びたみん

なんじゃ もんどの すけ びたみん

ところどころで

2008-05-15 03:08:11 | Weblog
木漏れ日の似合う季節になった。公園のベンチに座り弁当などを喰う。弁当はシェリーが作ったものでなかなかの出来だ。すぐに弁当作りなど飽きてしまうものだと思っていたが、今日で一週間目。初めの日に比べて冷凍食品の割合が多くなってきているような気もしないではないが、それでもタコウインナー、うさぎリンゴ、カラフルなデンブ鳥そぼろのイラストは健在だ。どちらかというと、俺は食事は質より量で満足する性格なのだが、手作り弁当はいいものである。

小さな池の周りに散策道があり、近くの高校生だか大学生だかがジョギングをしている。池には白鳥の乗り物が数台浮かんでいて、その白鳥の乗り物の中ではアベックが、実に幸せそうに二人だけの空間をつくっていた。いやあ、実に平和ですなぁ。

弁当も食い終わり、近くの自動販売機で購入した緑茶のペットボトルに口をつけ、次の予定を手帳で確認していると、どこから現れたかわからないが、浮浪者のような風体の男が声をかけてきた。男は伸び放題の髪を頭のてっぺんで束ね、いかにも臭いそうな色彩の服装で、少し白いものが混じった鬱蒼とする髭の奥で口をモグモグとうごかしていたかと思うと、突然

「おまえは、地震爆弾を信じるか?」

と妙に声質のよい野太い声質と明瞭すぎるくらいの音量で、俺の顔を覗き込むような姿勢で話しかけてきた。
突然の出来事に、俺はペットボトルを口にあて、男と正面一対一の視線対応で数分間固まってしまった。

「おまえは、地震爆弾を信じるか?」

どう返事すればよいのだろう?なにか悪いことでもしたのだろうか?咄嗟の出来事で、質問の意味がわからない。何をいってるんだ、こいつは?
とりあえず、謝っておいた方がいいのだろうか・・・

「あっ、えっ、その、すみま・・・」

「アメリカが地震爆弾で攻撃してくるんじゃ、世界の終わりが近いのじゃあ・・・悔い改めよ・・・」

何を言っているのか分からないことには変わらないが、質問の内容には若干の聞き覚えがある。トピックカテゴリ:新手の宗教勧誘。普段の俺ならば、こういった調子の外れた感じの主張にも寛容であるのだが、今日はせっかくの昼休みのご機嫌だった弁当時間を、最後の瞬間でなにか台無しにされたような気分がして、無性に腹立たしく思えた。

「いや、俺、そういうの興味ありませんから・・・」

「お前は、なにもわかっておらん、悔いあらためよ・・・」

まったく、こいつは・・・

そもそも、アメリカって日本の同盟国だろ、仮に地震爆弾という代物が存在したって大都市に落とすわけないじゃないか。東京が壊れたら日本どころの話じゃないぜ、だから東京には数十年以内に大地震なんて絶対に起きないんだよ。
だいたい、向こうのあの変てこな形の建物を見ろ。ピラミッドを何個も積み重ねたような、おでんの串のような建物。地震のある地盤であんなのが許されるのって疑問じゃないか。大地震がなにやらって煽っているのは防災グッズを売ってる商売人の陰謀なのさ。それに、今時、地震雷火事オヤジかよ・・・地震なんて足元が揺れるだけで、ちっとも面白い現象でないじゃないか、どこぞの手抜き土木工事の方が局地的で随分恐ろしいものだぜ。

と心の中で思いながら、こころの平静を保つように、男のことはできるだけ記憶から消去するよう心がけ、木漏れ日のベンチのしばしの楽園だけを記憶に留めようと思った。

公園の出口付近で振り返ると、男は俺が座っていたベンチにゴロンと横になって眠っていた。ベンチの後ろの花壇には種々のチューリップが大きな口を開いて咲いていた。そんな中に黒いチューリップが一つ紛れていて、その花のなかにスズメバチが入っていくのが見えた。ははん、地震爆弾っていうアイテムも碁盤をひっくり返すにはいいかもね。しかし、俺はまだ、正午の太陽が沁みて痛くなるような左目は持っていない。

まっ、それが難点なわけなんだけれど・・・

湿度の調整

2008-05-06 22:07:42 | Weblog
ふふふ、と少し高めの声で笑っているのはシェリーだ。空港まで出迎えてやるのも、これで3度目になるわけだが、随分と大きく成長したものである。透き通った青い瞳と眩しさすらも感じる金色のセミロングの髪が秀逸で、ブランド物の衣装やサングラスなんてアイテムを用いなくても、それなりのセレブリティーの雰囲気を醸し出している。

どこかの空港の土産物屋で買ってきたアパッチ族の羽のアクセサリーを携帯電話のストラップ代わりにして、ぶんぶんと振り回しながら、荷物の取扱いをもっと丁寧にしろだのなんのとウルサイ。

「日本の寿司喰いていぃ・・・」と言う強い要望を空港からの連絡橋を渡る間ずっと聞かされ、そのうちに後部座席からニュイと白魚のような手が伸びてきたかと思うと、俺の耳たぶを引っ張り直接内耳へと音量たっぷりに語りかけてきやがった。
しかも、吐息まじりに・・・
それにしても、なんで後部座席に座っているんだ?助手席に座ればよいようなものを・・・まるで、社長様だな、こいつは・・・

しかたがないので、連絡橋を渡ったところで一旦、高速道路から一般道へでて、食事することにした。どこがいいだろね・・・そう物色していると、そのうち俺もその気になってきた。寿司喰うぞ・・・

シェリーが指名したのは、随分と看板のネオンカラーが派手なところで、寿司バーというよりは、どちらかというと、南国トロピカルな雰囲気の無国籍料理を出す店だった。寿司バーじゃないだろ。まあ、いいけど。

のれんをくぐり、店の中へ・・・
腕にまとわりつくシェリーに、それほど嫌な感じはせず。むしろ、なにか、その・・・なんだろね。ちょっと気分がいいっていうか・・・まあ、そんな感じなんだけれど。一コース5500円也。

食事をしながら、数年間の主だった出来事のダイジェストを聴く。昨年テルさんが突然尋ねてきたのでビックリしたというようなことを、そのときの押しかけ騒動の写真を携帯端末に表示しながら説明してくれる。
そのうちの一枚にはハロインの大きなかぼちゃにテルさんが食べられそうになっている写真が写っていた・・・テルさん・・・何やってんだ?
シェリーはテルさん滞在期間中、近所の名所案内などなど、通訳ガイド代わりに随分と引っ張りまわされたらしい。

一通りのコースメニューを消化したものの、なんだか、まだ食べたという感じがしない。腹六分目くらいで店をでようなと思ったのだが、幸いに、追加コースというものも用意されていた。シェリーもまだ満足するには至っていないらしく、追加コースの注文をすることに・・・
追加コースに出されたものは、随分と豪勢なもので、追加メニューというよりは、これがメインディッシュだろが・・・

そうはいうものの上機嫌で店を出て、高速道路に合流し帰路。シェリーは今度は助手席に座っていたが、食事で腹がふくれて満足したのか、眠っていた。高速道路の照明が周期的に彼女の寝顔を照らす。

いや、ほんと、しばらく見ないうちに美人になられましたな・・・