東京23区のごみ問題を考える

脱焼却の循環型ごみ処理システムは可能か!!
~ごみ問題のスクラップブックとして~

23区清掃工場「搬入物検査の実態」と「不適正搬入の指導内容」まとめ

2011年07月16日 16時24分53秒 | 東京23区のごみ

※「常時搬入物検査(業務委託)」は、23区の清掃工場、毎日どこかで抜き打ちで実施している。

平成22年度
23区清掃工場の「搬入物検査実績」と「不適正搬入の指導内容」まとめ

※情報開示請求資料「搬入物検査実績」「不適正搬入指導概要」より作成
2011/07/16 渡辺


 東京二十三区清掃一部事務組合では、平成22年6月から9月にかけて、足立、板橋、光が丘、千歳、足立(再)の4清掃工場の6炉で、連続して水銀ごみにより焼却炉が停止した。そして、不適正ごみの搬入防止対策として「搬入物検査の強化」が実施されているところ。しかし、平成23年2月には目黒清掃工場でも同様に水銀ごみで焼却炉が停止した。そして昨日7月15日に、再度、千歳清掃工場が水銀で焼却炉の停止となっている。たびたびこういうことがおきると、多額の費用を要する「搬入物検査」(不適正搬入防止H23年度予算6千万円)が、いかに不適正搬入の防止対策として効果的に活用されているのかも問われる。また、家庭ごみの分別区分変更で、プラスチック類焼却が全区で本格実施となった平成20年度以降、清掃工場受入ごみのプラスチック類急増にも愕然としてしまった。《「ごみ性状調査(全工場平均) H19年度→6.8% → H20年度11.1% → H21年度12.3% → H22年度16.8%(グラフ10参照)》
 搬入物検査の実態と、搬入不適正ごみの種類、不適正搬入の指導内容などを調べるため、「搬入物検査実績」「不適正搬入指導概要」などを情報開示請求で取り寄せた。また、家庭ごみ分別区分変更で、持込みごみのプラスチック類も、なし崩し的に清掃工場に搬入されているのではないかという危惧もあり、調査結果などをまとめてみた。


1.搬入物検査の概要
 清掃工場では、以前から搬入物検査(一斉照合調査、独自照合調査)は実施していたものの、水銀ごみによる焼却炉停止で、平成22年7月からは、外部業務委託による「常時搬入物検査」などで検査頻度を増やしたというのが実態。平成22年度の搬入物検査実績は表1、グラフ1~2を参照。平成21年度から平成23年度(5月末まで)の推移はグラフ6参照。なお、平成23年度は、さらに「土曜日、日曜日、祝日及び早朝、夜間にも実施するなど、一層の監視体制の強化を図る。(平成23年度予算のあらまし)」としている。

表1 【平成22年度搬入物検査実績】

注:「平成22年度搬入物検査実績」の表のうち、取り寄せた「不適正搬入のC・D」の件数が表と違っている部分は数字を実数に訂正した。合計修正可能なのか、A・Bの数字の入れ違いがあるのか不明のため、合計数字と合っていない部分がある。


2.搬入物検査の評価基準
 判定はA・B・C・Dの4段階評価
【A】適正
【B】注意
【C】不適正(袋ごと持ち帰らせる必要のある不適物)
【D】要指導(炉を止めるなど工場運営に支障をきたす不適物)
注:具体的基準内容は非開示となった
ただし、持込みごみに関しては「清掃工場受入基準」があるので、それを遵守していれば間違いはない。
東京二十三区清掃一部事務組合HP
(ア)持込承認廃棄物の種類と内容(PDFファイル 11KB)
(イ)一組処理施設に搬入可能なごみの形状・寸法(PDFファイル 21KB)
(ウ)一組処理施設への持込禁止物(PDFファイル 10KB)
(エ)一組処理施設に搬入可能な車両
(オ)搬入受付時間等一覧(PDFファイル 94KB)


3.評価基準の指導内容(清掃一組としての指導)
【A】適正:必要なし
【B】注意:その場で口頭注意する。
【C】不適正:始末書を徴収する。管理課で注意文書を送付する。経過報告書を提出させる。不適正搬入を繰り返す業者は管理課で始末書を提出させ、呼出指導をする。
【D】要指導:始末書徴収してコピーを手渡す。顛末書を提出させる。管理課で呼出指導する。
(清掃一組内部の対応は省略)


4.搬入物検査の結果(平成22年度)
 持込みごみと区集ごみを比較すると、持込みごみは、半数の業者は適正搬入をしているとはいえ、圧倒的にごみの分別がよくないといえる。この傾向は検査体制の別に関係なく、持込みごみは同様に不適正搬入の割合が多い。また、区集ごみでも同じことがいえるが、第一には排出者の適正分別は当然のことではあるが、あきらかに搬入者側の問題であると考えられることも多い。長尺物や粗大ごみや重量物の不燃ごみ類などは、車両に積み込む時に当然わかるはずである。

グラフ作成などの元データ(C・Dの不適正ごみの種類も記載)
■23区清掃工場「搬入物検査実績詳細」一覧表(PDFファイル)
http://www.k4.dion.ne.jp/~ecobag/23kugomi/pdf/22hannyubtukensa1.pdf

グラフ2 搬入形態別、検査体制別の検査結果

グラフ3 平成22年度搬入物検査全体での搬入形態別検査結果


グラフ4 平成22年度搬入物検査全体での搬入形態別検査結果



5.搬入物検査における指導内容と、不適正搬入のうち排出場所の特定ができた割合(平成22年度)
〈指導内容〉
 指導内容は、概ね、清掃一組としての指導概要に沿った決まり文句(現場指導、経過報告書を求めるなど)が書いてあった。委託業務の常時搬入物検査に関しては、各種書類の作成依頼日、督促日、受領日まで記載してある。区収集に関しては、「区主管課事務連絡済み」など。これら指導内容をつぶさに読んでいくと、かなり現場の実態がつかめそうではある。
一例:「○月○日に呼出指導したばかりだったので、今回の件の顛末書の提出も求める。」区集では、「○○係長お詫びに来庁。」なかには、「始末書の記入を拒否。持ち帰りもしなかった。(布団のみ持ち帰った)」など
〈繰り返し指導対象となる事業者や区収集〉
 繰り返し指導対象となる事業者が、どの程度の割合で発生しているのかも知りたかったのだが、それらを集計したものは不存在ということであった。一部、一斉調査6月17日実施分には平成17年度以降の指導歴の記載があった。いわゆる不適正搬入の常連事業者なのか、過去に4回という事業者もあり。2~3回という事業者もすくなくはない。
〈排出場所の特定〉
 搬入物検査結果のうち、不適正搬入のC・Dと判定された内容を開示請求したのだが、当然、搬入事業者名、搬入車両情報、排出場所が特定できた場合の事業者名などはすべて非開示になった。従って、グラフ5の割合は、非開示となった事業者名の墨塗部分をカウントしたもの。もう少しは特定可能であってもいいような気もするが、排出者と搬入者の微妙な関係もあるだろうし、搬入者の意識改革が必要に思うところもある。一例として、排出者はごみの分別(資源あるいは不燃ごみ)をしているものの、その分別され袋をそのまま一緒に清掃工場に持ち込んでいるパターンがかなり見受けられる。

グラフ5 不適正搬入の排出場所の特定ができた割合



6.搬入物検査実績の年度推移(平成21年度~平成23年5月末まで)
 搬入物検査を強化したのだから、調査清掃工場数、調査車両台数が増えていくの当然ではあるが、一方、不適正搬入率の推移をどうとらえるかも重要。平成21年度(5.6%)の実績と、搬入物検査を強化した平成22年度(10.8%)、平成23年度直近まで(15.0%)を比較して、年々不適正搬入率が上昇していくのを良しとするか、搬入物検査の効果なしとみるのかは意見が分かれるかもしれない。しかし、検査回数を増やして、人海戦術・手作業で不適物を全て取り出せるわけでは決してないのだから、検査をすることで、搬入物が効果的に改善させなければならない。もどちらにしても検査をすれども、一向に不適正搬入がおさまらない、効果が数字にして現れないのは事実であろう。実際に、目黒、千歳と水銀ごみによる焼却炉停止がおきてしまっているのだから。23区の清掃工場の受入が、甘く見られているのか、馬鹿にされているのかはわからないが、悪質な搬入者にとっては、搬入物検査は脅しにも威力になっていないのかもしれない。

グラフ6 搬入物検査実績の年度推移(平成21年度~平成23年5月末まで)



7.搬入物検査指導内容(清掃工場別)

グラフ作成の元データとなる(C・Dの不適正ごみの種類も記載)
■『23区清掃工場「搬入物検査実績」一覧表(清掃工場別)』(PDFファイル)
http://www.k4.dion.ne.jp/~ecobag/23kugomi/pdf/22hannyuubutukensa2.pdf

表2 搬入物検査指導概要(清掃工場別)


 搬入物検査総数(AとBを含)が清掃工場別で数字をとらえられないので、清掃工場別の不適正搬入率はだせなかった。ただし、どの清掃工場でも、清掃工場別ごみ性状調査結果をみると、不燃ごみ、焼却不適ごみは一定の割合で入っているので、北、品川、世田谷、多摩川、豊島、光が丘と、搬入物検査でC・Dが少ないからといって、ごみの性状がよいとは決していえない。(平成22年度の不燃ごみ割合を確認済み)(参考「グラフ11 平成22年度清掃工場別ごみ性状調査結果」参照) むしろ、持込みごみと、区収集ごみの割合がある程度左右しているようにも思うが、区収集中心の清掃工場のごみ性状が、よいという結果でもない。(参考「グラフ12 23区清掃工場 区収集と持込みごみの割合」)

グラフ7 搬入物検査不適正搬入C・Dの件数(清掃工場別) 



8.不適正搬入C・Dで対象となった不適正ごみの内容
 非開示となった搬入物検査の評価基準(A・B・C・D4段階)の具体的内容はどうであれ、要は、清掃工場の受入基準に合っているかいないかなので、ごみの種類や大きさは決まっている。しかし、結果から見ると、CとDの判定基準は、そのごみの内容とごみの量にも左右されているように思える。また、ある程度は、搬入物検査の検査員の主観によるものもあるだろう。

 以下のグラフの「具体的不適正内容」は、搬入物検査(搬入車両1台が1件)ごとに、CとDと判定された1件ごとで、不適正としてカウントされたごみの種類の総数である。不適正ごみが量として記載している場合もあったが、カウントは、どんなに多くとも全て1台の車両ごと1種類のごみを1としてカウントした。あまり意味はないかもしれないが、どんな不適正ごみが搬入されているのかの傾向はつかめると思うので。一例:「持ち込んだごみのほぼ全量搬入不適物」であっても内容が「ビン」「ゴム・ビニール類」「布団」「クッション」(全体で15袋程度)であった場合、それぞれ「ビン」「ゴム・ビニール類」「布団」「クッション」を各1としてカウント。長尺物の竹10本、木材10枚であっても、竹1、木材1でカウント。未使用のガス入りライター100個であれ、ライター「1」として、全て1台の搬入車両に積まれていた品目ごとに1としてのカウント。例を上げるときりがないくらい、いろんなごみが大量に入ってきている実態がある。

グラフ8 不適正搬入C・Dの具体的不適正内容(持込みごみ)


これをみている限りでは、ごみを出す方も出す方だけど、収集車に積み込むのがおかしいごみが大量にある。区収集に関していえば、なにも出されたごみを全て運ぶのが住民サービスでは決してない、持込みごみであれ、結局は、不適正ごみは排出者の責任も追跡されるのである。

グラフ9 不適正搬入C・Dの具体的不適正内容(区集ごみ)


持込みごみと区集ごみによって不適正内容がはっきりと分かれる。
区集ごみがプラスチック類が可燃になったことから、持込みごみもなし崩し的に弁当がら、プラスチック類が清掃工場に入ってきている。たまたま搬入物検査の対象になった車がこれだけあると、全ての車両を考えるとそうとうなプラスチック類が搬入しているということであろう。

表3 不適正搬入C・Dの具体的不適正内容



9.まとめ
 長年、ごみの問題に多少は関わっていて、そして、清掃事業が特別区に移管される前後の区のたいへんな苦労もいろいろ見聞きしてきた。なかでも、こちらが、決まりや、理想や、望ましい方向性を求める度に、ごみでも資源でも、収集や運搬に携わる許可業者などの実情は、もう、耳にたこができるほど聞かされてきた。持込みごみの問題も、そういった諸々の問題があるのだろうが、とにかく、清掃工場の受入基準はしっかりと遵守してもらうしかない。これを厳格にしない限りは、多少のルール違反はいいだろう、これくらいはいいだろうがエスカレートしていく。そして、とんでもない、不適物、処理困難物、水銀ごみまで入ってしまう結果となるのである。清掃工場の受入基準を守らせるためには、事業者が容易に持ち込める資源化先なり処理施設があることが必要不可欠である。結局は、清掃工場にとっての不適物は、埋立処分場への受入も狭まれ、資源化施設への受入も困難などで、受入に多少でも隙のある清掃工場に流れ込むことになっている。これは清掃一組だけの問題ではなく、東京都や23区全体で考えなければいけない問題である。

要望など
○搬入物検査は厳格に行うこと。
○搬入不適物は毅然と持ち帰りを指導すること。
○搬入物検査の区職員の立会を効果的に活用すること。(搬入ごみの実態をみて、区収集ごみであれ、持込みごみであれ、分別の徹底、資源化推進、ごみ減量などの指導に役立たせること。)
○区収集ごみの搬入物検査、運転手の立会だけではなく、ときには、収集作業員も立ち会わせること。どんな不適物があっても、実際に清掃車に投入する作業員が自覚しない限りは再発防止も難しい。せめて集積場での受取拒否ができるように。
○東京都は、事業系ごみに対して、埋立処分場へのプラスチックなど受入半減などを表明するだけではなく、その受け入れ先の確保まで適切に指導すること。
○23区、清掃一組、東京都は、事業系ごみの減量、資源化、適正処理などについての実態調査と資源化ルートなどの整備を行うこと。

(集計などは苦にならないのだけど、その分析やまとめは苦手。かっこよくまとまらない。)

3年前になってしまったが、ぜひ参考にしてほしい報告書↓↓
■京都市の「事業系ごみ減量対策基礎調査結果報告書(平成19年度)」
 市長から京都市廃棄物減量等推進審議会に諮問された,「事業系ごみ減量施策のあり方について」(排出事業者のごみ減量に向けた効果的なインセンティブのあり方,事業系廃棄物の市施設での受入のあり方)の検討に資するため,平成19年度における事業系ごみの排出実態,排出事業者・許可業者等の関係者の意向,市施設への搬入実態,先進的都市における事業系ごみに対する取組実態などの調査を行いました。http://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000039487.html

関連(本ブログ)
■京都市の「事業系ごみ減量対策基礎調査結果報告書」(2009年07月12日)


================================================================

参考 
グラフ10 23区清掃工場可燃ごみ組成の推移



グラフ11 平成22年度 清掃工場別ごみ性状調査結果


グラフ12 23区清掃工場 区収集と持込みごみの割合


詳細は(本ブログ)
■23区 清掃工場「ごみ性状調査結果(平成22年度)」生ごみ等はかなりの減少、プラスチック類はさらに増加(2011年06月14日)
http://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/cd97f33ff773e63d2a216cd9078498d1




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 前の記事へ | トップ | 次の記事へ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

東京23区のごみ」カテゴリの最新記事