プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 北村薫「街の灯」

2021年01月30日 | ◇読んだ本の感想。
ひさびさーに北村薫らしい作品を読んだねえ。
とはいえ、この作品も2003年に出版された作品。20年近くたってから読んだ。

わたしが北村薫に出会ったのはたしか2000年前後で。
その時にはかなり感動した。実に久々に現れた「わたしの作家」だと思った。
「わたしの作家」なんて人生でそう何人もいるものではない。
夏目漱石。塩野七生。辻邦生。白洲正子。
その中でも一番わたしの感受性に近いところにいる人。

出会って2、3年でその当時まで出版されてた作品は概ね読んだ。
大学生くらいまでは本は買っていたが、その後は図書館派になったので、
読んだ本のほとんどは手元にない。でも北村薫の本はけっこう買った。
全部ではないけれども、大好きだった「円紫さんと私」シリーズ、
「覆面作家」シリーズ、「冬のオペラ」は何度読み返したことだろう。

が、ひとまず読み終わって一旦離れた後――わたしの読み方は、
一旦離れると10年くらい戻ってこない彗星の軌道に似ている――
たまに読んでも、あの頃の北村薫にはなかなか出会えなくて。
正直なところ、読んでがっかりすることが多かった。
大好きな作品たちに肩を並べることはとても。


この作品でようやく、好きだった北村薫に再会出来た感じ。

これはベッキーさんシリーズの1作目で、テイストとしては「覆面作家」に似ている。
舞台は戦前の上流階級。語り手のお嬢さんと、その女性運転手であるベッキーさん。
この2人がワトソン役でもあり探偵役でもある。
このどっちつかずの設定は珍しくはあるが、ここはいさぎよく
ベッキーさんが探偵役で良かったのではないかと思った。

ベッキーさんの謎めいた部分をうまくひっぱっている。
何か事情がある人なんだろうと感じさせる。
あまり詳しく描写はしていないのが不満といえば不満だが、
それは狙ったことなのかもしれない。

ただ、わたしが崇め奉る「円紫さんと私」シリーズに比べれば、
まだまだ食い足りない作品ではある。
でもまあ、あれはわたしにとってみれば奇跡的な作品である。
奇跡がそうそう生まれるわけはない。

そう思えば今作は十分及第点を越えた。
風俗的な部分も楽しめるしね。設定は架空のもの。


今後は今作以降の作品を順次読んでいくことになるので、このシリーズは期待する。
他にも好きな作品に出会えるといいなあ。
とはいえ、北村薫は面白いかどうかに関わらず好きなことには変わりないから、
エッセイなども楽しみに読もうと思います。



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