「ウマイ、ハヤイ、ヤスイ」とは、よく言ったものですね。いまやこの精神と行動なきサービス業は存在できないでしょう。
ではサービス業を自認する病院では、この「ウマイ、ハヤイ、ヤスイ」という視点はどのように説明がつけるのかな。利用者の視点で言えば、暮らしの安心において、このサービス価値ほど有難いものはありません。患者本位の医療を目指すなら、これに反する理念を掲げるわけにはいきません。
しかしこの世の中、よくできたもので、そうとばかりも言えないのです。たとえば本当に美味しい料理を食べたいと思うときは、少々懐を痛めても、少々アメニティが損なわれていようと、時間がかかる店であろうと、そこへ出かけて行くでしょう。美味しい料理はよい食材と腕のよい(給料の高い)料理人が不可欠です。また何十年も喘息で苦しんだ人は、その治癒のために、より高度な専門医に診てもらいたいのが人情です。たとえ電車を乗り継でいく距離にあろうと長時間待たされようと厭わない。人の願望がより個別的で高度な次元を求めるほど、ただ「ウマイ、ハヤイ、ヤスイ」で満足は提供できないのです。
つまり日常的な何でもないことには「ウマイ、ハヤイ、ヤスイ」という経済観は人々に歓迎されますが、個人的で個別的な要求には「ウマイ、ハヤイ、ヤスイ」の一本槍は通用しないということです。
ところでこれを考えているうちに、病医院の広報活動にもこの価値観が存在することがわかりました。それは主として「経営者と広報担当」「広報担当と外部委託」の関係においてです。経営者は、最小のコストと最短時間で最高のアウトプットを期待するのが当然だし、同様のことが施設と外部サービス会社のなかにも言えます。しかしそれは同様に、日常的処理の世界で言えるのですが、本当はここ一発の大ホームランが望まれていることも忘れてはならないでしょう。