every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

You The RockがOUTA HERE

2010-04-19 | HIP HOP



 自宅で大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法違反の罪に問われたヒップホップミュージシャン「YOU THE ROCK★」こと竹前裕被告(38)=東京都目黒区=の初公判が16日、横浜地裁川崎支部(阿部浩巳裁判官)で開かれた。罪状認否で竹前被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は懲役1年を求刑、即日結審した。判決は5月12日。

 弁護側の被告人質問で、竹前被告は「昨年秋ごろから仕事が減り、収入が激減した。不安から(大麻に)手を出してしまった。(音楽活動からは)引退します」と述べた。

 検察側は論告で、「違法性を十分認識しながら自ら進んで大麻を購入していることから、再犯のおそれが強い」と指摘した。

 起訴状によると、竹前被告は2月10日、自宅で大麻1・77グラムを所持していたとしている。

 被告人質問によると、竹前被告は現在、長野市で弟と同居し、同市の信州善光寺福生院で参拝客の食事の配ぜんや掃除などを行う仕事に就いているという。


"真っ赤な目をした梟"ことYou The Rock★がOUTA HERE(=シーンから退く)することを表明した。

ファン/リスナーにに対して何の言葉も無く"OUTA HERE"するというのはは"プロッフェッショナル・エンタテイナー"とまで名乗ったラッパーらしからぬ態度だ。

この報を聴いてECDは"眠れないほど"怒っているそうだけれど、そりゃそうだろ。

何故ならば竹前裕が選んだこの行為は「Mass対Core」や「証言」といった(You The Rockに★がまだ付いてない時代の)マスターピースで自らが謳っていたことの否定だからだ。


ECD / MASS 対 CORE Ft.TWIGY & YOU THE ROCK




彼はソロ二作目『THE★GRAFFITI ROCK '98』収録の「OUTA HERE (REAL SHIT PART.1」で敬愛するKRS-ONE「OUTA HERE」の訳文(因みにオリジナル訳はZeebra)を踏まえ、こう言っている。

"YOU THE ROCKはオールドスクールだが、お前達の目の前からどこにも行きやしないぜ!"

或いは名盤『Soudtrack'96』での実質最後を飾る「BOOM BYE BYE」での"ラップは死なない、俺も死なない"というフック。

それら全部を台無しにしたのだ。

それだけじゃない。
大麻で逮捕という犯罪に対して、そこまで反省するのであれば『THE SOUNDTRACK’96』で描いた風景はなんだったのだ? "真っ赤な目をした梟"という、Smokes Lifeが日常であるかのような渾名は何だったのだ? それら総てをHypeだったと認めたことになるのだ、この行為は。

証言


名前に★をつけ始めた頃、You The Rockはバラエティ番組に顔を出し道化を演じるようになった。
カミナリのインタビューで盟友であるRINOは「何も変わってない。前からああいう感じだったし。」と擁護していたが、ヘッズはそうは見なかった。

確かにあのハイパーなノリは明石家さんまがそうであるように、メディア向けに作ったものではなく、彼本来の個性なんだとは思う。
しかし、名盤『Sound Track'96』やDVD『さんぴんキャンプ』前半部で描かれる"ハーコー"なYou The Rockはもういなかった。

肝心の作品もパーティ・ラップの大義名分の下にセルアウトしたようなモノにしか聴こえなかった(しかも売れなかった)。

それでも、You The Rock★は相変わらずHip Hop Junkiesだなと思わせるものはあった。
もう、その姿は無い。
残ったのはタイニーパンクスに憧れ続けた自称"エンタテイナー"の成れの果てだ。





流石にこの引退発言は刹那的なものではなく、考え抜いたものだと思う。
それがどのような考えの下であろうとも、上記で述べたようにかつてのYou The Rockの言動を否定するものであり、少なからずとも彼のラップに感動を覚えた心に冷や水をぶっ掛けたものでしかない。


この件、日本にヒップホップを根付かせようとか、盛り上げようとホンキで活動している人らはもっと怒ってもいいんじゃないのか?

ECDが怒っているという話を聴いて、ヒップホップからは一定の距離を取っていたかのようなECDのヒップホップに対する情熱を再確認したような想いがした。

ZeebraやRhymesterのヒップホップへの想いは本気だと思うから、本気で怒ってもいいと思うのだけれど(大人だし友人でもあるから控えているのだろうけど)。

* 追記:裁判傍聴記を読むとこう言わざる得なくなるまで追い込まれてしまったのかな? とも思う。
B Boy狩り(それぽい格好をした人に絞って職質する)も行なわれているというし、そういうネガティブ・キャンペーンに嵌っちゃったのかなとも思った。

彼の犯したことを擁護するのではない。
ただ彼に求められた"償い"は余りにも大きすぎるのではないか? と思う。

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