カレー屋(EXA)

エキプロ5で遊ぶブログでした。もはやその名残りはほぼない。

原口と毛利

2020-08-21 21:50:00 | スポーツその他
野球が好きです。

プロ野球が好きです。

でも学生野球…特に高校野球は(学生の努力を搾取する構造が)好きじゃありません。



野球漫画が好きです。

やっぱりどちらかと言えばプロ野球漫画が好きです。

でも、漫画なら高校野球もなんとか許容します。

中でも、『H2』という野球漫画が、好きです。



『H2』は週刊少年サンデーで連載されていた
あだち充による作品。

ファーストネームが“H”で始まる、
国見比呂、橘英雄、雨宮ひかり、古賀春華の4人を中心とした人間模様とともに、
比呂と英雄、親友同士である二人の“HERO”の対決を主軸に描かれた全34巻。

あだち充の野球漫画といえば『タッチ』を思い浮かべる方も多いかと思いますが、
個人的にはこちらの作品が野球色が濃かったり、
また、周辺の登場人物も魅力的に写って好きな作品です。

さて。

私がこの作品で好きな登場人物に、
雨宮高明という登場人物がいます。

この方はヒロインの一人である雨宮ひかりの実の叔父であり、
敏腕のスポーツ記者として描かれ、
また一方で、橘英雄と国見比呂、二人のヒーローの間で
揺れ動く雨宮ひかりの心情に寄り添う存在として
作中で描写されています。

どう考えても主要キャラクターではない高明おじさんですが、
この登場人物の関わる2つの場面が、とても印象深いところがありまして。



主要登場人物たちが迎える高校生活2回目の夏。

夏の甲子園予選で2度目の登板となり、
強打の打線を誇る強豪・石商を対戦相手に迎えた国見比呂。

幼馴染の実質的に初めてとなる高校野球表舞台登場を観戦にきた雨宮ひかりは、
叔父でありスポーツ記者である雨宮高明から
「バイトだ」
と、原稿用紙を渡されます。

“バイト”の内容は、国見比呂の人となりについて記事を書くこと。

叔父に憧れスポーツ記者を志す雨宮ひかりは
「どうせ載らないかもしれない」
と執筆を一旦は渋ります。

それに、雨宮高明はこう答えました。

「載せるかどうか決めるのは俺じゃない」

「書きたいから書く。読ませたいから書く。それだけだ。」



沢山の言葉、
沢山の場面が描かれた漫画の中にあって、
おそらくは話の本筋には概ね関わりのないこの言葉。

しかしこの言葉は…
こうしてブログに、のみならず。
何かを語りたくて、何かを伝えたくてどうしょうもなくなる衝動を
肯定されているようで。

Twitterに写真を上げたり感想を書いたり、
タイムリーじゃないけど思いついたり、
割と時間をかけて考えてたことについては、ブログでまとめて文章にしたり。

個人的には、何かのかたちで言葉を残す、
その意義として。
念頭に置いている言葉です。
漫画の1場面に過ぎず、またまるで本題ではないんですが、
とても大事に思っている言葉。



そして雨宮ひかりと雨宮高明、
二人が登場するエピソードとして印象深いものが、もう一つ。

この話がどの文脈で出てきたかは忘れてしまったのですが、
二人がおそらくはプロ野球の取材(何故ひかりがいるのかは謎)中、
囲み取材を受ける球界のエースピッチャー・原口をスタンドから眺めていると、
雨宮高明はもう一人、スタンドにいる人物に目をつけます。

「毛利だ」

「誰?」

「知らないか。入団した時は話題になったんだけどなあ。」

雨宮高明曰く、毛利は原口とライバル関係にあった投手であり、
原口が西武ライオンズっぽいチームに、
毛利は千葉ロッテマリーンズっぽいチームに指名され
それぞれプロの世界に進むことになりました。
しかし原口が球界を代表する選手となった一方で、
毛利はプロの世界で活躍することができず、現役を引退。
グラウンドで険しい表情で囲み取材を受ける原口とは対象的に、
一見すると“冴えない”様子に見える風体ながら、
穏やかな表情で、おそらくは自身の子供を連れて佇んでいました。

雨宮高明曰く、原口と毛利の違いは、一点。

「得意球のシュートのキレも同じ」

「ボール1個分」

「ただ一点…原口の方がシュートを、ボール1個分打者の懐に投げられた」

「それだけなんだよ」

「球界を代表する投手と、彼の違いは…」

直後、
雨宮高明は若手記者時代に一度取材しただけの毛利から
「雨宮さんですね?一度いい記事を書いてもらった記憶があります。」
と、
直接挨拶され、
“ボール1個分懐に”飛び込むことで生じる差は、
プロフェッショナルの世界に生きる以上、
記者にも同様のことがいえる…
というようなことを示唆するエピソードとしてまとめられます。

…記憶をなぞって書いてるので細かい台詞や文脈がちがうかもしれない。

早くKindleで電子書籍化しろ下さい。



さて。



私が大体ここでアレする感想文は、
概ねプロレスの話。

そして長い長い前フリでしたが…
この“原口と毛利”のエピソードを思い出すとき、
個人的に、あくまで個人的に、ではありますが、
思い出されるのは二人のプロレスラー。

一人は“ゴールデン☆スター”飯伏幸太。

そしてもう一人は…

円華。

現在のインディペンデントジュニアヘビー級王者・新納刃。



先に念を押しておくのならば、
私個人、新納刃が飯伏幸太に劣っているとは思っていません。

“原口と毛利”を引き合いに出しましたが、
明確な差…“ボール1個分懐に”…というようなものも、ない。

ただ。



7月12日。

この時すでに6度の防衛を果たしていたインディーJr王者・石井慧介から
直接ピンフォールを奪った新納刃は、
珍しく。
マイクを手にしました。

「インディーJr…ベルト、どこにあるの?

…石井ちゃんさっき、(挑戦表明した朱崇花の前に)持ってくるの忘れてたじゃん」

「インディーJrのベルト、飯伏幸太vs円華で復活させて、飯伏が獲って…
そこが頂点ですよね。」

「その一端を作ったのは誰でもない…

僕なんですよ。」



普段、その心情をまるで覗かせない、
ある種とらえどころのない新納刃が、
一本のベルトを契機に垣間見せた、胸の内。

新納刃は石井慧介に対して、実に変則的な心情で挑戦を表明し、
「勝ったら、封印」「飯伏なみのスーパースターが出てきたら、復活」を宣言し…

7.26ガンバレ☆プロレス板橋大会。

あまりにも見事な試合運びで、王者・石井慧介をランヒェイで破り、
およそ4年ぶりにガンプロからインディーJrのベルトが動くこととなりました。

封印を宣言していた新納刃はリング上では何も語らず退場。
しかし先に決まっていた朱崇花の挑戦は受ける意向を示し、
8.22。
つまり、明日。

インディーJr王座封印を賭けた、タイトルマッチを迎えます。




この感想文は個人の感想を書くために立ち上げています。
だから、欲を言えば、という話を書きます。

私は引き続き、
“王者・新納刃”が、みたい。

ガンプロファンですが、場所もガンプロにこだわらない。

このベルトを片手に今まで通りどこに顔を出すかもわからない、
捉えどころのないままに。

プロレス界に蔓延る数多の手練。
そうした選手たちと戦う、新納刃がみたい。

それは、挑戦者である朱崇花選手がベルトにふさわしくない、
という意味ではありません。

むしろ新納刃が一つ条件とした「飯伏なみのスーパースター」に、
最も合致している選手の一人である気がしてなりません。

が。
それでも。

自身が主体的に全面的にスポットを浴びることを
望んでるかどうかはわかりません。

それでも。

“プロレスラーという看板を降ろす”という宣言をしてなお、
リングに上がるたびに全く異なる色合いをみせる、
万能かつ変幻自在のプロレスを、
ベルトの懸かった試合ならではの濃度のままに。

どこまでも堪能したい。



“原口と毛利”を引き合いに出し、
結局何が言いたかったのかはちょっと迷子です。

でも僕がプロレスにまだ対して詳しくなかった日々の中、
たまたま点けたGAORAで目の当たりにした、
円華と飯伏幸太のインディーJrのベルトを巡る争いは、
とてもとても、今でも記憶に残るほどに鮮烈でした。

そして同時に、端正な顔立ちと仕上がった肉体、
驚異的なハイフライと鋭い蹴りを得意とする二人は…
やっぱり、“同じ場所にいる”二人に見えました。

それからしばらくして、会場でプロレスを見るようになりました。
DDTのリングを中心に、飯伏幸太をよく見ました。
しばしのち、ユニオンを中心に、円華の試合をよく見ました。
それから、友達軍としてガンプロで、
あるいはIRON PRIESTの一員としてBASARAで、
あるいは、何故かそこにいる人として我闘雲舞で円華…
のちに、MAKAI所属となった新納刃の試合を、
それこそ一時期は最も見る機会の多いプロレスラーとして、
目にするようになりました。

結論は。

どっちも凄え。

…そしてガンプロのインディーJr戦を終えて改めて。

新納刃、超凄え。



それでもどこかで、
二人のいわば“立ち位置”を思うとき。

“原口と毛利”のエピソードが頭をよぎります。

だから、願わくば。

そのインディーJrのベルトを以てして、今度は新納刃が作る“頂点”を。

…誤解を恐れずにいえば、
“懐一つ分”を補って余りある、
頂点を。



願わくば、見てみたい。


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