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★ シンセ職人デイヴ・スミスさんに会う

2014年10月10日 | 音楽
先日、雑誌の仕事でなんと…来日中の デイヴ・スミス さんと対談してまいりました!

電子楽器の歴史は、レフ・テレミンモーリス・マルトノロバート・モーグ…と、個性的な先駆者たちによって常に更新され続けてきました。そして、デイヴ・スミス氏もまた、そういったイノベーターの一人と言って過言ではないでしょう。

70年代には世界初のプログラマブル・ポリフォニック・シンセサイザー プロフェットV を創り、80年代には今も電子楽器には必須の統一規格 MIDI を搭載したプロフェット600で世界初の実装実験を行い、90年代には世界初の本格的ソフトシンセ「Reality」を開発。当方に言わせれば、もうなんというか、シンセ界の「神」ですよ!

そんなデイヴさんですが、実際にお会いしたら物腰の柔らかい、穏やかな紳士でした。しかし言葉の端々には「シンセ屋」魂というか、ビジネスライクな音楽産業への反骨精神すら感じられ、実に楽しかった。

「新しい楽器を開発するとき、やはり市場のニーズを調べたりするのですか?」という質問には、
「そんな事はしないよ!自分が作りたいものを作るだけだ。ニーズなんてものは一人一人ちがうんだから、それら全てを満足させようとすると、わけのわからない製品になってしまうだろう」

「なぜソフトシンセではなく、フィジカルなシンセサイザーにこだわり続けるんですか?」という質問には、
「だって、ツマミやレバーを手でいじるのってとにかく楽しいだろ?ソフトシンセの画面を見つめながらマウスをいじるのって、なんだかオフィスで仕事してるみたいじゃないか。そういや世の中には"ワークステーション"と称する機材もあるが、僕に言わせれば"ワーク"なんて信じられないネーミングだね!(笑)」

「楽器を作る時、使い道なんて想定しないよ。あらゆるジャンルの音楽家が、勝手に使ってくれればいい。どんな予想外の使い方をしてくれるか、いつも楽しみにしているんだ」

と、ひたすらアツい。

損得勘定や、作ったものがどう思われるかよりも、とにかく新しいアイディアを形にすることが楽しくてたまらない、根っからの「シンセ職人」。そんな人となりが伝わってきて「自分もこんなふうに生きたいものだな」と胸が熱くなった、実に有意義な時間でした。

最後に、デイヴさんの会社 Dave Smith Instruments の、当方が所有する楽器 mopho keyboard にサインをお願いしたところ快諾してくださり、世界に一台の「シグネチャー・モデル」にしていただきました。これはもう家宝だ、家宝!


 ※ 対談の内容は、12月10日発売の「キーボード・マガジン WINTER号」(リットー・ミュージック)に掲載される予定です
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Dave Smith(デイヴ・スミス)
シンセサイザー・デザイナー。自身の会社Sequential Circuits Inc.社(SCI)を設立し1977年、世界に先駆けて全てのパラメーター値をコンピューターによってメモリーできるポリフォニックシンセサイザーProphet-5を発表。その後1982年に設定された世界統一規格であるMIDIの開発に大きな貢献を果たす。以降シーケンサー内蔵マルチティンバーシンセSixTrak、デジタルサンプラーProphet2000/2002、ベクトルシンセサイザーProphet-VS等々斬新な製品を世に送り出す。80年代後半にはYamaha SY22、Korg WavestationといったProphet-VSの流れを汲むベクトルシンセシスの開発に携わり、その後もソフトシンセという概念すら一般的でなかった1990年代前半にSeer Systems Realityというソフトシンセを開発。アナログ回路からデジタル回路、コンピューターソフトウェアまで幅広い分野に精通し、常に時代を先取りした製品を世に送り出す。シンセサイザーの歴史に多大な影響を与え続けるエンジニア。(Dave Smith Instruments 日本代理店・福産起業HPより)





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