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ウェネトさまの館

ようこそいらっしゃいました。
ビスうさ・ウェネトと申します。
どうぞごゆるりとおくつろぎ下さいまし。

「怖い絵」展(上野の森美術館)

2017年10月17日 06時00分10秒 | 展覧会・美術関連

上野の森美術館「怖い絵展」を観たのでございます。
http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=226


観たのは1週間も前、先週の火曜日なのじゃ。
美術館の展覧会話は後回しにした挙句書きそびれる事も多うございますが、これは今年のツボな展覧会ベスト10に入るやも知れぬゆえ、やはり書いておかねばの。

始まって3連休中は1時間待ちの行列と聞き、連休明けの火曜日が狙い目と思うて行ったらば、狙い通り入口もチケット売り場も行列は全くありませぬ。

が、中はかなり混雑しておりました。
もっと広い美術館ならこれほどみっしりにはならぬはずじゃが、上野の森美術館はちと狭いですからのぅ。

前置きが長くなってしもうた。
作家でドイツ文学者の中野京子による美術書『怖い絵』の、シリーズ第1巻発行10周年を記念した展覧会でございます。
「恐怖」をキーワードに、選び抜かれた約80点の絵画や版画が、6つのテーマで展示されておりまする。

一見「これのどこが怖いのじゃ?」と思う作品も、中野京子による解説パネルや丁寧なキャプションを読むと、じわじわ怖くなるのでございます。
怖いだけでなく、じわじわ悲しくなる作品もけっこうありますのぅ。

構成は以下の6章。
お気に入りや気になった作品などリスト順に。

【第1章 神話と聖書】

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》
大好きなウォーターハウスの作品が観られて嬉しゅうござります。
キルケーはアイアイエー島の女王で、男を動物に変える魔女。
美しいキルケーの足元には豚に変えられたオデュッセウスの部下が転がり、鏡にはオデュッセウスのお姿が。

ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー《オデュッセウスとセイレーン》
ドレイパーのセイレーンは、海に浸かっていると人魚じゃが、船に乗り上げたらば人間の足に変わっておる。
描かれた3人のセイレーンは皆美しいゆえ、彼女らの元へ行きたくなるのも無理からぬ事じゃ。

ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《飽食のセイレーン》
モッサの作品を観るのはたぶん初めてですが、たいそうツボでございます。
こちらのセイレーンは半身半鳥で、ぱっちりお目目のドールチックな可愛いお顔なれど、口からは血をしたたらせ、翼にも点々と血が飛び散り、装飾的な猛禽足の鋭い爪にも血が。
そして背景は、沈む建物にしがみつく豚たち(男たち)
パネルには「ごちそうさま」の文字が。ひ~!
(外の看板の絵じゃが、こんな感じ)


ベンジャミン・ウェスト《サウルとエンドルの魔女》
作品がお気に入りという訳ではなく、パネルの「お前ももう死んでいる」の見出しに噴いて、それしか記憶にないという・・・(ごめんよ~)

【第2章 悪魔、地獄、怪物】

オーブリー・ビアズリー《オーブリー・ビアズリーによるサロメのための挿絵(ポートフォーリオ)》
《踊り手の褒美》は、元々好きな作品。
《章末飾り》は、原作にはない、ビアズリーが案出したサロメの埋葬の場面。

ヘンリー・フューズリ《夢魔》
怖いけれど、魅入ってしまいましたぞ。
「眠りはある意味、こま切れの死だ。」なるほどのぅ。
画面の上半分は闇のみで、下のベッドにだらりと横たわる女性の上に、目を爛々と光らせた2匹の魔物。
この作品はミニチュア版との事ですが、オリジナルも観てみとうござります。

ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《彼女》
《飽食のセイレーン》と同じく可愛いお顔。そしてナイスバディ。なれどマン・イーターな彼女。
髪には髑髏と2羽のカラス。腕の間から覗く黒猫。
横座りの足元には、血まみれの男たちの山。
この山を観た途端、会田誠の《ジューサーミキサー》を思い出しましたぞ。
パネルには「いただきます」の文字が。ひ~!
これ、視覚的に本当に怖い絵でございます。

【第3章 異界と幻視】

マックス・クリンガー《手袋》
クリンガーは大好きで、この作品も好きなのじゃ。
本展とは関係ない話じゃが、神奈川県立近代美術館 葉山で今「マックス・クリンガー版画展」をやっておる。
行きたいけど・・・遠くて躊躇しているうちに終わってしまう予感(涙)

チャールズ・シムズ《クリオと子供たち》
柔らかな色彩と和める光景。と思いきや、クリオの手には・・・
シムズは第一次世界大戦で長男を失い、この作品に血を描き加え、十数年後に自殺したという怖く悲しい現実。

【第4章 現実】

ニコラ=フランソワ=オクターヴ・タサエール《不幸な家族(自殺)》
これもしみじみ怖く、というか悲しくなる作品。

ポール・セザンヌ《殺人》
今まで知っていたセザンヌとは別人かと思う程、残虐な場面に背筋が凍りまする。
わたくし、今後セザンヌを観る目が変わってしまうやも・・・

ウォルター・リチャード・シッカート《切り裂きジャックの寝室》
一見すると、全く怖くない。
しかしシッカート、切り裂きジャックに多大な関心を抱いていたばかりか、まさかの有力容疑者だったとは。
この作品も、ジャックが住んでいた部屋と聞き、わざわざ借りた部屋だとか。

【第5章 崇高の風景】

フレデリック=アンリ・ショパン《ポンペイ最後の日》
炎と津波の中、逃げまどう人々や馬や牛が非常にリアルで、恐怖ひしひし。

ギュスターヴ・モロー《ソドムの天使》
モローは大好きなのじゃ。
一見全く怖くない絵じゃが、キャプション読むとなるほど怖い。

・ジョージ・スタッブス《ライオンに怯える馬》
ライオンと鉢合わせして目が合ってしまった馬の恐怖、自分の事のように感じまする。

【第6章 歴史】

ゲルマン・フォン・ボーン《クレオパトラの死》
わたくしの故郷、紀元前のエジプトの室内の描写も気になる作品。
実際はクレオパトラは着衣で、蛇なしで自害したそうな。

ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》
ポスターやチラシにもなっている本展1番の目玉で、日本初公開作品。
思っていたよりずっと大きく、臨場感ありありの描写は、実際にこの場面を目の前で見ている錯覚に囚われまする。
額も豪華じゃのぅ。

ヘンリー8世の姪の娘に生まれたばかりに陰謀に巻き込まれ、政略結婚させられ王位につけられ、たった16歳で処刑されたジェーン。
目隠しされたジェーンの美しい肌や、白く輝くシルクのドレスや、薬指の結婚指輪に、痛ましさが増しまする。
首置台の下にまかれた藁は、大量に流れ出る血を吸わせる為。
ギロチンが発明される前の斬首は、失敗が多かったとか。
せめてジェーンの苦しみが一瞬であった事を祈りまする。

・フレデリック・グッドール《チャールズ1世の幸福だった日々》
美しく和やかな舟遊びの光景で、赤いドレスの王妃はたいそう美人だし、4人の子供たちも可愛い。
しかし・・・

最後に、お写真撮影コーナー。
《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》の鏡にオデュッセウスが映っていたように、わたくしもちっちゃく映っておるが、見えますかの?
豚には変身しとうない~。


グッズも色々ございますが、とりあえず絵はがきと、ビアズリー《踊り手の褒美》の紙箱に惹かれたキャラメルのみ購入。
紫色のキャラメルはいちご味。ちと酸っぱい。


そういえば、かなり前に貰ったこのチラシ、点線に沿って折るとチラシの隅が指し示す人物と解説が現れ、全部折ると本の表紙のようになるという凝ったものじゃが、もうどこにも置かれておりませぬのぅ。


観終わって、館内のカフェで怖い絵展コラボメニューのハーブティーとスイーツでひと休み・・・と思うたら、満席で断念。しくしく

会期は12月17日まで。会期中は無休でございます。
ご興味ある方は早目にお出かけなさいまし。

★おまけ画像

毎日食べてるけど~♪ 当たりが出ないのよ~♪(涙)

当たりハガキが入っておれば、オスカルのタンブラーが貰えますのじゃ。