昨日は、練馬区立美術館「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」を観たのでございます。
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202012111607684505
明治初期から現代まで、電線・電柱を描いた作品(描かれておらぬ作品も一部あるがの)を約130点も集め、その他に碍子(がいし)とやらも13点ほど展示。
作品を通して、各時代の電線や電柱が果たした役割など辿れるのじゃ。
構成は以下の通り。途中一部展示替えあり、今は前期でございます。
お気に入りや気になった作品もリスト順に。
まずはお2階からじゃよ。
【プロローグ:日本最古の電線絵画】
・樋畑翁輔《ペリー献上電信機実験当時の写生画》嘉永7年(1854)紙本墨画淡彩
日本初の電線絵画。ペリー招来の電信機実験の際、松代藩士の樋畑翁輔がこっそりスケッチしたんだそうな。
【第1章:晴れやか 誇り高き電信柱】
・小林清親《浅草蔵前夏夜》明治14年(1881)大判錦絵
月のない暗い夜にガス灯の灯り、電柱や建物や人々が黒く浮き上がっておる。
・豊原国周《東京高輪風凉図》 明治3年(1870)大判錦絵3枚続
電信柱が描かれた最も早い絵画のひとつだそうな。
・《碍子・二重碍子・長平瓶》明治6年(1873)頃
由来のわかる最古の碍子、箱入り3点セット。
・梅堂小国政(五代歌川国政)《春遊当る電話機》明治26年(1893)錦絵
遊べる錦絵。右側の電話機から本物の糸が何本も電信柱に繋がり、そこから左側の8つの小さな電話機に分かれ、糸を引くと電話機が開いて絵凧になるのじゃ。楽しいのぅ。
・河鍋暁斎・山岡鉄舟 合筆《電信柱》明治前期 紙本墨画一幅
細長い~画面の下半分にすっきり1本の電柱、斜めに走る電線。
・月岡芳年《芳年略画 頼政/天狗之世界》明治15年(1882)中判二丁掛
上下2段の下段が楽しい。烏天狗の郵便屋さんと飛脚が電線の上で正面衝突。
【第2章:晴れやか 誇り高き電柱-電気の光】
・三代歌川国貞《凌雲閣機絵双六》明治23年(1890)大判錦絵2枚続
赤い空に聳える凌雲閣には我が国初のエレベーターがあり、各階の扉を開くと中の様子が見える、色鮮やかで楽しい双六。
・楊洲周延《上野公園の夜景》明治28年(1895)大判錦絵3枚続
楊洲周延、好きなのじゃ。夜桜見物の人々、電灯に照らされた着物姿の2人の女性だけしっかりカラーで描かれておる。
【第3章:富士には電信柱もよく似合ふ。】
・小林清親《従箱根山中冨嶽眺望》明治13年(1880)大判錦絵
本展のメインビジュアル。広々空間に富士山と電柱、明治だけど江戸の旅姿の人物。
【第4章:切通しと電柱-東京の増殖】
・岸田劉生《晩夏午后》大正12年(1923)油彩、キャンバス
電柱も電線も描かれておらず不審に思うたら、関東大震災で辺りの風景が一変し、描き続ける事ができなかったらしい。
【第5章:帝都 架線の時代】
・小絲源太郞《屋根の都》明治44年(1911)油彩、キャンバス
上野の山から浅草方面を見た風景。無数の電線。迫力のタッチじゃ。
・織田一麿《上野広小路(『東京風景』の内)》大正5年(1916)石版画
一瞬フランス辺りの風景かと思うた。
・川瀬巴水《東京二十景「新大橋」》大正15年(1926)木版画
川瀬巴水は大好きで、特に夜の風景はお気に入りなのじゃ。
【第6章:伝統と電柱-新しい都市景観】
・近藤浩一郎《十三夜》昭和2年(1936)紙本墨画淡彩一幅
星のまたたく空、まっすぐ続く道の奥に五重塔、右に電柱。不思議と絵本の世界のようでもあるような。
・伊東深水《夜の池之端》大正10年(1916)木版画
すっと夜空に向かう電柱。
・川瀬巴水《浜町河岸》大正14年(1925)木版画
・吉田博《東京拾二題 隅田川》大正15年(1926)木版画
電柱描く派の川瀬巴水と、描かない派の吉田博、どちらも大好きな作家。
この2点は似たような構図じゃが、電柱の有る無しで印象がかなり違うのぅ。
川瀬巴水は他にも何点かあったが、どれもお気に入りじゃった。
【第7章:災害と戦争-切れた電線、繋ぐ電信線-】
・梅堂小国政(五代歌川国政)《明治丙申三陸大海嘯之実況》明治29年(1896)大判錦絵4枚続
明治の三陸地震を描いた錦絵。津波や火災にのまれる人々、なぎ倒される電柱。
・西沢笛畝《大正震災木版画集「黄昏の日本橋」》大正12~13年(1923~24)木版画
日本橋の大好きな麒麟像、震災でも無事じゃが、奥の日本橋三越は全焼し、電線が垂れ下がっておる。
【第8章:東京の拡大-西へ西へ武蔵野へ-】
・西尾善積《練馬風景》昭和12年(1937)頃 油彩、板
農道の両脇に電柱が続き、奥に東京カトリック神学校。この美術館のある練馬区の風景じゃ。
【第9章:“ミスター電線風景”朝井閑右衛門と、木村荘八の東京】
・朝井閑右衛門《電線風景》制作年不詳 油彩、キャンバス
朝井の《電線風景》シリーズ、いずれも迫力。
・木村荘八《永井荷風『濹東綺譚』挿絵06》昭和12年(1937)インク、水彩、コンテ、胡粉、紙
下町の空を覆う電線風景。
木村の『濹東綺譚』や『東京繁盛記』の挿絵、全て興味深うござりました。
ここから先は、1階の展示室じゃよ。
【第10章:碍子(がいし)の造形】
磁器のオブジェとしか思えぬ美しい碍子がずら~り。形も様々でびっくり。
電柱に疎いわたくし、最初「碍子」が何やらわからんかったが、リストに出てる図解の上にある部分じゃ。写真が不鮮明じゃがの。
お気に入り色々ございましたが、3点だけ挙げまする。
・松風陶器合資会社《高圧碍子》明治39年(1906)磁器
現存するものでは日本最古の高圧碍子。
・松風陶器合資会社《玉がいし》大正14年(1925)磁器
まん丸可愛い。オブジェとして机の上に飾りたい。
・日本碍子株式会社《懸垂碍子》昭和3年(1928)磁器
釣鐘のような形が可愛い。
【第11章:電柱 現実とイメージ】
・海老原喜之助《群がる雀》昭和10年(1935)頃 油彩、キャンバス
以前にもどこぞで観た作品じゃが、「おおっ」と声が出てしもうた。
エビハラブルーの広い空の下、2本の電柱の電線に無数の雀!足元は雪の大地。
・岡鹿之助《灯台》昭和42年(1967)油彩、キャンバス
青い空、緑の山、頂上に赤茶の灯台という美しい風景。
他に《群落A》も印象深うござりました。
今まで意識しておらんかったが、岡作品の多くに電柱が描き込まれておるそうな。
・《デンセンマンの電線音頭》昭和51年(1976)EPレコード
かようなレコードまで展示されておるとは。♪チュチュンガチュン♪
【第12章:新・電線風景】
・山口晃《『趣都』「電柱でござる!」の巻 前編・後編》2018年 ペン、墨、水彩、紙 20枚
大好きな山口晃も2点あって嬉しゅうござります。
こちらは「月刊モーニング・ツー」で連載された漫画。楽しい。
・阪本トクロウ《呼吸(電線)》2012年 アクリル、紙
先月、武蔵野市立吉祥寺美術館で個展を観た作家じゃ。(ブログは書きそびれてしもうた)
正方形の水色の空に、斜めに7本の電線。
書き切れなかったが、他にも気になる作品色々ございました。
わたくし今まで「景観を損ねる電柱・電線は目障りじゃ。全て地中に埋めませぃ!」と思うておったが、作品の中の電線・電柱は良いものよのぅ。
予想していたより遙かに面白い企画展、気づけばかなり長時間観ておった。
これは今年の「ウェネト的ツボな展覧会ベスト10」に入るやもしれぬ。
会期は4月18日まで。途中で一部展示替えがございます。
昨日は平日で午前中に行ったのじゃが、思ったより人がおったゆえ、ご興味ある方は混み出さぬうちお早めにの。
観終わって、駅前のガストで糖分補給じゃ。
プリンアラモードパフェをお願いいたしまする~。
プリンとパフェが一緒に食べられるとは嬉しいメニューよのぅ。
プリンの他にも、チョコブラウニーやらパンケーキやら色々入っておる。
が、ソフトクリームが少ない。
わたくしといたしましては、ちとパサパサなパンケーキの代わりに、ソフトクリームを増量していただきたく・・・(こらこら)
さて、ここからはおまけ話でございます。
★甘いもの話
チョコパイ ザッハトルテ、美味しいぞよ~♪
とりあえず2箱買うたが、あっという間にひと箱完食。
売り切れぬうちにたくさん買っておかねば。
★本の話:其の壱
ボローニャ国際絵本原画展入選作、大好きな佐藤文音の『ふしぎなニャーチカ』、リトグラフによる絵も物語も優しさ溢れて良いですのぅ。
大きな猫のニャーチカが魅力的ゆえ、シリーズ化されないじゃろか。
★本の話:其の弐
クレア・キップス『ある小さなスズメの記録』、良かったぞよ。
これまた大好きな酒井駒子の表紙絵と扉絵も心に沁みる~。
梨木香歩の訳も良いのぅ。