若生りえ Jazz Songs & Diary

ジャズ歌手の若生りえがジャズスタンダードソングの歌詞やエピソードについて語る。
ホームページの方も見てくださいね!

AS TIME GOES BY ~どんなに時代が流れようとも~

2009年03月06日 | 私の好きな曲 ~ジャズ訳詞一覧~
AS TIME GOES BY
1931年
作詞・作曲/ ハーマン・ハプフェルド Herman Hupfeld

【ミュージカル音楽から映画『カサブランカ』での大ヒットまで】

「As time goes by」というと、すぐに「時の過ぎ行くままに」という

邦題が浮かんでしまいますが、映画を観て、訳してみると

意味が違うということが分かります


何度も登場していますが「You’d be so nice to come home to」も

「(戦争が終わって)家に帰ったら、君が待っていてくれたらいいな」

というような意味で、よく言われている邦題の

「あなたが帰ってきてくれたら嬉しいわ」というのと、

意味がまるで逆のようになってしまっているものがあります


しかし皮肉にもジャズのスタンダードとして今でも残っている曲は、

戦争(この曲など)や不況(『サニーサイド(明るい通りで)』など)

の時代に生まれているものが多いのです


さて、この曲ですが、もともとはミュージカル『Everybody’s welcome』

のために書かれ、初めはルディ・ヴァレーが歌い、

少しヒットした程度だったらしいのですが、

皆さんもよくご存知の、イングリット・バーグマンと

ハンフリー・ボガート主演の映画『カサブランカ』のなかで、

ピアニストのドゥーリー・ウィルソンに歌われたこともあり、

戦後、日本でも徐々に有名になりました


ストーリーは、仏領だったカサブランカを舞台に

反ナチのことが描かれており、パリでかつて恋人同士だった

バーグマンとボガートの関係を映画で観れば、

また、更に深く、ヴァースを含めたこの歌詞の持つ意味が

見えてきそうな気がします


【今の時代にこそ必要な歌


しかし、改めて訳してみると、本当にこの歌詞が持つ意味というのは、

現代社会を生きる私たち(なんだかかたい言い方だけど)

にもいえることで、まさに


『どんなに時代が流れても変わらない、大事なこと。』


を思い出させてくれて、



『あまり時代に振り回されすぎないように!


そして、大事なものを、そのせいで見失わないように!』



とこの歌が私たちに語りかけてくれるような、

そんな気がしてしまうのです


それに私自身、速いスピードの流れには、

あまりついていけないたちだし・・・


こういう歌詞は、歌っていてもホッとします


【カクテル『イングリット・バーグマン』


数年前に、たまに、何か小さな記念日などがあると、

友人と二人で、あるホテルの小さなバーに行っていました


そんなには飲まないのですが、女性の素敵なバーテンダーさんと

偶然出会ったのがきっかけで、彼女が違うホテルに移ってしまうまで

はまってしまったカクテルがありました


あまり飲めないといいながらも、私は「ジン」の香りが好きで(笑)、


「でも、なんかジンて男性的なイメージがあって・・・」


というような話をしていたら、


「では、ジンベースでちょっと変わったカクテルをお作りしましょうか?」


と言って頂いたので、作ってもらいました・・・。



しばらく待って運ばれてきたのは・・・



高貴な雰囲気の薄紫色で、ジン特有の香りに、

彼女がひねりを利かせた「ある花」のリキュールで香り付けられており、


それはそれは、



「なんかこれを1杯飲んだだけで、


すっごく大人の、いい女になれそうな気がするぅ~



という魔法をかけられちゃうようなカクテルだったのです



(はいはい、どうせあくまでも「気がする」だけですよーだ(笑))



口に運ぶたびに、ふわりと薫る男性的な香りと女性的な香りに

私はすっかりやられてしまいました



そのカクテルの名こそ



イングリット・バーグマン



次の機会に注文するときに、最初はおこがましい様な(笑)

何やらで、この名前を口にするのが恥ずかしかったのですが、

そのうち『いつものあれで!』が通用するようになって、

そして間もなく、彼女が移動してしまったのです。



ちなみに友人の定番は『プリンセス・マーメイド』



どちらも、名前も味も忘れられません。



あ~、彼女は今どうしているんだろう、とこれを書きながら、


また、魔法をかけてもらいに、会いに行きたくなりました



今度作ってもらうときは、ちょっと効き目の長い、


強いやつにしてもらおうかな・・・。


あ、その前に、周りにとめられるかなははは。



では、『As time goes by』です!



《英語歌詞》

(VERSE)

This day and age we’re living in gives cause for

Apprehension with speed and new invention and

Things like third dimension

Yet, we get a trifle weary with Mister Einstein’s theory

So we must get down to earth, at times relax, relieve the tension

No matter what the progress or what may yet be proved

The simple facts of life are such they cannot be removed

(CHORUS)

You must remember this,

A kiss is still a kiss

A sigh is just a sigh

The fundamental things apply

As time goes by

And when two lovers woo, they still say “I love you”

On that you can rely

No matter what the future brings

As time goes by


Moonlight and love songs never out of date

Hearts full of passion, jealousy and hate

Women needs man and man must have his mate

That no one can deny


It’s still the same old story,

A fight for love and glory

A case of do or die

The world will always welcome lovers

As time goes by


《日本語和訳》 言葉を足したり言い換えたりしています


(ヴァース)

今のこの時代に生きてる私たちは

やれ、スピードの速い乗り物だの、新しい発明だの、

異次元のことだの 将来への色々な気苦労がたえないわね

それにアインシュタイン博士の相対性理論だの光量子説だの

そういう難しいことにも疲れちゃったし・・・

でも、こんな時代だからこそ

世の中に振り回されすぎないで

時にはリラックスして、不安を和らげたりするべきなのよね

世の中の色々な発展のこととか

いつか証明されるであろう立派なことばかりが

重要なんじゃないわ

生きていくうえで本当に大事なことはただ一つ

そしてそれは、どんな時代であろうとも

決して揺るぐことのないことなのよ・・・

(コーラス)

これだけは忘れないでいて

キスといえば キスをすることだし

ため息といえば やっぱりため息をつくことなのよ

だから、どんなに時代が流れようとも

誰かを好きになったり夢中になったりする

そういう根本的なものは何も変わらないものなの


恋人たちが愛を伝えるときは、今でも

「私はあなたを愛している」と言うし

それで絆が深まったり・・・

この先、どんな未来が訪れようとも

これは決して揺るぐことのないことなのよ


月の光も愛の歌も 決して時代遅れにはならないし

恋人たちの心は、いつでも

情熱と、嫉妬と、憎悪で満ちているわ

女には頼れる男が必要だし

男にはいつもそばにいてくれる伴侶がいるべきで

そんなことを否定できる人なんていないのよ・・・


男と女がいる限り このことは

今でもまったく変わってない

本当の愛と幸せをつかむためのケンカも

うまくいったり、いかなかったりすることも・・・

そして、世界はいつでも

喜んで恋人たちを受け入れてくれる

そう、どんなに時代が流れようとも・・・


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12日の銀座スウィング・シ... | トップ | ありえない?シルクのロング... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
カサブランカが大好きです!! (101匹ニャンチャン)
2009-05-26 20:53:58
私は映画「カサブランカ」が大好きで、いつも
DVDを見て感動しています。
サムがバーグマンやボギーに促されて「As Time Goes By」を引き語りする場面がありますが、何度聴いても印象深く、素敵な曲だと思います。私もピアノの弾き語りができたらいいな
と思ってます。
返信する
はじめまして (keiji)
2009-07-26 17:25:28
はじめまして
「As Time Goes By」の検索で辿り着きました。
訳詞、たいへん参考になりました。
有り難うございました。
返信する
いい歌はずっと変わらないものですね (ボギー俺も男だ)
2010-11-06 22:26:28
はじめまして

「as time goes by 訳詞」のキーワードで来ました。
かれこれウン十年前の学生時代に、FM放送で、エアチェック(死語、歳ばれる笑)
してカセットテープに録音していた当時からすごくお気に入りの一曲でした。
その後、そのテープは結婚後、奥さんにいつのまにやら廃棄処分され・・orz

その後、遅まきながら「カサブランカ」のDVDを購入して、この曲と再会したわけで、
とにかくイングリッド・バーグマンの美しさに圧倒され、彼女の登場シーンからの
「あれを弾いてサム」のくだりは、自分の映画鑑賞史上最強の名場面となっている
わけですが・・・

その最初聞いた、なつかしい歌を最近になって誰が歌っていたのかYoutubeで知りました。
ローズマリー・クルーニー(Rosemary Clooney)。
忘れもしない大人の歌声、バックの演奏もきまってるし、
長い時を隔てても、いいものって変わらないなと、しみじみ思いました。

で、味をしめて、他の歌手の方の歌を聴いていて思ったのは、なんか前の方にいろいろ
違う節の部分があるな~どういうこと?と、

それが、たまたまリー・ワイリー(Lee Wiley)で、ちょっとくせ(なまり?)はあるけど、
それもまたいいな、と、車でいつも聞きながら、思っていました。

でも、ともかく歌が長いので、なんで?と思い、ここに来たというわけです。

「as time goes by=時の過ぎゆくままに」という反射で深く考えもしなかったのですが、
ここの訳で歌の深さや、古い映画でもさらに味わいが深まったというか、
いろんな人の思いが鮮やかに立体的に見えたような感じで、ほんと感動です。

あと、若生さんの素敵な姿に、どんな感じで歌われるのか。
どこかで、見たり聞いたりできればな、と。楽しみができました。
返信する
Unknown (居酒屋善吉)
2010-12-18 22:46:24
ビクターラズロのモデルははEUの父クーデンホーフ=カレルギー。私はmixiの方なので・・・。
これからも、頑張ってください。
スタンダード。いいですね。
返信する
カクテル (ポロマー二・ボガート)
2011-01-28 11:48:13
カサブランカ 素敵ですよね、改めて訳詞を読まさせて戴いて
また新たな感動に出会って得した気分です。有難うございます!
ラジオのお仕事の方も頑張ってください。

Here's looking at you, kid.
返信する
時は流れても変わらないもの (101匹ニャンチャン)
2013-03-12 19:09:43
以前、コメントを差し上げた101匹ニャンチャンです。あれから4年経ってあらためてりえさんのブログを拝見させていただいています。歌詞の通り、時が流れても変わらないもの、それは愛だと思います。愛にもいろいろあって親子の愛、夫婦の愛、恋人同士の愛など愛の形にもいろいろなものがあります。私は今痛感しています。私の家族に対する愛はまったく変わっていません。家族無しでは生きられない、そんな愛情を感じ日々生きています。愛のある生活、これが人間にとって大事なんですね!!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

私の好きな曲 ~ジャズ訳詞一覧~」カテゴリの最新記事