WATCH (サミット人権監視弁護士ネットワーク / Watch Human Rights on Summit)

WATCHは2008年洞爺湖サミット警備による人権侵害に対処するため、弁護士を中心に結成されたグループです。

【声明】デモに対する過剰規制及び参加者の逮捕・勾留に抗議します

2008-07-09 15:15:19 | 声明
【声明】デモに対する過剰規制及び参加者の逮捕・勾留に抗議します

2008年7月9日
サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)

 7月5日、札幌市内において「7・5チャレンジ・ザ・G8サミット――1万人のピースウォーク」が開催されましたが、これに対する警察の規制は極めて過剰で、デモが平穏に行われていたことに対比して、著しく人権を侵害する態様のものでした。沿道は、デモ参加者をカメラで撮影・記録する私服の公安刑事で埋め尽され、また、デモの両サイドは、一般の市民がデモを見ることを阻止するような形で、完全装備の機動隊によって包囲されました。
 しかも、警察官は、サウンドカーの窓ガラスを警棒で叩き割った上で、運転席にいた男性をひきずり出して逮捕するなど、合計4名(うち、1名は記者)を、公務執行妨害や道路交通法違反などを理由として逮捕勾留しました。
 このうち、記者であった1名は7月8日に釈放されましたが、検察官はそれ以外の3名につき、不当にも札幌地方裁判所に勾留請求し、8日に裁判所により3名に対する勾留決定がなされています。

 憲法は、市民が自らの表現を他人に伝達し、他人がその表現を受け取る自由をも保障しています。この意味において、デモ行進は、集会の自由の一環として立憲民主主義を支える権利としても手厚く保障され、その規制は必要最小限度にとどまらなければなりません。
 しかしながら、今回の警察による過剰規制と不当な逮捕は、表現の自由を踏みにじるものであると言わなければなりません。

 よって、私たちは4名の逮捕が憲法で保障された表現の自由に対する著しい侵害であることとともに、逮捕の態様自体に極めて問題があるとして強く抗議するとともに、3名についての勾留請求決定に対し異議を述べ、その即時釈放を求めます。


〔声明に対する賛同団体〕
2008年G8サミットNGOフォーラム
G8サミット市民フォーラム北海道
G8サミットを問う連絡会
G8女性の人権フォーラム
G8対抗国際フォーラム

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なお、声明の英語訳は英語版ブログに掲載しております。

*追記
「G8対抗国際フォーラム」を賛同団体に追加しました(7月16日)

【声明】G8サミットに関する市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に抗議します

2008-07-04 13:26:05 | 声明
本日WATCHは、G8サミットNGOフォーラム、G8サミット市民フォーラム北海道、G8サミットを問う連絡会の賛同を得て、以下の声明を公表致しました。
なお、声明の英語訳はWATCHの英語版ブログに掲載しております。

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【声明】G8サミットに関する市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に緊急に抗議し、市民活動の自由な表現・言論・集会の機会を妨げることのないようあらためて強く要請します

2008年7月4日

サミット人権監視弁護士ネットワーク(WATCH)
〔賛同〕G8サミットNGOフォーラム
    G8サミット市民フォーラム北海道
    G8サミットを問う連絡会
    

 7月7日から9日にかけて開催される「北海道洞爺湖サミット(G8サミット)」に向け、様々な市民団体・NGOが、環境や平和、人権、貧困、開発などの問題を解決するための取組みとして、シンポジウムや国際会議、ピースウォークなどの行事を予定しています。しかし、一昨日から昨日にかけて、これらの行事への参加を予定していた世界各地の多くの市民団体・NGO関係者が、現地の大使館で日本へのビザ発給を拒否されたり、空港で日本への入国を拒否されたりするといった事例が相次いで報告されています。
 私たちが把握している限りでも、一昨日から昨日にかけて、バングラデシュのNGO関係者らが、在ダッカ日本大使館から、理由の説明もなくビザ発給を拒否されています。
 他方、昨日、千歳国際空港では、韓国から来日した農民団体の関係者19名が、日本における滞在予定の証明がないという理由により、全員入国を拒否されるという事態が発生しています。
 このような事例以外にも、フィリピンの国際NGO関係者が、在バンコク日本大使館のビザ発給の遅延のため、来日を断念するに至っており、今後も同様のビザ発給や入国の拒否といった事態が生じることが懸念されます。
 これらの市民団体・NGO関係者は、日本の市民団体・NGOが正式に招聘していたものであり、また、シンポジウムの発言などが予定されていたものです。G8サミットの開催を理由として、特段の理由の説明もなくビザ発給を制限し、また、著しく厳格な滞在予定の証明を求めることによって入国を事実上困難なものすることは、市民が、G8サミットを契機として、国際的な重要課題に関する自由な意見交換や発表を行う機会を奪うことにほかなりません。このことは、市民団体・NGO関係者のみならず、ひいては、国際社会における日本に対する信頼を大きく損なうことになるものです。
 私たちは、これまでも、G8サミットに関わる入国規制の強化や、近時の学術関係者・メディア関係者に対する入国制限に抗議してきたところですが、ここに、日本政府に対し、あらためて、市民団体・NGO関係者のビザ発給・入国の拒否に緊急に抗議するとともに、市民活動の自由な表現・言論・集会の機会を妨げることのないようあらためて強く要請します。

日常生活における注意事項(外国人の方向け)

2008-07-03 20:01:03 | 日常生活における注意事項
日常生活における注意事項(外国人の方向け)


1.一般的に注意すべき事項

Q1 日本に入国した後、パスポートは常時携帯しなければならないでしょうか。

日本滞在中は、常にパスポートを携帯し、警察官、公安調査官や麻薬取締官などの公務員が職務の執行に当りパスポートの呈示を求めた場合、呈示しなくてはなりません。(入管法23条)パスポートを携帯していなかったり、呈示することを拒んだ場合には、罰金が科されたり、拘束されてしまう恐れがあります。パスポートの呈示を求める公務員に、身分を示す証票を呈示するよう求めることができますが、公務員がその要求に応じなかったからといって、パスポートの呈示を拒否することはできません。但し、警察官などの公務員が求められるのは、パスポートの呈示だけです。パスポート記載事項を書き留められたりした場合には、その場で強く抗議し、書き留めたものを廃棄することを求めましょう。

また、日本国内に住所を持たない外国人が宿泊施設を使用する際には、パスポートの呈示及びコピーが法令により義務付けられています。


Q2 日本における麻薬の取り締まりは厳しいのでしょうか

日本では、「ダメ。ゼッタイ。」のモットーの下、麻薬犯罪は非常に厳しく取り締まられています。例えば、大麻を所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役、大麻を日本へ輸入した者は、7年以下の懲役に処されます。欧米諸国では、「ソフト」な麻薬の微量所持・使用に関して刑事訴追が甘いかもしれませんが、日本ではそのような期待は通用しません。また、自国と日本の外交関係が良いから見逃してくれるであろうというような期待も持たないほうが良いでしょう。
また、20才以下の飲酒喫煙は、法律により禁止されています。


2.警察の行動


Q3 どういう場合に職務質問がされるのでしょうか。

 警察官が、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」又は「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」について、市民を停止させて質問をすること(これを「職務質問」と言います)が認められています(警察官職務執行法2条1項)。
 外国人については、不法滞在が犯罪とされていることから、外国人というだけで、警察官による職務質問を受ける可能性があります。特に、鉄道の駅など公共の場において、職務質問を受けるおそれがありますので、注意が必要です。
 警察官は、その場で職務質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合には、職務質問をするために、その者を附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができるとされています(警察官職務執行法2条2項)。


Q4 職務質問や、警察署等への連行を拒むことはできるのでしょうか。

 職務質問や警察署等への連行は、あくまでも任意で行うことであり、警察官がこれを市民に対して強制することは認められていません(警察官職務執行法2条3項)。
 したがって、職務質問などを拒むことはできることになります。もっとも、外国人の場合には、パスポートを提示して、在留許可を得ていることを示せばそれで職務質問は終わりますので、あえて拒むメリットはありません。
 職務質問を拒むと、多くの場合、その警察官は無線で、他の警察官の応援を求めて、数人の警察官が来て、あなたを取り囲んで職務質問に答えるまで一定の時間にわたって、事実上解放されなくなることもありますので注意が必要です。


Q5 職務質問を無視してその場を離れようとした場合に、警察官に肩に手をかけるなど有形力が行使されることはありますか。

 職務質問はあくまでも任意ですが、日本の最高裁判所の判例において、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される場合があると判断されており、職務質問に応じるように説得のために、警察官から離れようとした者の両手首を掴んだ行為が適法であると判断されています(最高裁1976年3月16日第三小法廷決定)。
 このような警察官の有形力の行使に抵抗して、警察官に、暴行や脅迫を加えた場合には、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕される可能性もありますので注意が必要です。
 日本では、警察官が勝手に転んで、それをもって職務質問を受けていた者が何らかの暴行を加えたとみなして公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されることもあります(これを「転び公妨」と言います)。
 したがって、職務質問に対しては、自分から警察官に手をかけたり、体当たりするなどすると、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されるおそれがあることを知っておいて下さい。


Q6 職務質問の際に、手荷物を検査されることはありますか。

 法律に明文はありませんが、日本の最高裁判所の判例上、職務質問に付随して、一定の場合に所持品検査をすることが認められています(最高裁1978年6月20日第三小法廷判決)。
 どういう場合に所持品検査が許されるかについては、所持品検査の必要性・緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮して、具体的状況の下で相当と認められる限度において許される場合があるとされています。
 この基準からすると、軽微な犯罪の容疑に関しては所持品検査が認められる余地はほとんどないと考えられますので、所持品検査は明確に拒んで下さい。曖昧な態度をとっていると、暗黙のうちに同意したと扱われかねませんので、所持品を自分の身から離さないで、言葉で明確に拒否することが必要です。


Q7 集会の会場の入り口で、警察官から所持品検査を行うための検問が行われている場合に、これに応じなければなりませんか。

 日本においては、残念ながら、警察官によって、このような検問がなされることがあります。しかしながら、集会参加者に対して、その意思に反して、一般的に所持品検査を行うことは日本の法律上は許されていません。したがって、断固として拒否すべきですが、自分から警察官に手をかけたり、体当たりするなどすると、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されるおそれがありますので、注意が必要です。


Q8 警察官から、任意同行を求められた場合に、どう対応すればよいですか。

 任意同行に応じるかどうかは、まさに任意であり、警察署等への連行を強制することは許されていません。
 したがって、任意同行については明確な拒絶の意思を表明して断ることができます。但し、任意同行を許否した場合には、警察官は、裁判官の逮捕状をとって、あなたを逮捕しようと考えますから、すぐに弁護士さんと相談することをお勧めします。


Q9 移動する際に、警察官がずっと尾行する場合にはどう対応すればよいですか。

 日本では、尾行することは、特に裁判官の令状をとらなくても任意捜査として許されると考えられています。そのために、尾行される場合があります。この場合、警察官は、あなたがどういう人と接触しているか、あなたがどこに滞在しているかを知るために尾行していると考えられますので、その点に注意を払って下さい。
 なお、法的に尾行を止めさせることは難しいので、尾行されることがあることを想定して行動して下さい。


Q10 警察官が家宅捜索に来た場合には、どういう点に注意すればよいですか。

 家宅捜索は、午前7時ころに突然来ることが多いので、朝は注意して下さい。
 警察官が裁判官に申請して捜索差押許可状を持って家宅捜索に来ます。日本では、警察官が申請した令状請求はほとんど認められています。
 通常は、ある人が逮捕された直後に、その人の犯罪容疑で家宅捜索に来るのが通常ですが、中には、「氏名不詳者」の犯罪容疑を理由に、事前弾圧として、組織や運動の実態や人間関係についての情報を収集目的で、家宅捜索が行われる場合もあります。
 家宅捜索については、まず、最初に、捜索差押許可状が呈示されます。捜索差押許可状には被疑者名、罪名、捜索場所、差し押さえられるべき物が記載されていますので、きちんと通訳して説明することを求めて下さい。後で、不服申立て(準抗告)をするためにぱ、その内容を、メモするか、ICレコーダーで録音することをお勧めします。
  家宅捜索が終わったら、警察の責任者から、「押収品目録」を受け取って下さい。家宅捜索しても何も差し押さえるべき物がなかった場合には「捜索証明書」を請求して受け取るようにして下さい。

Q11 家宅捜索の際に、身体検査を受けることもあるのですか。

 警察官は、捜索差押許可状だけでは、身体検査を実施することはできません。
 警察官が、裁判官に身体検査令状を申請して、その令状を持ってきた場合には、その令状に記載された者や捜索場所にいる人の身体検査を実施する場合があります。
 女性の場合には女性警察官が検査を実施します。
 身体検査は、持っている鞄の中身や、ポケットにある物を調べるのが普通ですが、上着や靴を脱がせたり、ズボンを上から触る程度ですが、場合によっては、下着1枚にされた場合もあります。

Q12 家宅捜索で所持品が差し押さえられた場合にはどうすればよいですか。

 警察官による不当な差押え(押収)に対しては、差押えが行われた地域を管轄する地 方裁判所に対して不服申立て(準抗告)ができます(刑事訴訟法430条)。
 警察官による差押え(押収)に対して不服申立て(準抗告)を申し立てると、明らかに被疑事件と関係がない物はすぐに返却されることがあります。
全ての押収物が返還されると、裁判所は、 準抗告の取下げを求め、取り下げないと申立の利益がないとして棄却します。


3 逮捕された場合について

Q13 逮捕される条件は何ですか。

 現行犯(「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った」と警察官が認識した場合)か、準現行犯(①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするときのいずれかに該当して、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる場合)に限られます。
 自分に身に覚えがない場合には、警察官に対して、自分が逮捕される理由がないことを告げて、現行犯逮捕に抗議しましょう。その際、周囲の人にも訴えて協力してもらうことが望ましいです。
自分が警察官に逮捕されたときは、周りの人に、自分の名前を伝えて、救援体制をとってもらえるように依頼して下さい。


Q14 逮捕後の手続はどうなりますか。

 逮捕されたら最寄りの警察署に連行されます。手錠をかけられて、1~2名の警察官が付き添ってパトカーや護送車に乗せられて警察署に行きます。
警察署に着いたら、まず、弁解録取書が作成されます。被疑事実が告げられて、それを認めるか否かを質問されて書類が作成され、署名と指印を求められます。その際に、弁護人を選任する権利があることも告知されます。「当番弁護士を呼んで下さい」と言うと、警察官から最寄りの弁護士会に連絡が行き、その当日又は遅くとも翌日までに、弁護士と通訳が面会に来ます。 弁護士会に頼まれて初回の面会に来る弁護士を、当番弁護士と呼びます。
 留置場(留置施設)に入る前に、所持品検査と身体検査が行われます。身に付けている物は、時計やベルトを含めて全て取り上げられ、身体拘束が解かれるまで、警察が保管します(これを「領置」と言います)。持っていた携帯電話は、単なる「領置」ではなく、証拠物として差し押えられて「押収」される場合もあります。この場合には、釈放された後もすぐに返却されないことがあります。
 また、顔写真を撮影され、指紋が採取されます。
これらを拒むことはできません。

Q15 逮捕後に、領事に連絡をとることができますか。

 身体拘束された外国人は、その国籍国の領事にアクセスする権利が保障されています。実務的には、領事通報希望の有無を、被疑者に質問する用紙が警察署にあり、その希望に従って処理されることになります。
 領事の協力が得られれば、本国の家族との連絡、本国からの書類等の手配、通訳人の紹介などの協力を受けることができます。

Q16 逮捕された後、黙秘権は保障されていますか。どういうことを黙秘することができますか。

 いかなる事項についても黙秘する権利が認められていますが、日本の最高裁判所は、自己の氏名を黙秘する権利はないと判断しています(最高裁判所1957年2月20日大法廷判決)。
 ただ、外国人の場合には、パスポートを所持していると考えられますから、氏名や生年月日、国籍などはそこから判明しますので、特に黙秘する意味はないと考えられますが、完全黙秘を貫徹するという意味では黙秘しても良いでしょう。
 日本における滞在先は黙秘することができます。

Q17 警察官の取調べに、通訳はつきますか。

 ①第一言語による通訳がなされていない場合、②通訳人に十分な通訳能力がない場合、③通訳人の通訳態度が中立・公平でなく警察寄りである場合には、取調べを拒否して弁護人との接見を求めて下さい。


Q18 逮捕された後の手続の流れはどうなっていますか。

 逮捕されてから48時間以内に検察庁に送られ、逮捕されてから72時間以内(検察庁に送られてから24時間以内)に、検察官は、被疑者を勾留請求するかどうかを決めて、裁判所に勾留を請求します。勾留請求さえあれば、72時間を過ぎて勾留決定がなされなくても良いことになっています。但し、勾留決定が72時間を過ぎてなされた場合には、勾留期間は勾留請求の日からカウントされます。
 勾留は原則として10日間ですが、延長されて20日間勾留されることもあります。
 もっとも、場合によっては、これより短い期間で釈放されることもありますが、外国人だからということで短くなるという訳ではありませんので注意が必要です。
 勾留されてから20日目までに検察官が起訴(公判請求)しなければ釈放されますが、検察官が起訴されると、そのまま勾留が継続します(起訴後勾留)。
 その後、保釈を請求し、それが認められて保釈保証金を納付して釈放されなければ、裁判が終わるまで勾留が継続することになり、起訴されてから第1回公判まで、通常1ヶ月半くらいかかります。
 第1回公判で裁判が終わった場合には、それから2週間以内に第2回公判が開かれて、判決が言い渡されます。

Q19 逮捕後、どこに身体拘束されますか。

 日本では、海外とは異なり、検察官に送られて裁判所による勾留決定を受けた後も、警察署の留置場(留置施設)に収容されるのが普通です。これは「代用監獄」制度として国際的に批判を受けています。
 そのため、警察に生活の全てがコントロールされて、連日、長時間の取調べを受けたり、就寝時間(午後9時)を過ぎても取調べが行われることがあります。

Q20 警察官に逮捕された後、誰と面会できますか。

 ほとんどの場合に、裁判官による勾留決定と同時に、接見禁止決定がなされ、弁護人以外との面会や差し入れが禁止されるのが普通です(刑事訴訟法81条)。
 したがって、外と連絡をとるためには、連日のように弁護人に面会してもらうことが必要になります。

Q21 勾留に対する不服手段はどうなっていますか。

 裁判官の勾留決定に対して不服申立て(準抗告)を申し立てることができます(刑事訴訟法429条1項2号)。勾留延長決定に対しても不服申立て(準抗告)ができます。但し、それによって勾留が取り消される可能性はそれほど高くありません。
 もっとも、不服申立てをすることで、勾留延長後の期間が少し短くなる場合があります。
 勾留中に1度だけ、勾留決定をした裁判官から、勾留の理由を開示させる裁判(勾留理由開示公判)を求めることができます。誰でも傍聴することができ、マスコミが取材に来ることもあります。
この裁判では、裁判官に対して釈明を求めることができ、また、被疑者と弁護人がそれぞれ意見陳述をして勾留の不当性を訴えることができます。

Q22 略式手続で簡略に裁判を受けることができますか。

 100万円以下の罰金になるような事件については、裁判官による書面審査だけで罰金が命令される略式手続があります。
 この場合には、罪を認めることが前提となります。
 通常、その罰金額を支払うと、釈放されることになります。

Q23 入管法上の手続との関係はどうなりますか。

刑事事件で逮捕された場合は、刑事手続が入管手続に先行することになります。そのため、できる限り早く本国に帰国したいと思ったとしても、刑事手続が終了するまでは本国に帰国することはできません。
起訴されて実刑判決を受けた場合は、原則として日本の刑務所で刑を受けることになります。
他方、刑事事件で逮捕されたとしても、直ちに在留資格を失うわけではありませんが、刑事手続が終了するまでに在留期間を経過した場合は、不起訴又は無罪・執行猶予となったとしても、また、刑が終了したとしても、直ちに入管に収容されて、退去強制手続が開始されることになります。
退去強制手続が開始された場合、法務大臣の特別の許可により、在留が認められることもありますが、原則として本国に退去強制されることになります。

デモでの注意事項(外国人の方向け)

2008-07-03 19:37:26 | デモにおける注意事項
デモでの注意事項(外国人の方向け)


Q1 デモに参加する場合、どういう点に注意したらいいですか。

 警察官は、デモの動向を監視し、何か口実があれば、参加者を逮捕することを狙っていますので、以下の点に注意が必要です。
 服装は、脱げにくく履き慣れた靴、あまり肌が露出しない服を着て下さい。集会の会場では参加者の写真を撮影(最近ではデジタルカメラでの撮影)していることがありますので、写真撮影されたくない場合には、サングラスやマスクや帽子を着用することをお勧めします。
 持ち物は、ハンカチ、ティッシュ、現金など必要最小限のものだけを身に付けて下さい。そうしないと逮捕された場合に持っていた物は拘束が解かれるまで全て取り上げられて警察が保管することになるからです。但し、前述したように、警察官の職務質問に対応するために、外国人の場合にはパスポートは必ず持って下さい。
 デモに参加する場合には、一人にならないで、他の参加者となるべく行動を共にするようにして下さい。

Q2 デモにはどのような物を持っていくことが禁じられていますか。防護器具を装備しても良いですか。旗ポールなどを持っていても良いですか。

持っていくことが禁じられている物は、デモ許可書に記載されています。詳しいことは、事前にデモの実行委員会に聞いて下さい。覆面したり、防護器具を装備することは禁止されていませんが、一般的に、危険物を持っていくことは禁止されています。旗ポールはデモに持っていっても通常問題ありませんが、具体的な使い方によっては危険物と見なされてしまう可能性もあります。

Q3 自発的にデモや集会をすることは可能ですか。

日本でデモや集会をするためには、デモや集会の許可を72時間前までに申請しなくてはなりません。無許可のデモや集会は、警察の規制を受けます。

Q4 どのような警察官がデモを見張りますか。どうやって見分けられますか。
デモに直接介入する警察官には、機動隊と制服警官がいます。権限は同じですが、機動隊は重装備をしています。また、公安調査官が私服で歩道を歩き、デモ参加者の写真を撮ったり、情報収集します。公安調査官は、直接デモに介入する権限はありません。

Q5 デモでメディアや警察官に撮影されたら、どのような権利がありますか。逆に警察の行動を記録しても良いですか。

最高裁判所は、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するとし、その例外として、現に犯罪が行われ、もしくは行われたのち間がない認められる場合であって、しかも証拠保全の必要性及び緊急性があり、かつ、その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法で行われるときには、撮影される本人が同意がなく、裁判官の令状がなくても個人の容ぼう・姿態の撮影が許容されると判断されています(最高裁判所1969年12月24日大法廷判決)。
デモの場合、事前にデモ申請をして、その許可条件に違反したとされる場合には公安条例違反の現行犯として、顔写真等が撮影される場合があります。
また、実際には、公安警察は、上記の最高裁判例とは関係なく、公道にいるという理由で写真を撮影することもあります。
上記の判例に違反して警察官に撮影された場合には、抗議しましょう。ひどい場合には、国賠訴訟を起こしても良いでしょう。
メディアに姿を撮影され、それが嫌であれば、抗議しましょう。しかし、デモ行進に参加している者は、被写体となることを事前許諾していると認められてしまう恐れがあります。
職務中の公務員は、肖像権を有さないため、撮影をしても良いという判例があります。

Q6 逮捕の条件は何ですか。

デモの現場で逮捕される場合は、現行犯(「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った」と警察官が認識した場合)か、準現行犯(①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするときのいずれかに該当して、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる場合)に限られます。
 自分に身に覚えがない場合には、警察官に対して、自分が逮捕される理由がないことを告げて、現行犯逮捕に抗議しましょう。その際、周囲の人にも訴えて協力してもらうことが望ましいです。
 自分が警察官に逮捕されたときは、周りの人に、自分の名前を伝えて、救援体制をとってもらえるように依頼して下さい。

Q7 どのような罪で逮捕されますか。
公務執行妨害罪、建造物侵入罪、威力業務妨害罪、道交法違反などが、通常デモでの逮捕の理由とされますが、その他いかなる微罪も逮捕の口実を与えてしまいます。また、警察は、犯罪をでっち上げることもあります。


Q8 逮捕後の手続はどうなりますか。

 逮捕されたら最寄りの警察署に連行されます。手錠をかけられて、1~2名の警察官が付き添ってパトカーや護送車に乗せられて警察署に行きます。
警察署に着いたら、まず、弁解録取書が作成されます。被疑事実が告げられて、それを認めるか否かを質問されて書類が作成され、署名と指印を求められます。その際に、弁護人を選任する権利があることも告知されます。
電話を使って直接弁護士を依頼することはできませんが、警察官に弁護士を呼ぶように頼むことができます。弁護士を選ぶためには、2つの選択肢があります。
 
まず、地元の弁護士会が運営している当番弁護士を頼むことができます。当番弁護士は、各地の弁護士の組織である弁護士会に所属する弁護士の中から、当番弁護士名簿に登載された弁護士から、その日の当番になっている弁護士が出動して面会に来てくれる弁護士です。最初の面会は無料で行ってくれます。

当番弁護士は、警察官の立会いなしに逮捕された人と面接し、その人の言い分を聞いたり、その人の権利やこれからの手続について説明してくれます。そして、外部との連絡をとってくれます。招聘団体などがいる場合には、連絡を取ってもらいましょう。

 当番弁護士による初回の接見後に、その弁護士による捜査弁護の継続を望む場合には、面会に来てくれた弁護士を私選弁護人として選任することになります。その場合、原則としては弁護士費用を払わなくてはなりませんが、弁護士費用を援助してもらえる場合もあります。Q10を参照してください。

当番弁護士の代わりに、救援連絡センター(03-3591-1301)の指定する弁護士を選任することができます。救援連絡センターとは、逮捕された活動家の支援を専門的に行う組織です。当番弁護士と救援連絡センターが指定する弁護士の違いに関しては、Q9を参照して下さい。

当番弁護士を頼みたい場合には、警察官に「当番弁護士を呼んで欲しい」と言えば、警察から最寄りの弁護士会に連絡が行き、弁護士会が当番弁護士と通訳を当日又は遅くとも翌日には手配してくれます。
救援連絡センターが指定する弁護士を選任したい場合は、警察官にそう伝えて下さい。警察から救援連絡センターに連絡します。

また、逮捕者本人だけでなく、その友人や支援者でも、弁護士会や救援連絡センターに直接電話して、弁護士を頼むことができます。
 連絡先は次の通りです。

札幌弁護士会:011-272-1010
救援連絡センター:03-3519-1301

留置場(留置施設)に入る前に、所持品検査と身体検査が行われます。身に付けている物は、時計やベルトを含めて全て取り上げられ、身体拘束が解かれるまで、警察が保管します(これを「領置」と言います)。眼鏡を取り上げられそうになったら、断固として抗議してください。
持っていた携帯電話は、単なる「領置」ではなく、証拠物として差し押えられて「押収」される場合もあります。この場合には、釈放された後もすぐに返却されないことがあります。
 また、顔写真を撮影され、指紋が採取されます。
これらを拒むことはできません。


Q9 当番弁護士と救援連絡センターが指定する弁護士の違いは何ですか。どちらを選べば良いですか。
救援連絡センターが指定する弁護士は、政治活動で逮捕された活動家の弁護の経験がある弁護士です。当番弁護士の場合には、そのような経験を有していたり、政治活動に対する理解を有している保証はありません。
しかしながら、救援連絡センターが指定する弁護士は、東京の弁護士が中心であり、北海道での対応に限界がありますし、外国人については通訳の手配の問題がありますので、北海道で逮捕された場合には、救援連絡センターに連絡するよりも、弁護士会に当番弁護士を依頼する方が望ましいと考えられます。

Q10 弁護士費用の援助を受けることはできますか。

一般的に、デモで逮捕者が出た場合には、デモの実行委員会は、その人のために支援グループを組織し、その支援グループが弁護士費用を賄うためのカンパなどを集めてくれます。
その他にも、各弁護士会が、弁護士費用を援助する制度を設けています。詳しいことは、当番弁護士やその他の弁護士に聞いて下さい。

Q11 逮捕後に、領事に連絡をとることができますか。

 身体拘束された外国人は、その国籍国の領事にアクセスする権利が保障されています。実務的には、領事通報希望の有無を、被疑者に質問する用紙が警察署にあり、その希望に従って処理されることになります。
領事の協力が得られれば、本国の家族との連絡、本国からの書類等の手配、通訳人の紹介などの協力を受けることができます。


Q12 逮捕された後、黙秘権は保障されていますか。どういうことを黙秘することができますか。

 いかなる事項についても黙秘する権利が認められていますが、日本の最高裁判所は、自己の氏名を黙秘する権利はないと判断しています(最高裁判所1957年2月20日大法廷判決)。
 ただ、外国人の場合には、パスポートを所持していると考えられますから、氏名や生年月日、国籍などはそこから判明しますので、特に黙秘する意味はないと考えられます。日本における滞在先は黙秘することができます。

 取調中にやっていないことを「やった」と認めないで下さい。一度自白してしまうと、証拠として採用されてしまい、裁判でその自白を撤回することは非常に難しいからです。取調べでウソをついても裁判で本当のことを言えば良いといった考え方は、とても危険です。


Q13 警察官の取調べに、通訳はつきますか。

 ①第一言語による通訳がなされていない場合、②通訳人に十分な通訳能力がない場合、③通訳人の通訳態度が中立・公平でなく警察寄りである場合には、取調べを拒否して、別の通訳人か弁護人との接見を求めて下さい。


Q14 逮捕された後の手続の流れはどうなっていますか。

 逮捕されてから48時間以内に検察庁に送られ、逮捕されてから72時間以内(検察庁に送られてから24時間以内)に、検察官は、被疑者を勾留請求するかどうかを決めて、裁判所に勾留を請求します。勾留請求さえあれば、72時間を過ぎて勾留決定がなされなくても良いことになっています。但し、勾留決定が72時間を過ぎてなされた場合には、勾留期間は勾留請求の日からカウントされます。
 勾留は原則として10日間ですが、延長されて20日間勾留されることもあります。
 もっとも、場合によっては、これより短い期間で釈放されることもありますが、外国人だからということで短くなるという訳ではありませんので注意が必要です。
 勾留されてから20日目までに検察官が起訴(公判請求)しなければ釈放されますが、検察官が起訴されると、そのまま勾留が継続します(起訴後勾留)。
 その後、保釈を請求し、それが認められて保釈保証金を納付して釈放されなければ、裁判が終わるまで勾留が継続することになり、起訴されてから第1回公判まで、通常1ヶ月半くらいかかります。
 第1回公判で裁判が終わった場合には、それから2週間以内に第2回公判が開かれて、判決が言い渡されます。

Q15 逮捕後、どこに身体拘束されますか。

 日本では、海外とは異なり、検察官に送られて裁判所による勾留決定を受けた後も、警察署の留置場(留置施設)に収容されるのが普通です。これは「代用監獄」制度として国際的に批判を受けています。
 そのため、警察に生活の全てがコントロールされて、連日、長時間の取調べを受けたり、就寝時間(午後9時)を過ぎても取調べが行われることがあります。

Q16 警察官に逮捕された後、誰と面会できますか。

 ほとんどの場合に、裁判官による勾留決定と同時に、接見禁止決定がなされ、弁護人以外との面会や差し入れが禁止されるのが普通です(刑事訴訟法81条)。
 したがって、外と連絡をとるためには、連日のように弁護人に面会してもらうことが必要になります。

Q17 勾留に対する不服手段はどうなっていますか。

 裁判官の勾留決定に対して不服申立て(準抗告)を申し立てることができます(刑事訴訟法429条1項2号)。勾留延長決定に対しても不服申立て(準抗告)ができます。但し、それによって勾留が取り消される可能性はそれほど高くありません。
 もっとも、不服申立てをすることで、勾留延長後の期間が少し短くなる場合があります。
 勾留中に1度だけ、勾留決定をした裁判官から、勾留の理由を開示させる裁判(勾留理由開示公判)を求めることができます。誰でも傍聴することができ、マスコミが取材に来ることもあります。
この裁判では、裁判官に対して釈明を求めることができ、また、被疑者と弁護人がそれぞれ意見陳述をして勾留の不当性を訴えることができます。

Q18 略式手続で簡略に裁判を受けることができますか。

 100万円以下の罰金になるような事件については、裁判官による書面審査だけで罰金が命令される略式手続があります。
 この場合には、罪を認めることが前提となります。
 通常、その罰金額を支払うと、釈放されることになります。

Q19 入管法上の手続との関係はどうなりますか。

刑事事件で逮捕された場合は、刑事手続が入管手続に先行することになります。そのため、できる限り早く本国に帰国したいと思ったとしても、刑事手続が終了するまでは本国に帰国することはできません。
起訴されて実刑判決を受けた場合は、原則として日本の刑務所で刑を受けることになります。
他方、刑事事件で逮捕されたとしても、直ちに在留資格を失うわけではありませんが、刑事手続が終了するまでに在留期間を経過した場合は、不起訴又は無罪・執行猶予となったとしても、また、刑が終了したとしても、直ちに入管に収容されて、退去強制手続が開始されることになります。
退去強制手続が開始された場合、法務大臣の特別の許可により、在留が認められることもありますが、原則として本国に退去強制されることになります。