every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

2013年ベストを思いつくままに

2014-01-11 | 音楽NEWS
2013年に印象に残った音楽を、特にベスト5というわけでなく思いつくままに徒然と。



・ライムスター『ダーティーサイエンス』
かつて『俺に言わせれば』「耳ヲ貸スベキ」と斜に構えた若者が不惑の年を超えて、「Choise Is Yours」と耳を貸している。ここに感動を覚えるのであります。

90sの黄金時代を意識したブレイクビーツ中心にした(音像はあくまで今日的に)トラックにそういうったラップが乗るだけでも充分なのに「ゆめのしま」などで果敢に新しいスタイル(TRAP + JUKE 的な?)に挑むスタイル。ラップのフロウの載せ方も「今風にしないとダサいよね」という思いを断ち切って「おじさんなんだから、おじさんらしくしてないと逆にダサい」とばかりに、今まで培ったフロウを今の言葉で乗り切る。2013年に聴くべき日本のヒップホップ。ヒップホップで年をとるということを身をもってしめしたライムスターのもうひとつのマスターピース。






・電気グルーヴ『人間と動物』
「Missing Beats」は"欠番のビート"という歌いだしで始まる。
山下達郎の『サンスト』にこんなハガキが寄せられた。「達朗さんの歌は"あ"や"か"から始まるのが多い気がします。何故ですか?」「おかしなこと聞く人がいたもんですね。母音、あ行からはじまるのは歌い出し易いんです。口が開きますので(うろ覚え)。」

そこへいくと、「Missing Beatz」は"欠番"の"け"から始まっている。母音のなかで一番力を込めにくそうな発音だ。
こんな歌ない!


電気は歌詞に重きを置かないことに重きを置いてきたが、それが極まって自然な発声を志向したところ、こういう明らかに歌いにくい歌詞になったようだ。
……いや、歌いにくいというのは他人がケチをつけた固定概念だ。実際に口ずさんでみると"けっ"と”バーン"のアンサンブルが心地よいのだ。

この"けっ"というハッキリ発声されない「KE」の音と促音で、「Missing Beatz」は決まっている。エレクトロ(80sのほう)特有のつんのめったグルーヴがその発声によって活かされているんである。それでいて「欠番のビート」という想像力を喚起をさせる実にイメージが豊かな単語。

このワン・ワードがワン・コードのエレクトロ・ビーツと伴って夢幻のイマジネーションを喚起させるのだ(……という硬い文章で語るのも興ざめだけれど)。






>過去エントリー|電気グルーヴ『人間と動物』
2013-05-28



・Moodman『SF mixed by MOODMAN』
手数多めにインテリジェント・テクノ・リバイバルを促し、テクノとダブステップを越境していくミックス。
過去エントリー|Crustal Movement Volume 03 - SF mixed by MOODMAN
2013-07-31



・Mark Pritchard「Ghost」
「今年はレイブが来ます」という小室哲哉の名言(迷言)が2013年は本当になった!
ダブステップ、ジューク/フットワークを経た最新の(UK)ベース・ミュージック。どのシングルも素晴らしかったけれど、第一弾ということでこれ。




・Vedomir 「 Musical suprematism」 (Marcel Dettmann remix)
VAKURAは全然追ってなかったんだけど、Marcel Dettmannがガップリと組んだこのシングルはいまのダンスフロア(ベルリンを中心とした)の空気を肺のそこから吸っているなと思い、購入。ディープ・ハウス路線をベーチャンから脈々と続くミニマル・ダブの深海へ誘っている。身体がクタクタになっていてもステップを踏み続けてしまうような状況を俗に(Dommune周りでは)沼というけれど、このシングルは相当深い沼を作り出している。
沼のハマり方を知っている人であれば、ここから抜けだことは難しい。




6.DJ Rashad「I Don't Give A Fuck」
Traxman『Da Mind Of Traxman』は自分のとってエポック・メイキングな一枚だった。
2013年は『160or80』が象徴するようにJuke/Footworkとは何かというのを弁えた上で独自の解釈を施した音源が、まいそれこそ、毎週のように聴くことが出来て楽しかった。
そういう(CRZKNYとか食品祭りとかMachindrumとか)流れもありつつ、本家Chicagoの本気を聴けたというのは嬉しいことであります。
DJ RashadはヨーロッパのD'N'Bやレイヴを取り入れて、オーセンティック(というのも似つかわしくない形容詞だけれど)なJuke/Footworkを更にブラッシュアップさせた。





RP Booが只管にリズムマシーンの技を磨いていっているのに対して、DJ Rashadはこの音楽のフォーマットの拡張というかコアを守りつつ、枠をずらす様なことを(恐らくは無意識に)していて面白い。「Reverb」がCD化されたのは特記しておくべき事項だろう。

過去記事



4.(((さらうんど)))「空中分解するアイラビュー」
Vo.のイルリメは「トリミング」という名曲を初期に残している。
♫ 見せておきたい風景が募って
という思いは子を持つ親の心情だろうか?

それを踏まえると♫ 女々しさは焦る男の子の専売特許だね と言われてしまう「空流分解するアイラビュー」は随分幼く思える。山下達郎的なシティポップ再評価のアレンジ(特にギターのカッティング!)に歌われる歌は「草食系」とも揶揄されるいまの30代男性が投信された姿だ。先の「トリミング」のような歌詞を書いた人間が改めて2013年にこういう歌詞を書いた……この事実が一層と趣を深める。
歌は世につれ、世は歌に連れとはいうけれど、自分の意思で聞いている音楽でこれほど世に連れたという思いをした覚えは今までにない。……まったく、若いうちに聞かなくてよかったよ。10代で聴いてたら悶え死んでしまう。それくらい「情けない男の子」の心情を吐露したポップソングになっていると思う。

砂原良徳のミニマル・エレクトニック・ファンクなリミックスの胸を借りてきた後輩を容赦なく、真摯に叩き落すような仕事ぶりも素晴らしい。

<iframe width="100%" height="166" scrolling="no" frameborder="no" src="https://w.soundcloud.com/player/?url=https%3A//api.soundcloud.com/tracks/87414920&amp;color=ff6600&amp;auto_play=false&amp;show_artwork=true"></iframe>



5.ECD / SOAKUBEATS「憧れのニューエラ / ラップごっこはこれでおしまい」
『明日へ架ける橋』も『Never 4 Pay Music』も素晴らしかったが、両アルバムのキラー・チューンをカップリングしたこの12インチは無敵!

過去エントリー

ECD - 憧れのニューエラ


追記:2013年にリリースされた曲でDJミックスこさえました。
http://www.mixcloud.com/yy20130313/2013/

コメントを投稿