだけが「ロバ」なのだろう?

 

さあ、明日、いよいよ50音最後の「わ」の5冊を図書館で借りてくる予定です。

刈谷市中央図書館は3月1日から10日まで、蔵書整理のため年に一度の長期閉館を控えているので、その前に「わ」を借りられそうで、ちょうど良いタイミングです。

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました


「る」と「れ」からはじまる絵本と、喫茶アネモネ

2021-02-03 | 読書

「る」3冊、「れ」2冊、借りてきました。

 

ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家 エイミー・ノヴェルスキー 文 イザベル・アルスノー 絵 河野万里子 訳 西村書店

この作品はフランス生まれの彫刻家ルイーズ・ブルジョワ(1911年~2010年)の生涯がもとになっています。

私はこの女性彫刻家のことは知りませんでした。

タペストリーを修復することを家業とする家に生まれ、糸や針でタペストリーをなおす作業をする母親の姿が、壊れた巣を糸でなおすクモに似ているということで「ママン(おかあさん)」と名付けたクモの彫刻作品などで知られている方だそうです。

クモというと大きなものはちょっと気持ち悪くて正直、あまり良いイメージがないので、クモに母親の姿を重ね合わせると言うのは新鮮な驚きです。

クモって害虫を食べてくれる益虫だと言いますよね。私も、家の中に小さなクモがいるのを発見してもあんまり大騒ぎはしないかな(笑)

でも大き目のクモだと、ティッシュでつかまえて屋外退去させます(笑)

大きいクモで私の中で一番印象が強いのは何といっても『指輪物語』のシェロブですねえ(笑) 

『指輪物語』の作者、J.R.R.トールキン教授はクモが大嫌いだったそうですから、ルイーズ・ブルジョワさんのクモの彫刻を見たらどんな反応をしただろう。。。

ところで、この絵本の絵を担当したイザベル・アルスノーさんは『めをとじてみえるのは』の絵を描いた方でもあります。繊細な感じの画風が素敵です。

絵本の文中で赤い文字になっているのはルイーズさんの語録からの引用(巻末に説明あり)。

やぶれた・ほつれた布、切り裂かれた布を、繕い、縫い合わせ。。。それは心の傷をいやすことでもあるのかな。

ルイーズさんの生涯を追う以外にも、趣味や仕事で布や糸を使う作業に親しんでいる人にとっても楽しめる作品だと思います。

 

ルナのたまごさがし 作・絵 たなか鮎子 フレーベル館

『不思議の国のアリス』ではうさぎ穴に飛び込んだうさぎを追ってアリスが不思議の国へ迷い込みますが、この絵本ではイースターの卵から飛び出したうさぎに誘われて、ルナという主人公の女の子が卵探しにでかけます。

引っ越してきた町の学校になじめなかったルナちゃんですが、学校のともだちも卵探しに加わって。。。

「たまごがぱりん!」という言葉の繰り返しがたのしい。

本文の後にイースターについての説明ページがあってカラフルに絵付けされた卵は本当にきれいです。

以前は日本ではなじみのなかったハロウィーンが今やバレンタインよりも大騒ぎなくらいのイベントになって(私なんかはいい大人の行き過ぎた仮装は冷ややかな目で見てますけど。。。)、こういう流行ものに弱い日本では、そのうちいずれ、イースターももてはやされる日が来るんでしょうかねえ。

 

ルビーとレナードのひ・み・つ ジュディス・ロッセル 作・絵 ささやま ゆうこ 訳 PHP研究所

「とだなのおくにあるビスケットのカンのうしろ」に住んでいるルビーとレナード。

それは誰か人間の家なはずで、他のおおぜいの兄弟と一緒にくらしている、というのは可愛いけれどもこんなにたくさんネズミがいたら正直どうだろう、と苦笑いしてしまった(苦笑)

他のきょうだいたちには秘密でケーキを作り始めるルビーとレナード。

「かんたんかんたん」というところも含め、ノラネコぐんだんがパンを作るところを思い出しました。

ノラネコぐんだんと違って失敗せずにちゃんと焼きあがったケーキ。そして最後は。。。 

本文の後にカップケーキのレシピが載っていて、この絵本を読んだ子供なら作りたくなるだろうなあ。

私も洋菓子を作るのが好きですが、アイシングはやってみたことがないのでやってみたくなりました。

食紅とアイシングを組み合わせるといろんな色でデコレーションできますよね。海外に行くと水色とか、日本人の感覚では食欲がなくなる色のケーキ(笑)もよく見かけます。

 

れおくんとちいさいいもうと 野見山大輔 作 朝比奈かおる 絵 学研プラス

泣いてばかりの妹猫、ななちゃんと、お兄ちゃん猫のれおくん。

泣く妹をお母さんが抱っこするのを見て、「自分も泣いたらお母さんが優しくしてくれるかも」という方向へ行かなかったれおくんはエライ。

それどころか、お留守番の際、妹が泣いたら遊んであげようと、あの手この手をつくします。立派なお兄ちゃんだねえ。

でもうまくいかないので自分も泣いてしまう。。。

母親、兄と妹、という3人はすっかり擬人化された猫だけれど、妹ななちゃんが泣き止むきっかけとなったのは、猫ならではです(読んでのお楽しみ)。

優しいお兄ちゃんと可愛い妹がほほえましい一冊です。

 

レモンちゃん さとうめぐみ PHP研究所

あまり期待せずに借りた(失礼)割には、ストーリーが面白かったです

リンゴや桃やバナナなどの果物仲間に入れてもらおうと思ったら「レモンは甘くなくて酸っぱいから」という理由で仲間に入れてもらえなかったレモンちゃん。

大根、きゅうりなどの野菜たちの仲間にも入れてもらえず、「やくみ」グループのところへ。

小さな子供だと「やくみってなんだろう」と思うだろうけれど、それはレモンちゃん自身も同じなので読者の疑問もすぐ解決しますから大丈夫。

ワサビ、ショウガ、唐辛子の薬味グループは見るからにワルそうだけれど。。。人は見た目で判断してはいけない(笑)

ゆずねえ、かぼすねえもふくめた薬味グループは果物や野菜たちのピンチに大活躍。

そのピンチをもたらした、ワルを通り越しての本物の悪者は、読んでのお楽しみ。

キウイが羽になったちょうちょが飛んでいたり、イチゴやラズベリーの実や、プチトマト、オクラ、パプリカの断面などが花として咲いていたり、登場人物たちの周囲にもいろんな野菜や果物が散りばめられていて楽しいです。

秀逸なのは青唐辛子がイモムシみたいになっている子。かわいいなあ。

果物も野菜も、縁の下の力持ち的な薬味も、みんな自然の恵みですね。

 

今回はおまけで、絵本でなく漫画のレビューも(笑)

喫茶アネモネ1 柘植文 東京新聞

待ってました書籍化

1月24日(日)に届いて、翌日、大事な仕事を控えていたので読まないつもりでいたのですけど。。。ちらっとページを開いたら、いかん、全部読んでまうー(笑)

でも強い意志?で半分ぐらいまでにしておいて後からじっくり読みました(笑)

108篇、収録されていますので、これまで中日新聞に掲載されたものもあり「あ、これ読んだ」ってのもありますが、意外と、それが少ない気が。。。

そして驚くのは、この書籍化第一巻が出た後、毎週月曜の中日新聞に掲載されているものがこの第一巻には載ってないものだということ。

中日新聞ではまだ108篇も進んでないので、てっきり、本を買ったら先に読んじゃうことになると思ってました。

なので引き続きスマホで紙面を撮影して保存もしているのです(笑)

マスター、よっちゃん、常連のお客さん。。。アネモネワールドにあなたもほっこりすること間違いなし(笑)(笑)

 

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました


「り」からはじまる絵本

2021-01-21 | 読書

「り」の絵本は「リンゴ・・・」が多かったです。「り」から「わ」までの絵本が、一つの棚に入っているので、ああもうこれだけかと思うとちょっと寂しくもなり。

 

リーとスーのどこ?どこ?どこ? コンドウアキ 教育画劇

コウンドウアキさんは「リラックマ」や「うさぎのモフィ」の作者さんだそうです。

すごい、リラックマと言ったら超有名キャラじゃないですか。

うさぎのモフィは、グッズは持ってないけど LINE のスタンプは持ってるよ~(笑)

そういえばこのリーとスーもうさぎのモフィに似ているし、この作品でモフィもちゃんと出てきます(嬉)

大事に埋めておいたドングリが、探しても探しても出て来ないリーとスーのリス兄弟

肝心のドングリ以外のものが次から次へと出てくるのには笑ってしまいます。

どーんと、とあること(読んでのお楽しみ)が起きるクライマックスは工藤ノリコさんの「ノラネコぐんだん」シリーズっぽくもあるかな。

絵も可愛いくてリー、スー兄弟の他のエピソードもぜひ作って欲しいです。

大きくページいっぱいに描かれた弟スーの泣き顔が、可哀そうだけど可愛い(笑) あきらめないお兄ちゃんリーも可愛い(笑)

とにかく、可愛いのです(笑)

 

リッキーとアンリ みなしごチンパンジーと犬の友情物語 ジェーン・グドール/作 アラン・マークス/絵 赤尾秀子/訳 BL出版

ジェーン・グドール博士は霊長類、とくにチンパンジーの研究で有名な方ですね。

この絵本の主人公、チンパンジーの子供リッキーは中央アフリカの熱帯雨林がふるさと。

母親は殺され、リッキーはコンゴ共和国の町の市場で売り物に。。。

幸いにもリッキーを大切にしてくれる人に保護されて、心と体の傷を少しずつ癒していくリッキー。飼い主が飼っていた犬のアンリとも仲良くなります。

「犬猿の仲」などと言うけれど、人間の子どものように母親の面影を求める寂しがり屋のチンパンジーの子と、自分に甘えてくるチンパンジーの子を受け入れる優しい包容力のある犬のコンビはとっても微笑ましいです。

このお話は事実なのかな? おそらくグドールさんならこのようなチンパンジーにまつわる物語はいくらでも語れるのでしょうね。

アフリカではまだまだ、紛争や密猟などの問題が続いていますが。。。悲しい目をしたチンパンジーの子が増えませんように。

 

りすとかえるとかぜのうた うえだまこと BL出版

川、そして小さな生き物たち、ということで自然とケネス・グレーアムの名作『たのしいかわべ』を思い出してしまう。

この作品では題名通り、りすとかえるだけでなく、風もその2匹と同じくらいの主役であって、脇役ではないですね。

風の精ともいえるような「かぜたち」が、船のうえで眠ってしまったりすを恐ろしいところではなくちゃんとりすの家に送り届けてくれて良かった。

作者のうえだまことさんは私より一つ年上なだけですが、自然の風景や小さな生き物についてのあとがきの言葉にとても共感できました。

自分もおだやかな、そして「やわらかな」心を持ちたいです。

 

リターン 洞くつ壁画のまほう アーロン・ベッカー 講談社

文字のない絵本です。

一度、パラパラとページをめくってみただけではよくわからなかった(いかに私の理解力が文字に依存しているかの証拠)ので、もう一度じっくりと鑑賞したらストーリーや登場人物などもわかってきました。

リターンという言葉の意味が今一つわからないのだけれど、「洞くつ壁画のまほう」という副題は後半でなるほどという感じ。

全体としては冒険ストーリーになっていて、短い冒険映画みたい。

登場人物たちが手にしているクレヨンのようなものや、敵側が持っている、絵を吸い込んでしまう手回しの箱のようなものなどのアイテムが、文字のない絵本で重要な役を担っています。

自分だったらそれぞれの絵(シーン)にどんな文をつけるか、考えるのも面白いかも。

 

りんご 三木卓 文 スーザン・バーレイ(Susan Varley) 絵とほんやく かまくら春秋社

日本人が作った作品が英語に訳されている珍しいパターン。

上記の、文字のない絵本『リターン』とは逆に、日英両方の文が併記されているのでそれを読むほうに集中が行ってしまい、絵の鑑賞がちょっとおざなりに

でも、一度文章を読んだ後、もう一度今度は絵を中心にストーリーを追いました。

木の成長というのも絵本でよくとりあげられるテーマですが、この作品では動物やいろいろな生き物たちとかかわりあいながら、最初は弱くて小さくて、自分がリンゴの木であることも知らない木が、やがてしっかりと大きく強くなり、立派にリンゴの実をつける。

果樹というのは良いものですねえ。リンゴのタネを植えたリスはえらい。

 

次回、「る」と「れ」は合同で5冊の予定。。。

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました


「ら」からはじまる絵本

2021-01-08 | 読書

「ら」からはじまる絵本は「ライオン・・・」が多かった~~ 表紙を見て、絵も良いなと思うのが多かったので5冊全部ライオンにすることもできたかも、ですが、それじゃちょっとつまらないので他のも選んできました(笑)

 

ライオンの風をみたいちにち あべ弘士 佼成出版社

自分の子どもたちに対して「ですます」調で話すライオンのお父さんがなかなか良いキャラクター(笑)

俳句を考えるけれど、あっさりと「うかびません」というところも好感持てました(笑) でもそのあとでちゃんと2句浮かんで、自分で悦に入っているお父さん(笑)

子育てという日々の現実の生活の中でも、「風」を見て感じて、そして常に俳句を考えているような、ロマンチストで詩人肌のライオンのお父さん、良いな~

この作品では母親ライオンが全く出て来ないので、無邪気な子供ライオンたちとお父さんライオンの「父と子」の会話が余計にほほえましいです。

あべ弘士さんの絵ははっきりした色づかいと大胆なタッチが好きです。

 

ライオンはかせのはなやさん え・ぶん かつらこ BL出版

表紙見返しと見返しの遊びに描かれているいろんな植物は、ぱっと見、現実にありそうな植物の形だったりするけれど、どれも個性的な想像上の植物

それに対し、裏表紙見返しとその遊びに描かれているのは現存する植物たち。

植物というのは本当に、花が終わった後のタネも様々な形で面白いですよね。

この絵本の登場人物は、発明が大好きなライオンはかせとその友達のうさぎくん。

ダンディライオンという名の通り、ライオンそっくりのタンポポをうさぎくんがプレゼントとして持ってきたところからライオンはかせの発明熱に火がついて。。。

科学ではなんでも「もっと早くもっと効率的に」ということばかり目指してしまうけれど、自然のままに、ゆっくりと時間をかけることの大切さを忘れないでいたい。

「思いついたらまっしぐら」タイプのライオンはかせに対し、たんぽぽをタネから咲かせるというスローライフを良しとし、ライオンはかせの失敗にも寛大なうさぎくん。

タイプは違っても、いや、違うからこそ、2人は仲良しなのでしょうね。

 

Life ライフ 作=くすのきしげのり 絵=松本春野 瑞雲社

小さな町の外れにある店。

この、だれが店主なのかわからない Life というお店ではいわゆる物々交換が行われている。

順繰りに、このお店を訪れるいろんな人たちのLife。

私だったらどんなものを、どんなメッセージとともにこのお店に置き、代わりにどんなものをもらっていくかなあ。

もらうものは、このお店に行ってみないとわからないけど、自分がこのお店に置いてこようと思うものを選ぶのとそれに沿えるメッセージを考えるのは、うーんかなり時間かかりそう(笑)

子供からお年寄りまで、いろんなLife(人生)がありますね。

生かされながら生きている。生きるということは生かされているということでもあるのを、忘れずにいたいです。

 

ラ・タ・タ・タム ―小さな機関車のふしぎな物語― ペーター・ニクル文 ビネッテ・シュレーダー絵 矢川澄子 訳 岩波書店

矢川澄子さんはポール・ギャリコの作品を多く翻訳していて、その訳は私はとても好きです。

この絵本は文章が多めで読みごたえがあります。

機関車が好きな男の子などには受けそうな作品だけど、小さくて真っ白な「おじょうさん機関車」ということで、パワフルな男の子っぽい機関車ではないところが面白い。

まあ、今時「男の子っぽい」「女の子っぽい」というステレオタイプは古いと思いますが。。。

自分を作り出してくれたマチアスを探す機関車の冒険。

ステレオタイプと言えば、この機関車の冒険に出てくる工場や石炭山はギスギスしたところで、優しい人たちがいるのは村、というのもよくありがちだけど、これは古臭いイメージではなくて今も、そしてこれからも真実味のあることじゃないかな。

人間は、自然のあるところ(村)でこそ人間らしくなれると思うのです。

ファンタジックな、ドイツの香りのする絵も素敵な作品です。

ところで機関車が出す音というと定番なのは「シュシュポポ」みたいなのだと思うけど、ドイツの擬音語だとラタタタムなのかな?(笑)  

 

ラブレターをもらったら アニカ・アルダムイ・デニス 文 ルーシー・ルース・カミンズ 絵 石井睦美 訳 BL出版

レビューを書こうとして、あらためてふと表紙を見たら、左右の枝が作り出す形がハートになっていることに気づきました(笑)

ラブレターをめぐる、仲良しのハリネズミくん、ウサギちゃん、リスくんのストーリー。やや長めのストーリーなので、ページも多めの作品です。

誰かが書いたラブレターの文面が、ビリビリになった状態も含めて4回、繰り返して出てきますが、ラブレターというのは何度読んでも良いものです(笑)

ただ、ラブレターを受け取って良いことずくめではなくて、仲良し3人の間にちょっとしたいざこざも起きてしまいます。その後の、最後の展開がなかなか良い。

このラブレターを書いたのは誰なのか、誰に書いてあてたものなのか、読んでのお楽しみ。

 

50音絵本レビューも残すところ「り、る、れ、ろ、わ」だけですが、たぶん、「る」と「れ」は合同になります。少なそうなので。。。

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました


「よ」からはじまる絵本

2020-12-18 | 読書

8日(火)に借りてきたので返却期限は22日(火)だけれど、2週間経たずにハイペースで「よ」の絵本5冊を紹介します。

 

よるがきらいなふくろう 仁科幸子 偕成社

とある出来事から夜が嫌いになってしまい、夜行性を返上して昼間に活動し、友達もいないふくろう。

昼行性の動物たちと友達にはなれなかったのかな。

そんなふくろうの家に、毎晩ガが訪ねてきて、2人は仲良くなる。

ガは、夜の世界のすばらしさを話し、一緒に外に出ようと誘う。。。

河合隼雄先生の本をよく読んでいるせいか、このふくろうが問題を抱えたクライアント、ガがカウンセラーのように思えてならなかったです。実際にはカウンセラー(治療者)はガのようにこんなに積極的にクライアントに対し「〇〇してみようよ」、などとは働き掛けないものだと思いますが。

ふくろうが、昼間の世界で生きていて幸せならそれで良いのではとも思うけれど、誰にでも、「自分の属するところ」というものがありますね。

人間だったらそれは家庭だったり職場だったり、はたまた住んでいる「県」だったり。

思い切ってそういう自分が住んでいる・属している世界を変えようとするのも悪くはないけれど、ふくろうが夜行性の生き物として生まれてきたように「本来の場所でおさまる」ようになるのが一番良いことなのかもしれないですね。

 

夜のあいだに テリー・ファン&エリック・ファン 作 原田勝 訳 ゴブリン書房

原作のタイトルは The Night Gardener。

夜の間に、町の木々を刈りこんでいわゆるトピアリーにするふしぎな庭師さん。

いろんな動物たちのトピアリーは町の人々をハッピーにする。

この不思議な庭師さんには、「昼の顔」があるのかなあとふと思ってしまいました。

季節が変わっても、人々の心に届いた温かさは変わらない。そして庭師さんの技はウィリアムという少年に引き継がれ。。。

大事な「技」というのは夜にこそ、伝承されるものなのかもしれないですね。

 

よるのいえ スーザン・マリー・スワンソン 文 ベス・クロムス 絵 谷川俊太郎 訳

谷川俊太郎さんの訳となるときっと良い絵本だろうと思って借りてしまいます(笑)

木版画のような素朴な絵ですが、木版画ではなく「スクラッチボード」という画法なんですね。

Wikipedia先生によると。。。スクラッチボードとは、陶板( 陶器 で作られた板)の上に塗られた 墨 の塗膜を削ってできる 線 や 点 で表現する画法の一つ、だそうです。

文章は、わらべうたから題材を得たものだそうで、確かにシンプルで短いけど詩的な言葉がページをめくるたびに続いていきます。

家の鍵、ベッドと灯り、ベッドの上の本、本の中の鳥・・・と言う順に展開していき、ここでもまた「寝室の窓を飛び出す」という冒険のパターン。

そして太陽や月とともに光や闇の世界での冒険をハイライトとして、最初とはほぼ逆の順に鳥、本、ベッド、灯り、家の鍵・・・などと収斂していくのが「うた」の構成としてきれいにまとまっているなと思いました。

 

4ひきのりっぱなこぐま さく アーノルド・ローベル やく こみやゆう 好学社

アーノルド・ローベルさんは「がまくんとかえるくん」のコンビが登場する『ふたりはともだち』などで有名。

こみやゆうさんは『ねこのオーランドーたのしい日々』の訳者さんです。

この作品の原著のタイトルは The Bears of the Air ということで、読み進めていくとなるほどと納得しました。日本語訳のタイトルも良いと思う。

ずんぐりむっくりしたクマたちが可愛い。

「りっぱなくまのするべきこと」として本に書いてあることの中に私だったら「ハチミツを探して食べること」というのを入れたくなってしまう(笑)

それにしても「がまくんとかえるくん」のシリーズを再読したくなりました。やはり、がまくんとかえるくんのキャラクターが魅力のあのシリーズは名作ですよね。

 

ヨーレのクマー 宮部みゆき/作 佐竹美保/絵 角川書店

宮部みゆきさんはベストセラー作家ですが私は一冊も読んだことがありません。

心優しくて、ヨーレの街を守っているクマーという怪獣は、なぜ透明な姿だったのだろう?

透明でなくなったばかりに悲しい展開に。。。

最後の一文がせつないです。

絵は、アニメ的な画風で別に嫌いではないのですが、画風が違うと当然ながらこの作品への印象が違ってくるだろうなと思いました。

絵本というのは一人の人が文も絵も担当していることも多いですが文と絵が別々の人によるものであることも、多いですね。

ざっくりと言えるのは、東欧やロシアなどの国々の絵本画家さんの絵は、女性が好きな、雑貨などのデザインにもなりそうな可愛い絵が多い 日本の絵本画家さんの絵は、なんとなく「日本人だな」というのがわかるのですが、たまに、海外の絵本のような絵を描かれる画家さんもいますね。

  

明日図書館に行ったら、返すのは年明けになると思うので「ら」行からは2021年に持ち越しです。

最近ハイペースが続いているので、ちょっとのんびりとレビューを書こうっと(笑)

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました。


「ゆ」からはじまる絵本

2020-12-06 | 読書

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「ゆ」からはじまる絵本は5冊全部、外国人作家さんのものになりました

珍しい~~

 

ゆきのひのおくりもの ポール・フランソワ/文 ゲルダ・ミューラー/絵 ふしみみさを/訳 すずき出版

とにかく絵がかわいい。

雪の景色と可愛い動物たちの絵で、この画家さんが描いたクリスマスカードがあったら欲しいと思うくらい。

どの動物も可愛いけど、こうさぎの可愛さはもう文句なし(笑)

原作のタイトルはフランス語で「いい友達」Les bons amis なので、順番に出てくる動物たち(草食動物仲間?)の優しいストーリーにも心温まります。

 

ユーゴ修道士と本を愛しすぎたクマ ケイティ・ビービ 文 S.D.シンドラー 絵 千葉茂樹 訳 光村教育図書

ちょっとピンとこないストーリーでした。

著者のあとがきにある「ペトルス(=クリュニー修道院の修道院長)が見舞われた写本とクマの事件」という説明だけではよくわからなかったので、「クリュニー修道院 ペトルス修道院長 クマ」というキーワードでGoogle検索してみると、確かに聖アウグスティヌスの書簡集がクマにかじられて消失した、という出来事は12世紀に起きた史実のようで、それがもとになってこの絵本ができているのはわかりました。

ただ、この絵本でのクマの立ち位置というか、クマとの絡みがどうもすっきりしなくて、その理由をいろいろ考察してみた結果をツラツラと書くこともできますが、何事に対しても批判やネガティブなことはあまり言ったり書いたりしたくないのでやめておきます。

クマはさておき。。。中世の時代に、すべて手作業で写本を作るのがどんなに大変だったか、ということが印象に残りました。むしろこっちのほうがこの作品の主題なんでしょうね。

時間をかけて、心を込めて作った写本は、単なる「本」でなく、もはや芸術品と呼べるものですよね。

 

夢にめざめる世界 ロブ・ゴンサルヴェス 作 金原瑞人 訳 ほるぷ出版

この作者さんの作品は、50音絵本レビューを始める前の2018年の8月に『どこでもない場所』という作品を読んだことがあります。

そちらは文がセーラ・L/トムソンさんという人の担当でしたが、この作品はロブさんが描いた絵に自分で言葉(詩)を添えたもの。

ストーリーがあるわけではないですが、トリック絵のような美しい絵をただ眺めるだけでも癒されます。

枯れ葉がチョウになっていく絵で眼鏡をかけているのがロブさん自身かな。

やはり表紙(本文でも最後に出てくる)の絵が一番好き。

ゆったりと力を抜いて浮かびながら、見上げる空。。。いや、地球。宇宙飛行士のように、一度で良いから外から青い地球を見てみたいなあと思う。

 

ゆめみるどうぶつたち イザベル・シムレール 文・絵 石津ちひろ 訳 岩波書店

絵本としては割とページが多いですが、次はどんな動物が出てくるかなと期待しながら読むとあっという間です。

いろんな動物が、いろんな場所で、いろんな姿勢で、いろんな夢を見る。

いきなりナマケモノがレーシングカーの夢を見る、ということで面白いな、と思ったのですが、具体的に何の夢を見ているのか、が書かれている動物は少数派でした。

4~3種類ごとの動物の次に小休止のように夜の風景が見開きでたびたび出てくるのがとてもきれい。

イザベル・シムレールさんは「あ」で紹介した『あおのじかん』の作者ですが、こちらの作品ではシャシャシャッとひかれた線、特に蛍光っぽいオレンジの線が印象的な絵ですね。

たくさんの動物たちの「夢」が出てきた後、最後に登場するのは。。。予想通りでした(笑) 読んでのお楽しみ。

 

夢の川 マーク・マーティン=作 海都洋子=訳 六耀社

原作のタイトルは A River。

ブルース・スプリングスティーンの The River を思い出しちゃった。この曲、めっちゃ暗いよねえ~~(笑)

日本の曲『神田川』も暗いけど。。。なんだろう、奇遇なことにどちらも川つながりで暗いという(笑)

あ、脱線してしまいましたがこの絵本は暗くないです(笑)(笑) ちょっとだけ、せつないけど。

マンハッタンのような都会の、どこまでもビル群が続くような景色が窓の外に広がる部屋。ビル群を縫うように川が流れている。

こんな都会では、川というのは自然を感じられる唯一のものかもしれないですね。。。

都会では川岸がすべてコンクリートであっても、川の水が澄んでいなくても、川は川。

その川の流れに乗っていくといろんなところに連れて行ってくれる。

最初は、都会の忙しく走り回る車や黒い煙を吐き出す工場の眺め。でも田舎に行けば、動物たちや畑の広がる景色に出会える。

普通、川って上流が山や田舎のほうで、大きな都会は下流の、河口とかにあるってのはこの際置いておいて。

表紙の絵と同じく、ジャングルのシーンで、黒い背景にたくさんの目が見える絵が良いですね。

表紙見返しと裏表紙見返しで、主人公の部屋の昼と夜、特に夜の窓の外に注目です。

 

年内に、「よ」の絵本5冊を紹介するつもりです。

最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました


「や」からはじまる絵本その2

2020-11-26 | 読書

つまらない上に何の役にも立たない読書レビューが続きます。

「や」からはじまる絵本の2回目、5冊全部、日本人作家さんのものになりました。

 

やじるし 平田利之 あかね書房

デザイン会社に勤めていたという作者さん。この絵本もデザイン性が高くて、私は特に、雨を表す単純な縦のラインが好き。

使われている色は、海や空に加え、花も青。そして黄色いやじるし。赤やピンクは出てきません。

こういうシンプルな配色だけど、本当に優れたデザインというのはシンプルなものなのでしょうね。

海の白波が雲のようであったり、海を自由に・飛ぶように泳ぐ魚が空を自由に飛ぶ鳥になったり、様々に形を変え、役割も変えていくやじるしも面白い。

そもそも、矢印というのはとてもデザイン性の高いものですよね。

「あれれ?」や「ひゃあ」というセリフが多い気がしますが、意図的なのかな?

 

やまこえ のこえ かわこえて こいでやすこ さく 福音館書店

山と野と川を越えて夜のお使いに行くきつねのきっこに、お月さまやフクロウやいたちがついていく。

だんだんメンバーが加わっていくよくあるパターンで、「森の動物もの」かと思いきや、人間、それも町で普通に人間の営み(仕事)をしている人が出てくるのが意表をつかれて良かったです。

おつかいの帰り道で出てくる悪役は、シルエットから大体想像がつきますね(笑)

秋祭りの日が終わったら、日が暮れて登ってくる十六夜のお月さまにも、きっこはきっと、お礼をするのだろうなと想像しました。

 

やまとうみのゼリー 井上コトリ 小学館

実は、4冊選んだところで、あと1冊借りようと思っていたのがエリック・カールさんの『やどかり』だったのですが、それをやめてこちらにしました。

ピピッと来たのですよ(笑) タイトルにも興味がわいたし、絵も可愛い。

表紙のピンク色のバーバーパパのような登場人物はタコなのですね。

タコヤマさんは海から山に引っ越してきたゼリーのお店の店長さん。

いつもタコヤマさんの頭の上にいてくれるアマグモモドキというのが秀逸です(笑)

タコヤマさんがゼリーの材料を調達する先々で出会うキャラクターもユーモアがあってほっこりします。

ところで「いろんな種類がずらっと並ぶ」というのは絵本の世界におけるとても魅力的な絵のパターンで、パンなどの食べ物が多いと思いますが、「も」で紹介した『モカと幸せのコーヒー』でもずらっといろんな種類のコーヒーが出てきました。

タコヤマさんが作ったいろんな種類のゼリーも、自分だったらどれが食べたいかなあと選びたくなる楽しさがあります。

それにしても、実際、自分も以前から思っていたのだけれど、寒天というのはもともと海でとれるテングサを、山のほうの寒い地域で寒天に加工するというのは海と山のふしぎな融合ですよね。

私は長野県伊那市にある「かんてんぱぱ」(伊那食品工業)さんのゼリーやデザートが大好きなのですが、素晴らしいホワイト企業でもあるので、応援しています。

 

山びこくん 作 たかはし ゆうじ 文芸社

やっほーと言えばやっほーと答えてくれる、そんな山びこくんには守らなければならないルールがあるという。

そのルールを読んでなるほどと思うと同時にちょっとユーモラスでもありほっこりしてしまいました(笑)

そのルールを決めたのが誰なのか、読んでのお楽しみ。 

環境問題や自然破壊、それに災害や人と自然のかかわりなどいろんなことを考えさせてくれるとても良いストーリーです。

文字が、作家さんの手書きと思われるが温かい感じなのも好きです。

たかはしゆうじさんという作家さんは1993年愛知県生まれだそう。若い 愛知県民として親しみを感じます。これからが楽しみな作家さんですね~

 

矢村のヤ助 かこさとし 加古総合研究所

ひさしぶりにかこさんの絵本を借りてきました。

この絵本は2018年に92歳で亡くなったかこさんの米寿を記念して2014年に出版された非売品で、全国公共図書館に贈られたそうです(非売品なのでISBNがない)

ストーリーは、有名な「鶴の恩返し」に似ていると思ったけど違いますね。

かこさんは昔話から題材を得た絵本作品の場合、それについてあとがきで解説してくださっていることが多いので、この作品でもあとがきを読むとこの物語を選んだかこさんの意図がよくわかります。

絵本になる前はかこさんによる紙芝居だったというこの作品、ハラハラするクライマックスで、紙芝居を聞いていた子供たちもさぞ食い入るように聞いていたことでしょうね。

結末は、ハッピーエンドと言って良いのかどうか。。。

最後のシーンのヤ助の表情を見ると、彼の心の中にどんな気持ちがあるのだろうと思わずにはいられません。

  

本当は、明日が私の都合としては良かったのだけれど、明日、毎月第4金曜日は書庫整理のため図書館がお休み。

なので土日のどちらかに行こうかな~と考えていましたが。。。

今日、さくっと行って「ゆ」の絵本を借りてきました(笑) 

一日違うだけで結構、大きいんですよね。「今日借りてくると二週間後はこの日か」ってね。まあそんなに予定があるわけでもないのでどうにでもなるんですけど。

コメント欄閉じています。読んでくださってありがとうございました。


ナルニア国物語 再読了

2020-11-23 | 読書

英日突き合わせて再読してきた「ナルニア国物語」シリーズ、7作全部読了しました

5月から、月に1作のペースでちょうど7か月で読了。

『ライオンと魔女』は映画にもなったのでビジュアル的な面も含め一番記憶に残っているけど、それ以外の作品は子供の頃に読んで以来、細部はもちろんあらすじさえあんまり覚えていないものが多かったので(恥)、ひととおり再読できて良かったです。

7作のうちで一番好きなのは『朝びらき丸東の海へ』かな~

海の冒険ってのは、わくわくするもんです(笑)

この作品では、にっくき悪役、みたいのが出て来ないのが好きなのかも。

途中まではユースチスが悪役で、そのキャラクターは『ライオンと魔女』の途中までのエドマンドとはまた違う「嫌な奴」なんですが、ユースチスが良い子になって以降の朝びらき丸の冒険は安心して楽しく読めますね(笑)

でも、キャラクターで一番好きなのはなんといっても『銀のいす』の泥足にがえもん

もうね、泥足にがえもんが好きすぎて、『銀のいす』を読むペースが速かったこと(笑)

ただ、『銀のいす』って、タイトルにもなっているにしてはまさにその銀のいすが出てくるシーンがほんのちょっとなので、なんだろう、『リリアン王子と地下の国』みたいなタイトルのほうがぴったりかなあなんて思いながら読みました。

そして『さいごの戦い』。。。

『馬と少年』でも、カロールメン国やその人々の描写に差別的なものを感じてちょっとうんざりしたのですが、『さいごの戦い』もまた一段とそれが強いですね。。。(エーメスという若者を除く)

最初のほうの、大毛ザルのヨコシマがたくさん出てくるところはもう、うんざり通り越してムカムカ(笑)

でも憎むべきはヨコシマそのひとでなくて「人をだますこと」「友人(ロバのトマドイ)に優しくしないこと」「悪知恵」「(自分より大きな、敬うべき存在である神に対する)不遜」などの、「悪しき心」なのです。

ヨコシマはただその「悪しき心」を象徴するために作者のC.S.ルイスに使われたキャラクターなわけで。

最後の章の、影の国に対するほんもののナルニア、というあたりも含め、この『さいごの戦い』は宗教色が強い・スーザンが可愛そう、とかいろいろレビューされていますけど、全7作で出てきたキャラクターが一堂に会するフィナーレは、きれいな終わり方なんじゃないかなと思います。

『さいごの戦い』はキリスト教色が強い、というよりも、私は読了感として「信仰」という言葉を強く思いました。なになに教、ではなく「信じる力」、ね。

こうして、大人になってからあらためて読んで、いろいろ思うところがありましたが、初めて読んだのが子供の頃だったおかげで、「自分もナルニアに行けるかも」と実家の洋服ダンスにもぐりこんだりした経験があるのです。

そう、「自分もナルニアに行けるかも」と実家の洋服ダンスにもぐりこんだ。。。これこそ、私がナルニア国物語から得た一生の宝物ですよ。

  

ナルニア国シリーズの次に読むことにしたのは、今年1月にコンプリートBOXセットを買ってある「赤毛のアンシリーズ」

日本語訳は、8作全部読んだのかな。。。?読書記録ノートを引っ張り出してこないとよくわからないです(汗)

子どもの頃、じゃないけど10代の頃にプリンスエドワード島の写真集を図書館で借りて、なんてきれいなところなんだろう。。。と感激したのは覚えています。

1か月に1作、とは決めずにのんびり読んで行こうと思います。

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「や」からはじまる絵本と、『ノラネコぐんだんケーキをたべる』

2020-11-16 | 読書

五十音絵本レビューも残すところ「や、ゆ、よ」と「ら」行、それに「わ」の9つとなりました

「や」は、思いのほか良さそうな作品が多かったので、2回になります。

 

やぎのめーどん たかくあけみ さく 福音館書店

「や」は、「やぎ・・・」が結構多かったんですよ。その中から1冊選びました。

ヤギは本当におとなしくて、人間にとって身近な存在ですね。

この作品のヤギの名前は「めーどん」ですが、時に「めーどんどん」とか「めーめーどん」と呼んだりするのが良いリズムになっています。

めーどんの優しい目が印象的。

ヤギのまつ毛マニアの人(そんな人いるのか?)にとっては、存分にめーどんのまつ毛を楽しめます(笑)

割と写実的に描かれているめーどんと違い、森の動物たちはうっすらとした、柔らかくデフォルメされた形でそれらの動物たちがみんな一緒になって優しい背景となっているのが美しい。

裏表紙の、ウ〇チをぽろぽろ出しているめーどんの絵も良い(笑)

各地のこども動物園やふれあい動物園でおなじみのように、ヤギのウ〇チってのはこうなのよね(笑)

それにしても牛乳ならぬヤギ乳ってどんな味がするんだろう? ヤギ乳で作ったチーズってリコッタチーズだっけ? 食べたことないな。。。

 

やくそく ニコラ・デイビス=文 ローラ・カーリン=絵 さくまゆみこ=訳 BL出版

表紙にタイトルが書いていない、珍しい絵本 こんなの初めてかも。

一瞬、左右どちら開きなんだろう?と思いましたが、出版社の名前が書いてあるのが裏表紙、しかも外国人作家のものだから左開きですよね。

都会でも緑が多い都会ならまだしも、ほこりっぽくて砂まじりの風しか吹かないような都会で、心がぎすぎすしない人間なんているのでしょうか。

でも、おばあさんから奪ったカバンの中に入っていたのがどんぐりだったことに対し、金目の物でも生活に役に立つものでもない、と憤慨するのではなく「生まれてはじめてゆたかな気持ちになった」というのが素晴らしい。

子どものころからこんな都会で暮らしてきたのに、どんぐりのおかげで突然何かが変わった、というのはこの少女の「魂」の中に緑や、緑がもたらす潤いとともに生きることこそが本当の自分である、という強い柱のようなものがあったとしか思えないのです。

どんぐりが大きな木、そして森になってもなお、次々と遠くの街でどんぐりを植え続けるこの少女はいったい何者だろう?

最後の展開は、終わりが始まりにつながる、というような、ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』の中の物語群を思い出させました。

 

やさしいたんぽぽ 安房直子・ぶん 南塚直子・え 小峰書店

安房直子さんと南塚直子さんは、『うさぎのくれたバレエシューズ』のコンビでもあります。

目にも暖かな黄色いタンポポが咲き乱れ、タイトル通りやさしさあふれる作品。

でも、現実には「ひかりのくにゆき」の電車に乗れる犬猫たちばかりではない訳で。。。ちょっと複雑な読了感です。

 

やまなし 宮沢賢治・作 田原田鶴子・絵 小学館

五十音絵本レビューを始める前に、2019年の2月に読んでいることを忘れてまた借りてきてしまいました(汗)

賢治さんの『やまなし』は他の方が絵を描いたものもたくさんあったというのに、またこの田原田鶴子さんのを借りてきてしまったというのは、やっぱり表紙だけみても自分は田原さんのこの画風が好きなのでしょうね(と、自分の記憶力のなさを棚に上げる)

谷川の底の、美しいとしか言いようのない世界。

クラムボンって何だろう?クラムボンが死んだ、殺された、というのもいきなり不気味な物言いだけれど、カワセミによる一瞬の恐怖のほうがもっと大きい。

かぷかぷ笑う、ぽかぽか流れる、もかもか集まる、など賢治さんお得意のオノマトペも堪能できます。

それにしても5月と12月、二枚の幻燈で、それぞれハイライトはカニたちの世界にいわば侵入してきたカワセミとやまなしですが、作品全体のハイライトはやはり後半にもってくるべきだとすると、最初に12月のやまなし、次に5月のカワセミ、という構成だったら作品のタイトルは果たして「カワセミ」になっただろうか?

いや、この作品のタイトルはやっぱり「やまなし」でなければいけない。だから12月のやまなしのほうが後半でなくてはならない。

恐怖や不安を象徴するカワセミではなく、良い匂いがして喜びや幸せの象徴であるやまなしこそが、この美しい作品をまとめているのですね。

最後のほうのページに用語解説や賢治さんの略年譜もあって絵本としての読みっぱなしでないのも良いです。

 

山はしっている リビー・ウォルデン 作 リチャード・ジョーンズ 絵 横山和江 訳 鈴木出版

表紙見返しと見返しの遊び、さらにその次のページで計3面にわたって描かれている、山に住む動物たち。

この動物はなんだろう?というものも多いけれど、ウサギ好きな私は、表紙見返しの最上段左から4つめのナキウサギはすぐにわかりましたよ(笑)

日本に住む貴重なウサギとして、アマミノクロウサギはよく知られていると思いますが、「氷河期の生き残り」と言われていて、見た目はウサギというよりもネズミのような、北海道の大雪山などに住んでいるナキウサギのことを、皆さん、知っていますか?

ところで、山(森)にすむ動物たちの名前を挙げていくと、例えばリス、キツネ、タヌキ、鹿、サル、クマ、ウサギ、それにいろんな鳥たちが思い浮かびますが、実際にはもっともっとたくさん、多様な生き物がいることがこの絵本でよくわかります。

もちろん、この作品に出てくる動物たちで、日本にはいないのもいますけどね。

どの動物も本当に可愛くて、愛おしいです。

この作品では山に住むいろんな生き物たちの、朝から夜までの様子を描いていますが、動物というのは夜行性のものも多いので、それに合わせて夜のシーンも多めです。

これがさらに一年の様子を描いたものであれば、それぞれの季節でのいろんな動物たちの生活がもっと生き生きしているのでしょうね。

裏表紙の見返しとその遊びの2面にわたって、動物たちの名前が紹介されているので、作品の中でそれぞれの動物がどこで登場しているか、確認しながらもう一度読みました。

  

今回は、おまけとしてノラネコぐんだんシリーズ最新作のレビューも。

ノラネコぐんだんのカレンダーとバッグの付録が欲しくて、雑誌 Kodomoe を買いに行ったら、あら、ノラネコぐんだんシリーズの最新作もあるじゃないですか

ってことで予定外の出費になっちゃったけどもちろん買ったのでした(笑)

ノラネコぐんだんケーキをたべる 工藤ノリコ 白泉社

マーミーちゃん大活躍ですね。

いろんな美味しそうなケーキも魅力的ですが、ストーリー展開が今回はちょっと凝っていて面白かった。

ワンワンちゃんのお店がバラバラになったシーンのワンワンちゃんの「あーあ わたしのみせが・・・」というセリフと、その後ろ姿が、見るたびに笑ってしまう。

何度もノラネコぐんだんにこんな目にあわされて、もうあきらめの境地のワンワンちゃんを感じます(笑)

でもしっかり、今回もノラネコたちを叱って反省させるのは忘れていない真面目なワンワンちゃん、大好き(笑)

 

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「も」からはじまる絵本

2020-11-03 | 読書

「も」は圧倒的?に「森・・・」というタイトルの絵本が多かったですね。

私が好きな「桃」関連はなかったのだ

 

モカと幸せのコーヒー 刀根里衣 NHK出版

私は筋金入りの紅茶党だけど、迷わず選んだ一冊

緑がかかった水色の背景に、カップやポットの優しい赤、それに白うさぎの白と、コーヒーの茶色というのがメインの配色。これがなかなか良い。

主人公の「ぼく」はなぜ、心も体も疲れ切っていたのだろう?仕事?学業?

モカといううさぎは、主人公が昔飼っていたうさぎさんなのかな?

いろんなことを思いながら読み進めました。

鳥の形のカップも可愛いです。

いやなことは忘れて、気持ちを切り替えて、とにかく笑顔になってみる。。。

言うは易く行うは難しでそれができれば苦労しない、だって人間なんだから最低最悪の日だってある。

でも、一杯のコーヒーや紅茶でほっと一息つくことは、心の健康にとって驚くほど重要なんじゃないかと思うのです。

こんなに可愛いうさぎににこっとされたら、きっと笑顔を返さずにはいられなくなります。思いっきり泣いた後で、ね。

 

もくもくをつかまえた ミカエル・エスコフィエ 文 クリス・ディ・ジャコモ 絵 ヨシタケシンスケ 訳 クレヨンハウス

人気絵本作家ヨシタケシンスケさんの訳ということで借りてみました。

フランス語の原題で nuage となっているので、「もくもく」は実際、雲なのだけれど、考えてみると、小さな可愛い雲が、自分のペットのようになったらどんなに良いだろう。

でも「もくもく」がどこへも行かないように捕まえておくのは至難の業。

悲しくなると、雨雲のように灰色になって雨と言う涙を降らす。。。

「もくもく」との付き合い方は、いろいろ考えさせられるかも。

 

もみじのてがみ きくちちき 小峰書店

今の時期(秋)にぴったりの一冊。素朴な絵にとても味があります。

朱色に近い赤はモミジの色

赤くなったモミジを探す森の動物たち。いろんな動物が次々に加わっていくのはよくあるパターン。

キツネに見つからないようにじっとしている絵ではひよどり、りす、ねずみがみんなビクビクして垂れ目になっているのが、可愛そうだけど面白い(笑)

モミジの絨毯が見事なハイライトです。

赤いモミジは森の動物たちにとって、これからの厳しい冬を教えてくれる手紙なのですね。

 

ももんがモンちゃん とりごえ まり 学研

ほのぼのとしたストーリーです。

どこの世界にも、「うまくやれない子」というのはいるものです。

でも「うまくやれない子」だってちゃんと、その子のペースで成長していくから大丈夫。

とっさの出来事で思い切って勇気を出す。。。その強さの下地があれば、決して「うまくやれない子」なんかじゃない。

さらに、お母さんからもらった「とべるお守り」をめぐる最後のシーンも良いです。

それまで自分にとって必要だった心のよりどころのようなものが、「新しい自分」にはもう必要でないなら、それを必要としている誰かにあげよう。

こうやって勇気や優しさや強さが誰かから誰かへ、つながっていったら素敵ですよね。

 

森のあかちゃん 文/コゼッタ・ザノッティ 絵/ルチア・スクデーリ 訳/佐藤まどか BL出版

序文のページに、大好きな U2 の Magnificent の歌詞の一部が載っていてびっくり

2009年に発売された U2 の No Line On the Horizon は結構地味なアルバムだけど、その中の Magnificent はイントロからすごく好きな曲。

この絵本の最初のほうのページでは、「森のこみち29ばんち」に住んでいるおとうさんおかあさんは人間かなと思っていたのですが、実はクマの夫婦でした。

フクロウや他の動物たちに、クマの子どもが魚だなんて、という感じでおかしがられても気にしないクマ夫婦。

ヒレヒレと名付けた魚の子を心から大切にし、その子にとって一番居心地がいい場所が水の中であるなら自分たちも一緒にザブンと水の中に入って泳ぐ。

そんなクマ夫婦の深い愛情に感動しました。

実は、この絵本は難病と闘うあるお子さん(イタリアに住むダヴィデ君)がテーマとなっています。

ヒレヒレはクマ夫婦のように毛深くないししゃべれないけど、星の光から生まれた「森の赤ちゃん」は、この愛情深いクマ夫婦を選んでやってきたのです。

かけがえのない、特別な、星のようにキラキラ輝く命を授けられたダヴィデ君が、こんなに可愛いヒレヒレというお魚になって絵本になる。。。本当に素敵ですね。

  

今日、図書館で「や」の本を借りてきました。どんどん行きますよ~

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