WATCH (サミット人権監視弁護士ネットワーク / Watch Human Rights on Summit)

WATCHは2008年洞爺湖サミット警備による人権侵害に対処するため、弁護士を中心に結成されたグループです。

サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)【その1】

2008-05-04 14:28:04 | 入管マニュアル
サミット前後の入管実務の対応について(マニュアル)
―会議その他会合のために「短期滞在」で入国する事例を中心として―


サミット人権監視弁護士ネットワーク



第1 外国人の入国・上陸手続の流れ等について


Q1 外国人の入国・上陸手続の流れはどのようなものか。査証・在留資格とはどのようなものか。会議その他の会合で来日する場合、外国人は必ず査証を取得しなければならないか。


1 外国人の入国・上陸手続の流れと査証について

外国人は「旅券」(PASSPORT)・「査証」(VISA)を所持して来日することになっています。

  ↓

日本の出入国港において、旅券・査証・出入国記録カード(「EDカード」)を入国審査官に提示して上陸申請しなければなりません。

     ↓

入国審査官が上記の資料に基づき上陸審査し、上陸の条件に適合していると認めたときは、旅券に上陸許可の証印をうけることになります。

     ↓

「在留資格」を付与され、日本に上陸が許可されることとなります。

(2) 査証(VISA)

来日前に海外にある日本の大使館・領事館によって発給されるものであり、1.外国人が所持している旅券が有効であることを「確認」するとともに、2.外国人を日本に入国させても支障がないという「推薦」するという性質を持つ文書です。

  ↓

査証を発給するかどうかは、外務省の権限に属しているところ、条約又は確立した国際法規に反しない限り、政府の裁量に属する事項であって、拒否されたとしても、違法の問題が生ずる余地はないとされています。つまり、査証を得ていても入国できない場合もあると言うことです。

  ↓

このように、査証の発給により、直ちに上陸が許可されるわけではなく、入国審査官の上陸審査の結果、上陸を拒否されることもあります(後述する在留資格をVISAと呼称することもあるが、査証(VISA)と在留資格は異なることに注意)。

  ↓

査証には、1.海外にある日本の大使館・領事館限りで発給できる場合と、2.外務省本省・法務省本省との協議(査証事前協議)を必要とする場合があるが、後者の場合は相当の時間が必要となり、概ね2~6か月程度であるとされています。



2 在留資格について

(1) 在留資格

外国人が、日本に在留する間に行う一定の活動あるいは一定の身分又は地位に基づき、日本に在留して活動することができる入管法上の資格のことです。



入国審査官は、上陸許可に際し、外国人の入国・在留の目的に応じ、在留資格・在留期間を決定し、外国人は、在留資格の許容する範囲内の活動と通常の社会生活上の活動が可能です。

(2) 在留資格の種類

a 27種類(詳細は、法別表第1・第2を参照)

b 別表第1が一定の活動に基づく在留資格であり、別表第2が一定の身分又は地位に基づく在留資格です。

c 朝鮮・台湾などの旧植民地出身者とその子孫については、「特別永住者」という在留資格(「日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」)がありますが、詳しい説明は省略します。

(3) 在留期間

「外交」、「公用」、「永住者」を除き、3年以内の一定の期間(詳細は、規則別表第2)とされます。

3 「短期滞在」と査証について

(1) 「短期滞在」

a 「短期滞在」に該当する活動は、日本に短期間滞在して行う、次のいずれかに該当する者としての活動です。今回サミットに際して入国を希望される方のほとんどはこの資格であると思われます。

1) 観光、娯楽、通過等の目的で滞在する者

2) 保養、病気治療等の目的で滞在する者

3) 競技会、コンテスト等に参加する者

4) 親族、知人等を訪問する者

5) 工場の見学、視察等の目的で滞在する者

6) 講習会、説明会等に出席する者及び講習会、説明会等において講演等を行う者

7) 会議その他の会合に参加する者

8) 外国に職業活動の基盤を有して業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査等短期商用活動を行う者

b 「短期滞在」の在留期間は、活動の期間等に応じ、15日、30日又は90日

c 「短期滞在」では、一切の就労活動を行うことはできないが、業として行うものではない次に掲げる活動に対する謝金、賞金その他の報酬を受けることは可能です。(法19条1項1号、規則19条の2)

1) 講演、講義、討論その他これらに類似する活動

2) 助言、鑑定その他これらに類似する活動

3) 小説、論文、絵画、写真その他の著作物の制作

4) 催物への参加、映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動

(2) 「短期滞在」と査証・査証免除措置・査証取得勧奨措置

  a 原則

    「短期滞在」の在留資格を付与され、日本に上陸するためには、原則として、海外にある日本の大使館・領事館に査証を申請した上、査証の発給を受けることが必要です。

      ↓

    査証の申請の手続・必要書類については、国籍別に異なっており、詳細については、外国人の居住地を管轄する日本の大使館・領事館に事前に問い合せることが必要です。

  b 査証免除措置

    日本は、2006年8月31日現在、62か国・地域に対し、一般旅券所持者に対する査証免除措置を行っている

   (http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/annai/visa_2.html

      ↓

これらの国・地域の旅券を所持する者は、日本への商用、会議、観光、親族・知人訪問等を目的とする「短期滞在」の場合、査証を取得することなく上陸の申請が可能です。

c 一時停止・査証取得勧奨措置

    もっとも、バングラデシュ・パキスタン人については1989年1月15日以降、イラン人については1992年4月15日以降、査証免除措置が一時停止されていますので、注意して下さい。

      ↓

    また、マレーシア(1993年6月1日以降)・ペルー(1995年7月15日以降)・コロンビア(2004年2月1日以降)・チュニジア(2008年4月1日から同年7月9日までの期間)については、査証取得勧奨措置が実施されており、査証を得ることなく上陸の申請を行った場合、非常に厳格な入国審査を受けることになりますから、査証を取得して上陸するのが望ましいといえます。