華妃に情の長さを歌った曲がいいと言われ、
安陵容が披露した歌は菩薩蠻でした。
詞の作者は唐の詩人、温庭筠です。
小山重疊金明滅
小山のように折れ曲がった屏風が
太陽に照らされ、きらきらと光っている
鬢雲欲度香顋雪
寝乱れた雲のような髪が、
雪のように白くて香しいおとがいに懸かっている
懶起畫蛾眉
物憂く起きて、すんなりと伸びた眉を画く
弄妝梳洗遲
ゆっくりと髪を梳き、化粧をする
照花前後鏡
合わせ鏡で容姿を眺め、
花面交相映
花の簪と美しい顔があい映っている
新帖繡羅襦
新しいうすぎぬの上着には
雙雙金鷓鴣
つがいの金鷓鴣の刺繍があった
最後の句「雙雙金鷓鴣」は、仲睦まじい夫婦のことを暗示しています。
しかし、ものうく起きてゆるゆると化粧するなどの描写から、
女性は一人でいることが分ります。
艶めいた化粧をしても、見せる人おらず、
つがいの鷓鴣の刺繍を見れば、さらに寂しくなる。
一人で閨房にいる女性の寂しさを詠っています。
個人的には、安陵容が言った「情を交わした後の女の歓び」にはとても見えなくて、
華妃の言うとおり、「情の長さに言及してない」と思います。
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