久々に線香の香りを嗅ぎたくなり、墓地へと出向いた。最近の墓地は車に乗ったままでも参ることができるようになっており、墓地内の通路に植えてあるポール状の赤ん坊の玩具のガラガラのようなものを、車の中から手を出して回すだけで一瞬のうちに一千行以上の経文を唱えたことになるらしい。自動車教習所のような迷路状の園内に配置されたガラガラを手際良く見て回らなくてはならないとしても、随分と便利なものである。しかし、今日はいつものように時間に余裕があるので墓までいくことにした。
最近は墓地に必要な土地の値段も高騰しているらしく、一戸建ての墓地は珍しいそうだ。コインロッカーのような配置で、1メートル四方の中の部分に骨壷が納められている分譲が一般的なのだという。まだ、移動式書架のように骨壷団地の一棟がグイインという音と共に移動するというシステムは普及していないが、いずれはより密集されたものがスタンダードになるらしい。霊魂のプロトニウム再処理場というよりは、霊魂養鶏場だなこれは・・・
その一室の412号室に用事があって、霊園事務室で借りてきた鍵でその番号のロッカーの扉を開けると、中の照明ランプが開扉に連動してチカチカとしばらく点滅したあとで、青白い光で部屋の中を照らした。以前に供えた枯れない花の花びらが以前にもまして艶かしく彩っていて、その向こうに幾つかの小物類、それから幾枚かの写真。これらの写真だけはこの部屋に不変のアイテムとして変わらず置かれている。供え物の饅頭をポケットから取り出し正面に設置する。線香を饅頭に突き立てて導火線に見立て火をつける。電子レンジのゆで卵爆弾などを連想したりするものだから、口角が上下し複雑さを増す。
近くのテーブルで茶などを飲み、ウイークマンから流れる音楽に心委ねていると、何時ものように時空が歪んでいくのを感じた。ああ、やはり此処は霊的エネルギーが集まり重力を歪ませる場なのだなと想う、どのようなハイテク装置がつかわれているのだろうね・・・?しばらく瞼が重くなって異次元へと心が転送されタイムスリップ・・・時間平面状に亀裂が発生し泡状に事象が生成消滅していく・・・
やばいな・・・
しかし、いつものことだ・・・
・・・・・・・
線香の芳しき匂いも薄くなり尽きてきたころ、やっと現在にもどることができた。
いつものように線香の味をする先ほどの饅頭爆弾を口に含みロッカーの扉をしめる。燻されたソーセジのような饅頭は仄かに桜餅ような風味がして、墓地公園からみえる向こう岸の散った桜並木が、いまそこに手の届くところの場所のような錯覚を感じさせる。
いつものように、タイムトラベルの時差ぼけに酔いつつ虚ろな口調で事務室の管理人に挨拶をし、やはりくるんじゃなかったな・・・そう、いつものように想うのであった。しかし、今回は頬を撫でる五月の街の風を感じるだけのゆとりはあった。
最近は墓地に必要な土地の値段も高騰しているらしく、一戸建ての墓地は珍しいそうだ。コインロッカーのような配置で、1メートル四方の中の部分に骨壷が納められている分譲が一般的なのだという。まだ、移動式書架のように骨壷団地の一棟がグイインという音と共に移動するというシステムは普及していないが、いずれはより密集されたものがスタンダードになるらしい。霊魂のプロトニウム再処理場というよりは、霊魂養鶏場だなこれは・・・
その一室の412号室に用事があって、霊園事務室で借りてきた鍵でその番号のロッカーの扉を開けると、中の照明ランプが開扉に連動してチカチカとしばらく点滅したあとで、青白い光で部屋の中を照らした。以前に供えた枯れない花の花びらが以前にもまして艶かしく彩っていて、その向こうに幾つかの小物類、それから幾枚かの写真。これらの写真だけはこの部屋に不変のアイテムとして変わらず置かれている。供え物の饅頭をポケットから取り出し正面に設置する。線香を饅頭に突き立てて導火線に見立て火をつける。電子レンジのゆで卵爆弾などを連想したりするものだから、口角が上下し複雑さを増す。
近くのテーブルで茶などを飲み、ウイークマンから流れる音楽に心委ねていると、何時ものように時空が歪んでいくのを感じた。ああ、やはり此処は霊的エネルギーが集まり重力を歪ませる場なのだなと想う、どのようなハイテク装置がつかわれているのだろうね・・・?しばらく瞼が重くなって異次元へと心が転送されタイムスリップ・・・時間平面状に亀裂が発生し泡状に事象が生成消滅していく・・・
やばいな・・・
しかし、いつものことだ・・・
・・・・・・・
線香の芳しき匂いも薄くなり尽きてきたころ、やっと現在にもどることができた。
いつものように線香の味をする先ほどの饅頭爆弾を口に含みロッカーの扉をしめる。燻されたソーセジのような饅頭は仄かに桜餅ような風味がして、墓地公園からみえる向こう岸の散った桜並木が、いまそこに手の届くところの場所のような錯覚を感じさせる。
いつものように、タイムトラベルの時差ぼけに酔いつつ虚ろな口調で事務室の管理人に挨拶をし、やはりくるんじゃなかったな・・・そう、いつものように想うのであった。しかし、今回は頬を撫でる五月の街の風を感じるだけのゆとりはあった。