先生が暑くいや、熱く語っている。
お盆休みにね、宿題を出したの。英語のね。
…文法と長文はやってきたの。
でも単語はやってないの。長文だってさ単語でつっかかるじゃない。
だからやってないってわかって。
ほんっと、自分でやるほうが簡単。人にやらせるのは一番難しい…
その顔を見ていると、鼻の穴の直下に大きなニキビができている。
空気の通り道といっていい場所だ。それがまた、赤くなって痛そうで。
先生はまだ熱く語ってくれているが、気になって。
話の内容は、ほう、と感心するようなこともあったし、
それはね、と思わず口を出したくなることもあったし、
昨年の自分を振り返って思わず言ったことでもあったし。
センター試験で、得意なはずの数学IIで大問ごと落としたので、惨憺たる点数だった息子。今でも「なんであの時4を14と書き取って計算を始めたのか?」と自問していた。解き方は合っていた。でもいかんせん、初期の数字を読み取り間違ったのか、4を14としていたから、合わない。合うわけがない。何度も計算をやり直した。が、数字を見直しはしなかった。
「そういうの、あるのよね」
私は得意そうに言いながら鼻の下の赤いのを見てしまう。
「なんで、頭で分かってることを、こんなことしたらまずいって
分かってるのに、やっちゃってて、
でも間違いなく自分がやっちゃってることなんだよね」
息子は、話を聞いているような顔をしている。
…気になるぅ。その鼻の下の赤いのが。よく洗えば少しは良くなるのに。
「あ、そういえば…お風呂場の壁の掃除をしたり、玄関やトイレの掃除を
するようになったらね、そういうの、減ったんだよね」
すると、鼻の上、鼻梁の両側に並んだ若い目が、話の匂いの変化をかぎ取って細くなった。
「…詐欺のテンプレートみたいな話の仕方だな。」
といって自室へ去っていった。別にやってくれって言ってないのにさ。
なぁに?親を詐欺呼ばわりして~。
やんわり抗議するも返事もない。
熱く語っていた先生は、ごろ寝の、鼻にニキビのある、
ただの若者になってしまった。
自分でやるほうが簡単、なんて言えるようになるくらい、
成長しているんだなと、想う。
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