プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 飯嶋和一「汝ふたたび故郷へ帰れず」

2017年03月26日 | ◇読んだ本の感想。
格闘技がキライなわたしは、ボクシングの話なんてさらさら読む気はなくて……
この人、てっきり歴史ものオンリーの人だと思っていたので、現代ものでボクシングものと気づいた時には愕然とした。
こんなん最初の方だけ読んでばっくれてしまおう、と思って最初の方はパラパラとめくっただけなのだが、
いつの間にか引き込まれて読んでいた。最後まで面白く読んだ。

ざらざらとした肌触り。ヒリヒリするようなドライさ、武骨さはアメリカ初期文学を思わせる。
最初だけだけれどね。結局のところ温帯湿潤気候の日本の作家が書くものは十分にウェットで。
ただ文体はそっけない。狙ってそっけない。まあそれで読みやすかったってのもあるね。
短文の、ぷつぷつした文章。――この人の歴史ものは若干こってり風味の印象があったのだが、
その人がこういうのも書くのはだいぶ意外。

ボクシングやってたの?取材で書いたのならだいぶエライ。
ボクシングなんて久しく見たことはないが、綿密な作戦があるもんなんだなあ。ただの殴り合いだと思っていた。
まあそこまで言わなくても、そんなに裏の裏を読みあうような細かいことをやっているとは思わなかった。
そういうのを知れたのは重畳。だからといって格闘技が好きになるわけではないが。

最後良かった。あそこで終わるのはほの明るくて。もっと先まで書いたら、どうしたって挫折の話になるでしょう。
めでたしめでたしにはならない。
本の後半に別な話が入ってるって知らなかったから、この残り枚数で最後どう締めるんだろうとやきもきしちゃったよ。
まあ尻切れトンボ的ではあるが……伸ばして後味が悪くなるのに比べたら相当良い。

今作はタイトルが良かったですね。カタカナのタイトルより、漢字のタイトルが似合う作風だと思う。


こっち側の作家、というところまで共感はできないが、それなりに親近感を覚える作家になりつつある。
60歳過ぎてるんだね。もう少し下だと思っていた。遅咲きは遅咲きなのかも。
一応ツブしているのだが、作品数がそれほどないのであと数作で読み終わる。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

汝ふたたび故郷へ帰れず [ 飯嶋和一 ]
価格:637円(税込、送料無料) (2017/2/26時点)






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < ラスト・コップ シーズ... | トップ | < よろず屋ジョニー >(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◇読んだ本の感想。」カテゴリの最新記事