大雨で果郡王(実は皇帝)に会えなかった甄けいは、
琴を弾きながら、口にした「山之高」:
山之高 月出小
高い山から月がいずる
月之小 何皎皎
月は小さく見えるが、何と明るくて美しい
我有所思在遠道
思う人が今遠いところに
一日不見兮
一日会えないだけで
我心悄悄
心が寂寥になる
作者の張玉娘は、15歳で幼馴染の沈佺と婚約をしました。
二人とも学があり、とても仲がよかった。
この詞には、科挙試験を受けに行った沈佺への思いが託されています。
しかし、不幸なことに、沈佺は重い病気にかかってしまい、
それを知った張玉娘は、手紙を送り、「死んだら同じ墓に入る」と誓った。
沈佺は手紙を読んでとても感動し、張玉娘に会いに道を急いだが、やがて病死。
毎日涙が止まらない張玉娘は、再婚を拒否し、一人で寂しく暮らしていた。
上元の節、灯に向かって物思いに沈んだ張玉娘は、
ぼんやりと沈佺を見えた。
「約束だけは破らないでほしい」という言葉を残し、沈佺は姿を消した。
悲しくてやまない張玉娘は、「なぜ私を離れた」とひたすらつぶやき、
半ヶ月後、絶食で亡くなった。
本当に悲しい話でした(;;)
原作小説には、「なぜ前半の部分だけ詠んでいますか」と流朱に聞かれたら、
甄けいは「前半だけは気に入る」と答えた、というシーンがありました。
では、なぜ甄けいは後半の部分を気に入らないか、
まずは後半を見てみましょう。
汝心金石堅
あなたの心は、金石のように、
決して変わることがない
我操冰雪潔
私の心もまた、氷と雪のように清らか
擬結百歲盟
一生添い遂げると約束したものの
忽成一朝別
突然別れることになってしまった
朝雲暮雨心來去
朝の雲と夕暮れの雨は、私の心
千里相思共明月
遠く離れたこの思いは、
月に託すしかない
この「擬結百歲盟 忽成一朝別」を詠むたびに、
感傷な気持ちになります。
やはり、後半はあまりにも切なくて、
甄けいも、果郡王と関わってはいけないと分っていながらも、
まだ何となく憧れを持っているから、
後半の部分を詠まずにいたのではないかと、思います。